その日が来る前に、2
最新 最初 🆕
#1 [愛華]
引き続きよろしくお願いします

その日が来る前に、
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/11658/

その日が来る前に、感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4782/


ぜひ来てください

⏰:10/10/06 00:43 📱:840SH 🆔:ZQKECwM.


#2 [愛華]
次の日。
俺はいつもどおり学校へ向かった


「おっはよタカ!お土産は?」

梓がいつものように背中を叩く。
本当にいつもどおりの朝。

「おぅ、ほれ。『むにチョコ』」

「なにそれ〜?あ、本当にむにむにしてる。ありがとー」

⏰:10/10/06 22:10 📱:840SH 🆔:ZQKECwM.


#3 [愛華]
梓はチョコを食べながら言った。
怪しげなチョコをこんなに喜んでくれるとは…梓、いいやつ。

「てゆーかさ、普通って宿泊研修とかの次の日って休みなんじゃないの?」

「そうなんだよなーひどいよな。
まぁ午前だけで終わりだし。
明日から休みだからいいけどー」

「ふーん。明日さ、タカんち
遊びいってもいいかなぁ?」

⏰:10/10/06 22:28 📱:840SH 🆔:ZQKECwM.


#4 [愛華]
「あぁ……明日ならいーよ。
ゲームするか。久々に」

「やった♪」

小さいころからよく家には
梓がいた。いつもいた。
いつのまにか父さんと母さんとも梓は仲良くなっていった。

「ほら、直純いっちゃうぞ」

「あ、うんそれじゃあね」

だいじょうぶ。いつもどおり。

⏰:10/10/06 22:50 📱:840SH 🆔:ZQKECwM.


#5 [愛華]
学校へつき、下駄箱へ向かう。

……なんだろう。
いつもどおりなのに
いつもと違う気がするんだ。

教室の前につくと、それは明らかに
強く俺を包んだ。

入った瞬間にその正体はわかった

ガラッ


「たっかのりー!!
お前やるなぁ!!女子が苦手とか言っといてよー!!」

⏰:10/10/07 00:39 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#6 [愛華]
「………え?」

黒板を見ると、そこには
『赤石隆則×水沢真理菜の
熱愛発覚!!宿泊研修の夜、
キス!!お幸せにー!!』

な、んだよこれ。なんで?

真理菜ちゃんのほうを見ると、
真理菜ちゃんは恥ずかしそうに
赤くなり照れるように笑っていた

頭の中は真っ白だ。
意味がわからない。
わかりたくもない。

⏰:10/10/07 00:43 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#7 [愛華]
「おまえらいつから出来てたんだよー!?白状しろよー!!」

「ち、ちが……」

「照れんなよー!二人して真っ赤になってやんのー!!」

クラスのみんなが騒ぎ立てる。




「……うっせーな……」


騒ぎ声に混じって聞こえた。
冷たい声。
……………………達也。

⏰:10/10/07 00:47 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#8 [愛華]
「達也!!」

俺は達也のもとに走った。

「俺は………」

言おうとして気づいた。
何を言っても言い訳でしかない。
そんなつもりなかった
隠す気なんてなかったんだ

なにを言っても同じだ。

俺は……達也を陰で裏切ってた。

その事実は変わらない。

⏰:10/10/07 00:53 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#9 [愛華]
「……なんだよ?言いたいことあんなら言えよ。言い訳するなら今のうちだぞ?」

達也の冷たい目。
教室がシンとなる。
わけもわからないみたいだ。

「………ないよ。でも俺……」

「でも……なに?」

「俺、したくてしたわけじゃねんだよ!!これは嘘じゃねぇ!」

⏰:10/10/07 00:57 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#10 [愛華]
「………それだけ?」

「え………」

次の瞬間。


ドカッ!!


頬に痛みが走った。

「きゃあ!!」

「達也、おまえ何してんだよ!」

クラスのみんなの声が聞こえる。
俺は衝撃で起き上がれない。

⏰:10/10/07 01:01 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#11 [愛華]
「んなこと聞いてねぇよ……
なんで隠して黙ってた?
陰で笑ってたんだろ俺のこと」

「ちげぇよ……」

「違くねぇだろ!!」

達也はさらに腕を振り上げた。


ドカッ!!


でも殴ったのは……俺だった。

⏰:10/10/07 16:32 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#12 [愛華]
「人の話聞いてたかよ!!
俺はしたくてしたわけじゃねぇ!
勝手にきめつけんなよ!
俺だって意味わかんねぇよ!」

達也はゆっくり立ち上がった。

「……逆ギレしてんなよ。
結局、隠してんだから一緒だろ」


二人で睨み合う。
誰も止めない。止められない。

⏰:10/10/07 16:35 📱:840SH 🆔:N/hOSzgk


#13 [愛華]
ドカッ!!
バキッ!!


殴り合う音だけが響く。
こんなに人を殴ったのは初めてで
自分の拳の皮も剥けてきて。
痛くて痛くて痛くて。


先生が教室に来て止めに入るまで
喧嘩は続いた。


誰も 止められなかったんだ

⏰:10/10/08 01:11 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#14 [愛華]





どこで間違ったんだろう

どうしてこうなったんだ

そんなつもりなかったのに

ごめんな、達也。

遅いかもしれないけど

ごめんな

⏰:10/10/08 23:32 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#15 [愛華]
「………なにがあったの?」

「…………」

先生が問いただす。
俺たちは何も答えない。


「……ここで待ってなさい。
お母さん方に電話してくるから」

先生はため息をついて保健室から
でていった。

カラカラ………

⏰:10/10/08 23:35 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#16 [愛華]
「「………」」


沈黙が続く。

どうしよう。なんて言えば……


「………なぁ」

「………あ!?」


いきなり達也に話し掛けられて
声が裏返ってしまった。

び、びっくりした……

⏰:10/10/08 23:40 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#17 [愛華]
「お前つよすぎ。なんだよマジ。
明らか俺よりお前のほうが
怪我軽いじゃんか」

「あ……空手やってたから」

俺は小学校のころ空手を少し
やっていた。確かに冷静に
なってみれば達也のほうが傷の
数が多かった。

「むかつく………んだよ……」

達也はうつむいた。

俺もうつむいた。

⏰:10/10/08 23:48 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#18 [愛華]
「人なぐるのって……痛いな」

俺は自分の拳をさすった。
手の甲は真っ赤になっていた。
皮がめくれて空気がしみる。

「そうだな……」


窓が空いていて風がはいる。
優しい沈黙。
もしかしたら………

まだ戻れるかもしれない。

俺たちはまだ子供だから

まだ……………

⏰:10/10/08 23:52 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#19 [愛華]
「戻れねぇから」



もう、だめなんだ。


幼いが故の反抗。
ほどけることのない痛み
認めることは間違い。
認めないことが最後の強がり。

「仲直りしよう。悪かったな」

言ってしまえば終わる。
元に戻れる。
またいつもの日々に。

⏰:10/10/08 23:58 📱:840SH 🆔:NTikCQwA


#20 [愛華]
でも俺たちはまだ13歳で

過ちの終わらせかたを知らない


後悔することを選んだとしても

それでも俺たちは知らないから

壊れたものは治っても跡が残る。

だから俺たちは戻れなかった

幼い俺は

俺たちは

⏰:10/10/09 00:04 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#21 [愛華]




夕暮れの赤い道を、
母さんと歩いて帰った。

母さんは喧嘩の理由は聞かずに隣のヒロくんがどーだかこーだかとか話していた。

きっと励ましてくれてる。

わかってたから何も言わなかった

ただ黙って聞いていた

⏰:10/10/09 00:08 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#22 [愛華]
「……隆則、アイスたべよっか」

「……べつにいい」

母さんはかばんを俺に預けて
アイスを買ってきてくれた。

誰もいない公園のベンチで

母さんと並んでアイスを食べた

甘くて冷たい。

夕日の光に照らされて

テカテカとアイスが光る。

⏰:10/10/09 00:12 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#23 [愛華]
「………隆則」

ドキッとした。

怒られるのだろうか。

だとしたらなんて?

謝りにいけ、とか?


俺は母さんの言葉を待った。


「強くなったねー。母さん、
達也くんの傷見てびっくりしたよ
隆則より全然ひどいんだもん」

⏰:10/10/09 00:17 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#24 [愛華]
「………うん」

「強いことはいいことだよ。
絶対どこかで誰かの役に立つから
その時までとっておきなさい。
こんなことに使っちゃだめ。」

「……………うん」

「隆則が傷だらけになるのやだな
あんたの取り柄は顔でしょ?」

ひでぇこと言う母親だな。
でも あたたかい。

あんたは大丈夫だよ って

言ってくれてるみたいで

⏰:10/10/09 00:56 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#25 [愛華]
「自分の大切なものはね、
自分だけのものじゃないの。
もったいないでしょう?
だからね、誰かのために使うの」

アイスが夕日の暖かさで
少しずつとけてゆく。

「たまには喧嘩してもいいよ。
だって男の子だもんね。でも、
その強さは……いつか隆則に守るべき人ができた時に使いなさい」


もうアイス、しょっぱくて
食べれないな。

⏰:10/10/09 01:06 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#26 [愛華]
「泣いちゃだめだよ。その涙も
いつかにとっておくの。
そのほうが素敵でしょう?」

俺は鼻水と涙をぬぐった。
カッコ悪い。やだ、こんな自分。

「たくさんの人に会って
たくさんの人と話して……
いつか誰かのために泣きなさい」

母さんはティッシュを俺にくれた
なんで箱ティッシュなんか持ち歩いてんだよ。ばかじゃねぇの…

⏰:10/10/09 01:12 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#27 [愛華]
母さんがくれた言葉

今でも覚えているよ


強さは守りたい人のために

笑顔は幸せにしたい人のために

涙は 愛したい人のために


その全てが重なる時

自分を全部その人に懸けてもいい

そう思えた時

⏰:10/10/09 12:42 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#28 [愛華]
その人はきっとあなたにとって
1番大切な人になるよ。


その時まで


男の子は泣いちゃだめだよ。




中一の夏 友達を失った。

罪による罰を知った。

⏰:10/10/09 12:47 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#29 [愛華]
そしてその日の夜



俺の父さんと母さんは死んだ。



買い物に行った帰り道に
信号無視したワゴンに衝突。
俺と直純が病院に着いた時には
意識不明の重体。

父さんと母さんは傷だらけだった

⏰:10/10/09 12:55 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#30 [愛華]



「御家族の方はこちらへ……」

「……隆兄、隆兄なんなの?
父さんと母さんは?どこ?」

「……いいから。直純おいで」

俺は直純の手を強く握った。

病室に入るとたくさんの管に
繋がれた二人がいた。


………なんだよこれ。なんだ。

⏰:10/10/09 13:00 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#31 [愛華]
外せよこんなもん

必要ないだろうが。


少し待っていると母さんの両親、
つまりじいちゃんばあちゃんが俺達のところに来た。


「…………隆則!直純!!」


じいちゃんとばあちゃんは、
俺と直純を抱きしめてくれた。

⏰:10/10/09 13:06 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#32 [愛華]
「じいちゃん…ばあちゃん…」

「……大丈夫、大丈夫だからね」


いやだ、いやだよ。怖いよ。

父さん、母さん……

さっきまで笑ってたじゃん。
一緒にアイス食べてたじゃん

日曜日にキャッチボールするって
言ってたじゃんかよ、父さん。

⏰:10/10/09 18:20 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#33 [愛華]
頭の中に次々と浮かぶ二人の顔

いやだ、でてくるな。

だってこんなの………

二人が死んじゃうみたいじゃん

嘘だろ?なぁ?


「………先生。頼むよ。
助けてよ。二人を助けてよ」

俺はしがみついた。

⏰:10/10/09 18:23 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#34 [愛華]
「いやだ、いやだよ…………」

先生は何も言わない。
嘘でもいいから言ってくれ。

二人は助かるって 言ってくれよ


涙が溢れそうになるのをこらえる
泣くな、泣くな、泣くな、泣くな

⏰:10/10/09 18:26 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#35 [愛華]
周囲の反対に負けずに

今の土地で俺達を産んでくれた

どんな時も負けなかった二人

辛いこともあったのに

「隆則と直純がいるから今は

すっごく幸せなんだよ」

そう言って抱きしめてくれた

いつも笑顔だった母さん

⏰:10/10/09 18:38 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#36 [愛華]
悪いことをした時は

家の外で2時間正座させられた

終わって家に入った時

「次は2時間30分だぞ」

そう言ってコーヒーをくれたけど

苦くて飲めなかったんだ。

厳しくて優しくて

ちょっと馬鹿な芯の強い父さん

⏰:10/10/09 19:25 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#37 [愛華]
しあわせだった

充分すぎるしあわせだった

当たり前のことが楽しかった

父さんに怒られて

母さんに笑われて

直純になぐさめられる

そんな明日が続いていくんだ

信じていたかったんだ

⏰:10/10/09 23:25 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#38 [愛華]
「嫌だ……父さん…母さん…」

隣では直純が泣きじゃくる。

「助けて……助けてよ……」

じいちゃんとばあちゃんも泣いてる。

「助けてよ……二人を助けて…」

泣かないでくれよ。
泣きたいのは俺だって同じだ。

直純が俺の服を引っ張った。

⏰:10/10/09 23:29 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#39 [愛華]
「父さんと母さんを助けて…
お願いだよ………隆兄」



ごめんな、直純
俺にはなんもできねぇんだ。
できねぇんだよ。


母さん。今日だけは ごめん。


俺は泣いた。
歯を食いしばって泣いた。

⏰:10/10/09 23:32 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#40 [愛華]
何もできない。
俺は無力だ。無力だ。


「父さん!!起きろよ!!
なぁ!!起きてくれよ!!
母さん!!聞こえてんだろ!!
父さん!!母さん!!」

「隆兄……隆兄………」

直純が俺の服を強く握る。

「声をかけてあげて下さい!」

⏰:10/10/09 23:41 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#41 [愛華]
「真子!!智弘さん!!」

「母さん!!父さん!!」

じいちゃんもばあちゃんも
直純も俺も


きっと、きっと助かるって

信じて泣き叫んだ


父さん、母さん。
大好きだよ。嘘じゃないよ。
だから


戻ってきて

⏰:10/10/09 23:45 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#42 [愛華]







ピーーーーー………



父さんと母さんは死にました。
遠い遠い
二度と会えない場所へ

⏰:10/10/09 23:49 📱:840SH 🆔:.z2.R1DM


#43 [愛華]
>>27-42

⏰:10/10/10 00:49 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#44 [愛華]
漫画とかドラマとか

そんな中だけのものだと

信じて疑わなかった幼い俺は

幸せなんて

一瞬で消え失せるのだと

知らなかった俺は 俺は

失くなったものはもう戻らない

信じたくなかった俺は

ただ 泣いた

⏰:10/10/10 11:46 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#45 [愛華]
葬式にはたくさんの人が来た。
あまり覚えていないけれど……


俺と直純は母さんと父さんを
最後の瞬間まで見なかった。
見たくなかった。
心の中で笑っていてくれるなら
それでよかったから。



火葬の間、俺と直純はロビーで時間を潰していた。同情の目で
見られるのが凄くいやだったんだ

⏰:10/10/10 11:51 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#46 [愛華]
庭から優しい光が射していた。
庭に行ってみようという話になり
直純と二人で庭へ出た。


優しい、天国みたいなところ。
蝶が舞い、緑があふれている。





「………父さんと母さん………
どこいったのかなぁ……」

⏰:10/10/10 11:55 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#47 [愛華]
直純がぽつりと言った。

涙は枯れ果てていた。




「………天国、だよ。きっと
今ごろ笑ってる。だから心配しなくていいんだよ」

「うー……」

直純は声だけを出した


涙は、枯れ果てていた。

⏰:10/10/10 12:00 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#48 [愛華]
「父さん……母さぁん……」

「大丈夫だよ。…………大丈夫
兄ちゃんが守ってやるから」

絶対、守ってやるからな。





あの日俺は心に誓ったんだ。
直純を絶対に守る。
直純の幸せを、守り抜くって

だからもう 泣かないでくれ

⏰:10/10/10 15:31 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#49 [愛華]
直純と庭から帰ると、ロビーに
じいちゃんとばあちゃんがいた



……………ん?隣に誰か……


見たこともない顔だ。
60歳くらいの……おじいさん。



「………ばあちゃん」

⏰:10/10/10 17:06 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#50 [愛華]
「あ、隆則。直純……」

「誰、そのおじさん」

「あ、この人はね……」

おばあちゃんは言いにくそうに
言葉を濁らせた。……なんだ?


「……隆則。この人は父さんの
父さん………お前のもう一人の
じいちゃんなんだよ」



……………………じいちゃん。

⏰:10/10/10 17:09 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#51 [愛華]
父さんが憎んでいた、じいちゃん

会ったことのない、じいちゃん

この人が父さんの 父さん。


「………初めまして、隆則くん、直純くん。弘樹じいちゃんです」

「初め、ま………して」


声が出ない。
父さんに…………似てる。

⏰:10/10/10 17:18 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#52 [愛華]
「あの、先程の話ですが……」

「隆則と直純にはこちらから
話しますので……それに今日に
話さなくてもよいのでは?」

「………わかりました。」


そういうと弘樹じいちゃんは
ロビーの奥へ行ってしまった。


「………信じられないよ。
自分の息子が亡くなったっていうのに今こんな話………」

⏰:10/10/10 19:06 📱:840SH 🆔:03QSLv5k


#53 [愛華]
なに?なんのはなし?

「ばあちゃん………」

「……大丈夫だよ。隆則と直純はじいちゃんとばあちゃんがずっと一緒にいるからね」


その言葉でわかってしまった。

あのひと………俺と直純を
引き取りにきたんだ。


今まで会ったこともないのに?

⏰:10/10/11 15:33 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#54 [愛華]
………嫌だ。


「………俺、嫌だよ」

拳をぎゅっとにぎりしめて
なるべく冷静に俺は言った。
直純の手を握る方にも力が入り
直純は不安そうに俺を見た。


「隆則………」

「直純と離れることになったり
すんのも絶対にやだからな」

「…………隆兄?」

⏰:10/10/11 16:29 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#55 [愛華]
神様。なんでもいい。誰でもいい

もう大切な人を奪わないで


たとえ道を踏み外したとしても
俺には守らなければならないものがあるんだ。
守らなければならない幸せがあるんだよ。


絶対にこの手は離しちゃ駄目だ。

そう誓ったんだよ。

⏰:10/10/11 19:09 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#56 [愛華]





その三日後


俺達の運命は決まってしまった




あの時、あの瞬間、



あの手を離さなければ

⏰:10/10/11 19:12 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#57 [愛華]
「ばあちゃん!!
どういうことだよ!!」


俺は怒鳴った。


だって一緒にいるって………
言ったのに。どうしてだよ。



「………隆則。落ち着いて」


「ばあちゃん………俺達、
離れちゃうの?」

「直純も………話を聞いて?」

⏰:10/10/11 19:14 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#58 [愛華]
あれから俺達はばあちゃん達の
実家で過ごしていた。そして


直純は、弘樹じいちゃんと一緒に暮らすことになった


という話を告げられた。


どうして………直純だけなんだ?

⏰:10/10/11 19:19 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#59 [愛華]
話はこうだった。


弘樹じいちゃんは、ある会社を
持っていて父さんは跡取り候補
だった。しかし父さんは決められた婚約者から逃れて跡取りの名も捨てた。

じいちゃんは父さんを憎んだが
跡取りがいないことで目が覚め
仲直りしようとしたところで
事故が起こってしまった


じいちゃんの会社には跡取りがいない。
その跡取りとして直純を。

⏰:10/10/11 19:25 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#60 [愛華]
じいちゃんもばあちゃんも
年金だけの生活。
俺と直純を引き取ることなんて
到底無理だ。

一方、弘樹じいちゃんには直純を育てていく環境もお金もある
直純にとってはそっちの方がいい
と言ってるのだ。


じいちゃんとばあちゃんは
俺だけなら引き取れる。



つまり、俺と直純はばらばらになってしまうということ。

⏰:10/10/11 19:29 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#61 [愛華]
どうして直純を跡取りに?

どうして直純だけを?


直純を跡取りとして育てる?



直純と、ばらばらになる?




頭の中はパニックだ。

⏰:10/10/11 19:32 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#62 [愛華]
俺が何も言えないでいると、
玄関の戸が開く音がした。


「やぁやぁ、こんにちは」


弘樹じいちゃんだった。




「話は………聞いたかな?」

「嫌だ!!隆兄と離れるなんて
絶対にいやだ!!」

⏰:10/10/11 19:34 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#63 [愛華]
「直純!!落ち着け!!」

俺は直純をなだめた。

ゆっくりと深呼吸する。
胸の中をぐちゃぐちゃと掻き混ぜられたみたいだ。
気持ち悪い。


「……直純は連れていかせません絶対にだめです。」

「……でも、二人を引き取ることは無理なんだよね?
直純くんの将来のためにもそっちの方がいいと思うんだけど」

⏰:10/10/11 19:39 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#64 [愛華]
何も言ってないのに図々しく
ドカッと腰を下ろす。
気に入らない。なにもかもが。

弘樹じいちゃんは静かに言った

「直純くんの幸せを保障するよ」


直純の…………幸せを?


生活に困らない。約束された
将来もある。
直純には………そっちの方がいいのか?

⏰:10/10/11 19:43 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#65 [愛華]
「………隆兄!!」

直純に呼ばれハッとする。

「……俺は、隆兄が一緒じゃないと意味がないんだよ……」


直純の幸せを、見届けなければならない。


「………条件が、あります」

俺は背筋を伸ばし言った。


負けてたまるかよ。

⏰:10/10/11 19:50 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#66 [愛華]
この先なにがあったって

絶対に絶対に

直純の幸せだけは

絶対に

それが俺のやるべきこと。

なにもできなかった俺

友を失い両親を失い

罪による罰を知り

でももう泣かないと決めた俺の

⏰:10/10/11 22:21 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#67 [愛華]
「………俺も引き取って下さい」

「た、隆則!!」

「……君だけなら、そちらが
引き取れるんだよ?」

弘樹じいちゃんとばあちゃんは
明らかに嫌な顔をした。
じいちゃんも驚いている。

直純だけでも嫌なのに俺まで
取られることはばあちゃんには
耐えられないんだろう。

でも、ごめんな

⏰:10/10/11 22:24 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#68 [愛華]
直純が一人なのに、俺だけばあちゃん、じいちゃんと暮らすなんてことはできない。


「……じゃなかったら、直純は
そちらにはあげれません」

弘樹じいちゃんは顔を歪めた。

――――俺が来ると困ることがあるのか?


弘樹じいちゃんはばあちゃんの方を見た。

⏰:10/10/11 22:35 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#69 [愛華]
「………隆則と、同じです」

ばあちゃんは凜と言った。
その目からは涙が流れていた。
直純を離したくない俺の気持ちが痛いほどにわかったようだった
ばあちゃんも辛いはずなのに…
じいちゃんも同じようだった。


「……隆則……くんもか…」

弘樹じいちゃんは嫌そうだ。

⏰:10/10/11 22:57 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#70 [愛華]
「……なら一人で暮らします」

「えっ…………」

「生活費だけ、弘樹じいちゃんが出して下さい。直純の様子を
見に行きます。会いに行きます」

「た、隆則…………」

ばあちゃんの家は九州だ。
めったに会いに行けない。
それでは意味がないんだ。

「ひ、一人暮らしなんて……」

⏰:10/10/11 23:07 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#71 [愛華]
「……名義は弘樹じいちゃんでいいから。頼むよ…なぁ」

「………隆兄………」





俺は一人暮らしをすることに
直純は弘樹じいちゃんのもとで


たった一日で運命が決まった。

⏰:10/10/11 23:12 📱:840SH 🆔:16SkwPpw


#72 [愛華]
直純がいなくなる日。
澄んだ空気と空。
ムカつくくらい気持ちのいい日


「…………タカっ!!」

「……梓。学校どうしたお前」

「そんなことどうでもいいの!
………直純は?まだ?」

父さん母さんの葬式以来に会うのに、梓はなにも触れなかった。梓のそういうところ好きだ。

⏰:10/10/12 00:05 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#73 [愛華]
しばらくすると、中から直純と
弘樹じいちゃんが出てきた。
次いで、じいちゃん、ばあちゃん


「……あ、梓ちゃん………
お見送りにきてくれたの?」

「梓!学校どうしたんだよ」

「直純!タカと同じこと言わないでよね。 おばあちゃん、こんにちわ。」

⏰:10/10/12 00:08 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#74 [愛華]
梓は弘樹じいちゃんを見て、軽く頭を下げた。

梓には電話で事情を話してある。
電話ごしに泣いてるのがわかった



「………それじゃ、行くかね」

弘樹おじいちゃんが車を呼んだ。

夏休み前の転校。
直純は不安の表情だった。

⏰:10/10/12 00:12 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#75 [愛華]
うるさいくらいに蝉が泣き
炎天下のこの日

直純はいなくなった。


「……会いに行くからな。
電話もするし手紙も出すから」

「恋人じゃねんだから!大丈夫だよ!たまーにでいいからさ」

「直純!あたしも!あたしも
手紙出すからね!!」

「おぅ!!………梓、隆兄のこと頼むな。面倒見てやって」

⏰:10/10/12 00:28 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#76 [愛華]
………こんな時に俺の心配なんかしてんじゃねーよ、ばか。


「……直純のこと頼みます」

俺は深く弘樹じいちゃんに頭を
下げた。



俺はまだ子供で。
一人でなんか運命は変えられない
だから、頼るんだ。

⏰:10/10/12 18:58 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#77 [愛華]
「……隆兄……………
ばいばいっ!!!」


頼らなければ生きられない。
だから人は支えあう。
いつか自分も、誰かに頼られる
そんな人になれるように



「強く生きろよ!!
……そうだな、ゴキブ…」

「言わなくていい!!」

梓に頭をはたかれる。

⏰:10/10/12 19:07 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#78 [愛華]
「あはははは!!ばかだ!!」

直純は笑っていた。
最後まで笑っていた。



笑いすぎて……涙が出ていた。



車が見えなくなるまでずっと
手を振っていた。

腕が疲れても、ずっと………

⏰:10/10/12 19:14 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#79 [愛華]
「……泣かないの、タカ」

梓は涙をぬぐいながら言った。

「泣かないよ。今は泣かない。
取っておくんだ。今はまだ…」



直純。

あの日がお前と別れた最後で

次に出会うのは6年後。

あの時、自分に誓ったもの。

⏰:10/10/12 19:21 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#80 [愛華]
お前が幸せになって笑って

いつか笑って話して

でもそれはただの夢で

あの時あの手を離さなければ

そうすれば…何か変わったのか

今となってはわからないまま。

あの6年間で何があったのか

知るのは俺が19の時で

まだこの時は知る由もなくて。

⏰:10/10/12 22:28 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#81 [愛華]
なぁ直純。

俺達の別れがあって

そしてまた出会って

今考えるとさ、

あの別れは

ただの始まりにすぎなかった。

別れの始まりの物語。

⏰:10/10/12 22:31 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#82 [愛華]
>>76-81

⏰:10/10/12 22:33 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#83 [愛華]
-那佑side-

⏰:10/10/12 22:34 📱:840SH 🆔:k0dGkFW.


#84 [愛華]






「………なお、ずみ……?」

隆則は確かにそう言った。

どうして直純くんを知ってるの

どうしてそんな顔してるの。

ねぇ、どうして?

⏰:10/10/13 17:27 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#85 [愛華]
周りの音が聞こえない。

ここだけ世界が止まったみたい。



「………久しぶりだねー…隆兄」


たかにい?誰、それ。

隆則を見ながら何を言ってるの

たかにい……隆則のこと……?

⏰:10/10/13 17:29 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#86 [愛華]
「……お前、今なにして……
いや、っていうか………」

隆則の様子が明らかにおかしい
いつもの隆則じゃない。
顔色が真っ青だ。

「……俺、ジジイんとこから
金だけ持って逃げてきたんだ」

「………え、弘樹じいちゃ…」

「入学手続きだけさせてね。
200万かっぱらってきた」

200万?じいさん?
どういうこと?話がわかんない

⏰:10/10/13 17:36 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#87 [愛華]
「……隆則、直純くんも………
どういうこと?」

直純くんはバカバカしいと言わんばかりに振り向いた。


「……騙しててごめんね。
俺は元、赤石直純。今はジジイんとこの苗字で品野直純。

………赤石隆則の実の弟だよ」


全てが、繋がった。

⏰:10/10/13 17:41 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#88 [愛華]
隆則のことを話した時の違和感
びっくりするほど隆則に似ていて
両親がいなくておじいさんと…



「……なんでここにいるんだ?
何しにここにきた……?」

「あんたに復讐するためだよ」

直純くんは冷たく言い放った。

周りの雰囲気に呑まれない
二人だけの世界。
氷のように冷たい………

⏰:10/10/13 17:45 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#89 [愛華]
「……わかるよね、あんたの罪。俺はそれを償わせるために
ここに来たんだ。……………
あんたの大切なもの、奪うためにね。それがあんたへの罰だ」

「………那佑になにする気だ、
てめぇ………」

「さぁね。まぁ焦んないでよ。
時間はたーっぷりあるんだし。
それはおのずとわかるでしょ」

直純は楽しそうに笑った。

罪?罰?わけがわからない。
なんなの?意味わかんないよ

⏰:10/10/13 17:50 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#90 [愛華]
「直純くん!!どういうこと…」

「あ、やべ時間だ。んじゃ行くわ事情はそこにいる彼氏に聞くといいよ。んじゃね〜」

直純くんは走っていった。

なんだったの?
直純くんは隆則の弟で……
直純くんは隆則に復讐?
わかんない。わかんない。

⏰:10/10/13 17:54 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#91 [愛華]
「……隆則、大丈夫?」

「……え、あ、大丈夫。
わり、俺ちょい帰るわ」

「え、ちょっと待って……」

だって、顔真っ青だよ。

あたしだってわけわかんないのに

「………ばいばい」

隆則は哀しそうに笑った。

⏰:10/10/13 17:57 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#92 [愛華]
「………隆則、待ってて!!
あたしも一緒に帰るから!」

今、隆則を放っておいちゃダメ。直感でそう思った。


あたしは制服を持ってくると
言い、学校内へ戻った。

帰ってくると隆則はいなかった。



………どこへ行ったの?

⏰:10/10/13 18:01 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#93 [愛華]
あんな顔して。
なにがあったの?
直純くんとの間になにが……

頭の中はぐちゃぐちゃだ。

でも今は……隆則を探さなきゃ。



あたしは学校を飛び出した。

⏰:10/10/13 18:03 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#94 [愛華]
なにがあったのか、聞かなきゃ。
あたしはもう他人事じゃない。



どこを探しても隆則はいない。
家にも行ってみたが、いない。



……どこ、どこにいるの?

隆則。

あたし、わからないけれど…

あなたが傷つくのは嫌なの。

⏰:10/10/13 18:06 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#95 [愛華]
さんざん探しまわって、
家に帰っているかもしれないと
隆則の家に行こうとすると……

「…………隆則っ!」

隆則は家のすぐ近くの公園にいた

「……え、那佑なんで……」

「待っててって言ったじゃん!」

「うそ、言ってたっけ?」

「……………ばか」

⏰:10/10/13 21:05 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#96 [愛華]
………よかった。

聞きたいことはたくさんある。

でも今は聞かないほうがいい

そんな気がしたんだ。


「………座れば?」

「あ、うん………」

あたしは静かに隆則の座っているベンチに座った。
寒かったので隆則にくっついた。

⏰:10/10/13 21:12 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#97 [愛華]
「……その格好で来たの?」

自分の格好はメイド服。
しかも上着も着ていないため
かなり寒い。だってしょうがないじゃんか。急いでたんだから…


「寒いんだから上着とけよ」

隆則は自分の上着をあたしに着せてくれた。隆則のにおい。

「………ありがとう」

思わずにやけてしまった。

⏰:10/10/13 21:16 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#98 [愛華]
隆則はそれを見たのかふっと笑って、下に俯いた。


「………な、那佑」

「ん?なに?」

「ぎゅーってしてい?」

「………え」

返事をする前に手を引っ張られ
抱きしめられた。

「ちょ、返事してな………」

「キスしてい?」

⏰:10/10/13 21:20 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#99 [愛華]
隆則の抱きしめている手が
震えているような気がした。

「………隆則……」

「………だめ?」

だめなわけないじゃん。
目の前で泣きそうな顔してる
愛しくて、守りたいって

思った。


「いいよ………」

静かに優しく唇が重なった。
優しくて哀しいにおいのキス。

⏰:10/10/13 21:30 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#100 [愛華]
隆則の抱きしめている手が
震えているような気がした。

「………隆則……」

「………だめ?」

だめなわけないじゃん。
目の前で泣きそうな顔してる
愛しくて、守りたいって

思った。


「いいよ………」

静かに優しく唇が重なった。
哀しさが伝わってきた気がした。

⏰:10/10/13 21:31 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#101 [愛華]
重なってしまいました
すいません

⏰:10/10/13 21:38 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#102 [愛華]
どのくらい時間が過ぎたか

あたりが暗くなりはじめた頃




「………全部、話すよ」

「…………え?」

「直純とのこと全部、話す。
俺もわかんないことあるけど…
那佑には、話しておくな」

それは隆則と直純くんの物語。

隆則の、暗い暗い闇の一部だった

⏰:10/10/13 21:42 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#103 [愛華]
今さらですがすみません


>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600

⏰:10/10/13 22:57 📱:840SH 🆔:RgtP/6kU


#104 [愛華]





隆則の家。

なんとなく二人とも黙って……

それからゆっくり話しはじめた

二人の過去。

あたしの知らない隆則の一部

⏰:10/10/15 20:56 📱:840SH 🆔:SNq82mXg


#105 [愛華]
隆則の両親の死

直純くんとの別れ

きっと苦しかったよね。

あたしがもしそこにいたのなら

なんて言えるほど

あたしは強くないけれど。



隆則、きっと辛かったよね。

⏰:10/10/15 23:06 📱:840SH 🆔:SNq82mXg


#106 [愛華]




「……それから直純くんとは?」

「会ってないんだ。その時が
最後だった。電話して話したり手紙出したりはしたけど、会おうとすると必ずといっていいほど弘樹じいさんに止められて。
そのうち会えるか、と思ってたらいつのまにか音信不通。
家に行っても誰もいない。
電話も通じない。……離れてから一ヶ月くらいだったかな…」

⏰:10/10/15 23:10 📱:840SH 🆔:SNq82mXg


#107 [愛華]
そんなに早く………?

隆則は遠いところを見つめていた。 どこを見つめてるの?

……きっと、過去の自分の姿。


「……そのうち手紙が届いた。
直純からだったんだけど……
住所書いてなくってさ。」

「それはいつ頃?」

「音信不通になってから2年くらい経ってたと思うけど……」

⏰:10/10/15 23:22 📱:840SH 🆔:SNq82mXg


#108 [愛華]
「『俺は幸せです。なので心配しないでください。住所は事情により教えられないから手紙はいらないです』みたいな手紙」

なに…………それ。


「……意味わかんなくてさぁ。
色々探したけど結局会えなくて。

……そのまんま時間たっちゃって昨日6年ぶりに会ったんだけど……」

⏰:10/10/17 15:32 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#109 [愛華]
間違えました

×昨日
○今日

⏰:10/10/17 15:33 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#110 [愛華]
「俺はその6年間、罪悪感で
いっぱいだった。会いに行くって言ったのに………って」

隆則は震えていた。
小さな子供みたいに………

「あの6年間は俺の『罪』なんだ約束を破った俺の……」

「……隆則は悪くないよ。
どうしようもないことだって
いっぱいいっぱいあるんだよ」

なんて言えばいいのかわからない
それが罪だというのなら
私はきっと、私のお父さんとお母さんを許してなんかいないよ

⏰:10/10/17 15:40 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#111 [愛華]
直純くんは言っていた。

罪を償わせる。

それは6年間放っておかれた

その復讐だっていうの??

隆則はなんにも悪くないのに。


わからないことがありすぎて
頭がついていかないよ。

隆則。隆則………

なんにもいえなくてごめんね。

⏰:10/10/17 15:44 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#112 [愛華]
「……明日、直純くんに会う。」

「………え?あ、……そうだな」

「会って聞く。6年間の間に
何があったのか。
隆則の………罪ってなんなのか」


私がするべきことじゃない。

でも見て見ぬふりなんて無理。

だから真実が知りたいんだ。

⏰:10/10/17 15:47 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#113 [愛華]
「………でも……」

「直純くんは…あたしの友達。
最初は嫌いだったんだけどね、
今は同じ傷を持った友達なの。

同情なんかじゃなくって。

わかりあえる友達でもあるの」

だから聞かなくちゃ。
直純くん。あなたの傷の原因。
隆則も直純くんも………
両方が傷つかなくちゃいけないなんて間違ってるよ。

⏰:10/10/17 15:51 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#114 [愛華]
「………わかっ………た」

隆則は俯いた。

あたしは隆則をぎゅうっと
抱きしめた。

大丈夫なんだよ。
あなたは間違ってなんかないよ

そう伝えたくって

ただ、ぎゅうっと抱きしめた。

⏰:10/10/17 15:53 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#115 [愛華]
隆則。どうしてこの手を

離さなくちゃならなかったのか

わからなかったよ。あの時は。

ただ好きで

でも、それだけじゃだめだった。


もう一つの別れは

すぐそこに迫っていたんだ。

⏰:10/10/17 15:58 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#116 [愛華]





次の日。送別祭二日目。


あたしはいつもより早く学校へ行った。じっとしてられなかった。


「あれ、那佑はやくない?
もう着替えてるしー」

急に話し掛けられたので
びっくりして振り向くと、
そこには梓がいた。

⏰:10/10/17 23:29 📱:840SH 🆔:B1fA5OV.


#117 [愛華]
「あ、おはよう梓。昨日は
ちょっとね……」

「てゆーか!!昨日勝手に帰っちゃったでしょ??大変だったんだよー。休憩から帰ってきた直純くんもなんか様子変だし…」


ドキッとした。


「………梓」

「ん?なに?」

⏰:10/10/18 10:08 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#118 [愛華]
「……直純くんってさ……
隆則の弟だって……知ってた?」

「………え?」

梓はありえない、という顔をした
どうやら梓と直純くんは、小さい頃面識があるらしい。

当たり前といえば当たり前か…


「だって……直純は今………
ずっと会えなくて………」

「………梓。話、きいて」

⏰:10/10/18 11:01 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#119 [愛華]
あたしは梓に全て話した。

昨日、隆則から聞いたこと全部。


梓は泣きそうになりながら聞いていてくれた。



「…………そっか。やっぱり
直純だったんだ…。6年間って
長い時間なんだなぁ………
あたし、全然気づけなかったよ」

⏰:10/10/18 11:04 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#120 [愛華]
周りはガヤガヤと準備を始めている。あたしと梓は教室の隅で邪魔にならないよう話していた。


「……直純がいなくなってから
隆則は本当に落ち込んでた。
音信不通になってからケンカをするようになったんだよね」

「え…っ隆則がケンカするようになったのって…直純くんが原因だったの?」

「本当の原因はね。表向きは隆則のお父さんお母さんの死が原因ってことになってるけど」

⏰:10/10/18 20:45 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#121 [愛華]
「え?表向き?意味わかんない」

「つまり、そういうこと」

あたしはさっぱりわからなかった

「…タカはなかったことにしたの
直純への罪悪感にずーっと苦しんだ末、直純を探すことを諦めて罪悪感から逃れた。
………タカが罪悪感感じることなんて……なんにもないのにね」

⏰:10/10/18 20:52 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#122 [愛華]
梓は話し続けた。

「タカは……直純のことを次第に忘れようとしていった。
無意識のうちにね。疲れちゃったんだと思う。
だから、あたしもそうした。
直純のことは口に出さないで、
タカのケンカを止めることに全力をつくして…アメリカへ発った」

梓はふぅとため息をつくと
ゆっくりと立ち上がった。

「……あの6年間の間に直純に何があったのか、どうして自分のことを直純が隠したのか、
あたしは何ひとつわからない。」

⏰:10/10/18 20:58 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#123 [愛華]
「……でも、聞かなくちゃいけないね。


あたし、このまま終わるなんてどうしても思えないんだよね」

梓。あたしもそう思うの。



津波がやってくるような。

嵐の前の 静けさのような。

そんな気がするんだ。

⏰:10/10/18 21:06 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#124 [愛華]
誰か読んでくれてますかね??

⏰:10/10/18 21:07 📱:840SH 🆔:psFE4SWM


#125 [姫◆Hime.pJbJ.]
読んでますよヾ(^▽^)ノ
頑張って下さい!!

⏰:10/10/18 22:31 📱:SH004 🆔:wqxNu81M


#126 [理沙]
結末が気になりながら、ずっと読んでます
これからも楽しみにしてますので頑張って下さい

⏰:10/10/19 19:52 📱:N01B 🆔:VXFuq90E


#127 [愛華]
>>125

ありがとうございます
頑張って更新しますので
応援よろしくお願いします

>>126 理沙様
ありがとうございます!
頑張って書き上げますので
よろしくお願いします


少し更新します!

⏰:10/10/19 22:05 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#128 [我輩は匿名である]
間にコメント入って、読みづらいです。
コメントは感想板に書いてください。
主さんもコメントは感想板に書くように誘導してください。

⏰:10/10/19 22:08 📱:T001 🆔:2B532/bM


#129 [愛華]
あたしと梓は、隣の空き教室で
ケーキやお茶の準備をした。

昨日はかなりの客が来たので
今日は少しは落ち着くと予想し
量は少ない。

ケーキを切っている時も
コーヒーを入れている時も

頭の中は直純くんと隆則で
いっぱいだった。


隆則………今、なにしてるかな

⏰:10/10/19 22:12 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#130 [愛華]
>>128


すいませんでした
私のミスですA
これから気をつけますね


感想は感想板にもらえると
嬉しいです

⏰:10/10/19 22:17 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#131 [愛華]
ガラガラッ


「…………っ」

「な、直純くん……!!」

一瞬だった。
隆則のことを考えている時に
直純くんが入ってきたから……

心臓が……止まりそうになった。


「……あ、おはよ白石。
……あれ?あ、教室間違えたね。
わりぃ。着替えてくるな」

⏰:10/10/19 22:20 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#132 [愛華]
「え、あ………」

声が出ない。
どうしてそんなに普通通りなの?

「…おはよ。し、な、の、くん」

何も言えないでいると、梓が冷たい声でいった。
あたしはびっくりして思わず振り向いてしまった。


「………久しぶり、だね。梓」

⏰:10/10/19 22:24 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#133 [愛華]
「…うん。最初は気づかなかった
あんた、男前になったねぇ。
タカにそっくりになってきた」

「そりゃどーも。褒め言葉としては受け取れないけどな」

二人の間に緊迫した空気が流れる
ピリピリする。息苦しい。


「…この6年、あんた何してた?どこにいた?」

「おーいきなり来るねぇ」

⏰:10/10/19 22:28 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#134 [愛華]
直純くんが苦笑いながら、
その場にあった椅子に座った。

「……ジジイんとこにいたよ。
別に何をしてたわけじゃない。
俺の6年間はあのジジイのもんだったからな。自由なんかなかったし…あんま覚えてないし」

直純くんは何でもないことのように言った。

「……意味わかんないんだけど。
あたしとタカは散々あんたを探したよ。タカはあんたのせいでケンカに狂っていったよ!」

⏰:10/10/19 22:33 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#135 [愛華]
ビリビリと空気が震えた。
梓……今何を考えてる?
わからない……怖い。


「……隆兄がどうなったかなんて知ったことじゃない。
でも、梓。そんな隆兄に対して…


お前はなんかできたのかよ?」

「………………!!」

⏰:10/10/19 22:37 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#136 [愛華]
「俺はよくわかんないけど。

……何もできなかっただろ?

隆兄を変えたのは隣にいるその女
お前じゃねぇ」

直純くんの目は恐ろしいほどに
冷たくて………
血が通っていないみたいだった

「……タカに復讐?何が目的?」

「しゃべりすぎたなぁ。続きは
放課後でもいっすかね??
俺、着替えてこなくちゃさ」

⏰:10/10/19 22:42 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#137 [愛華]
直純くんはのびーっと欠伸をして、教室から出ていった。

梓はぐっと何かをこらえているように唇を噛んだ。


………わからない。
自分の周りで色々なことが起こりすぎて、何がどうなっているのか全くわからない。


でも…………
隆則も、直純くんも、梓も。

この6年の間に傷を負っていた

あたしは…知らなくちゃいけない

⏰:10/10/19 22:49 📱:840SH 🆔:5VCYhr0Q


#138 [愛華]
「…………あ、やばっ!!
ほら、はやく行かなきゃ!」

梓は思い出したように言い、
コーヒーやらケーキやらがのったお盆を自分の手に持った。

「…………梓、あの…」

「だーいじょうぶ。平気だよ。
放課後に話そう。全部さ。


………一気に色々ありすぎて、
今、ちょいビビってる…ごめん」

⏰:10/10/21 20:36 📱:840SH 🆔:GoKWztnc


#139 [愛華]
…………梓。
梓の中の直純くんは
6年前で止まっていたんだね。
きっと自慢の幼なじみだったはず
優しくて、ちょっと生意気で…
目に見えてくるみたいだよ。


今の直純くんは
6年という時を経て変わった。


冷たくて氷のような目で

とても悲しそうに笑う。

⏰:10/10/21 20:42 📱:840SH 🆔:GoKWztnc


#140 [愛華]
さっき梓は6年ぶりに『直純』くんに会った。

何を思ったんだろうか。

どうして変わってしまったんだ
こんなやつもう知らない
あんなに仲がよかったのに
一体なにがそうさせたんだ


昔の直純くんを知らないあたしには何も言えないけれど

でもね、梓。

あたし、直純くんを悪くは思えないんだ。絶対に。

⏰:10/10/21 20:49 📱:840SH 🆔:GoKWztnc


#141 [愛華]
直純くんのせいで隆則がケンカに狂ってしまった
隆則は苦しみ続けた


それでも、あたしは直純くんを
悪くなんて思えない。

同じ傷を持っていることに
気づいてしまったから


直純くんは愛を忘れてしまった
6年もの時の間に


真実を知らなければ
事実としては語れない。

⏰:10/10/21 20:53 📱:840SH 🆔:GoKWztnc


#142 [愛華]
直純くんは変わってしまった
その事実の向こうの真実

それを知らなければ


責めることも罵ることも
あたしにはできないんだ。



あたしは名前のわからない感情が溢れてくるのを感じた。

………大丈夫。あたしは、大丈夫

⏰:10/10/21 20:58 📱:840SH 🆔:GoKWztnc


#143 [愛華]




教室ではガヤガヤと準備が進み
いつのまにか3年生が来ていた。
知らないうちに祭二日目、開始。

こんなテキトーでいいのか…

なんていうのは生徒も先生も
突っ込まない。

⏰:10/10/23 20:07 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#144 [愛華]
あたしもすぐにメイド服に
着替え、接客に向かった。

「いらっしゃいませ〜」

「おー君かわいいねー名前は?」

「なゆりんです♪」

「なゆりんよろしくね!」

今はこんなことやってる場合じゃないのになぁ……

なんて思いながら必死に作り笑いを浮かべる。

⏰:10/10/23 20:14 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#145 [愛華]




ドクンッ





「…………!?」

あたしは胸をおさえた。



なに、いまの…………

⏰:10/10/23 20:16 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#146 [愛華]
あまりにも突然すぎて
忘れていたあの痛み。



薬は飲んだのに……

最近は忘れられていたのに…


深呼吸すると大分落ち着いた。

…………大丈夫。
頑張りすぎちゃっただけ。
少し休めば大丈夫だよ、こんなの

⏰:10/10/23 20:20 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#147 [愛華]
「………なゆりん大丈夫?」

「あ、大丈夫ですよー!!
コーヒーゼリーでしたね!
待っててくださぁい」

あたしはパタパタと隣の教室に
ゼリーを取りにいった。



ズルズルと座りこむ。


………カウントダウンは、近づいているんだ。
まだ7年ある?
あと7年しかないんだよ。

⏰:10/10/23 20:26 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#148 [愛華]
考えることはいっぱいある。

あたしのことなんか後でいい

なんていい子ぶった事言えないよ


直純くん

隆則


あたしだっていっぱいいっぱい。

自分を守るのに必死なんだよ。

⏰:10/10/23 20:31 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#149 [愛華]





ガラッ


「………なにやってんの?」

「な…お……ずみくん?」


二回目だ。
苦しくなった時に
直純くんが来てくれる。

そしてあの時みたいに

優しい目で笑うんだね。

⏰:10/10/23 20:57 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#150 [愛華]
あの時も直純くんは
あたしの背中をさすって

大丈夫だよ、って言ってくれた

あぁ………隆則に似てる。

そう思ったんだ。あの日に。



それは直純くんにとって
嫌なことでしかないのかな。


消したいものでしかないのかな

⏰:10/10/23 21:15 📱:840SH 🆔:5AJhK.Ao


#151 [愛華]
「……具合わるいの?」

直純くんは扉を静かに閉めて
小さい声で聞いた。

「平気。大丈夫だよもう。
…………どうしたの?」

「あ、なんかコーヒーゼリー足りないらしくて。俺と白石で買いに行ってきてって言われた」

「ん。いいよ、いこう」

あたしは隆則の件については
触れなかった。
今はいつも通りがいい。
そんな気がした。

⏰:10/10/24 01:05 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#152 [愛華]
外は少し肌寒かった。

街は卒業シーズン真っ只中。
桜の木はまだハゲのまま。

今年はいつ頃咲くだろうか。

雪が溶けたことでゴミがあっちこっちに出てきている。
大方、冬の間に子供たちが
雪にゴミを埋めたんだろう。

そんな道を直純くんと歩く。

男の人と二人で街を歩くのは……
直純くんが二人目だ。

⏰:10/10/24 01:13 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#153 [愛華]
「………まだちょい寒いね」

「そうか?教室が暑かったから
俺は涼しいくらいだけど」

「直純くん大人気だもんね」

直純くんのホストは、クラスでダントツ一位の人気だった。

「それ言ったら白石じゃん。
なゆりん………だっけ?」

「やーめーてー!!」

「あははは!!」

普通に笑いあって……
でも瞳は冷たい色のままで。

⏰:10/10/24 11:12 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#154 [愛華]
スーパーに着いて、あたしは
デザートコーナーに向かう。
直純くんは他のお菓子に夢中で鼻歌なんかを歌っている。

ほんとにいつもどおりだなぁ…

あたしはコーヒーゼリーを
あるだけポイポイとかごに放り込んでいく。

しかし、3個で100円のコーヒーゼリーを1個200円で売るって………ぼったくりすぎじゃないか…?

なんていうのも見ないフリ。

⏰:10/10/24 19:29 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#155 [愛華]
「しーらーいし!!」

「あ、なに?」

「これ買って♪」

直純くんの手にはチョコやらジュースやら……
まぁ、少しならいいかな。
ぼったくってるし。

「うん。お金払ってくるね」

あたしはレジに向かった。

⏰:10/10/24 19:34 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#156 [愛華]
外に出ると、さっきより少し天気が悪くなっていた。

……気分が優れないな……


「白石、歩くの遅くね?」

「……ごめん……」

「や、別にいんだけど……」

……まずいな。
ついさっきまで平気だったのに。
休んで治ったのに………

⏰:10/10/24 19:39 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#157 [愛華]
歩くにつれ気分が更に悪くなる。

「………ん……」

「白石?顔色……」



ドクンッ


「………あっ……」

力が入らなくなり、
あたしはガクンと膝をついた。

⏰:10/10/24 19:42 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#158 [愛華]
「………白石!?」


直純君が、駆け寄ってきた。
あたしをゆっくりと立たせると
ヒョイッとおぶった。

……こんな急にくるなんて……
昨日から色々あったからなぁ…
ってゆーか……

「……おんぶ……恥ずかしい」

「うるせ。すぐそこに公園あるからそこで休もう。
っつーか軽すぎ。ちゃんと食べてんのかよ?」

⏰:10/10/24 19:46 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#159 [愛華]
「……うん」


なんで優しいの。
あなたも傷ついてるんでしょう
あなたの優しさは
隆則にそっくりなんだよ。

そう言ったら、

あなたは怒るでしょう。


「………白石……泣いてんの?」

「………泣いっっ……でない」

⏰:10/10/24 19:50 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#160 [愛華]
知らないうちに涙が流れた。


………いつもどおりなんて…
やっぱりあたしには無理だ。
直純くんは……隆則の弟。
直純くんは……隆則を恨んでいる
どうやっていつもどおりに
接すれるというの?



直純くんはあたしをベンチに寝かせてひざ枕してくれた。

⏰:10/10/24 19:55 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#161 [愛華]
「……大丈夫?ジュースのむ?」

「ありがとう……大丈夫」

横になると落ち着いてきた。
この二日で頑張りすぎたのかな?


「……さっき何で泣いたの?」

直純くんは心配そうに聞いてきた

「………わかんないよ」

⏰:10/10/24 19:58 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#162 [愛華]
それが正直な気持ちだった。
自分でも知らないうちに泣いてたんだから……わかんない。


「………そっか」


それっきり直純くんは黙った。


すぐ近くに直純くんの顔がある。
なんか不思議な気持ちだ。

風は冷たいのに……あたたかい

⏰:10/10/24 20:00 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#163 [愛華]
「……あのさ、聞いていい?」

直純くんが消えるような声で
言った。小さな小さな声。


「……なんで白石は……
隆兄のことなんにも聞かないの?
梓は問い詰めたのに…なんで?」

「……わかんない。
いつもどおりにしたかったけど無理だよね、そんなの……」

⏰:10/10/24 20:09 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#164 [愛華]
「………白石」

「あたし、隆則が大事だよ。
1番すきで、1番大切。

でも直純くんもほっとけない。
直純くんは…あたしと同じだから
直純くんも気づいてるでしょ?」

「……うん」

「でも同情じゃないよ。
あたしは……今のままじゃ
直純くんを責めることも助けることもできないよ。
傷ついてるのわかってるのに」

⏰:10/10/24 23:06 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#165 [愛華]
「………」

直純くんは黙ったまま
あたしの目を見つめる。

あたしは起き上がって続けた。

「……だから、教えてほしい」

6年間の間に何があったのか。
その、真実を。


直純くんはゆっくりと
ふーっと息をはいた。

⏰:10/10/24 23:12 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#166 [愛華]
直純くんは遠くを見つめた。
隆則のあの時の目。
……過去の自分を見つめる目。






「……俺、虐待されてたんだ」



「…………え?」

そこに隠された真実に
つながれていく未来。
誰が予想できただろうか。

⏰:10/10/24 23:21 📱:840SH 🆔:bSBAkyn2


#167 [愛華]










………声が聞こえる。

いつもと同じ怒鳴り声。

外から閉ざされたこの世界で

俺は………光を失った。

⏰:10/10/25 18:22 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#168 [愛華]
「直純!!勉強しろ!!」

経営学を徹底的に学ばされる。
意味もわからないもの。

じいさんにとって俺は……
跡取りのための道具。ここへ来て二ヶ月でそれがわかった。


隆兄とも会わせてもらえず
学校も行けなくなり

地名も知らない場所へ引っ越した

⏰:10/10/25 18:26 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#169 [愛華]
やがて手紙も出せなくなり
電話番号も変えられて……

今に至る。


「……じいちゃん。外に出たい」

「口答えすんな、クソガキ。
これ終わってからにしろ」


外には高い塀。
越えられそうもない……

⏰:10/10/25 18:28 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#170 [愛華]
やっと今わかったよ。
じいちゃんが隆兄を引き取りたくなかったわけ。


俺を扱うのに……隆兄は邪魔だったんだね。
俺はいままで隆兄に頼ってばかりで………
隆兄がいないと反抗もできない。

そういう俺のほうがじいちゃんは扱いやすかったんだ。

⏰:10/10/25 18:32 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#171 [愛華]
手にはアザがいっぱい。

痛いという感覚も忘れた。
毎日のようにふるわれる暴力。

今では体じゅうにできた。



空気の味もわからない。

逃げたい。
逃げられない。


地獄のような……現実。

⏰:10/10/25 18:35 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#172 [愛華]
隆兄は今なにしてるかな

梓は今どうしているのかな

ばあちゃんは元気かな

じいちゃんご飯食べてるかな




………俺のこと、覚えてるかな



何度涙を流しただろうか。
きっと、明日も流すだろう

⏰:10/10/25 18:39 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#173 [愛華]
時間の感覚が失くなっていった。

やがて何にも考えられなくなった



心の病だった。



医者にストレスをためないように


そう言われたじいちゃんは
鼻で笑ってこう言った。

⏰:10/10/25 18:44 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#174 [愛華]
「……家では普通ですよ。
学校で嫌なことでもあるのか?」

後ろで背中をつねられていた。

"お前は黙っていろ"

そう言っているようだった。

涙もでなかったよ。

学校で嫌なこと?
その学校に行ってねんだから
なんも言えるわけねぇよ。

⏰:10/10/25 18:49 📱:840SH 🆔:4aP1MYX6


#175 [愛華]
抵抗する気力も失せた。


………俺、なんでここにいんの

隆兄に会いたいよ。

帰りたいよ。

あの場所に………帰りたいよ。

でも体は疲れ果てていて

行動を起こすことを拒否する。

動きたいのに……動けない。

⏰:10/10/26 00:27 📱:840SH 🆔:86MAIarE


#176 [愛華]
そんな俺にも容赦ないじいちゃん

いつからか俺は

じいちゃんの『ストレス発散のための道具』にもなっていた。

人として……見られていなかった

頬を打たれ、足を蹴られ……

水をかぶせられたこともあった。

⏰:10/10/26 00:31 📱:840SH 🆔:86MAIarE


#177 [愛華]
何度も泣いた。
逃げ出そうと思う度に
体の傷が痛んで動けない。

失敗した時のことを考えると…
怖くて眠れなかった。

助けて………

助けて…………


隆兄………助けてよ………


心の中で何度も叫んだ。

⏰:10/10/26 00:34 📱:840SH 🆔:86MAIarE


#178 [愛華]
きっと隆兄は見つけてくれる。

助けにきてくれる。

今ごろ……隆兄も俺と同じように苦しんでるだろう。

死に物狂いで俺を探してくれてる


だから隆兄。


はやく、助けにきて………。

俺が俺でなくなってしまう前に。

⏰:10/10/26 00:36 📱:840SH 🆔:86MAIarE


#179 [ゆず]
凄く読みやすくて
感動して泣きそうです
楽しみにしてます

⏰:10/10/26 17:36 📱:P03A 🆔:o.7odbl2


#180 [愛華]
>>179 ゆず様

ありがとうございます!
めちゃ嬉しいです〜(泣)

感想板のほうにもぜひ来てみてくださいね!!

⏰:10/10/26 18:16 📱:840SH 🆔:86MAIarE


#181 [愛華]
自分の存在意味がわからない。

隆兄。今なにしていますか。

俺のことを想ってくれてますか


俺は苦しいです。つらいです。

泣くことにも疲れてしまい

笑うことを忘れてしまった。



隆兄。


今なにしていますか。

⏰:10/10/26 21:41 📱:840SH 🆔:86MAIarE


#182 [愛華]
やがて時はすぎ
俺は学校に行かせてもらえることになった。今さらだからべつにどうでもよかったけど。

逃げようとか
助けを求めようとか

そんなことは最初のうちは
毎日のように考えてたけど

今は違った。

期待を裏切られることに疲れた。

⏰:10/10/27 23:41 📱:840SH 🆔:fuxM5Z9w


#183 [愛華]
どうせ逃げたって連れ戻されて
またいつもの毎日に逆戻り。
むしろ、それよりひどくなるかもしれない。

現状を打破するなんて無理だ。

昔テレビで虐待のドラマを見て
「どうしてこいつらは助けを求めないんだろう」
とか思ってたけど
その時になってやっとわかった。

⏰:10/10/27 23:44 📱:840SH 🆔:fuxM5Z9w


#184 [愛華]
何度も何度も自分を傷つけた。

手首には傷が刻まれていった。

その傷がじいさんに見つかると
「死にたきゃ勝手に死ね」って
言われた。死にたくて傷つけてるわけじゃなかったけど。

なんとなく生きてる証が欲しくて


ただ、それだけで。

⏰:10/10/27 23:47 📱:840SH 🆔:fuxM5Z9w


#185 [愛華]
学校のやつらにも必要以上に絡まなかった。制服の学ランは
傷が隠れて丁度よかった。
体育はどんなに暑くても脱がなかった。


クラスのやつらは俺を不気味がり離れていった。
イジメも多少あったけど
手応えがないとわかったら
みんな諦めていく。

それでいい。


俺に触らないでくれ。

⏰:10/10/27 23:51 📱:840SH 🆔:fuxM5Z9w


#186 [愛華]
学校から帰ると夜中まで勉強。

思い通りにいかないとじいさんの暴力。それが俺の毎日。



俺の心のよりどころは
『隆兄がいつか助けに来る』
その思いのみ。


いつかきっと来てくれる。
隆兄なら迎えにきてくれる。

俺はそれだけを生きる理由に
その願いに依存していった。

⏰:10/10/27 23:55 📱:840SH 🆔:fuxM5Z9w


#187 [愛華]
願うことで正常が保てる。
願わなければ生きていけない。

毎日がギリギリで
その思いが俺を支え続けた。


いつのまにか

きっと隆兄も今ごろ苦しんでる

そんな根拠のない思いもでてきた


俺もこんなに苦しんでるんだから
きっと隆兄も苦しんでるだろう

⏰:10/10/27 23:58 📱:840SH 🆔:fuxM5Z9w


#188 [愛華]
俺のいない毎日で
隆兄が笑っている姿はどうしても想像できなかったから。

だからそうなんだと信じた。
隆兄も俺と同じなんだって。


隆兄はきっと来てくれる。


俺は助けを誰にも求めることのないまま、隆兄への思いだけを支えに生き続けて……



やがて15歳になった。

⏰:10/10/28 00:02 📱:840SH 🆔:vHAzzD1g


#189 [愛華]
15歳になった春。
灰色の毎日を過ごしていた俺。


じいさんとも少しずつ距離ができていた。中三になった俺にはもう力では敵わないと知ったのか、暴力は減っていった。

でも俺は勉強をやめようとは決して思わなかった。
いつかじいさんの跡をつぐ。
そのために俺はここに来た。
今までそのために苦しんだ。

⏰:10/10/28 16:06 📱:840SH 🆔:vHAzzD1g


#190 [愛華]
跡をつぐこと自体にはさして興味はなかったけれども。

ただ、今まで苦しんだ日々の意味が欲しかった。

じいさんの跡をついで
今の日々から抜け出す。


そして………隆兄に会いたい。

俺は強くなったんだよって
隆兄がいなくても頑張れたよって

隆兄を助けに行きたい。
隆兄も……苦しんでるだろう?

⏰:10/10/28 16:17 📱:840SH 🆔:vHAzzD1g


#191 [愛華]
隆兄………梓………会いたいよ…





「……お前に跡は継がせない。
さっさとでていけよ」


「………………え?」


桜が舞う日の夜。
じいさんに言われた。

⏰:10/10/28 17:21 📱:840SH 🆔:vHAzzD1g


#192 [愛華]
なに?
なに言ってんだ?



「うちの会社に有望なやつは
山ほどいる。血縁のあるやつに継がせるつもりだったが……
後継ぎが見つかった今、お前は
もう必要ない」


必要………ない?

じゃあ……今まで苦しんだのは?

⏰:10/10/30 23:47 📱:840SH 🆔:3w71hiWg


#193 [愛華]
あんなに泣き叫んだ日々は?
体に痣をつけられ続けた日々は?
自分で自分を傷つけた日々は?



全部……………意味ないじゃんか



「…………ざけんなよ」

⏰:10/10/30 23:52 📱:840SH 🆔:3w71hiWg


#194 [愛華]
「あ?なんか言ったか……」

「ふざけんなっつったんだよ!」

初めてじいさんに怒鳴った。
じいさんは面くらった顔だ。
反抗されるとは思ってなかったらしい。いつまでも従ったままだとか思ってんじゃねぇよ。


「今さらなんだよ?あ?
じゃなんのために今まであんな
クソみてぇな勉強ばっかしなきゃなんなかったんだよ?」

⏰:10/10/30 23:57 📱:840SH 🆔:3w71hiWg


#195 [愛華]
「な、直……」

「後継ぎがいるんなら最初から連れてこいってんだよ………

なめてんじゃねぇ!!!
クソじじいが!!」

ガッッ!!

俺は机を思い切りけりあげた。
じいさんは心底驚いた……
そして、怯えた顔をしていた。


俺は………なんのために
今まで生きてきたんだっけ…

⏰:10/10/31 00:11 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#196 [愛華]
これで何にも縛られない。
やっと隆兄のもとへ帰れる。

なのにひとつもすっきりしない。


俺が今まで苦しんだ意味は?

隆兄のもとへ帰りたかった。
ずっとずっと帰りたかった。


そして一人で頑張り続けた自分を
見て、褒めてほしかった。

⏰:10/10/31 00:21 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#197 [愛華]
そんな頑張った日々は全部……




無意味。





苦しんだ日々の意味を無くした。

それが一番苦しかった。

殴られることよりも…何よりも。

⏰:10/10/31 00:24 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#198 [愛華]
隆兄。

今も俺のことを探してますか

今も苦しんでいますか

きっと優しい隆兄のことだから

自分を責め続けてるでしょう

俺も今苦しいです。


あれから6年たちました。


6年間無意味に苦しみ続けました


隆兄も………そうですか?

⏰:10/10/31 00:29 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#199 [愛華]
会いたい。

隆兄に会いに行きたい。

「俺はもう大丈夫だよ。

心配しなくっていいんだよ」

そう言いたい。

そして隆兄が

「心配したんだぞ。

長い間、探していたんだよ」

そう言ってくれたらうれしい。

⏰:10/10/31 15:49 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#200 [愛華]
その日は………

すぐにやってきた。





冬の寒い日。


俺はなんとなく街を歩いていた。

⏰:10/10/31 15:51 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#201 [愛華]
隆兄に会いに行く。

そう決めても、決心がつかない。
6年ぶりだ。

なにから話せばいい?

まずは心配かけたことを謝らなくちゃいけない。


そして全て話さなきゃいけない


隆兄は……今までどんな気持ちで6年過ごしてきたのか。

それを知るのが怖かった。

⏰:10/10/31 15:54 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#202 [愛華]
そんな考えが頭の中をぐるぐると回って………

じいさんのもとに居座り続けていた。じいさんは迷惑そうだったけど……同じ家にいるのに離れて暮らしているようなもの。

対して前と変わらない。



その日も家にいるのが嫌で
街をぶらぶらと歩いていた。

⏰:10/10/31 15:58 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#203 [愛華]
特に何をすることもない……

ただぼーっと。




しばらく歩いていると、
人ごみの中に一人の男の人を
見つけた。


そいつは手袋もせずにベンチに座りこみ、下を向いていた。

どうしてかわからないが、
なぜか目に止まった。

⏰:10/10/31 16:02 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#204 [愛華]
………寒そうだな。

確かそれくらいのことしか思ってなかったと思う。

でもその男が顔をあげた。



その瞬間。
止まっていた時間が


一瞬のうちに


現在に引き戻された。

⏰:10/10/31 16:40 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#205 [愛華]





「…………たか、にー………?」



長い間会っていなくたって
顔を見ればわかる。

隆兄だ。


隆兄……………隆兄…………


自然と涙が溢れてきた。

⏰:10/10/31 20:19 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#206 [愛華]
あのころと違う。
大人びた隆兄の姿。


あぁ…………



俺は隆兄に話しかけようとした


隆兄。心配かけてごめんな


「隆兄……………」

「………………隆則っ!!」

⏰:10/10/31 20:25 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#207 [愛華]
……………え?


隆兄のもとに小さい女の子が駆け寄っていった。顔はよく見えないけれど色白の女の子。

隆兄は笑っている。



隆兄は幸せそうに笑っている。



笑っている。笑っている。

⏰:10/10/31 20:30 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#208 [愛華]
隆兄はその女の子と楽しそうに笑いあい、手をつないで
人ごみに消えていった。

見たかんじでいうと恋人。


隆兄に、恋人。
楽しそうに笑いあい……
幸せそうに手をつなぐ。


俺の中がぐちゃぐちゃに
掻き混ぜられたように

気持ちが溢れてくる。

⏰:10/10/31 20:41 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#209 [愛華]
隆兄が幸せそうでよかった。

でもどうして?

笑っていてよかった

でもどうして?



6年間の間 隆兄は…………

幸せに過ごしていたの?

俺が苦しんでいる間……

あの女の子と笑っていたの?

⏰:10/10/31 20:52 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#210 [愛華]
心の中が黒くなっていく。


隆兄は……俺を心配してくれてなんかいなかった?


俺を探してなんか……くれてなかった?


隆兄は………


オレナンカイラナカッタ?

⏰:10/10/31 21:01 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#211 [愛華]
なんて残酷な

そして虚しさが溢れてくる



6年間の真実。


許せない。許せない。


俺が黒く染まっていく。

⏰:10/10/31 21:06 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#212 [愛華]
俺は苦しんでいたのに

なんであんただけ幸せに?

不公平だよ。

なぁ、そうだろ?


6年前には一緒に笑いあい

父さんと母さんの死を

共に乗り越えてきたじゃんか。

あれは全て嘘だったのかよ?

⏰:10/10/31 21:08 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#213 [愛華]
許せない。許せない。



沸いて来るこの気持ちは……




復讐心。




隆兄………あんたの6年間は
もはや罪でしかない。

⏰:10/10/31 21:10 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#214 [愛華]
隆兄。


あんたには罪をつぐなってもらう

あんたの身をもって?

そんなもんじゃない。

あんたの大事なもんを奪う。


泣き叫べ。

あんたが笑っていた間

俺がそうしていたようにな。

⏰:10/10/31 21:13 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#215 [愛華]







直純くんから話を全て聞き終わった時。私は泣いていた。


ただ、悲しかった。


誰かの苦しみを祈る。


あたしと同じだったから。

⏰:10/10/31 21:16 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#216 [愛華]
「………んで、あんたを奪うために今の学校に転入して……
ジジイの家を出た」

直純くんは悲しそうに言った。
声は震えたまま。


「…………ごめんな」


直純くんの告白は………嘘。


強くて冷たい風が吹いた。

⏰:10/10/31 21:52 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#217 [愛華]
あたしは直純くんを



強く、抱きしめた。



「…………辛かったね……」

「…………白石?」

腕に力を込める。
それしか気持ちを伝えられない

⏰:10/10/31 21:54 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#218 [愛華]
「どうして泣かないの?
泣かなきゃだめ。泣いていいの」

「………なにいって……」

「泣いていいの」


あたしは泣いてぐしゃぐしゃの
顔を見せないようにして

直純くんの心をあたたまるように


肩が熱くなってきて、
直純くんが泣いているのが
見なくてもわかった。

⏰:10/10/31 21:58 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#219 [愛華]
「…………白石…ごめん…」




うん。
そう言ったつもりだったけど
声にはならなかった。



「……………俺。

白石が好きだ………」


風は、冷たかった。


でもやがて春はやってくる。

⏰:10/10/31 22:04 📱:840SH 🆔:ExUEa6QM


#220 [愛華]
-直純side-

⏰:10/11/01 01:23 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#221 [愛華]
俺はなんのために…ここに来た?


あんなに強く決心した。

隆兄に復讐するって。


でも今、白石の涙を見て

簡単にその決心がゆらぐ。


ちくしょう。なんでだよ。

俺は………間違ってたのか?

⏰:10/11/01 01:26 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#222 [愛華]
俺の目的は………

隆兄から大切なもの、
つまり白石を奪うことだ。

なのに今さら迷うなよ。


なんで辛くなってきてんだよ。


白石………俺の過去なんか知って


なに泣いてんだよ………

⏰:10/11/01 01:28 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#223 [愛華]
どんな手を使ってでも
隆兄から白石を引き離す。

その後で俺の正体をばらすつもりだった。


なのに計画はむちゃくちゃ。
狂わせたのは………俺。


白石に思い出話なんか
してんじゃねーよ………


馬鹿かよ………俺………

⏰:10/11/01 01:31 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#224 [愛華]
「泣いていいんだよ」



…………泣く?誰が?



俺が?どうして………?



ただ白石の腕が苦しいほどに
俺を抱きしめていて。


誰かに抱きしめられたのなんて…
いつ以来だっけ………

⏰:10/11/01 01:33 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#225 [愛華]
なんか目が熱くて痛いな……


あ、俺泣いてる。


泣いてる。どうして?




………わかんないから…いーや…


まぶたの裏に浮かぶのは
笑っている隆兄と白石。

⏰:10/11/01 01:36 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#226 [愛華]
俺………白石の笑った顔が好きだ


今まで怒られてばっかだったから



白石の笑顔を見るとほっとした

その笑顔が自分にだけ向けられればいいって。

そう思った。

⏰:10/11/01 01:38 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#227 [愛華]
でも隆兄のことを赤くなりながら話す白石を見ると………


すごく辛くなった。




あぁ………俺。


いつから白石のこと、

本気で好きになったのかな

⏰:10/11/01 01:40 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#228 [愛華]
好きだ。好きだ。


もう復讐なんていい。


だから君が欲しい。


「誰かに愛されてる

そう思える瞬間」

君からそれを感じたい。


そんな君は……

俺が1番憎い人が好き。

⏰:10/11/01 01:44 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#229 [愛華]
君は隆兄のために笑う。
隆兄の側にいることが君の幸せ



どうしてそれが奪える?



隆兄が憎いよ。
どうして俺のたったひとつの
たったひとつの欲しいものさえも

奪っていっちゃうんだよ……

⏰:10/11/01 01:47 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#230 [愛華]
悔しい。
憎い。 けども、愛しい。


消したくないこの気持ち。
初めて誰かを本気で欲しい。


そう思ったから。


「………俺……
白石が好きだ…………」


やっと気づいたこの気持ちを

叶わなくたって

言葉にするくらいいいだろう?

⏰:10/11/01 01:51 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#231 [愛華]
自分の中にこんな感情があるなんて初めて知った。

理性が言うことをきかない。
計算外なことが起こって
自分のコントロールができない。

ただ、本能のままに。

君の笑顔を見ていたいから
隆兄から君を引き離せない。


俺はどうしたら救われる?

神様は……なんて残酷なんだろう

⏰:10/11/01 01:58 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#232 [愛華]
-梓side-

⏰:10/11/01 20:01 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#233 [愛華]
どうして人は恋をするんだろう

傷つくことを知っていても

それでも人は想いつづける。

叶わぬ想いだと知っていても

それでも人は求め続ける。


そんな止めることのできない想いがあること。

私が1番知っているから。


だから、何も言えなかった。

⏰:10/11/01 20:20 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#234 [愛華]
「……で、そのあとどうしたの」

あたしは送別祭が終わった後の教室で那佑と話していた。

品野くん………じゃなくて
直純はもう帰ったらしい。


でもことの全てを那佑から
聞くことができた。


…………告白されたことも。

⏰:10/11/01 20:26 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#235 [愛華]
「そのまま二人で帰ってきた……
なんか気まずくって………あと…


頭いっぱいいっぱいで………」


那佑は泣きそうな顔をしていた。

あたしだってそうだよ。

直純が……虐待にあってたなんて

全く知らなかった。

⏰:10/11/01 20:31 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#236 [愛華]
あたし……直純を責めちゃった…


「………梓、自分を責めないで。
どうしようもなかったんだよ」

那佑がゆっくりと言った。


わかってはいるけど……
でもやっぱり思ってしまう。
直純を見つけていれば……って

後悔が押し寄せて来る。

⏰:10/11/01 20:39 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#237 [愛華]
でもまさか、直純がタカを恨んでいる理由がそんなことだったなんて………


「……どうすれば、いいのかな」

那佑は余ったデザートを袋に
詰めながら言った。


「あたしの予想………
直純はタカに復讐、つまり
那佑とタカを引き離そうとする
ことは多分もうしないよ」

⏰:10/11/01 20:46 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#238 [愛華]
「え、どうして?」

那佑は手を止めた。
袋からコロコロとゼリーが
転がってドアの前で止まった。


「直純は那佑が好きなんだよ。
好きな人を不幸にあわせようと
なんて、いくら復讐のためだからって直純はしない。
直純はそんなやつじゃないよ」


多分、直純はかなり前から那佑が好きだったんだと思う。

だから、那佑には全て話した。

⏰:10/11/01 20:53 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#239 [愛華]
もっとも、その気持ちにいつ気づいたのかはわかんないけど…


「……その告白、どーするの」

「こ、断るよ!隆則がいるし…」

まぁ当然そうなるよね………

直純はまだタカになにかする気なのかな?

那佑と引き離すこととは、
別の方法で…………

⏰:10/11/01 21:01 📱:840SH 🆔:HCK5cv5E


#240 [愛華]
でも、もう終わりにしたい。

復讐とかそんなのもういいから
失ったままだった6年間の時間を
直純と一緒に取り戻していきたい


直純………がんばったんだね。
つらかったんだね。
ごめんね……助けてあげれなくて


一緒に泣いてあげるから。
だから………タカを恨まないで。

⏰:10/11/02 00:24 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#241 [愛華]
タカには落ち着いたら話すことにして、その日は別れた。

多分タカも那佑も、あたしも。
昨日の今日で色々ありすぎて
頭がついていっていないから。


あたしは一人で暗く寒い道を
歩いて家に帰路を急いだ。


………まだ、寒いなぁ………

指先に息をはぁーっとかけて
温めるが、すぐに消えるぬくもり


……直純、おじいさんのとこ出て
どこに住んでんのかな………

⏰:10/11/02 00:29 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#242 [愛華]
そんなことを考えながら
歩いていると、前に人影が見えた


「………あ、きたきた!!」

「……なにやってんですか、
誨さん。不審者に間違われても
あたしなんも言えませんよ…」


それはフェンスによしかかった
誨さんだった。

どれくらい待っていたのか、
頬はまっかっかだ。

⏰:10/11/02 00:33 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#243 [愛華]
誨さんは反動でフェンスから離れると、トテテテ とあたしのところに歩いてきた。


「送別祭おつかれさま♪」

「あー……はい」

あのクリスマスの日以来、
たまにだが会うようになった。
会うといっても一方的なもので
いつも誨さんのほうからあたしの家に遊びにくる。

外に出るのが面倒なあたしは
誨さんを部屋にいれて話したりする。それは相談であったり
くだらない世間話であったり。

⏰:10/11/02 23:07 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#244 [愛華]
向こうがどういうつもりかは
知らないけれど、今では友達の
ような感じ。


部屋に入れるにしたって、
誨さんじゃ、危険な感じとか全く
しないし………。



「………なんか、暗くない?」

誨さんは心配そうにあたしの顔を
のぞきこんだ。

⏰:10/11/02 23:10 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#245 [愛華]
「ん、んー…色々あって……」

あたしは歩く足を止めることなく話した。誨さんは慌ててあたしを追いかけ、隣に来る。


「色々って?話してみなさい!」

誨さんは笑った。
でもこんなこと誨さんに話したって仕方がないじゃん。
これはあたしとタカと那佑の
問題なんだから。


………ってゆーか………

⏰:10/11/02 23:15 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#246 [愛華]
「………なんで手をにぎる?」

「だってさみぃんだもーん」

誨さんの右手はあたしの左手を
しっかりと握っていた。

その手はとても冷たくて………

どれくらい待っていたのかな?



あたしはもう一方の手の平を
誨さんの頬に当てた。

誨さんはびっくりした顔をして
寒さのせいなのか、さらに
顔が赤くなっていった。

⏰:10/11/02 23:20 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#247 [愛華]
「わ、めちゃ冷たいわ」

「うん。何分待ったか……」

や、待っててなんて言ってないし。
でもちょっと罪悪感。


あたしが誨さんの頬から手を
離そうとすると、その手を
誨さんの左手でつかまれた。


「………ちょ、なんですか」

「ん、あったかいなーって」


………意味わかんないっての。

⏰:10/11/02 23:28 📱:840SH 🆔:XYQ0nIow


#248 [愛華]
「や、歩けないんで。
どっちかの手はなして下さい」

今はどっちの手も誨さんに
つかまれて向かいあってる状態。

「え、どっちかだけでいーの?」

………だめだこりゃ。

「……できればどっちの手も
離してもらえるとありがたい」

「じゃーそれはできないんで」

誨さんは即答し、あたしの右手を
離して再び歩きだした。

⏰:10/11/03 16:41 📱:840SH 🆔:hp43cpuE


#249 [愛華]
離された右手が少し寂しかった。


………誨さんはどういうつもりなんだろうか?いつも思う。

タカと同じようにあたしを妹みたいに思ってるから、
からかってかまうのかな?

それとも…………

「………誨さんって………
あたしのこと好きなんですか?」

⏰:10/11/03 16:49 📱:840SH 🆔:hp43cpuE


#250 [愛華]
「……………」

誨さんは黙ったまま。


……………あれ?あたし今……
『なに言ってんだコイツ』って
思われた?思われたよね?
実際、あたしなにいってんだ?


気まずい沈黙が続く。


さっさと否定すればいーのに
なぜ黙ったままなんだ?
引っ張る必要あるのか?

⏰:10/11/03 23:42 📱:840SH 🆔:hp43cpuE


#251 [愛華]
「…梓ちゃんさ、まだ隆則のこと好きなの?」

「……ちゃん いらないって
言ってんのに………」

「じゃあ梓」

ドキッとした。
今まで何度そういっても
『梓ちゃん』としか呼ばなかったから……どうして?


「まだ、隆則がすきなの?」

誨さんはあたしの目を全く見ない

⏰:10/11/03 23:56 📱:840SH 🆔:hp43cpuE


#252 [愛華]
まぁ横にならんで歩いてるから
目は見れないの当たり前。

でも……なんか不自然で。
わざと反らしてるみたいで。


「まだ…………すき?」

誨さんは繰り返し聞いた。

わからない。
でも最近、少し変化があった。
前は那佑とタカを見るのが
少しだけ辛かったけれども
最近は辛くならなくなったの。

⏰:10/11/04 01:21 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#253 [愛華]
誨さんに「いいんじゃない?」
って言われたあの日から。


あたしはもうわかってる。
叶わないって知っていても
諦めのつかなかったこの気持ちが
ちょっとずつ終わりに近づいてる


それは悪いことなんかじゃない。
傷が癒えたということなんだ。

今なら心から二人の幸せを
祈って……自分の幸せも祈れる。

⏰:10/11/04 01:25 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#254 [愛華]
でも認めるのが怖かった。
今までの自分の恋のすべて。
終わりを認めるのが怖かった。


「…………わかんない。」

あたしは悩みに悩んで
やっとの思いでそう答えた。


「……そっかー………へへ」

「なに笑ってんですか、キモ」

誨さんはニヤニヤ笑う。
なにがそんなおもしろかったのか

⏰:10/11/04 01:29 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#255 [愛華]
「だって今までは即答だったし。
ちょっと頑張ったかいあった
のかなぁって思ってさー」

頑張った?なにを?
あ、誨さんはあたしにタカを
あきらめさせようとしてたのか。
傷ついてるあたしを可哀相だと思ってたみたいだし。
やっぱあたしを妹みたいに
思ってんのかなぁ………
…………ま、別にいいけど?


「………ムカつくんですけど」

⏰:10/11/04 01:33 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#256 [愛華]
「え、なにが?」

まだニヤニヤしてやがる。

「そーゆーとこですよ!!
てゆーか手離してくださいよ!
恋人とかに間違われますよ!」

ぶんぶんふりまわしても
誨さんは手を離さない。

完全にかわかわれてる。
んもう!!
今は直純のことで頭いっぱい
だってのに!こんな遊んでる場合じゃないんだっつーの!

⏰:10/11/04 01:37 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#257 [愛華]
「いーじゃん間違われてもー」


…………はぁ?


「誨さんがよくたってあたしは
よくないんですー!!」

彼女いないからってなんだ!
手つなぐ相手欲しいなら
彼女つくればいーじゃん!
あぁムカつく!!

なおも手をふりまわすが、
全然離す気配がないので諦めた。

⏰:10/11/04 01:41 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#258 [愛華]
「………っとにもう………」

あたしの左手には誨さんの右手。


「……手つなぎたいなら彼女つくればいーじゃないですか。
あたしいつまでもこんなことしてあげませんよ?」

あたしは握られた手をヒラヒラ
させる。


「…………鈍感」

「…ん?今なんか言いました?」

⏰:10/11/04 01:44 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#259 [愛華]
「なんでもねーよばーか!!」


………?変な人。
怒りたいのはこっちだってのに…

あれ?あたしなんで怒って
たんだっけ?………ま、いいや


「……あのさ」

「はい?なんですか?」

妙に声がうわずった。
考えごとしてたから………

⏰:10/11/04 18:14 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#260 [愛華]
「梓って呼んでいー?」

「え、はい。ってか前から
呼びすてでいいって言ってたじゃないですか。呼ばなかったのは誨さんの方ですけど……」

なんだいまさら。


「………梓」

心臓がはねた。
さっき呼ばれたときもそう。
なんだ、これ。気持ち悪っ!
お腹の中が妙にホカホカする。
かいろなんか貼ってないよ!!

⏰:10/11/04 18:19 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#261 [愛華]
ドクン………ドクン…………



………うーん?…………



「……や、やっぱ梓ちゃんで…」

「あ、あたしも今そう………
思ってましたです、はい……」

申し訳なさそうに誨さんが言う。
いや、あたしもちょっと
無理かな……ほんとに……

⏰:10/11/04 18:22 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#262 [愛華]
強い強い風が吹いた。

誨さんの手はさっきよりも強く
あたしの左手を握っている。


………調子狂うな、ほんと……


直純のことやタカのこととか
いっぱい考えることがあって
さっきまでぐちゃぐちゃだった。

でも今はかいろも貼っていない
お腹がホカホカして……心地好い
少しだけ、楽になってる。

⏰:10/11/04 18:26 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#263 [愛華]
ちらっと横目で誨さんを見た。


………いつまでこんなふうに
かまっててくれるんだろ……
親友の幼なじみ。ただそれだけ。
いずれ離れるときがくる。


胸がちくんとした気がしたけど
あたしはその痛みにまだ気がつかない。気がつきたくなかった。


少しずつ、いろんなものが
動きはじめた 三月の寒い日。

⏰:10/11/04 18:31 📱:840SH 🆔:si2Qn6yo


#264 [愛華]
-隆則side-

⏰:10/11/05 20:07 📱:840SH 🆔:aqKRS9iY


#265 [愛華]
頼む。頼むから。




俺の名前を呼ぶな。


お願いだから


俺の罪を、 掘り起こさないで。


知らないふりさせてくれ

⏰:10/11/05 20:17 📱:840SH 🆔:aqKRS9iY


#266 [愛華]
俺を縛っていたのは『約束』

そして『誓い』。

直純との『会いに行く』という約束を破ってしまった。
自分との『直純を守る』という
誓いを破ってしまった。


「6年間、音信不通になっただけたいしたことはない」

普通の人ならそうかもしれない
笑って再会できるかもしれない

でも俺はちがうんだ。

⏰:10/11/05 20:20 📱:840SH 🆔:aqKRS9iY


#267 [愛華]
幼かった俺はどうしようもなく
苦しんで……やがて苦しむことを忘れようとした。
そのほうが楽だと思ったから。
でも忘れてなんかなかった。

ずっと眠っていただけだった。
俺の『約束』と『誓い』。


直純に再会した瞬間、
それは一気に溢れ出し

俺は黒い闇へ戻された。

⏰:10/11/06 00:01 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#268 [愛華]
でも期待もした。

もし直純がこの6年間の間、
幸せに笑ってすごしていたのなら
俺の罪も軽くなって
また笑いあえるのかもって。


でもあとで那佑から聞かされた
真実は、それとは遠くかけはなれたものだった。


「直純は虐待されていた」

⏰:10/11/06 00:03 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#269 [愛華]
苦しみの再発。


直純。ごめんな。ごめんな。
約束やぶってごめんな。
助けられなくてごめんな。



俺だけ幸せになったりして……
ごめんな。


ごめん。それしか言えない。

⏰:10/11/06 00:05 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#270 [愛華]
再会から3日。
直純とは会っていない。


復讐されてもしかたがない。
でも俺にだって守らなきゃいけないものがある。

いくらお前にだって、譲れないものがあるんだよ。


たとえ罪悪感に潰されたとしても

⏰:10/11/06 00:09 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#271 [愛華]
「………顔色わるいな、お前」

「…………ん……」


誨が心配そうに粥をつくって
俺のところにやってきた。

この3日、ろくに寝ていない。


「………直純くんのことで
寝てないんだろーが……」

誨には昨日すべて話した。

那佑が送別祭の翌日に、すべてを話しにきたので
いい機会だと思い、誨にも打ち明けた。

⏰:10/11/06 00:15 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#272 [愛華]
「とりあえず飯食え。
俺がつくってやったんだからな」

………くさい……
お粥ってこんな臭いだっけ…
画用紙の臭いがする。

「さ、さんきゅな………」

文句を言う気力もなかったので
ゆっくりソファから起き上がり
恐る恐るさじをはこんだ。


…………予想通り……
図画工作の味だ。
食べたことはないけれど…
これは食べるものじゃない。

⏰:10/11/06 00:19 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#273 [愛華]
「………うまいか?」

「………ごめん。まずい」

ただ米を水と煮るだけなのに…
美味しくしようとしていろいろ
入れたんだろう。
その結果、図画工作の味。
米から見えてるのは、梅干し、ニンニク、高菜、ウナギ……
あとは原形がなく、わからない。


「えー頑張ったんだけど……」

頑張ったかどうかじゃねぇ。
食べれるか食べれないかだろ。

そう思ったがさすがに悪いなと思い口には出せなかった。

⏰:10/11/06 00:24 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#274 [愛華]
半分くらい食べたところで
俺は食べるのをやめた。


「うぅっぷ……ごちそーさん…」

「まだ残ってるじゃんかぁ」

無茶いうな。
俺を殺したいのか治したいのか
はっきりしろ。わざとか?


「わりぃ。とりあえず横んなる」

俺はごろーんとソファに横になる

⏰:10/11/06 01:22 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#275 [愛華]
那佑は今なにしてるだろうか。
直純は今どこにいるのか。


直純は那佑のことが好きなんだ。


俺はどうやって償えば………



「………なにも考えるな。」

自分で自分を制する。
今はなんも考えなくていい。

そのうち自分の中で
絶対に生まれてはいけない感情が
でてきてしまうかもしれない。

⏰:10/11/06 16:27 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#276 [愛華]
「あ、そーいや隆則。
今日、那佑ちゃん来るって言ってなかったっけ?」

「あ、そーいえば………。
多分もうすこしでくるかな」

時刻は午後4時。

「じゃー俺、どっか行くな」

なんか気をつかわせたみたいだ。
ていうか、今までも何回もこういうことはあったけれど
誨のやつ、どこ行ってたんだ?

⏰:10/11/06 16:38 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#277 [愛華]
「お前、いつもどこ行ってんの」

「ん?梓ちゃんのとこ」


……………ピシ。


「はぁ!?おま、梓に手ぇだし…
いつから!?いつからだよ!!」

「んーと……クリスマスん時」

あ、あの時か!!

⏰:10/11/06 16:56 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#278 [愛華]
「ふざけんなよおまえ〜」

俺はへなへなと枕に顔を埋める。
ちっとも知らなかった。

「別にふざけてねーよ?」

…………ん?


「え、誨おまえ………」

「俺、梓ちゃん好きだよ」


誨はさも当たり前かのように
でも真剣に言った。

⏰:10/11/06 17:04 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#279 [愛華]
「……え、だって………」

「だーいじょうぶだっつの。
同じことは繰り返さない。
俺なりに頑張るからさ」

誨は笑ってそう言った。


同じことは、繰り返さない。


誨は前に進もうとしてる。
過去を糧にして正しい道を
迷わず前に。



俺も前を向けるだろうか。

⏰:10/11/06 17:30 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#280 [愛華]
誨が出ていったあとも考えていた


俺が今まで笑ってられたのは
那佑が側にいてくれたから。

懸命に生きるお前が
俺の足元を照らしてくれたから


でも直純は違う。
直純には誰もいないんだ。


前を向きたい。お前も一緒に

⏰:10/11/06 17:59 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#281 [愛華]
罪をちゃんと認めて

前を向いて

そして二人で笑いあおう。

一緒に泣くのもいい。

大切な人のために俺も泣こう。



「隆則ー!!来たよー!!」


そして君がそこにいることを

願う。

⏰:10/11/06 18:04 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#282 [愛華]
いつも読んでくださってる方々
本当にありがとうございます。
愛華です!

携帯の都合により少しの間更新
することができません(:_;)

待っててくださると嬉しいです。

感想板にて、感想、意見
待っています!!


今後もよろしくお願いします!

⏰:10/11/06 18:34 📱:840SH 🆔:GLQ4XmxY


#283 [愛華]
今日から更新再開します。
待っていてくださった方々、
申し訳ありませんでした。
そしてありがとうございました!

⏰:10/11/14 17:04 📱:840SH 🆔:sNZro4Jc


#284 [愛華]
>>281


-那佑side-

⏰:10/11/15 20:31 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#285 [愛華]
あの日から1週間。


隆則には全て話した。

直純くんが虐待されていたこと。

隆則を憎んでいる理由。

…………告白されたこと。

全部話し終わったあとで
隆則はあたしを抱きしめて

「俺はお前を離すつもりはない」

そう言ってくれたね。

⏰:10/11/15 20:40 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#286 [愛華]
すごくうれしかったよ。
でもどうしてかな。
見つめられた瞳に不安を覚えた。

一瞬だけ……不安になったの。


直純くんはきっと隆則にとって
すごく大切なひとで。


直純くんに罪悪感を抱いていて。


あたしと直純くん…………

どちらが大切ですか……?

聞きたくても聞いちゃダメなこと

⏰:10/11/15 20:47 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#287 [愛華]
そう思う度に自己嫌悪する。


自分がすごく汚い生き物に感じて
しまうんだ。苦しいよ。


直純くんはあたしにとっても
いつのまにか大事な存在になって
いて。

幸せになってほしいと思う。




直純くんは…学校に来ていない。

⏰:10/11/15 20:51 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#288 [愛華]
「………那佑!!」

「…………ん?」

夢から引き戻される。
机は日の熱をたっぷり蓄えて
あたたかくなっていた。


「あんた寝すぎ。大丈夫?」

「………うん。平気だ、よ?」

あくびが混ざって変な声になる。
…………色々疲れてきたな……

⏰:10/11/15 20:57 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#289 [愛華]
「それより、梓。頼んだもの…
大丈夫だった?」

「あぁ………うん、一応」

そう言って梓は一枚の紙をくれた
それは直純くんの住所。


数日前、先生に直純くんの住所を聞いて会いに行った。
でもそこは虐待していた直純君のおじいさんの家だった。
かなり大きな家で、一人では
入る勇気もなく………

直純くんは家を出たと言っていた
どうやらここにまだ住んでいる
ことになっているらしい。

⏰:10/11/15 21:06 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#290 [愛華]
……でも、会いたかった。
会わなければならなかった。


あたしは梓に、おじいさんから
直純くんの住所を聞いてくれる
ように頼んだ。

見ず知らずのあたしよりも、
小さいころ面識のある梓の方が
いいと思ったから。


……直純くんに、会いたかった。

⏰:10/11/15 21:14 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#291 [愛華]
'


「……1週間来てないもんね…」

「そだね……あ、梓。おじいさんに何も言われなかった?」

あたしは住所が書かれた紙を
ポケットにしまい、尋ねた。

「あー……なんか久しぶりとか
なんとか? あと…………」

「あと………?「

⏰:10/11/15 21:22 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#292 [愛華]
「…あんなクソガキに構うのは
やめたほうがいい……とか」

梓は言いずらそうに言う。
悔しかったんだろうな……
あたしがそこにいてもきっと
同じ気持ちになっただろう。


「……那佑、あたしも行かなくて
ほんとにいいの?」

「大丈夫だよ。………1人で、
行きたいの。会いたいの」

ひとりで会いに行く。
直純くん。 だから待っていて。

⏰:10/11/15 21:43 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#293 [愛華]
きっと直純くんもいっぱい悩んだはずだよ。
辛かったのは隆則も直純くんも
同じだったはずだよ。

そうだよね?直純くん。

だから、隆則を憎まないで。

大切な人を傷つけて
自分も傷ついたりしないで。




「……………で、でか……」

⏰:10/11/15 22:57 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#294 [愛華]
梓にもらった紙を頼りに、放課後
あたしは直純くんの住むアパートに向かった。

方向音痴なあたしは四苦八苦
しながらもなんとかたどり着いた。 でも着いたそこは……


「マ、マンション………?」

すごく立派なマンション。
え……?アパート……??

⏰:10/11/15 23:08 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#295 [愛華]
あれ?話とは違う…………
梓は確かボロいアパートだって
言ってたような………


マンションの周りを何周も回る。
どれくらい繰り返したのか……
道行く人がさすがに怪しがる。

でもここで諦めるわけには……
泣きそうになってきた。
……梓と来ればよかったかなぁ…


地べたに座り込む。
動きようがない。
どこだかわかんないんだもん。

⏰:10/11/15 23:16 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#296 [愛華]
あたりも暗くなってきた。
このままだと帰れなくなる。
人に道を聞いて駅まで………

明日、梓ともう一度来よう。

立ち上がりかけたその時。



「………なにやってんの」


「……………へ?」

後ろを振り向くと、そこには
スーパーの袋を持った直純くんが
立っていた。

⏰:10/11/15 23:20 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#297 [愛華]
「……直純くん………」

「え、ちょ、なに泣いてんの」

直純くんはオロオロする。

「み、道……直純くんの。
アパート……マンションになってて。わかんないし………
暗いし……帰ろうと…思っ…」

一気に話したけど、多分言葉に
なってなかったと思う。


直純くんだ。
1週間会えなかった……
直純くんだ。

⏰:10/11/15 23:25 📱:840SH 🆔:MWLvGU.k


#298 [愛華]
「………意味、わかんない」

直純くんはため息をついた。
でも優しさが見えたため息。

「……俺んとこ、来ようと
してくれてたのか?」

あたしは一生懸命うなずく。
上手く声が出なかったから。

「……直純くん……に……
言いたいことがあって」

「……俺に?」

頑張ってしぼりだした言葉。
直純くんはちゃんと聞きとって
くれた。

⏰:10/11/16 00:58 📱:840SH 🆔:/kNM1FVE


#299 [愛華]
「………俺は白石になんも
言うことはないよ。隆兄への
復讐は別の形で考える。」

「……………」

直純くんは少しだけ息を吸って
ゆっくり言葉を吐き出す。


「………ひどい男だろう?
あんたの大事な男を傷つけるんだ
こんな男忘れろよ」

……嘘だよ、そんなの。

⏰:10/11/16 17:02 📱:840SH 🆔:/kNM1FVE


#300 [愛華]
「………じゃ、俺いくから」

直純くんは歩きだした。
諦めちゃだめだ。諦めちゃ……
隆則と直純くん二人を救うために
あたしも頑張らなきゃ。



「………なんでついてくんの」

「話したいから。直純くんと」

「いいの?帰れなくなるかもよ」

ぎくっ………

⏰:10/11/16 20:58 📱:840SH 🆔:/kNM1FVE


#301 [愛華]
「暗いのやだけど………
道聞きながら帰るもん」

「…そーゆー意味じゃねっつの」

直純くんはあたしの髪をくしゃっ
と撫でてまた歩きだした。
……ついていっていいのかな?



ついたアパートは一本道路を
はさんだ交差点の角にあった。


………確かに……ぼろい。

⏰:10/11/17 00:28 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#302 [愛華]
「…なにおどろいてんの?
入るの?入んないの?」

「あ、入る。入るよ」


キィー……


ドアのきしむ音。
すごく静かだ。
直純くんは……こんなところで
一人で暮らしているんだ。



「てきとーに座って。コーヒーか
緑茶しかないけどどっち?」

「あ………緑茶で……」

⏰:10/11/17 18:33 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#303 [愛華]
テレビもないし……静かだな。
勝手についてきちゃったけど…

でも伝えたいことがある。



「………はい」

「あ、ありがとう」

あたたかい緑茶。
直純くんはスーパーの袋から
買ったものを出していく。
インスタントばかりだ。

「いつもこんなの食べてるの?」

「料理、めんどくさいし」

⏰:10/11/17 18:39 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#304 [愛華]
……似てるな、隆則に。


「………で。話ってなに?」

「あ………うん」

いつのまにか直純くんは自分の分の緑茶を持ってソファに座っていた。……なんか、痩せた。

前の直純くんじゃないみたい。



「……どうして学校こないの」

⏰:10/11/17 18:48 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#305 [愛華]
「…めんどくさかったから」

「………ちゃんと学校来て。
それがひとつめのお願い」

「ひとつめって……まだあんの」

直純くんは反らしていた目を
あたしに向けた。


あたしのするべきこと。
今ははっきりわかるよ。


「………復讐なんてやめて」

⏰:10/11/17 18:58 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#306 [愛華]
強い風が窓をたたいた。
強い風は神様が風邪をひいている
昔誰かが言っていたっけ。



「………無理。」
直純くんは小さくつぶやいた。
冷たくて………哀しい声。

「無理じゃない。直純くんは
隆則を憎んでなんていない。
どうして嘘つくの?」

「嘘なんかついてねぇよ!」

⏰:10/11/17 19:05 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#307 [愛華]
「じゃあどうして………
まだ『隆兄』なんて呼んでるの」

「は……………?」

直純くん………
嘘なんかつかないでよ。

「隆則のこと………お兄さん
として慕っているからでしょ?」


つぶれていた痛みを。
ほぐれなかった苦しみを。

ゆっくり解き明かす。

⏰:10/11/17 19:09 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#308 [愛華]
「隆則だってそうだよ。直純くんが必要なんだよ。直純くんも
そうでしょう?」

直純くん。
私の声を、聞いて。

「直純くんが………」

「綺麗事ばっか言うなよ!!」

窓が、また叩かれた。
息が止まっていたことに気づいた
直純くんから目は反らさない。

⏰:10/11/17 19:14 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#309 [愛華]
「結局白石は隆兄を救いたいってだけだろ?俺なんか少しも関係ないだろ?もう構うなよ!」

「あたしは……隆則も直純くんも同じくらい大切なんだよ」

大切な人の大切な人は
いずれ自分にとっても大切な人になってゆく。
梓。今なら気持ちがわかるよ。


直純くんは大切な人。
だから、助けたい。
余計なお世話だって思われても
綺麗事だって言われてもいい。

⏰:10/11/17 19:20 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#310 [愛華]
「………ばかじゃねーの……」

『愛されてるっていう実感なんて
もう忘れちゃったし………』

それは違う。気づいてよ。


「直純くん……お願いだよ」



「なんで……………

     泣くの」

⏰:10/11/17 19:38 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#311 [愛華]
あたし、最近泣いてばっかだ。
カッコ悪い。ばかみたい。


「………直純くんは…………
隆則のこと、憎んでないよ」


静かな時間が流れる。


「…じゃあさ、俺の気持ちは?」

…………え?

「白石が好きだっていった……
俺の気持ちは?」

⏰:10/11/18 00:59 📱:840SH 🆔:uBkUQTYM


#312 [愛華]
「俺は白石が好きだって言った。
絶対に手に入らないものが目の前にあって、見せ付けられる。

白石には、わかんないよ」

「直純くん………」

「白石は隆兄から離れないだろ?
それとも……俺のものになって
くれるわけ?」


あたしのしていることは……
もっと直純くんを傷つけるの?

⏰:10/11/18 21:16 📱:840SH 🆔:uBkUQTYM


#313 [愛華]
「あたしはそんなつもりじゃ…」

「だからさ……」


ドサッ

「そーゆーのが綺麗事だってば」


世界が逆さになった。
前にも見た、この状況。

目の前には直純くん。


あの時と違うのは………
直純くんは悲しそうに、そして
真剣な顔であたしを見てる。

⏰:10/11/19 01:03 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#314 [愛華]
「直純くん……どうした、の」

「帰れなくなるかもよって、
言ったじゃん。一人暮らしの男の家に来るなんてさ、どーぞ
食べてくださいって言ってる
よーなもんだけど。


それも、好かれてる男の家に」


床が冷たい。
直純くんの本気が伝わってくる。
体の中がどくどく脈打つ。

⏰:10/11/19 01:08 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#315 [あんちむ]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:10/11/19 01:54 📱:SH05A3 🆔:Rwe3yfXc


#316 [愛華]
>>315 あんちむ様

アンカーありがとうございます!

⏰:10/11/19 22:57 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#317 [愛華]
「白石にはわかんねぇよな。
欲しいものがすぐ側にあるんだし
なぁ、梓から奪ったときとかさ
どういう気持ちだったわけ?」

どうしてそんなこと言うの?
どうして………


「わかるか?人間は自分の欲の
為なら平気で人を不幸にする。
結局は自分が1番なんだよ。
他の人間は大切だって言っても
2番目以降でしかない。

それでも俺と隆則を助けたいって
言うんなら、俺を1番にしろよ。
俺の望みを叶えてみろよ」

⏰:10/11/19 23:04 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#318 [愛華]
「直純くんの……望み……?」

「お前が欲しい」



わたしはいつから
こんなに直純くんの気持ちが
わかるようになったのかな。

するすると、水みたいに
私の中にはいってくる。



「…………べつに、いいよ」

「……………は?」

⏰:10/11/19 23:07 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#319 [愛華]
「直純くんがそうしたいんなら
べつにいーよ」


「……後悔すんなよ」



直純くんの顔が近づく。



…………キスされる!!

⏰:10/11/20 17:08 📱:840SH 🆔:h3TbMS3A


#320 [愛華]
でも直純くんの唇はあたしの
頬に優しくふれた。


「………へ……」

「んな顔すんな」

頬に唇をつけたまま直純くんは
つぶやいた。くすぐったい。


やっぱり。
直純くんは嘘つきだよ。


いつも思ってないことばかり。

⏰:10/11/20 19:21 📱:840SH 🆔:h3TbMS3A


#321 [愛華]
「直純くん。隆則も同じくらい
苦しんでたんだよ」


「……また綺麗事かよ」


直純くんはそう言って顔を背け
またソファに座りなおした。


襲う気なんて最初から
少しもなかったくせにさ。

ほんとに嘘つき。

でも、優しいんだね。

⏰:10/11/21 19:21 📱:840SH 🆔:wRh6S.zA


#322 [愛華]
「俺は憎まなきゃダメなんだ。
許しちゃいけないんだよ。
俺をほっといたあいつを……」

「しなきゃいけない、なんて
おかしいよ。直純くんだって
本当はわかってるでしょう?」

「おかしくなんてない。白石が
そう言うのは隆兄のためだから
だろ。 そんなの俺にとっては
迷惑なだけなんだよ!
同じことを言わせんなよ!」


どうしても口調がきつくなる。

⏰:10/11/21 21:23 📱:840SH 🆔:wRh6S.zA


#323 [愛華]
「……確かに直純くんを1番に
することなんてできないよ」

直純くんは少しだけ顔を歪ませた何かをこらえてるみたいに。


「…でもね、直純くんも大事なの
出会ってからの時間なんて少しも
関係ないんだよ。
あたし、欲張りなんだ。
直純くんも、隆則も大切なの」


それが綺麗事というのなら
それでもいい。

⏰:10/11/22 00:47 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#324 [愛華]
「あたしは直純くんも隆則も
傷ついてるの、耐えられない。

あたしは………きっとまた泣く」


「白石…………」


わかってるよ。
だからこっちを向いて。
前を向くには誰かのぬくもりが
必要なの。

あなたにそれをくれる人は
たくさんいるんだよ。
気づいていないだけなんだよ。

⏰:10/11/22 00:51 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#325 [愛華]
気がつくと、直純くんの家に
来てから1時間経っていた。

外は真っ暗だ。


どこまで自分の気持ちが
伝わったのかわからない。


でもあたしは、伝えた。



「言いたいことは終わり」

⏰:10/11/22 01:01 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#326 [愛華]
そう言ってあたしは立ちあがる。


直純くんを見ていると、
過去の自分を思い出す。

自分を放っておいたお父さんと
お母さんが許せなかった。
憎んで苦しんで傷ついて……

そんな世界から救ってくれたのは
隆則。

誰かが手をさしのべてくれれば
誰だって暗闇から抜け出せる。

⏰:10/11/22 01:05 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#327 [愛華]
きしむドアを開き、
もとの道を戻る。


「…………ばいばい」




運命の日は近づいていた。

あたしはまだ知らない。


あたしの大切な人を

失ってしまうこと。

なによりもつらい現実が

あたしを待ち受けていた。

⏰:10/11/22 01:12 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#328 [愛華]
-直純side-

⏰:10/11/22 20:00 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#329 [愛華]
何度も何度も考えた。


今まで俺の歩んできた道。
金だけ持ってじじいのとこを
飛び出してきてから今まで。


隆兄に復讐してやる。
それだけを考えていた。


隆兄は俺を必要となんか
していなかった。

それがなにより悲しくて…
悔しくて、仕方なかったんだ。

⏰:10/11/22 20:04 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#330 [愛華]
「隆則も同じくらい
苦しかったんだよ」


なにいってんだよ。
そんなの知らねぇよ。


「隆則をお兄さんとして
慕っているからでしょう?」


そんなわけねぇだろ。
あんなやつ………
あんな男………

⏰:10/11/22 20:09 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#331 [愛華]
「隆則を憎んでなんていない」


違う。
俺はあいつが憎くて仕方ない。
俺の欲しいものを全て持って
いってしまったあの男。

自由も幸せも…………お前も。


お前は隆兄しか見ていない。
俺なんかちっとも見ていない。


「直純くんも同じくらい
大切なんだよ」

⏰:10/11/22 20:14 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#332 [愛華]
どうして泣くんだよ?
俺の名前を呼びながら……





あぁ、そうか。
俺は隆兄が憎かったんじゃない。




羨ましかったんだ。

⏰:10/11/22 20:17 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#333 [愛華]
幸せそうな笑顔。
大切なひとが側にいて。
愛にあふれている。


俺も、こんなふうに笑いたくて。
大切な人に側にいてほしくて。


失っていた時間を
取り戻したくて。




俺だって幸せになりたい。

好きな人と一緒に。

⏰:10/11/22 20:26 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#334 [愛華]
復讐なんてほんとうはさ、
どうでもよかったんだよ。


白石。
この6年間誰かに「大切」だ
なんて言われたことなかった。
涙を流されたことも。

「泣いていいんだよ」
って言われたことも

抱きしめられたことも。



ありがとう。

⏰:10/11/22 20:29 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#335 [愛華]
「隆兄に…………会わなきゃ」


俺はつぶやいた。
白石が去ったあとの部屋で。



なんでもいいから話したい。
憎しみとか、そんなの全部抜きに
して。
隆兄と話したい。


白石が手に入らなくたっていい。
たまに笑顔が見られればいい。

ぜいたくなんて言わない。

⏰:10/11/22 20:32 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#336 [愛華]
人のぬくもりは心を溶かす。


あぁ………綺麗事だけどさ。
でもそんな言葉がぴったりだ。



会いに行こう、隆兄に。


憎しみとか苦しみとか全部
ぶちまけて。


そして最後に笑えたら


それが本当のハッピーエンドじゃないかよ。

⏰:10/11/22 20:37 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#337 [愛華]
-隆則side-

⏰:10/11/22 20:38 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#338 [愛華]
「直純くんが会いたいんだって」


那佑からその言葉を聞いた時。
俺はどんな顔してただろうか。


ただ、夢の中にいるみたいな。

今日という日まで
夢の中に出てくる直純の姿は
いつも俺を睨んでいたから。


だから信じられなかった。

直純が………俺に会いたい?

⏰:10/11/22 20:41 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#339 [愛華]
「今日、学校に来たんだ。
詳しくはわからないけどね、
明日、隆則に会いたいって」

「直純は俺を………」

「あたしもよくわからない。
でもなんらかの変化はあった
んだと思う。

直純くんの口から……聞いて」


怖い。
情けないけど………


怖くてたまらない。

⏰:10/11/22 20:45 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#340 [愛華]
「隆則!!」

那佑に怒鳴られびくっとする。


「直純くんがどんな気持ちで
隆則に会うの決めたと思う!?
隆則がそんなんでどうするの!」

心の中にかかっていた霧みたいな
ものがゆっくり晴れていく。

お前は魔法使いみたいだ。
存在だけで俺に勇気をくれる。

⏰:10/11/22 20:48 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#341 [愛華]
「あたしはここで待ってる。
だから…………

直純くんとふたりで帰ってきて」


直純と、ふたりで。


あの約束を、誓いを。
果たすんだ。




『絶対会いに行くからな!!』

⏰:10/11/22 20:50 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#342 [愛華]
「………おぅ。いつまでも
こんな状態ごめんだっつの。
こんなのは性にあわねぇ!」

「…………うん!!」


ちょっとだけ不安はあるけど
でも大丈夫だ。大丈夫。


次は、笑顔で会える。


笑顔で会う。


そのつもりだった。

⏰:10/11/22 20:54 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#343 [愛華]
-直純side-

⏰:10/11/22 22:52 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#344 [愛華]
「………なんか変な感じ」

鏡に映った自分はひどく
幼く見えたのは気のせいかな。


今日、俺は隆兄に会う。


前にも会ったのに。


ちゃんとした形で会うのは
これが初めて。

6年振りなんだ。

⏰:10/11/22 22:55 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#345 [愛華]
俺は隆兄に会ってなにを言う
つもりなんだろう。
自分でもわからない。


憎しみだと思っていた感情。
きっとそれは嫉妬だった。


許すことができるのか。

笑いあえるんだろうか。


復讐だとかなんとか言っても
心のどこかではいつもそんな
未来を期待していた気がする。

⏰:10/11/23 00:36 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#346 [愛華]
白石に言われてそうわかった。


俺は白石が好きだ。
白石の幸せを願いたい。
でもそこまで大人じゃない。

笑顔が見たい。
俺のために笑っててほしい。


ほらな。
人間はいつだって欲のかたまり
なんだ。

たまに見られればいい、なんて
自分に嘘ついてるだけだ。

俺はシャツに腕を通した。

⏰:10/11/23 00:40 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#347 [愛華]
復讐とかそんなんじゃなくて
いつか白石に

俺がいいって言われたい。


心から、笑ってみたい。

白石に出会えてそう思った。


靴をはき、俺はバス停に向かう。


行く先は公園。
昔隆兄とよく遊んだ公園だ。

⏰:10/11/23 00:43 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#348 [愛華]
どんな顔で隆兄は待ってるかな。


バスにゆられながら
そんなことを考えていた。

遊園地に向かう子供のように
俺の心は騒いでいる。


バスを降りて、
公園へ歩いて向かう。


ふ、と前を見ると
5歳くらいの男の子が目に入った。

⏰:10/11/23 00:49 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#349 [愛華]
……道路わきで何やってんだ。
母親どこいってんだよ?


「……おい、そこの子。
母ちゃんどこにいった?」

俺が話しかけると、男の子は
泣きそうな顔で振り向いた。

「……母ちゃんじゃなくて。
きょうは兄ちゃんときてたの。
でも兄ちゃんいなくて………」


……うわ、泣くなよ〜

⏰:10/11/23 00:52 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#350 [愛華]
話しかけたのが間違いか?
ちょっと時間くいそうだ。

「兄ちゃん〜………」

男の子は泣き出してしまった。


「かんべんしてくれよ〜…」

「…兄ちゃんなんか嫌いだ!!」

男の子はぐしゃぐしゃの顔で
叫んだ。

兄ちゃんに置いていかれた
怒りがこもっている。

⏰:10/11/23 00:56 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#351 [愛華]
それだけは耳によく響いた。



「………そゆことゆーな。
兄ちゃんもきっと探してる」

「嘘だよ。きっとお菓子とか
買ってひとりで食べてるよ」

「じゃあ買ってもらえばいい。
お前の兄ちゃんだろ?
探しに行け。兄ちゃんもお前を
探してるんだから」

自分のことじゃないと、こんな事
言えるもんだな。
少し自分にびっくりした。

⏰:10/11/23 01:00 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#352 [愛華]
「…………恭介!!」

横を見ると、道路の向こう側で
男の子の兄らしき人が手を振っているのが見えた。
息をきらしている。
探し回ったんだろう。


「兄ちゃん!!」

「ほらな。探してたろ?」

「うん。ありがと、お兄さん!」

男の子は走っていった。
あの男の子は笑顔で会える。
会えるんだ。

⏰:10/11/23 01:04 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#353 [愛華]
目に入ったのは走りゆく男の子と
青になった信号。


………え。

道路の向こうで男の子の兄ちゃんが何か叫んでいる。


男の子は止まらない。


全てがスローモーションになる。
走ってくる車が見える。

⏰:10/11/23 01:07 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#354 [愛華]
気がつくと走りだしていた。


おい、止まれ。
なにやってんだよ。

口に出てたのかわからない。


男の子を突き飛ばし、それを
抱き留めた兄を見て安心した。


よかったな。会えたな。


ブレーキ音と衝撃音が
あたりに響いた。


あぁ…………よかった。

⏰:10/11/23 01:13 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#355 [愛華]
-隆則side-

⏰:10/11/23 14:12 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#356 [愛華]
笑顔で会えるはずだった。

一緒に泣くつもりでもいた。

お互いいっぱい苦しんだから

もう充分だろって……思って。



なのに。直純。
お前こんなとこで何寝てんだよ。
傷だらけの顔で………


いっぱい管につながれて。

⏰:10/11/23 14:15 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#357 [愛華]
あの公園で待っているとき。
じいさんから電話がはいった。

『直純が事故ったらしい。
俺は行く気はないが伝えておく』

直純が…………事故った?


頭のなかが真っ白のまま
病院に走った。

多分、タクシーのなかで
じいちゃん、ばあちゃん、那佑
にも連絡したんだと思う。

全然覚えていないけれど。

⏰:10/11/23 14:19 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#358 [愛華]
那佑が病院に到着したのは
それから30分後のこと。



「…………隆則!!」

息をきらした那佑がはいってきた


「……お前、走って大丈夫かよ」

「ちょっとなら、大丈夫。
それより………直純くんは?」

⏰:10/11/23 14:22 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#359 [愛華]
「……意識、戻んないかも。
外傷はあんまひどくないけど
頭強く打ってるらしい。
このままってこともありえる」

「そん、な…………」


「じいちゃんとばあちゃんも
そのうち来ると思う。
九州からだから時間はかかると
思うけど…………


お前はもう少ししたら帰れ」

⏰:10/11/23 14:26 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#360 [愛華]
「帰れないよ。隆則をひとりに
なんてできるわけないじゃん。
あたしも意識もどるまで待つ!」


意識、もどるのかな………


あ、梓に連絡してねぇや……
那佑がしてくれたのかな?




なんで俺、こんな冷静なんだ?

⏰:10/11/23 14:28 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#361 [愛華]
暗くて、静かな時間。
時を刻む音が低く響く。



「子供、かばったんだってさ」

「…………え」

「あいつらしいよな。ほんとは
助けられた子供と親も来るって
言ってたんだけど………
来るなって言っちゃった。」


どんな顔をするかわからない。
責めてしまうかもしれない。
自分がなにをするかわからない。

⏰:10/11/23 14:32 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#362 [愛華]
「…………直純くん」

那佑はつぶやいた。
泣いてるみたいだ。




「直純くん………直純くん……
戻ってきてよ…………嫌だよ…


いやだぁぁぁ…………」



神様はどうしてこんなにも
残酷で、意地悪なんだろう。

⏰:10/11/23 14:34 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#363 [愛華]
俺の大切なひとを
いつも奪っていってしまう。

父さんも母さんも、直純も。


俺はまだなにも話していない。
まだ直純になにも言ってない。

罪をつぐなっていない。


俺のせいなのか?
俺が6年間直純を放って
おかなかったら………



こんなことにはならなかった。

⏰:10/11/23 14:38 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#364 [愛華]
ガラガラッ

病室の扉があいた。


「タカ……那佑………」

「あず、さ………」

梓はゆっくり歩いて椅子に座る。
直純の顔をゆっくり見つめる。


「………直純。なにやってんの
あんたまだやってないことある
でしょーが。

わかったなら戻ってきなさい!」

⏰:10/11/23 14:42 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#365 [愛華]
ぽたぽたと涙が、直純の頬に
落ちていく。


みんな泣いてる。
どうして俺は泣かないんだろう。



「直純は戻ってくるよ。
直純は強い子だもん。絶対に!」


梓にそう言われても、
悪い未来だけが頭を支配する。

⏰:10/11/23 14:45 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#366 [愛華]
一度は忘れようとした罪が
また胸を支配して


梓と那佑の涙が
俺を黒く染めてゆく。



俺の、せいだ。



どうしたら償える?

どうしたら……………

⏰:10/11/23 14:47 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#367 [愛華]
'





2日たっても直純の意識は
戻らなかった。

毎日病室に通って直純に話し
かける。

そのたび、責められているかの
ような気分になってしまう。


そしてずっと考えている。
直純に償う方法を。

⏰:10/11/23 14:52 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#368 [愛華]
「隆則!お前少し休めよ。
顔真っ青だ。そんなんだと
体もたなくなるぞ……」

「別にたいしたことねーよ」

誨から心配されても、今は
鬱陶しく感じてしまう。


最低だな、俺。




ピンポーン

⏰:10/11/23 14:56 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#369 [愛華]
「………梓」

はいってきたのは梓だった。

「ごめん、誨さん。
ちょっと席はずしてくんない?
タカと話したいことあるの」

「……わかった」


誨はそう言うと家からでていった


「…………なんだよ、話って」

⏰:10/11/23 15:02 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#370 [愛華]
あれからあまり梓とは話して
いなかった。病室で会うことは
あったけど、会話をかわすこともなく……それは那佑も同じで。




ズカズカと梓は歩き、
ソファに腰掛ける。



「………なにかんがえてんの」

⏰:10/11/23 15:05 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#371 [愛華]
「………なにって……?」

「とぼけないで。タカの考えてることなんかすぐわかるよ。

タカが悪いわけじゃない。
だから罪を償うとか……もう
そーゆーのはいらないの」


違う。梓、それは違う。


「それでまた誰かを傷つけるの?
そんなことはやめて。あたし、
いくらタカでも許さない。
直純もそんなの望んでいない」

⏰:10/11/23 15:13 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#372 [愛華]
梓は強く言った。
目は赤く腫れていたけれど
まっすぐな、瞳。


「…………強いな」

「………え?」


「梓も………那佑も強い。でも
俺は…………臆病で。

ほんとは弱いんだ」


「タカ……………」

⏰:10/11/23 15:15 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#373 [愛華]
そう。俺は弱い。

自分を守るのに精一杯で

周りなんか少しもみえなくて。


それでも守りたいものがあった。

だから今まで歩いてこれた。


何度でも言う。

それは那佑のおかげなんだ。

だから、言いたいことがある。

⏰:10/11/23 15:18 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#374 [愛華]
泣きたい夜もあったし。

叫びたい夜もあった。

でも、あの日。
あの桜の木の下で泣いている
君を見て。強く、強く。


守りたいと。


はじめて自分が強くなれた
そんな気がしたんだ。


ありがとう。

⏰:10/11/23 15:22 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#375 [愛華]
'




プルルル…………


「………もしもし?隆則!?」

「……興奮しすぎ。びくるわ」

俺はふっと笑った。
すごく久しぶりな気がした。


「今から会えるか?」

⏰:10/11/23 15:24 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#376 [愛華]
'


何度この場所で待ち合わせした
だろう。数えきれない。
いつも笑顔で君はやってくる。


「あ、隆則!!」

人混みをかきわけて君は俺のもとに走ってくる。
いつもと同じ。同じだ。

⏰:10/11/23 15:27 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#377 [愛華]
「走るなって言ってるだろ」

「あ、ごめん………ね、今日は
病院いかなくっていーの?」

「んー……うん」

「どしたの、隆則………」


「………話があるんだ」


大切な、大切な話。
きっと君は泣くだろう。


そんな俺を、許してくれ。

⏰:10/11/23 15:31 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#378 [愛華]
大分暖かくなってきた道を、
那佑とふたりで歩く。


「……もう少しで桜咲くね」

「あー……もう一年かぁ」

もうすぐ那佑と出会って一年。
なんかいろいろありすぎた一年
だったと思う。


「バケツプリン、食べた?」

「あーまだ食べてないや。
食べきれないよ、きっと。
いつか隆則と直純くんと、3人で食べれたらいーね」

⏰:10/11/23 15:35 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#379 [愛華]
那佑は悲しそうに笑った。


「そうだな………」


『プリン、好きなの?』

『うん、いつかバケツプリンってゆーの食べたいなぁ』

『退院したら食べろよ』

『退院………できるかなぁ』


できたじゃんか。ざまぁみろ。

⏰:10/11/23 15:38 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#380 [愛華]
着いた先は公園だ。

直純と再会したあの日。
那佑が追いかけてきてくれた公園


「え……隆則の家から来たほうが
早かったじゃん」

「那佑と歩きたかったんだよ」

俺はベンチに腰掛けた。
那佑は隣に腰掛ける。

⏰:10/11/23 15:42 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#381 [愛華]
生温い風が吹いた。


「話ってなぁに?

直純くんの…………こと?」


「………まぁそれもあるかな?」


那佑がぴくっと反応する。
やっぱり敏感になってるみたいだ

⏰:10/11/23 15:51 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#382 [愛華]
「………那佑は、強いな」

「…………はぁ?なにそれ?」

那佑は意味がわからない、
という顔をして俺を見た。


確かにそうだな。
でも聞いてくれ、最後まで。


「はじめて会った時はすごい
弱くて……なんつーか小さい
猫みたいなやつだったけど…」

⏰:10/11/23 15:56 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#383 [愛華]
『あたし……死にたくないよ…』


泣きながら言う君を見て
君を守れるのは俺しかいない

そう思った。

願いをこめて、抱きしめた。


「ほんと……強くなった……」

「隆則…………?」


なのに俺は弱いままだった。
ごめんな。

⏰:10/11/23 16:01 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#384 [愛華]
『隆則は黒が似合うね!』

黒髪が好きだったわけじゃない。
からまれるとこ見られるのが
嫌だったから、変えただけ。

そういえばクリスマスにくれた
ブレスレットも黒だった。


「ありがとな。ほんとに」

「隆則………なにいってんの」

⏰:10/11/23 16:18 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#385 [愛華]
『絶対あたしのところに
帰ってきてね。約束だよ』


「那佑…………」


「隆則………なに?」


約束、だよ。



「…………………別れよう」


約束は人を強くして
そして別れには悲しみで縛る。

⏰:10/11/23 16:25 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#386 [愛華]
読んで下さってる方、いつも
ありがとうございます!
愛華です。

今読み直したのですが、最近
大変なスランプでして文章が
めちゃくちゃです(:_;)
本当にすいません………

感想板へアドバイスをもらえたら大変うれしく思います。

アドバイス、もちろん感想も
待っています。

今後とも その日が来る前に、
をよろしくお願いします。

⏰:10/11/23 16:44 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#387 [愛華]
絶対に口に出すことはない。
そう思っていた言葉。
気持ちの入っていない言葉。
まさにそんな感じだった。



那佑。あの時のお前の顔。
俺はきっと忘れられない。


俺はお前との約束を破る。


恨んでいい。許さなくていい。

でもいつか、笑ってくれ。

⏰:10/11/24 21:55 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#388 [愛華]
「あたし、馬鹿な男に
引っ掛かっちゃったよ」って

いつか笑い話にしてくれ。


そして、俺を思い出さないで。


こんな弱い俺を。





お前の人生の『汚点』に
してくれてかまわないから。

⏰:10/11/24 21:58 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#389 [愛華]
'






「な………に言ってんの隆則」

「………………」

「悪い冗談?なに?」

「…………………」



「どして……なんも言わないの」

⏰:10/11/24 22:00 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#390 [愛華]
俺はなにも答えない。
那佑の顔も見ることができない。



「隆則!!答えてよ!!」


俺は那佑を抱き寄せた。


ゆっくり大切な人を
優しく、抱きしめる。


トクトクと心音が聞こえる。
那佑の命を刻む音。

⏰:10/11/24 22:06 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#391 [愛華]
「たかの………なに………」

那佑は震えた声で言った。
怖がっているのかもしれない。
俺の次の言葉を聞くのを。


「…………そのまんま、聞いて」


俺は那佑の肩に顔を埋める。
那佑のにおい。


温かくてしめったような
俺を安心させてくれるにおい。

⏰:10/11/24 22:17 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#392 [愛華]
きっとこれで最後。
最後にするから。抱きしめたい。



「………俺、那佑と会えて
すっげぇ幸せだったよ」

「あたしもだよ。だから……」

「今までの人生で一番幸せだった
多分、ダントツだよ。
めちゃくちゃ大事だった」


大事………だよ。今も。

⏰:10/11/24 22:23 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#393 [愛華]
「………なんで……?
どうして………あたしのせい?」

「那佑はなにも悪くないよ」

「じゃあ理由を言ってよ……」


那佑が震えているのがわかる。
でも俺は、もうなにもできない。


大切なものは全ては守れない。
いずれ離さなくちゃいけない時が
来てしまう。


大事なものをつくりすぎて
失うことが恐怖となった。

⏰:10/11/25 21:00 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#394 [愛華]
大切すぎて失うことが恐い。


そんな悩みさえも幸せだった。



俺にたくさんの幸せを教えて
くれて………



ほんとうに、ありがとう。


何度言い尽くしても足りないけど

⏰:10/11/25 21:03 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#395 [愛華]
強い風が吹いた。
もうすぐ春がやってくる。

那佑と出会った季節。


その前に君に別れを告げる。




「……隆則……なんか言ってよ」

絞りだしたような那佑の声。

君を傷つける。

きっと、今までにないくらいに
残酷に。強く。

⏰:10/11/25 21:08 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#396 [愛華]
'



「…………重いんだよ」

「………………え?」


頼む。耐えろ。あと少しでいい。


「那佑のことを背負い続けるの。
俺、弱いからさ…………
もう、限界なんだよ……」

⏰:10/11/25 21:11 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#397 [愛華]
「なに…………それ」

「そのまんまだよ………
ごめんな、俺にはもう無理だ」


大丈夫。あと少し。
あと少し耐えられる。


「約束………したじゃんかぁ…」

「そーゆーのが重いん……」




あれ………

⏰:10/11/25 21:14 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#398 [愛華]
なんでだ?声でねぇ。

苦しい。張り裂けそうだ。




あぁ……終わってしまう『実感』



嘘ばっか並べて
いまさら苦しくなって


俺はほんとうに馬鹿者だな。

⏰:10/11/25 21:16 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#399 [愛華]
俺は那佑を更に強く抱きしめた。

忘れたくない。この体温。



強く、強く、


こわれてしまうほどに。



悲しみがばれないように。

⏰:10/11/25 21:19 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#400 [愛華]
好きだ。好きだ。


誰よりも大好きだ。



もうそんな言葉じゃ表せない。




それくらい、大切だった。


君もそうであったのなら
それでもう充分だよ。

⏰:10/11/25 21:21 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#401 [愛華]
「…………さよならだ」


「隆則……………



どうして、隆則も泣いてるの」



うるせーな。見んなよ。

見ないでくれ。


今声でないからそんなことも
言えないよ。

⏰:10/11/25 21:24 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#402 [愛華]
でも最後に言いたかったこと。


これを言ったあと、俺は
間違いなく後悔するだろう。

だから最後に言いたかった。



俺の罪を償うための願い。



涙が次つぎと溢れる。

しっかりしろ、俺。

⏰:10/11/25 21:27 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#403 [愛華]
抱きしめる腕に力を入れた。


「たかの…………」

「直純の…………っ」




いつか桜が咲く季節。
海がきれいな季節。
ひんやり空が心地好い季節。
白い景色が光る季節。


そのどれもに君がいるだろう。

「直純の側にいてやってくれ…」

⏰:10/11/25 21:31 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#404 [愛華]
「………な、に」

「…………頼むよ……」




最後の最後の願い。


お前をこんなにまで傷つけて
それでも守らなくちゃいけない

直純との約束。


いや、それだけじゃない。

⏰:10/11/26 20:42 📱:840SH 🆔:9CbmupDw


#405 [愛華]
約束だから、とかだけじゃない。


だから、このまま直純を置いて
那佑と笑いあうなんて無理だ。


幸せになんてなれないんだ。



言い訳にすぎない。


理由なんかなんでもいい。


直純の、側にいてやって。

⏰:10/11/26 20:47 📱:840SH 🆔:9CbmupDw


#406 [愛華]
それは俺じゃ意味がない。



あいつがずっとほしかったもの



それを俺は奪ってしまったから




今までありがとう。


俺は


君が 大切でした。

⏰:10/11/26 20:50 📱:840SH 🆔:9CbmupDw


#407 [愛華]
温かくなりはじめた3月。



桜の季節がくるまえに


俺たちは、終わった。



頭の中でこだまするのは君の声



風が俺達を優しく包んでいた。

⏰:10/11/26 20:52 📱:840SH 🆔:9CbmupDw


#408 [愛華]
-那佑side-

⏰:10/11/26 20:53 📱:840SH 🆔:9CbmupDw


#409 [愛華]
なにも考えたくない。

頭が殴られたみたいに
ズキンズキンする。


覚めない悪夢みたいだ。






私は最愛の人を失った。

⏰:10/11/27 18:29 📱:840SH 🆔:NYYirQXU


#410 [愛華]
大切で、大切で。
どうしようもないくらい好きで。
初めてこんな恋をしたの。



でも………終わっちゃったね。



涙が枯れることはなく
あたしの心を濡らしていく。


あなたの心は今どこにありますか

⏰:10/11/27 18:56 📱:840SH 🆔:NYYirQXU


#411 [愛華]
'





「…………那佑……」




……………あれ?
あたし…………


「あず、さ?…………だよね」

「…………うん。そうだよ」

⏰:10/11/27 21:13 📱:840SH 🆔:NYYirQXU


#412 [愛華]
時計を見ると、もうお昼休み。
授業中ずっと寝てたみたい。


……なんか、頭ガンガンする。
息苦しいな………なんだろこれ。


「あんた寝過ぎ。夜寝てない?」

寝てないんじゃなくて、
寝れないんだよ。


夜になると、目がジンジン
焼かれたみたいに熱くなるの。

⏰:10/11/27 21:18 📱:840SH 🆔:NYYirQXU


#413 [愛華]
「……目、赤いけどどうしたの?
毎日、病院通ってて疲れてるん
じゃないの?大丈夫?」

「……平気だよ。寝不足なだけ」

梓は心配そうな顔をした。
ほんとに心配かけてばかりだ。



「あのさ……タカ最近病院に
来てないみたいなんだけどさ、
………那佑、なんか知ってる?」

⏰:10/11/27 21:31 📱:840SH 🆔:NYYirQXU


#414 [愛華]
「………知らない、よ」


ドクンと体が脈うった。


「そっか……家に行っても
いつもいなくってさ。やっぱり
相当ショックだったのかな…」


あたしは何も言わず微笑んだ。



梓には、まだあたしたちのことは
言っていない。言えないでいる。

⏰:10/11/27 21:39 📱:840SH 🆔:NYYirQXU


#415 [愛華]
隆則との別れを思い出すだけで
泣きそうになってしまう。

口に出したら、
それを認めたことになっちゃう

わかってる。
もう戻らないって。

でも認めたくない。


大切な人がいなくなっていく。


いやだ。こわいよ。
離れていっちゃわないでよ。

⏰:10/11/28 00:02 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#416 [愛華]
「……………梓」

「なに?お腹すいたの?」




「梓は………ここにいるよね?」


「…………え?」


「離れていっちゃわないよね?
ずっとここにいるよね?」

⏰:10/11/28 00:04 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#417 [愛華]
「なに、どうしたの………」


梓はオロオロと困った顔をした。


頭が痛い。息苦しい。
めまいがして、喉がヒューヒューと息をするたびに鳴る。


「梓………ここにいるよね。
直純くんや……隆則みたいに……

離れていったり……しない…で」

⏰:10/11/28 00:08 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#418 [愛華]
「え………タカが……?

てゆーか那佑。あんた顔色…」



「行かないで……置いてかな…」



なんか熱いな。苦しいな。
頭がフラフラする。
あれ。世界が歪んでいく。
目がみえなくなってく……


「那佑!!!」

⏰:10/11/28 00:11 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#419 [愛華]
'





ゆめをみていたきがする。

しあわせなあったかい


あたしののぞんでいるゆめ。


隆則も直純くんも梓も

お父さんとお母さんもいる。

⏰:10/11/28 00:13 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#420 [愛華]
隆則がわらってる。


この前のは嘘だよ、って。


直純くんもわらってる。


俺が事故にあうわけないだろ。
白石は馬鹿だな、って。



なにさ、みんなで騙して。
ひどいなぁ。

⏰:10/11/28 00:17 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#421 [愛華]
ほら、みんなで帰ろう。


あたしね、病気治ったの。
こんなに走り回れちゃうよ。



あれ?そこにいるのは誰?

そんなとこいないで、帰ろう。



…………………純さん……?

⏰:10/11/28 00:19 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#422 [愛華]
看護師姿の純さん。



純さんだ!!
会いたかったよ。
あたしね、腕時計を買ったの。
純さんにあげたかったの。


……あれ?ないや。どこ?

あ、そうだ。隆則にあげたんだ。

ごめん、純さん。腕時計ないや。

⏰:10/11/28 00:22 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#423 [愛華]
純さんはにっこり微笑んだ。


変わってないな、その笑顔。
優しくって、安心する。


純さんは黙ってあたしの左の
薬指を指した。
そこには隆則がクリスマスに
くれた小さな指輪がはまってる。




これが………欲しいの?

⏰:10/11/28 00:24 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#424 [愛華]
純さんは頷いた。



だめだよ、だってこれは……



「隆則くんはもういないんでしょ
だったらそんなのはめてたって
辛いだけじゃないの?


約束を破った彼が…憎くない?」

⏰:10/11/28 00:27 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#425 [愛華]
憎い?隆則が?


約束を破った?隆則が?



しあわせなゆめが崩れていく。



いやだ。覚めたくない。
行かないで。みんな。
いやだよ、いやだ、いやだ!!


隆則は…………泣いていた。

⏰:10/11/28 00:30 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#426 [愛華]
泣いてる。隆則が。
あなたが悲しいとあたしも悲しい
泣かないで。大丈夫だよ。


「………………さよならだ」





さよなら…………?



振り向くと純さんは微笑んでいた

⏰:10/11/28 00:33 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#427 [愛華]
「…………夢から覚めなさい。
たくさんやらなきゃならない
ことがあるんでしょう?


強くなりなさい。
泣いても負けないで。
あたしが………」





見守って、いるよ。




ずっと。ずっと。

⏰:10/11/28 00:38 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#428 [愛華]
'





「……………ん……」


「…………!!那佑!!
おばさん、那佑が……!!」


「那佑!!聞こえる!?」

「那佑!!」


お父さん…お母さん…梓……

⏰:10/11/28 00:43 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#429 [愛華]
酸素マスクをあてられていた。
うっとうしい。


ここは………病院……?



「あたし………なしたの…」

「倒れたのよ。最近いろいろ
無理しすぎたみたいで………
よかった……ほんとうに……

こんなお母さんでごめんね…」


お母さんは泣いていた。

⏰:10/11/28 00:45 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#430 [愛華]
お母さんは今まで
あたしがしたいように、
わがままを聞いてくれた。

放っておいてくれる。
普通の子と同じように。


それがどれだけ難しくて、
そして、苦しかったのか……


今お母さんの涙を見てわかった。


ありがとうね。

⏰:10/11/28 00:49 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#431 [愛華]
あたしは軽い診察を受けて、
お母さんとお父さんは医者から
話を聞くためにでていった。




「………大丈夫?」

二人きりになった病室で
梓が重く口を開いた。


「…………うん」

「ごめん………気づけなくて…」

⏰:10/11/28 00:53 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#432 [愛華]
「梓のせいじゃないよ……」

あたしはゆっくり目をつむる。
体と心が分離したみたいな感覚。



「………タカにね、電話したの。
でも俺は行かない、の一点張り
で…………」

「隆則は、来ないよ」

そう。あれはゆめなんだ。

⏰:10/11/28 00:55 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#433 [愛華]
「タカと……なにがあったの」



強くなりなさい。



「隆則は…………来ない。



もう………来ないかもしれない。


会えないかもしれないよ…」

⏰:10/11/28 00:58 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#434 [愛華]
笑ったつもりだったけど
溢れたのは涙だった。

あふれる涙は枕を濡らしていく。



大丈夫。今日の夜をこえれば
きっと強くなれる。
もう泣かないから。


口に出したくなかったのは
認めなくなかったから。

でも認めなくっちゃいけない。

隆則は、もう戻ってはこない。

⏰:10/11/28 01:03 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#435 [愛華]
しあわせなゆめから覚める。


隆則は、いない。
どこにもいない。

直純くんも、いない。






ねぇ隆則。

今どんな思いでこの夜を
過ごしていますか。

あなたも苦しいのですか。

⏰:10/11/28 01:08 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#436 [愛華]
'





スースー………


規則正しい呼吸音。
こうしてみるとただ眠ってる
だけみたいだね。


直純くん。
あなたはいつ戻ってくるのかな

⏰:10/11/28 15:49 📱:840SH 🆔:ht7jgmU6


#437 [愛華]
あたしは2週間の入院を終え、
直純くんのお見舞いに来ていた。


この2週間の間、隆則は
一度もあたしのところには
来なかった。


でも、それでよかった。

いろいろと考えて、整理が
自分の中でついたから。


まだわからないことはあるけど。

⏰:10/11/29 01:09 📱:840SH 🆔:hy/O786s


#438 [愛華]
「直純くん。あたしね、病気なの 心臓の病気。黙っててごめんね」


当たり前だけど返事は、ない。


「今のままだとね、25歳まで
生きられないんだってさ。
馬鹿みたいだよね。こんなに
あたしは元気なのに………」


少しずつ進む病状。
増えていく薬の量。

今回は軽い発作だったけれど
次がどうなのかなんてわからない

⏰:10/11/30 01:23 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#439 [愛華]
未来を予想することが怖い。
今までほんとにあなたに
頼ってばかりだったんだね。



ガラッ………



「あ………那佑きてたんだ」

「あ、今きたとこだよ。
退院の時はいろいろ手伝って
もらっちゃってごめんね」

「ううん。大丈夫だよ」

⏰:10/11/30 21:33 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#440 [愛華]
梓は持ってきた花を花瓶にいれ
窓の側においた。

優しいかおりの花。


「…………もう平気なの?」

梓はあたしの隣の椅子に座ると、
小さな声で尋ねた。


「うん。いろいろ考えたよ。
正直ちょっと辛かったけど。

で、結論も出したから。
梓には報告しておくね」

⏰:10/11/30 21:43 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#441 [愛華]
「けつ………ろん?」

「あたし、直純くんを支える。
側にいて一緒にいるから」



「直純と………つきあうの?」

「そうじゃないよ。あたし今は
まだ隆則が忘れられないもん。

あたしだって馬鹿じゃない。
隆則が本心であたしに別れを
告げたわけじゃないって
ちゃんとわかるから。」

⏰:10/11/30 21:51 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#442 [愛華]
そう。ちゃんとわかるよ。

だから直純くんを支える。
ずっと、側にいる。


「隆則が罪悪感に押し潰され
そうな中で、別れを選んだ。

そして最後に言ったの。
直純の側にいてやってくれって。

どんなに辛かったのか、
わかるから。だから隆則の願いを
あたしがちゃんと叶える。

直純くんの側で直純くんが目を
さますまで、さましたあとも。

ずっとずっと側にいる」

⏰:10/11/30 21:57 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#443 [愛華]
「………まだ、好きなのに?」

「今はね。でもきっと癒える。
そう信じてる。

もし直純くんを好きになれたら…


まぁまだそこまでわかんないや」



あたしは笑った。
梓は悲しそうな顔だったけど。

⏰:10/11/30 22:00 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#444 [愛華]
「……なんで?どうして……
別れなきゃいけなかったの……」


「梓のいうとおりだね。
あたしもそう思ったよ。

でも、もう決めたの。
誰になんて言われたってあたしは
直純くんの側にいる。」


大切な人だから。

隆則も、直純くんも。

⏰:10/11/30 22:08 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#445 [愛華]
ずっとずっと迷って。
病院のベッドの上で考えた。

限られてる時間の中で、
自分がするべきこと、したいこと


大切な人たちの記憶に残りたい。


誰かに支えてもらうだけじゃ
なくて。


自分も誰かを支えたいの。

直純くん。はやく、目をさまして

⏰:10/11/30 22:21 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#446 [愛華]
ずっと待ってるから。


直純くんに次会うときには
きっと笑えるから。



「おかえり」って言うから。



でもその日は

あたしの覚悟よりも早く

すぐにやってきたのです。

⏰:10/11/30 22:27 📱:840SH 🆔:3qS5Fofs


#447 [愛華]
よくわからない。

ただ、走った。


いつかきっとまた会える。

信じていたけれど

その日が来るとやっぱり怖くて。



ちゃんと笑えるかなって。

⏰:10/12/01 20:50 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#448 [愛華]
'





「………………」


あたしは待合室にいた。


直純くんが目覚めた。


そう聞いて病院に来たのに。

⏰:10/12/01 20:54 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#449 [愛華]
………勇気が、出ない。


会いたい。
のに会いたくない。



あたしは………弱虫だ。




会いたくてたまらなかった。
また笑ってほしかった。

隆則と、仲直りしてほしかった。
それはもう叶わないけれど。

⏰:10/12/01 22:25 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#450 [愛華]
「…………どうしよ……」


扉をあければ直純くんがいる。
一歩が踏み出せない。



「あの…………」


俯いていると、一人の看護師が
あたしに話しかけてきた。


「いつも品野さんのお見舞いに
来られてる方ですよね?」

⏰:10/12/01 22:27 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#451 [愛華]
「えと…………はい」

「直純くん目覚まされました。会いに行ってあげないんですか?」

「………はい」

あたし今、どんな顔したかな…

きっとすごく不細工だった。



「あの……たかにいさんって?」

「え…………?」

⏰:10/12/01 22:36 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#452 [愛華]
「直純くん、目を覚ました後、
そう呼ばれたので……。
ご存知ないですか?」


直純くんが、隆則の名前を。


あの日、会いに行く約束を
直純くんも大切にしていて。




あたし、なにやってんだろ。

⏰:10/12/01 22:49 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#453 [愛華]
直純くんも………


きっと今、苦しい。



「あの……お友達なんですか?」

「……………はい。
病室、行きます。会います」



直純くん。
あなたは、大切な、友達です。

⏰:10/12/01 22:55 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#454 [愛華]
'








直純くんは、窓を見ていた。


なんだろう、この気持ち。

言葉にはできないけれども
きっとすごく素敵な気持ち。

⏰:10/12/01 22:59 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#455 [愛華]
やっと、やっとだ。



少し痩せた直純くんの姿。


すごく、懐かしく感じる。





「………直純、くん」

直純くんはゆっくり振り向く。

⏰:10/12/01 23:01 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#456 [愛華]
「………お、白石じゃん。
久しぶり。元気だったか?」

直純くんはそう言って笑った。

いつもどおりの、
ほんとにいつもどおりの笑顔。



「元気…………だったよ」

「……はは。また泣いてんのか。
てゆーかさ、酸素マスクって
なんか邪魔くさ…………」

⏰:10/12/01 23:03 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#457 [愛華]
'




ガタン………


椅子が倒れる。


あたしは直純くんに抱き着いてた


「ちょ……白石………」

「……………………」

⏰:10/12/01 23:05 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#458 [愛華]
「あの、白石……苦しい……」

「なんだその態度は!!
アッサリしすぎでしょ!!
もっとためてよ!!ばか!!」

「あ、すいません…………」



抱きしめる手が震える。


なにもなかったかのような再会
なにをあんなに迷ってたの?


あぁ…………涙が止まらない。

⏰:10/12/01 23:08 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#459 [愛華]
「心配かけて、ごめんな?」


大切な人がすぐそこにいる。
大切な、友達が。


これが、隆則が守りたかった
直純くんという存在。


「………おかえりなさい」

「えー……ただ今戻りました」



日の光が少しだけ足元を、
あたしの道を照らしてくれた。

⏰:10/12/01 23:16 📱:840SH 🆔:.AxXMTAc


#460 [愛華]
'




何度も何度も願った。

隆則が願った直純くんの幸せ。

隆則、わかるかな?

あなたの願いが私の願いなの。


隆則。私は今でもまだ好き。



でもきっと、いつか、


この傷が癒えて。

⏰:10/12/04 13:24 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#461 [愛華]
もし、隆則じゃない大切な人が

あたしが愛するひとができて。

隆則もそんなひとができたら。


また笑って会えるかもしれない。


「あのときは幸せだったね」

そう言って笑えるかもしれない。

今も幸せだよ、って。

⏰:10/12/04 23:12 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#462 [愛華]
そのときあたしは涙を流す。


嬉し涙だったらいいなぁ。


たくさんの人に出会って
たくさんのものを愛して


あたしは、生きたい。

あわよくば、ずっとずっと。


もっと長く。

あたしはそんな夢を見る。

⏰:10/12/04 23:15 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#463 [愛華]
隆則。


言いたいことはたくさんあるよ。
でもきっと伝えきれないね。





また、春がきたよ。


あなたと出会った季節が。

桜が咲いて、散る季節が。

⏰:10/12/04 23:19 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#464 [愛華]
-直純side-

⏰:10/12/04 23:20 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#465 [愛華]
「うぉー!!すげー桜!!」

「ちょっと直純くん。そんなに
乗りだして落ちないでよね」

「いっそ落ちればいいのに……」

「てめ、梓。今なんつった!?」

「いっそ落ちればいいのに。」

「そのまま繰り返すな!!」


桜が、散りはじめた季節。春。

⏰:10/12/04 23:23 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#466 [愛華]
あの日から1ヶ月。


白石は、いつも俺の側にいる。



「隆則とは、別れたの」

「あたし、病気なんだ。
今のままだと25までに死ぬ。」



なんで、笑いながらそんなこと…
そんな悲しそうに笑うなよ。

⏰:10/12/04 23:26 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#467 [愛華]
なんとなく、わかった。

隆兄がそうしたんだろう。
隆兄から別れを告げたんだろう。


そこには俺でも理解はできない
くらいの想いがあった。

でも間違いなく、俺もそこには
関係している。それはわかる。


だから、白石は側にいる。
俺のそばにいてくれてるんだ。
隆兄の、ために。

なんて残酷な。
それでも離れたくはない。

⏰:10/12/04 23:32 📱:840SH 🆔:fdl99JMc


#468 [愛華]
たとえ俺を見てくれなくたって
側にいてくれるならいい。


悲しそうに笑いながら俺に
病気のことを話してくれた白石

それだけで充分だ。

未来は来てからでいい。


今、白石はここにいるんだから。

⏰:10/12/05 17:47 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#469 [愛華]
でも、どうしてだろう。



もともとの目的、隆兄への復讐。
それは成功して、白石も俺の
側にいてくれてる。


すべて俺の望んだとおりになった


なのに。
たまにどうしようもなく苦しい。
隆兄は今、どうしてるのか。

⏰:10/12/05 17:52 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#470 [愛華]
知らなくてもいいんだ。
知る必要なんかないんだ。


でも俺の隆兄への想いは……
多分、憎しみなんかじゃない。





「…………直純くん?」

びくっとして振り向くと、
白石が不思議そうに俺を見てた。

⏰:10/12/05 17:55 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#471 [愛華]
「はやくしないと授業に遅れちゃうよ。梓も行っちゃったし」

「あー……めんどくせー……」


桜が切ないくらいに綺麗で。



「…………さぼるか」

「えぇ!?」

「めんどくせーし。桜見てたいし
白石もここ、いれば?」

⏰:10/12/05 17:58 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#472 [愛華]
「んー……まぁいっかぁ」


白石は俺の隣にちょこんと
腰を下ろした。


…………やべ。かわいい。
なんか………抱きしめたい。


白石の長い黒髪が風になびいてて
すげー綺麗で。


あー俺マジで白石が好きなんだ。

⏰:10/12/05 18:01 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#473 [愛華]
「あー……もう三年生だねー…
直純くん、卒業後は?」

「俺?上に上がるけど」

「楽だしねー…あたしは……」

そこで白石は止まった。
なんとなく、考えてることは
わかったけど。
俺がなにか言えるような問題
なのか。まだ戸惑ってる。



「まぁ……も少ししたら考えよ」

⏰:10/12/05 18:08 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#474 [愛華]
「……うん。ゆっくりでいーよ」

「そーだね。ゆっくりだね」

白石は微笑んだ。


女は失恋すると強くなって
そして、美しくなる。


だれかがそんなこと言ってたな。

その失恋の原因は俺。
なんていう皮肉なんだろう。
笑っちまうよな。

⏰:10/12/05 18:20 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#475 [愛華]
「………隆兄のことまだ好き?」


「………へ?」




あれ?俺、今……なに言った?

隆兄のこと………好きかって?



うわー!!馬鹿だ俺!!
自爆じゃん!!

⏰:10/12/05 18:30 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#476 [愛華]
気がついたら口に出してた。
傷つくに決まってるのに。



「…………うん。大好き」

白石は俺を見ることなく、
でも迷いなく言った。


…………ほら、な。
でも改めて言われると………

やっぱりきつい。
俺だって、白石が好きなんだ。
気づいてるくせにさ。

⏰:10/12/05 18:35 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#477 [愛華]
「……じゃあなんで、俺の側に
いるの?期待しちゃうじゃん」

「直純くんを支えたいから」



………嘘つくなっての。
「隆則から頼まれたから」って
言えばいーじゃん。



あー……全部自爆だけどさ。
ちょっとしくじったな。

わかってたのにやっぱり傷つく。
心は思い通りにはならない。

⏰:10/12/05 18:39 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#478 [愛華]
「あたしは、直純くんが大事」

「………うん」

もう何回もきいたよ。
それは「友達」としてだろ?


「あたしは隆則とは全然違う
次元で直純くんが大切なの。
諦め悪いって思われるかもしれ
ないけど、まだ隆則が好き。
でも戻れるなんて思ってないよ。

まだ、時間がたってないから」

⏰:10/12/05 18:49 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#479 [愛華]
うん。まだ1ヶ月。
今日までこの話題には一回も
触れてはいなかったけれど。


「でもいつか忘れられるよ。
そう信じてる。


あたしには25を越えられる
保証なんて全くないからさ。

それでもいいって人がいたら…
あたしはまた誰かを好きになれる
かもしれないけどね?」

⏰:10/12/05 18:53 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#480 [愛華]
俺は、それでもいいよ。


でもその言葉は飲み込んだ。
今はまだそれは言うべきじゃない



「………隆兄からさ、頼まれた
んじゃないの?俺の側にいろって」


………うわ、聞いちゃった……
いや、この際もういーや。
今日はとことん傷ついてやる。

⏰:10/12/05 18:57 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#481 [愛華]
「…………直純くんは今幸せ?」


「………え?」


「隆則は直純くんの幸せをいつも願ってたんだよ。それを
あたしに託したんだ。

あたしが直純くんの側にいること
で直純くんが幸せになるなら…
あたしは側にいるよ」


俺の、幸せ……?

⏰:10/12/05 19:00 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#482 [愛華]
「うん、幸せだよ」

「じゃあ側にいる。あ、あと
普通に隆則の話とかしていーよ。
気つかわなくていーから」


白石はそう言って笑った。



目の前で笑っている女の子を
まるで天使みたいだと思った。
心から愛しく思った。


そんな俺は馬鹿かな?

⏰:10/12/05 19:03 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#483 [愛華]
俺の幸せのために、側に。


今はそれでいいんだ。
それがいつか、君の幸せにも
なってくれたら……

そんな幸せはないだろーな。




「あれ?さっきの俺の質問…」

「えーなんのことー?」

「………うまくはぐらかすよな」

⏰:10/12/05 19:07 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#484 [愛華]
桜がきれいに咲いて、散って。


今俺は幸せだ。
そう心でつぶやいた。


いつか、俺を見てくれ。
隣にいる俺を好きになって。


側にいるだけじゃ満足できない
そんな瞬間がきっとくる。



それが恋なんだ。

⏰:10/12/05 19:11 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#485 [愛華]
-梓side-

⏰:10/12/05 19:25 📱:840SH 🆔:/eY1KTpY


#486 [愛華]
あたしの家から歩いて5分。
そこに隆則の家はある。
昔はそこに行くのが楽しみで
楽しみで仕方がなかったっけ。



「梓ー、これ隆ちゃんに届けて」


リビングで昔のアルバムを見て
いると、お母さんにそう言われ
から揚げを差し出された。

…………いいにおい。

⏰:10/12/06 14:18 📱:840SH 🆔:AVjEAaMQ


#487 [愛華]
「タカに届ければいーの?」

「うん。つまみぐいしないでね。向こう行ってからたべな」

「んー……わかった……」



あたしはホカホカのからあげを
袋にいれ、玄関をでた。

もうすっかり春。


上着はもういらないや。

⏰:10/12/06 14:22 📱:840SH 🆔:AVjEAaMQ


#488 [愛華]
あれから1ヶ月。


隆則と那佑の別れから。


二人ともまだお互いに好きな
くせに。

その別れにどんな意味があるの?

あたしにはちっともわかんない。


きっとずっとわかんないんだ。

⏰:10/12/06 14:25 📱:840SH 🆔:AVjEAaMQ


#489 [愛華]
そこには二人しか理解できない
様々な想いが交差していて。


あたしには止める力もなくて。


那佑が倒れた次の日。
あたしはタカに詰め寄った。


那佑を傷つけたことが許せなくて
どうしようもなく許せなくて。


でも………タカも苦しかったよね
那佑を傷つけた自分を1番責めたのは…………タカ。

⏰:10/12/06 14:30 📱:840SH 🆔:AVjEAaMQ


#490 [愛華]
それからちょくちょくタカに
会いに行ってるけど、
タカは抜け殻みたいで。
妙に元気ぶってるみたいで。




ピンポーン





「………わ!!梓か!!」

「久しぶり。母さんからおかず
おすそ分け。上がっていい?」

⏰:10/12/06 14:36 📱:840SH 🆔:AVjEAaMQ


#491 [愛華]
「おー助かるわ。誨もいるぞ」

そういってタカは笑った。

あ、ちょっと元気になったみたい



あたしがからあげを温めなおしていると、風呂あがりの誨さんが部屋からでてきた。


「あ、梓ちゃん来てたんだ」

「から揚げありますよー」

⏰:10/12/06 14:41 📱:840SH 🆔:AVjEAaMQ


#492 [愛華]
「マジで?ラッキー!!」

誨さんはから揚げを2個も
口に放り込んだ。
なんでもおいしそうに食べるな…


「お前食べすぎ。残せよ」

「だって久々の肉だしさー」


よかった。少し元気みたいで。
ちょっと安心したな。

⏰:10/12/07 14:01 📱:840SH 🆔:kzDtIACQ


#493 [愛華]
食べ終わると、誨さんはソファに横になって、そのまま
眠りについてしまった。



「誨のやつ、起きないな……」

タカはそういってあくびした。
寝てないのかな?



「ん?梓、そっちの袋は??」

「あ、これ?」


タカはあたしが持ってきていた
もうひとつの袋を指さした。

⏰:10/12/07 23:30 📱:840SH 🆔:kzDtIACQ


#494 [愛華]
「これはね………直純のだよ」


タカの顔色が変わった。


あたしがあの日から聞きたくて
聞きたくて仕方なかったこと。





「タカ………後悔してないの?」

⏰:10/12/07 23:34 📱:840SH 🆔:kzDtIACQ


#495 [愛華]
「………本題はそっちかよ」

ふーっと息をはく。


「答えて。後悔してる?」




「してるに決まってんじゃん」



………やっぱり。

⏰:10/12/11 18:59 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#496 [愛華]
「前も言ったけど、もう一回
言うよ。那佑と戻ってよ」


「それは無理。梓。よく聞いて。



俺は後悔するのを知ってて
那佑との別れを選んだんだ。
だからそれでいいんだよ」



なにそれ………意味わかんない。

⏰:10/12/11 19:05 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#497 [愛華]
「じゃあこれから一生、那佑とも直純とも会わないつもり?」


「…………」


「そんなの間違ってるでしょ。
直純とタカは兄弟なんだよ。
那佑は今も………タカを大切
だと思ってるんだから」



間違ってる。そんなこと。


「タカ………」

⏰:10/12/11 19:12 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#498 [愛華]
「わかってるよ」

「……………え」


「今のまんまじゃダメだって。


だから、直純と会って話す」


「タカ…………」

「那佑とも。戻れなくてもいい。
でも支えていたい」

⏰:10/12/11 19:20 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#499 [愛華]
タカも進みたいんだ。
それは………那佑も一緒。



もう那佑とは戻れない。
タカの強い気持ちが伝わる。


だから………



「タカ、こっち向け」

「へ、向けって……」


バチン!!!

⏰:10/12/11 19:29 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#500 [愛華]
「いってぇぇぇぇ!!!
梓てめぇなんでビンタ!?」

「言っただろーが!!
那佑を傷つけたら許さないって。
まぁこれで許したげるよ」

「んだよ………ってぇー…」


あたしは袋を持ち、立ち上がる。
話はすんだからもういい。


「いい加減ケジメつけろよ、
ばーか!!へたれ!!」

⏰:10/12/11 19:35 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#501 [愛華]
ふん、ざまーみやがれ!!


まぁでも………よかったかな。
誰も傷つかなくていい別れ
なんてものは存在しない。


だからしょうがないんだ。

その傷がなおる日まで。

その日が来る前に、


みんなで笑えたらいいんだ。

⏰:10/12/11 19:41 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#502 [愛華]
「……梓ちゃん、帰るの?」

玄関を出たところで、いつ起きたのか誨さんに声をかけられた。


「俺寝てたんだけど……
なんの話してたの?」

「タカ、直純と会うそうです。
まぁへたれなんで、やっとか
って感じなんですけどね」

「そか……やっとか……」

誨さんは言いながら隣に来る。

⏰:10/12/11 19:48 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#503 [愛華]
「えと………誨さん?」

「送る。暗いし、危ないよ」



誨さんとあたしはなんなのかな。
わかんなくて不安になる。
あたしだって自分のことを
考えるんだよ。
幸せになりたいんだよ。



帰り道は、なにも話さなかった。

⏰:10/12/11 19:50 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#504 [愛華]
「じゃ、はやく寝ろよ」

「ありがとーございました」


家の前まで送ってもらっちゃった
何回送ってもらったかな……



「…………誨さん」

「………ん?なした?」

「あたし多分…………


誨さんのこと好きなんだと思う」

⏰:10/12/11 19:54 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#505 [愛華]
「…………はいぃ!?」


あ、赤くなった。
てゆーかなんだよ、その声。



「いや……ジョーダンでしょ?」

「試してみますか?」

「え、どーいう……」





ちゅ。

⏰:10/12/11 20:01 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#506 [愛華]
一瞬。ほんとに一瞬。


ほんとはこんなん嫌だったけど。
なんか勝手に………ね?




「………あず……今……」

「ばーか。気づけばーか!!
てか女の子からキスさせんな。
もっかい言おうか?ばーか!!」

⏰:10/12/11 20:07 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#507 [愛華]
真っ赤になって言葉になってない誨さんにまくしたてる。


何歳だよ、あんたは。
純情すぎるでしょ。
ってかふつー逆でしょ。



「じゃね、誨さん。そゆことで」

「いやいやいや……おかしい!
流れ的におかしいだろ!?」

⏰:10/12/11 20:15 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#508 [愛華]
「おかしくないよーなんも」

「え………?おかしくない?
普通?これ、普通?」

「うん。普通。普通」


誨さんはうーんとうなってる。



「………じゃーね、誨さん」

「え、あ…………」


あたしは誨さんの答えを聞かず
家に入った。

⏰:10/12/11 20:34 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#509 [愛華]
答えを聞くのが怖いのもあったし
ちょっとしくじったかなって、
後悔もしてたから。


今じゃなくてもよかったかなって
ちょっと恥ずかしくて。


怖かった。
なんでもないような顔すんのが
精一杯だったんだって

気づかれたくなかった。

⏰:10/12/11 20:37 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#510 [愛華]
部屋の窓から誨さんがうずくまってるのが見えた。

困らせちゃったのかな。


あ、そーいえばファーストキス
だったな。今の。




悲しくなった。


勝手に期待して傷ついて。

⏰:10/12/11 20:42 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#511 [愛華]
勝手にキスして、困らせて。


自分で自分の気持ちがわかんない



でも、これが、好き。



誨さんが、好き。


好きだから、キスしたの。

⏰:10/12/11 20:44 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#512 [愛華]
タカでもなくて、那佑でもない。


今まで大切な人のことばっか
考えてた夜。


でも、今日の夜は。



自分とあなたでいっぱいになった。


胸がきゅうってなった。

⏰:10/12/11 20:48 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#513 [愛華]
あなたも同じ気持ちかな。


タカ。那佑。直純。

ごめんね。こんな時に
自分のことばっか考えて。


でも、今日だけだから。


ちょっとだけ幸せを願いたい。

女の子をしてたい。


好きな人を想って眠りたい。

⏰:10/12/11 20:55 📱:840SH 🆔:wGC9P6l.


#514 [愛華]
'






「……………なにこれ?」

「見りゃわかんでしょ、から揚げ
だよ。自然解凍オッケーだよ」

「いやいや………朝学校きて
冷凍からあげ渡されて、どんな
リアクションとればいーの?」

⏰:10/12/12 13:09 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#515 [愛華]
そりゃそーですね。


「昨日、お母さんに直純んとこ
からあげ持ってけって渡されたんだけど忘れちゃったからさ。
腐るといけないから冷凍で。」

「だからって…………え?
ってか…梓の母ちゃん俺の家
知ってんの?」

「全部知ってるよ、今までのこと全部。心配してたよ。また
昔みたいに遊びにおいでってさ」

⏰:10/12/12 13:14 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#516 [愛華]
虐待のことも………全部。


「……なんなら家に住む?」

「絶対やだ。梓の父ちゃん
いびきうるせぇもん」

「あー……確かにね」


昔はよく泊まりあいっこしたな…


…………ガリガリ…

⏰:10/12/12 13:17 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#517 [愛華]
「…梓、お前腹減ってるからって冷凍のまま食べんなよ。」

「いや、これはこれでウマイ。
冷凍からあげ流行るかも」

「流行んねーよバカ」



…んで、あんたも食べるんかい。

二人で並んで冷凍からあげを
食べる。周りから見れば
ひまわりの種でも食べてんのか?って感じだろう。

しかし誰一人つっこまない。

⏰:10/12/12 13:22 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#518 [愛華]
「………あのさぁ梓」

「んー?何?」




「…隆兄のこと、もういーの?」


食べる手を止める。

周りの騒音が一瞬だけ止まった
ような気がした。

⏰:10/12/12 13:26 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#519 [愛華]
「…………や、あのさ………
白石、隆兄と別れて………
梓は隆兄と…………」

直純は言い訳みたいにあたふた
なんか言ってる。


……直純も、那佑が好きなんだ。



「…なーるほど。タカとあたしが
付き合えば、直純にとっては
都合がいいってわけね?」

⏰:10/12/12 13:34 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#520 [愛華]
「や、そーいうわけじゃ……」

「でも、ざーんねんでした。
あたし好きな人いるもーん」


「…………えぇ!?マジで!?
お前あんなに隆兄一筋
だったのに……」

「新しい恋を始めたんですー」


直純はそっかぁーとつぶやいて
半解凍状態のからあげを口に
運んだ。

⏰:10/12/12 13:42 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#521 [愛華]
「………実りそうなの?」


…………どうなんだろう?
昨日自分からキスしちゃったけど
困らせちゃっただろうし……
脈あるかもって思ってたのは
単なる勘違いだったのかな?


………あ、また落ち込んできた。


「…………多分ムリかなぁ…」

⏰:10/12/12 13:59 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#522 [愛華]
「………ふーん………」



なんだろ、これ。
タカの時こんな気持ちに
なったっけ………


期待したぶんだけ辛いのかも。
タカの時は、心のどっかで
諦めてた気がするな。


「……じゃー俺ら一緒かぁ。
実らないって辛いね〜」

⏰:10/12/12 14:45 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#523 [愛華]
実らない…………か。



「……………タカが……」

「…………ん?」


「タカが、あんたに会うって」


「隆兄が…………俺に?」

直純の顔がゆがむ。
びっくりしたのか、予想はしてたのか、読み取れない。

⏰:10/12/12 14:57 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#524 [愛華]
「…………どーするぅ?
那佑を返せって言われたら!」

「絶対いやだ」


…………即答ですか。


まぁなんとなくわかってたけど。




「…………わがままなのかな?」

⏰:10/12/12 15:05 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#525 [愛華]
わがまま?………なにが?



「白石がまだ隆兄を好きなのは知ってる。それでも側にいてほしい
実るとか実らないとか……



どうでもよくなるくらいに
ただ、側にいてほしいんだ」


切ない横顔は

まるで自分を見てるみたいで。

⏰:10/12/12 15:17 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#526 [愛華]
重ねて見ていた。
自分の姿を。


実らない恋を何年も続けて
新しい恋をしてもまた傷ついて

切なくて、苦しくて。
でも側にいてほしくて。




「…………わがままかな?」

もう一度繰り返した直純の言葉
あたしは答えられなかった。

⏰:10/12/12 15:49 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#527 [愛華]
とりあえず………


「……………クサい」

「はぁ!?なんだそれ!!」

「直純クサい。クサすぎ。
『側にいてほしいんだ』…とか
乙女ちっくなこと言うな」

「おとめ………ちっくぅ?
なんだそりゃ!!俺は自分に
正直に生きてるんだよ!!」

「セリフが似合ってない」

「死ね!!」

⏰:10/12/12 18:00 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#528 [愛華]
「あいにく、まだ死にません〜」

「………ムカつく!!」


低レベルな言い争いをしている
うちに、冷凍からあげがなくなってしまった。
明日、お腹こわさないかな……



…………なんか、疲れたなぁ。
いろいろ頑張りすぎた……。

⏰:10/12/12 18:05 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#529 [愛華]
あたしは机にうずくまった。
急に眠気が襲ってくる。
午後の授業大丈夫かな………



「………なに、眠いの?」

「………てゆか疲れた……
あたしゃねー毎日毎日まーいにちタカや那佑のこと考えてんの」

「………ふーん……」

どうしたらみんなが笑えるのか
そればっか考えて疲れて……
自分のことなんか後回しで。

⏰:10/12/12 20:41 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#530 [愛華]
「…………いんじゃないかな」



「ん?なんか言ったか?梓」



「わがままでも。自分を一番に
思うのはみんな同じだしさ……


応援はしないけど否定もしない。そのままでいんじゃない?」


それは本音だった。

⏰:10/12/12 20:47 📱:840SH 🆔:Pg1nhX6s


#531 [愛華]
誰かを大切に思う。
その気持ちは間違いじゃない。

自分の幸せを願う。
それもきっと間違いじゃない。


だから、それでいいんだ。

きっとそれが正しいんだ。


例えその先に希望がなくても
自分がわがままになっちゃうのは

止められない欲望。

⏰:10/12/13 23:24 📱:840SH 🆔:LirqFtQA


#532 [愛華]
「なんの話してるのー?」

「おわ!!白石!!
委員会終わったのかよ!!」

「那佑!!気配を断たないでよ!忍者かおまえは!!」


いつのまにか那佑は後ろにいた。

……どっから話きいてたかな…


「お腹すいた……昼休みに委員会とかひどいよねーほんと」

⏰:10/12/13 23:30 📱:840SH 🆔:LirqFtQA


#533 [愛華]
那佑はため息をついていすに
ついた。


「なんかからあげのニオイ……
からあげ食べた?」

「あーすげぇ食感いいやつ」

「お風呂あがりにぴったりの」

「……はぁ?なにいってんの」


そんなくだらないことで笑って
る那佑を見ると、安心した。

⏰:10/12/13 23:39 📱:840SH 🆔:LirqFtQA


#534 [愛華]
那佑。だいすき。


急にそう思った。


ずっと笑っていて。
幸せでいて。

誰を好きになってもいいよ。


でも、笑っていてね。
もう泣かないでね。


いつも笑顔でいてね。

⏰:10/12/13 23:44 📱:840SH 🆔:LirqFtQA


#535 [愛華]
そういつも願ってた。


でも運命は残酷で。


叶わない想いを募らせていた那佑
毎日潰されそうになりながらも
笑ってた。精一杯。


来るのが怖かった『その日』。
来るなんて信じたくなかった。


『その日』のタイムリミットは
すぐそこに迫っていたんだ。

⏰:10/12/13 23:52 📱:840SH 🆔:LirqFtQA


#536 [愛華]
-隆則side-

⏰:10/12/15 19:54 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#537 [愛華]
今でも目を閉じれば思い出す。


那佑の笑った顔。怒った顔。
すねた顔。照れてる顔。


でも最後に思い出すのは
やっぱり泣いてる顔で。


あの日別れた日の
那佑の泣いてる顔。


胸に刻まれて消えない記憶。

⏰:10/12/15 19:57 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#538 [愛華]
傷つけて傷ついて。
後悔して、苦しくて。



でもいつか笑える。
また会える。


それは今じゃないけれど。


そして思った。




直純に、会いたい。

⏰:10/12/15 20:09 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#539 [愛華]
笑えているだろうか。
もう傷ついていないかな。

あんなことで許されるなんて
思ってなんかないけど。



あの日の続きを。



あの日、伝えたかったこと。
遅いかもしれない。
でも、それでも、伝える。


なぁ。 直純。

⏰:10/12/15 20:15 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#540 [愛華]
-直純side-

⏰:10/12/15 23:45 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#541 [愛華]
隆兄に、会いに行く。


これはあの日の続きなんだ。



何を言うつもりなんだろうか。
隆兄は……何を俺に……



でも、笑って話せたらいい。


それは白石の望みでもある。

白石は俺と隆兄の和解を誰より
願っていたから。

⏰:10/12/15 23:48 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#542 [愛華]
それは叶わないだろうか。


白石が俺の側にいること。
それは隆兄が白石に頼んだんだ。


でも俺は『ありがとう』なんて
言うつもりなんてない。
『ごめん』も。言わない。


俺は…自分の力で白石を振り向かせたい。誰の力も借りない。


俺が白石を笑顔にしたい。

⏰:10/12/15 23:52 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#543 [愛華]
白石は渡さない。
手放したのは………隆兄だから。
後悔したって遅い。



大事なものは
いつなくなっちまうかなんて
誰も予想できないんだから。



だから、白石は渡さない。

絶対に、渡してたまるか。

⏰:10/12/15 23:56 📱:840SH 🆔:4C424oZI


#544 [愛華]
'








「久しぶりだな。元気か?」


それが隆兄にかけられた
最初の言葉だった。

学園祭以来なんだ。隆兄と会うの

⏰:10/12/17 20:27 📱:840SH 🆔:JGd1mE7k


#545 [愛華]
隆兄は、笑っていた。

だから俺も笑った。





「……俺は学園祭以来だけどさ
隆兄は違うよな?」

「……え?」

「見舞い……来てくれたろ?
事故った時………」

「……はは。一回だけな」

⏰:10/12/17 21:15 📱:840SH 🆔:JGd1mE7k


#546 [愛華]
隆兄は笑いながら、ベンチに
座った。

あの日と同じ公園なのに
違うように見えるんだ。




「………那佑から聞いた。
虐待とかのこと。全部」

「そっか。あ、でも今はなんも
ないからな?あのジジイに恩
なんかこれっぽっちも感じて
ないから」

⏰:10/12/17 21:28 📱:840SH 🆔:JGd1mE7k


#547 [愛華]
「話聞いた時、殴りに行こうか
とか思ったけどさ」

「はは、マジで?」

「……まぁそんな権利ないし」



『権利がない』


隆兄は自分を責めてたんだ。
この6年間…………ずっと。

知らなかった俺はなんて
幼かったんだろう。

⏰:10/12/17 21:48 📱:840SH 🆔:JGd1mE7k


#548 [愛華]
「………学園祭じゃないよ?」

「ん?なにが?」

隆兄は不思議そうに俺を見た。


そう。6年振りに会ったのは…
学園祭じゃない。



「ほんとはクリスマスん時に
会ってるんだよ?俺ら」


「……………えぇ!?」

⏰:10/12/17 21:52 📱:840SH 🆔:JGd1mE7k


#549 [愛華]
「隆兄、なんか知らんけど
すっげ酔ってたから………」

「ぜ………全然覚えてねぇ…」

だろうな。



「……俺、隆兄を憎んでるわけ
じゃないから。もう違うよ」

「え……なにそれ。憎めよ」

「憎まない。俺は………

隆兄がうらやましかった」

⏰:10/12/18 00:04 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#550 [愛華]
俺の欲しいものを持ってる。

うらやましくて、うらやましくて
仕方なかったんだ。




「………ひとつ聞いていい?」

「なに?那佑のこと?」


「…白石と別れたのは俺の為?」

⏰:10/12/18 00:08 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#551 [愛華]
答えは知ってる。
でも確かめたい。

隆兄は……嘘をつくだろうか。




「………違うよ」

「嘘つくなよ」

「嘘じゃない」


いや、嘘だろーが。
思い切り未練たらたらのくせに。

⏰:10/12/18 00:15 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#552 [愛華]
「……なぁ、直純」

「なんだよ?」



「那佑の、側にいてやってな」


胸が、痛んだ。




針で刺されたみたいに。


でも隆兄は……
もっと痛かっただろ?

⏰:10/12/18 00:19 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#553 [愛華]
「……俺も白石の側にいたい」

「そか?そんならよかった。
那佑はさみしがりやだけど…

お前が思ってるより強いから。」


うん。でなければきっと
隆兄との別れは乗り越えられ
なかっただろう。


「那佑と………いつかまた会う」

⏰:10/12/18 00:26 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#554 [愛華]
その言葉は、隆兄自身が自分に
言い聞かせてるみたいだった。


「那佑の病気のことは?」

「梓から聞いた」

「ん。なら安心」

安心って…………
ほんと、最後まで俺と白石の
心配しかしてねーじゃん。



「話は、それで終わり」

⏰:10/12/18 00:29 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#555 [愛華]
「終わり?」



「直純が1番好きなやつと
絶対に幸せになれ。絶対に」


隆兄の瞳は強くて、鋭くて。



「当たり前だろ。隆兄もな」


だから俺も、それに応えるように
強く、強く答えた。

⏰:10/12/18 00:33 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#556 [愛華]
ひどいことをしてるかもしれない

好きあってる二人を引き離して


それでもいい、と思う。


隆兄の願いを無駄にしたくない。

なんてのはきれいごとかも
しれないけれど。

梓は「そのままでいい」と
言ってくれたから。

わがままでいよう。

⏰:10/12/18 00:36 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#557 [愛華]
「………遊びに来いよ」

「うん。金なくなったら行く。
隆兄今、なにやってんの?」

「大学行きながらバイト」

「そっか……」


近いうちに、また会いたい。





隆兄は、俺の兄さんだから。

⏰:10/12/18 00:40 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#558 [愛華]
'









隆兄と別れたあとも考えてた。



幸せって………なんだろ…?

⏰:10/12/18 00:41 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#559 [愛華]
「幸せになれ」

「幸せになるなら側にいる」


隆兄も、白石もそう言った。


でも今はわかんないんだ。

俺の幸せがなんなのか。


ただ、白石の側にいたい。
笑った顔が見たい。

そう思うんだ。

⏰:10/12/18 00:43 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#560 [愛華]
桜が咲き乱れる道を歩いてた。


………もう春も終わりかぁ…

すぐに夏が来る。
秋が来て……冬が来て……

また春が来る。


時間は待ってはくれない。

いつもおいてかれる。


ひとり、残される。

⏰:10/12/18 00:46 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#561 [愛華]
「…………あれ、直純くん?」


その季節の中に、君がいること。



「白石?なんでここに……」

「や、ケーキつくったからさ
直純くんにも分けてあげよーと
思って来たんだけど………
直純くん家にいなくってさ」

「ずっと待ってたのか?ここで」

⏰:10/12/18 00:50 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#562 [愛華]
「あ、うん。すぐ帰るから!」

「帰るな」

「へ?いや………」






気づいたら抱きしめてた。
いつか、白石がそうしたように。


「な…………おずみくん」

⏰:10/12/18 00:53 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#563 [愛華]
「……ん、ちょっとこのままで」

「なんか………あった?」

白石は小さく尋ねた。
見なくても心配そうな顔を
しているのがわかってしまう。



「………なんでもない」

「そっか……」

「な、白石」

⏰:10/12/18 00:56 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#564 [愛華]
「なに?」

「キスしていい?」


そう言った瞬間、体が
引きはがされた。

そりゃもう、思いっ切り。



「いいわけあるか!!ってか
最初からそれが狙いだったの?
弱ってるふりして!!」

「あ、バレタ」

⏰:10/12/18 01:00 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#565 [愛華]
道の真ん中なのも忘れて叫ぶ
白石を笑ってごまかす。


弱ってなんかないよ。
抱きしめたかったから
抱きしめたんだよ。

なんて言えないけどさ。



「……叫んだらお腹すいた」

「なに、ご飯食べてないの?」

「いや、食べたけど………」

⏰:10/12/18 01:04 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#566 [愛華]
白石はじーっとケーキを見つめる


「………食べる?」

「食べる!!」

いや、俺にくれたんだろ……


まぁ、いっか。



ゆっくり、好きになってもらおう

⏰:10/12/18 01:06 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#567 [愛華]
今は、白石の笑顔だけでいい。




あ、そっか。




「じゃー家で食うか」

「食う!!」



これが、『幸せ』なんだ。

⏰:10/12/18 01:07 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#568 [愛華]
>>545
×学園祭
〇送別祭

>>554
×梓から聞いた
〇本人から聞いた


ミスばかりすいません……


今日の更新分
>>544-567

⏰:10/12/18 01:22 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#569 [愛華]
-那佑side-

⏰:10/12/18 16:04 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#570 [愛華]
'








「心機能が低下してきてます。
以前より早いペースで、病状が
悪化してきています」



………嘘だよ。
ちょっと具合が悪いだけ。
息苦しいだけ。

⏰:10/12/18 16:08 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#571 [愛華]
なにも変わらないよ。
ねぇ、そうでしょう。
わたしまだげんきだよ。


お願い、気づかせないで。
見て見ぬふりでいいから。
このままでいさせてよ。




神様。お願いです。
わたしは…………




まだ、生きたいんです。

⏰:10/12/18 20:28 📱:840SH 🆔:AYlUKGrk


#572 [愛華]
'





「おーい!!白石!!」


「んぁー??あ、直純くんだぁ」

「寝ぼけてんのかお前?次
体育だから行かなきゃだぞ?」

「……いーよ。べつに。
どーせ見学だし。つまんないし」

⏰:10/12/19 11:33 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#573 [愛華]
「見学はいつものことだろ?」


………行きたくない。
元気に動いてるみんなの姿を
見たら………今のあたしは
何を言ってしまうかわからない。


「………ごめん、具合悪くて。」

「え、マジで!?大丈夫か!?
薬………飲んだのか!?」

⏰:10/12/19 11:36 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#574 [愛華]
「うん。大丈夫だから。
行ってきていーよ??」



一人きりの教室。
黙って薬を飲む。
以前とは比べものにならないほど増えた薬の量。


……こんな量の薬見せらんない
っての。



ゆっくりと記憶を掘り返す。
認めたくなかった………事実。

⏰:10/12/19 11:40 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#575 [愛華]
'




『………先生。那佑は……』

『今のままなら恐らく………
20歳まで心臓がもたない確率が
非常に高いです』


どうして?25歳までって……
言ってたじゃん。ねぇ?
ねえ…………ねぇ?

⏰:10/12/19 11:45 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#576 [愛華]
『…………嘘つき!!!
先生の嘘つき!!!』


あたしは気づいたら叫んでた。

恐怖。不安。絶望。


いやだ。いやだよ…………
止まることなく、溢れる涙。



『………手術するという手も
あります』

⏰:10/12/19 11:47 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#577 [愛華]
『手術をすれば………那佑の
病気は治るんですか?』

お母さんは泣いていなかった。
お父さんも………。


『………なんとも言えませんが
今の段階では手術はできません。
というのも、この手術のリスク
が高すぎるからです』


リスク…………危険性?

⏰:10/12/19 11:52 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#578 [愛華]
『確率だけでいえば、成功する
確率は良くて40%。
術後もいつ容態が急変するか
わかりません。

手術によるメリットよりも
リスクのほうが圧倒的に高い』


………成功すれば、治る。
失敗すれば………死ぬ。



遠いところにあった未来。
今はこんなに近くに見える。

⏰:10/12/19 11:58 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#579 [愛華]
『今の那佑さんの心臓では手術
には耐えられないでしょう。
薬で心臓の具合が少しでも
良くなってこれば…………
手術を受けることはできます』


お父さんもお母さんも…あたしも
何もいえなくて。
頭の中が真っ白で。




…………でも。

⏰:10/12/19 12:06 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#580 [愛華]
『………手術は受けません。
心臓の具合が良くなっても』


『………!?那佑!?
どうして………』

『心臓の具合が良くなったって
手術を「受けられる」だけなん
でしょう?成功する保障なんて
どこにもない。なら受けない』




お父さん、お母さんの視線が
刺さる。二人も同じくらい
辛いはずなのに………。

⏰:10/12/19 12:15 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#581 [愛華]
ほんとは怖かっただけなんだ。
手術に失敗して………



大切な人たちに会えなくなる。
隆則とだって。いつか笑って
会うって決めていたのに。



あたし、まだなんにもしてない。
まだやりたいことがたくさん
あったのに………

⏰:10/12/19 12:19 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#582 [愛華]
苦しい。辛いよ。


心が黒い闇に覆われていく。





その夜は、ベッドで涙が枯れる
まで泣いた。


1階から、お父さんとお母さん
の泣いている声が聞こえた。

あたしのせいで。あたしの……

⏰:10/12/19 12:23 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#583 [愛華]
こんな時。やっぱり浮かぶのは。




『……………隆則………』




あなたなんだ。
やっぱりあなたなんだよ。
頭を撫でて。抱きしめて。
「大丈夫だよ。ここにいるよ」
って笑ってみせてよ……

⏰:10/12/19 12:31 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#584 [愛華]
あなたのぬくもりが欲しい。
他にはなにもいらないから。
一瞬だけでもいいから。
側にいてほしい。




でも、いないんだ。

1番側にいてほしい時に

あなたはもういない。



もう、抱きしめてはくれない。

もう……………戻ってはこない。

⏰:10/12/19 12:40 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#585 [愛華]
'







キーンコーンカーンコーン……


気がついたら、授業の終わりを
告げるチャイムが鳴っていた。


………やば……また寝てた…

⏰:10/12/19 19:34 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#586 [愛華]
「あぁーいってぇー!!」

「ったく……あとで保健室
行きなよね。運動オンチ!」


1番に教室に入ってきたのは
直純くんと梓だった。


「えー?直純くんどうしたの?」

「梓のやろーが足ひっかけた!」

「ひっかかるほうが悪い」

⏰:10/12/19 19:41 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#587 [愛華]
「あはは、一理あるね!!」

大丈夫かな。
ちゃんと笑えてるかな。


「あーぁ、喉かわいちゃった。
飲み物買ってくるよー」

「梓、俺と白石コーラな!」

「ほいほい」


梓は教室からだるそうに
でていった。
他のクラスメートたちも少しずつ教室に戻ってきて、騒がしい。

⏰:10/12/19 19:45 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#588 [愛華]
その騒がしさが心地好かった。



……あれ、なんか視線が………



「………な、直純くん?なんで
そんなに見るの?」

直純くんはあたしをじーっと
見つめる。……は、恥ずかしい。


「………目、赤いなぁ……」

⏰:10/12/19 19:50 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#589 [愛華]
直純くんがポソッと呟いた。


……最近寝れてないからな…



「……なんかあったろ?白石」

「なんかって………なにが?」

「俺に言えないよーなこと?
目赤くするくらい寝ないで…
それぐらい悩んでること?」


全部………お見通しなんだね。

⏰:10/12/19 19:56 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#590 [愛華]
「最近疲れてるだけだよ。
心配しなくてい………」




まぶたに優しいぬくもりが宿る。
それは直純くんの唇から伝わって
ぬくもりは熱となり、あたしの
体をかけめぐっていった。


優しくて、あたたかくて。

すごく、切なくなった。

⏰:10/12/19 20:03 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#591 [愛華]
「直純くん……今、目にキス…」

「よく寝れるようにおまじない。
なんかあったら言えな?」

そういって直純くんはいつものようにニヒッと笑った。



切ない。苦しい。
胸の奥から感情が溢れてくる。


それは涙となって現れた。

⏰:10/12/19 20:08 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#592 [愛華]
「…………白石!?」

「あれ、あたし……」


止まらない。次から次へ溢れる。
涙ってどうやって止めるの?


「おぃー!品野が白石泣かせてんぞー!女たらしー!」

「るせー!!見せもんじゃねぇ!散れ散れ!!」

⏰:10/12/19 20:16 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#593 [愛華]
直純くんがクラスの男子たちに
怒鳴りながら、一生懸命涙を
ぬぐってくれる。
でも、涙は止まらない。



だって、あったかかった。
あたしが求めていたぬくもり。




くれたのは隆則じゃなくって…
直純くんだった。

⏰:10/12/19 20:24 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#594 [愛華]
何度も思ったんだ。

こんなにあたしを大事にしてくれる直純くんを好きになれたら。

幸せになれるんだろうかって。



でもあたしが求めるのは
あなたではないひとなんだ。


切なくて、申し訳なくて。

ぬくもりは、涙となった。

⏰:10/12/19 20:36 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#595 [愛華]
直純くん。ごめんなさい。



あたしはひどいひとです。
隆則がいない苦しさを
あなたの優しさで埋めてる。

優しさに、甘えてる。


それでも側にいてくれますか。
友達でいてくれますか。


こんなあたしを許してください。

⏰:10/12/19 20:53 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#596 [愛華]
話さなくちゃいけない。


あたしのタイムリミットは
すぐそこまできている、と。


その日が来るまで、笑顔で。
側にいたいんだ、と。


そう言ったらあなたは


なんて言うだろうか。

笑って「当たり前だ」と言って
くれたら………嬉しいな。

⏰:10/12/19 21:00 📱:840SH 🆔:zGGkPD26


#597 [愛華]
-直純side-

⏰:10/12/20 23:44 📱:840SH 🆔:LC4fKTpw


#598 [愛華]
'







昨日まで当たり前のように
笑っていた白石の姿。


今はこんなにも遠い。


離れていくなよ。なぁ。
神様がいるのなら俺は。

一生恨み続けてやる。

⏰:10/12/20 23:46 📱:840SH 🆔:LC4fKTpw


#599 [愛華]
『………20歳まで生きられないかもしれない』



1番辛いのは白石だったはず。
だから、なにも言わなかった。
言えなかった。



俺はベッドに寝転んだまま
白石の言葉を頭の中で何度も
リピートさせていた。


……風邪をひいたみたいに
頭が重くて、ぼーっとする。

⏰:10/12/20 23:49 📱:840SH 🆔:LC4fKTpw


#600 [愛華]
ブーッブーッ……



マナーモードにしていた携帯が
電話がきたことを知らせた。


画面には『梓』の文字。



「………はーい。直純ですよー」

「ん。あたし。今平気?」

⏰:10/12/21 17:15 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#601 [愛華]
「うん。なんか用?」

「そーゆーわけじゃないけど…
直純、大丈夫かなって」


大丈夫なわけないだろ。
あんなこと聞かされて……
でも、それは梓も同じか。
親友の死が身近に迫ってる。
平気なわけないよな。


「………びっくりしたよ。
いつかはこんな日が来るだろうって思ってたけど……今なんてな」

⏰:10/12/21 17:19 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#602 [愛華]
今日の放課後。
誰もいない教室で、梓と俺に
白石から告げられた事実。


白石は、20歳まで生きられない
かもしれないということ。

手術は成功すれば治るけれど、
確率はかなり低いということ。

手術を受けるつもりはない、ということ。


俺も梓も何も言えなかった。
今日まで白石は……この事実に
どれだけ苦しんだんだろうか。

⏰:10/12/21 17:24 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#603 [愛華]
「………あたしも同じだよ……」

梓は消え入りそうな声で言った。


「どうして那佑なんだろね。
那佑じゃなきゃだめだったのかな
他の誰かじゃだめなのかな」

「梓………」

「ひどいこと言ってる?あたし。
でもこんな気持ちになるなら…


自分が病気のほうがよかった」

⏰:10/12/21 17:32 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#604 [愛華]
『あたしは梓とか直純くんよりも
先にいなくなっちゃうかもしれない』


白石は今日そう言った。


『でも、諦めない。絶対に
諦めない。一生懸命、生きる』


強い瞳でそう言った。


『……だから、側にいて下さい
笑ってて下さい。あたしを……
支えてください…』

⏰:10/12/21 17:39 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#605 [愛華]
当たり前だろ、そんなの。
白石が嫌だっつっても……
側にいて支えてやるから。


「……梓。誰がなったってきっと同じだったんだよ」

「うん………」

「俺たちは白石を支えよう。
いつも通り笑えばいいんだ。


「うん。うん…………」


俺たちができるのは笑うこと。
白石が不安にならないように
支え続けることなんだ。

⏰:10/12/21 17:44 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#606 [愛華]
「………タカには……」

「隆兄には言うな。やっと
2人の傷が癒えてきたのに、またこのことで掘り返す必要はない」

「……ん。わかった……」



本当は、怖かった。
今2人が再会したら、
もしかしたら………って。

汚いかもしれないけれど。

⏰:10/12/21 17:48 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#607 [愛華]
今はまだ会わせたくない。
白石をとられたくない。


俺だって毎日必死なんだ。
大事なものを守ることに


必死なんだよ。




大丈夫。明日、また笑える。
いつも通りに、笑える。

⏰:10/12/21 17:51 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#608 [愛華]
-那佑side-

⏰:10/12/21 17:51 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#609 [愛華]
「はぁぁぁ!?」

「え?え?ダメ?」


いつもの昼休み。
梓と、直純くんと、あたしと。


「バイトしたいってあんた…
する必要なんかないでしょ?」

「したことないからしたいの!」

梓と直純くんは怪訝そうな顔。

⏰:10/12/21 22:36 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#610 [愛華]
あの事実を話してからも、
2人はいつも通り接してくれる。
それが何より嬉しくて。



「なんか働いてみたいんだよね。
時間がもったいない気がしてさ」

「そんなにバイトしたいの?」

「うん!!」

⏰:10/12/21 22:40 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#611 [愛華]
「………じゃああたしも」

「梓!!一緒にやってくれる?」

「え、じゃ俺も……」

「ううん。直純くんはいい。」

「………なに、この疎外感…」


あ、そういう意味じゃなかったんだけどな。迷惑あんまかけた
くなかった、っていう意味……

だったんだけど。

⏰:10/12/21 22:48 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#612 [愛華]
うわ、すねてるし。
後ろ向いちゃったし。


「な、直純くん。大丈夫だよ。
ね?心配しないで?」

「………どーせ!!俺は!!」

「ほら、プリンあげるから」

「食いかけじゃん!!しかも
残り5分の1程度!!」

「直純ぃ、すねるなって。那佑は
あたしがちゃんと守るから!」

⏰:10/12/21 22:54 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#613 [愛華]
「なんだよちくしょー!!」



5月の中盤。
いつもの楽しい日々。


限られた時間で何がしたいのか。
何度も考えたけれど…


きっと、これが正しい。
色んなことをやろう。

その日が来た時後悔したくない。

もちろん、諦めてはいない。

⏰:10/12/21 23:04 📱:840SH 🆔:yAxc/byQ


#614 [愛華]
きっと20歳の夜を越えてみせる

そう強く、願うんだ。



それまでは笑ってすごそう。


そんな毎日にあなたはいない。

慣れていくのがいいことなのか
悪いことなのかわからない。

まだこんなにも好きなのに。
側に戻って来てほしいのに。

⏰:10/12/22 01:32 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#615 [愛華]
傷は治らない。
たまに開いて痛むんだ。


今、あなたは
なにをして
なにを見て
なにを食べて


誰を思ってるんだろう。



私は今日もあなたを想うのに。

⏰:10/12/22 01:35 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#616 [愛華]
'






「………ただいまぁ」

「あ、那佑おかえりー!」

家に帰れば、優しいお母さんと
お父さんが迎えてくれる。

1年前のあたしなら絶対に
考えられなかったことだ。

⏰:10/12/22 01:37 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#617 [愛華]
「お母さん、あたしね梓とバイト
しようと思うんだけど……」

「いかん!!お金に困ってるならお父さんにいいなさい!」

いや、お父さんいつからいた?
びっくりしたよ今。
どっから出てきたんだよ。


「そーいうわけじゃないの!
やってみたいな、って思ったの」

「………お母さんは…うーん…」

⏰:10/12/22 22:55 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#618 [愛華]
「やっぱりダメかなぁ?」


さすがにお母さんも反対かな…
バイトなんて心配かけるし。

でもお母さんは。

「…まぁ梓ちゃんも一緒なら…
絶対無理はしないでね?」

「……!!ありがとう!!」

「那佑にバイトなんて……
危ない男につかまったりしたら
どうするんだ?」

⏰:10/12/22 23:00 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#619 [愛華]
「だいじょーぶだってば!」

「あ、ほら!!つきあってる
男性に送ってもらったら?」



ドキン


「………あー別れたんだ。
言ってなかったっけ?」

「え………そうなの?」

「まぁモテるひとだったしね!
また好きなひとつくるよ!」

⏰:10/12/22 23:21 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#620 [愛華]
あたしはなるべく声のトーンを
落とさないように言った。


「好きなひとなんかつくらんでいいんだ那佑は!!わかったな!」

「あーもうわかったから!
お願いだからお父さん黙って!」

「お父さんに向かってなんだ
その言い草は!!」

あたしとお父さんが言い合いを
している様子を、お母さんは
複雑そうに見ていた。

⏰:10/12/22 23:47 📱:840SH 🆔:zdiU6mws


#621 [愛華]
多分、お母さんはわかってた。
あたしが傷ついてること。

でもなにも言わなかった。


いまだに立ち直れない自分が
情けない。
自分で決めた道なんだ。
納得もしたはずなのに……

やっぱりまだ苦しい。

いつになれば忘れるのかな。



…………わかんないや。

⏰:10/12/23 00:02 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#622 [愛華]
あなたと次に会うのはいつ?
あたしは笑ってる?
あなたも笑ってる?

思い出として振り返れる?


そうだといいな。




でもそんな願いは崩されて
あなたとの再会は

あたしの中のなにかを
簡単に変えてしまった。

⏰:10/12/23 00:10 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#623 [愛華]
'







「………えーと。今日から
入ってもらう白石さんと速水さんですね?よろしくお願いします」

「「よろしくお願いします!」」

⏰:10/12/23 00:13 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#624 [愛華]
数日後。
学校から少し離れた小さな
ケーキ屋でバイトすることが
決まった。
かわいいピンクのお店。


正直、ちょっと不安はあったけど
楽しみな気持ちのほうが勝った。


帰りに、ここのケーキ買って
帰ろうかな……

⏰:10/12/23 00:19 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#625 [愛華]
なんて思ってた。

「……ね、那佑。店長思ったより若いね!かっこよくない?」

「あんた誨さんいるくせに…」


確かに店長は20歳前半くらいで
しっかりしてそうなひと。
あたしは別に好みじゃないけど。



「……えーでは。自己紹介は
あとでしてもらうので仕事を
最初教えてもらう指導係の人を
紹介しますね」

⏰:10/12/23 00:26 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#626 [愛華]
「あ、はい」

「もう来ると思うんだけど……」

店長が言い終わらないうちに
ドアが開く音がした。


あ、来た。
あたし人見知りするからな……
上手く話せるかなぁ……




「すいません、遅れましたー
つーか店長。裏口しまってたんすけど。入れませんでしたよ」

⏰:10/12/23 00:30 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#627 [愛華]
'





……………………え?




「え?俺閉めてないけど……
あ、白石さんたちか。2人とも
裏口は閉めなくていーからね」

「………え、白石……?」

⏰:10/12/23 00:32 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#628 [愛華]
聞き慣れた声。
ずっと聞いていない声。


うそ。そんな……




その声の男の人はゆっくりと
振り向く。
黒が似合うそのひとは。




「……………隆則……」

⏰:10/12/23 00:37 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#629 [愛華]
「あれ?2人知り合い?」



時が止まった気がした。
周りの音がなにも聞こえない。



「……那佑………」

「隆則なんでここに……」

言葉が出ない。
息ができない。

…………苦しい。

⏰:10/12/23 15:35 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#630 [愛華]
「…………タカ!!あんた
こんなかわいい店でバイトして
たの!?知らなかったよ!」

いきなり梓が声をあげた。



「えー!速水さんも知り合い?」

「はい、幼なじみなんです」

「へーそうなんだ。いろいろ
都合いいかもね。じゃ、裏で
仕事教えてあげて、隆則くん」

⏰:10/12/23 15:40 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#631 [愛華]
「あ…………はい」


隆則はあたしから目をそらして
ドアからでていった。
冷たい。前とは別人みたい。


「………気持ちはわかるから。
普通にしてな。今は。」


梓の声で我にかえる。



どうして?こんな形で…………

⏰:10/12/23 15:45 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#632 [愛華]
'





「……えーと、じゃあ仕事教えるから。ちゃんと覚えろよ」

「その前にタカ。いつからここでバイトしてたの?」

「んーと……1ヶ月くらい前?
時給いいし。材料運ぶだけだし」

「確かに、ケーキづくり
とか似合わないしねー」

⏰:10/12/23 15:49 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#633 [愛華]
2人の会話を黙って聞く。


なんだろ、これ…………

あたし、なんでここにいるの?





「…………那佑も、久しぶり」

「…………え、うん」


隆則があたしに笑顔を向ける。
笑顔だけは、前と同じで。

⏰:10/12/23 15:54 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#634 [愛華]
「お前また小っさくなったな。
ちゃんとメシ食ってんのか?」

「た、食べてるよ!!」


そういって乱暴に頭をなでる。
大きくて、あったかい。


隆則の、手。



そっか。隆則はもう『普通』。
もうぎくしゃくしなくても
いいんだ。

⏰:10/12/23 15:57 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#635 [愛華]
気まずくなる必要なんてない。


前と同じように。
接すればいいんだ。


笑って挨拶すればいい。



それができたら……


あたしの傷は完全に『癒える』。

⏰:10/12/23 15:59 📱:840SH 🆔:dtgS1Dxc


#636 [愛華]
そう信じて。
あたしも『普通』に接するんだ。




「……で、月曜日と火曜日は
このダンボールを3箱。
フルーツは傷つきやすいから
丁寧に運べよ。水曜日はこの
倍の量になるからな」

「うわーいいにおいー!!」

「梓……聞いてんのお前?」


隆則の説明を聞いて、せっせと
メモをとる。

⏰:10/12/24 16:31 📱:840SH 🆔:amrEgRJU


#637 [愛華]
「那佑、けっこうハードだけど
お前に大丈夫なのか?」



それは……病気のことで?
聞きたくても聞けない。
隆則には話していないから。
病気の進行のこと………。


「……うん。平気だよ」


かすれた声しか出なかった。

隆則の目が、見れない。

⏰:10/12/24 16:42 📱:840SH 🆔:amrEgRJU


#638 [愛華]
久しぶりに見た隆則を改めて
見ても、少しも変わってなくて
ちょっとだけ安心した。


でもあなたにまだ言ってない
ことがあるから………


後ろめたくなった。


「……それじゃ、これを向こうに運んで並べて」

「………なんかタカ先輩みたい」

「みたい、じゃなくて先輩なんだっつの!!」

⏰:10/12/25 13:53 📱:840SH 🆔:3uZIMuUg


#639 [愛華]
'




いつのまにか初日は終わった。
隆則が言っていたとおり
ハードだったけど、梓は
なんてことなさそうにこなして
いたので、びっくりした。



「あー終わったー!!疲れた!」

「梓楽勝そうだったじゃんー」

⏰:10/12/26 20:05 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#640 [愛華]
チラッと隆則のほうを見ると
あくびをしながら上着を着てた。



………ほんとに普通だなぁ…
ちょっとガッカリしてる自分が
いるのはなんでだろう?


こんな自分に自己嫌悪するよ。




「なーゆちゃん!!」

⏰:10/12/26 20:08 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#641 [愛華]
「………はい?」

聞き慣れない男性の声。


「これからよろしくね!」

「はぁ………」

その男の人はあたしに微笑んだ
けど…………誰だっけ?
同じバイトの人だよね?
さっき自己紹介したときに名前
きいたはずなんだけど……


「……すいません、名前……」

⏰:10/12/26 20:22 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#642 [愛華]
「もしかして覚えてない?」

「………すいません」

「俺、永島ちひろ!」

「……かわいい名前ですね」

「言うなよ、気にしてんだから」

そういって永島さんは笑った。
笑った時に見える八重歯が
印象的で、人懐っこそう。

⏰:10/12/26 20:26 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#643 [愛華]
「那佑ちゃんてさ、隆則と
知り合いなの?友達?」

「まぁ、そんなとこです」


早く帰りたいんだけど………
でも梓と隆則が話してるみたい
だし……まぁいっか。


「なに?那佑ちゃんも隆則を好きでここのバイトはいったの?」


…………あたし、も?

⏰:10/12/26 20:37 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#644 [愛華]
「……どういう意味ですか?」

「いや、隆則ってさ、普通に
カッコイイじゃん?だから
隆則目当てで色んな女の子が
このバイトに入るんだよね。
まぁみんな振られてやめてっ
ちゃうんだけどねー」

「………そうなんですか。でも
あたしは違いますよ」

「ほんと?よかったー」


……ん?どういう意味だろ?
脈ないからやめとけって意味?

⏰:10/12/26 20:47 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#645 [愛華]
「那佑ー!!帰ろー!!」

梓が外で呼んでいるのが聞こえた


「あ……じゃ永島さん。また。」

「うん。またね!!」


……なんかいい人そうだな。
仲良くできそうな感じ。


「ごめん梓、お待たせー」

⏰:10/12/26 20:53 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#646 [愛華]
「ったく。永島さんとなに
話してたの?」

「いや、別に……」


隣に隆則いんのに言えるわけない


「じゃあタカ、また明日ね」

「気ぃつけて帰れよ。那佑も」

「………うん。ばいばい」

⏰:10/12/26 20:58 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#647 [愛華]
隆則と店の前で別れ、梓と
一緒にバス停に向かった。


……あ、なんか急に疲れが
出てきたなぁ………



「………びっくりしたね。まさかタカがここでバイトしてる
なんて……知らなかった」

梓は小さな声で言った。


……うん。あたしもそうだよ。

⏰:10/12/26 21:03 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#648 [愛華]
「……どうする?那佑がまだ
辛いなら……バイトやめる?」


バイトをやめる。
そうすれば……また苦しい思いはしなくてもいいんだ。


でも………



「ううん。やめない」

「そっか………」

⏰:10/12/26 21:08 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#649 [愛華]
逃げない。隆則から。


また前みたいに笑って、
話せるように。



頑張りたいんだ。



隆則はそれを望んでは
いないかもしれないけれど。

⏰:10/12/26 21:12 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#650 [愛華]
'







「おーい隆則。俺らも帰ろーぜ」

「あぁ。ちょっと待ってろ」

「腹減ったんだよー」

そう言ってちひろがどたばたと
その場で暴れ始めた。

⏰:10/12/26 21:15 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#651 [愛華]
子供みたいなやつだ。


「……ってか隆則ずりーよな。
あんな可愛い友達いてさ!」

ちひろがうらやましそうに
声をあげた。

「……なに、どっち?」

「梓ちゃんも可愛いけどー、
俺としては断然、那佑ちゃん!」


隆則の動きがピタリと止まる。

⏰:10/12/26 21:20 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#652 [愛華]
「………那佑は、やめろ」

「隆則には関係ないよ」





ドンッッ!!



一瞬のうちに隆則は、ちひろを
壁に打ち付けた。

ちひろは微動だにしない。

⏰:10/12/26 21:30 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#653 [愛華]
「……那佑に手ぇ出すな」

「お前のもんじゃねーじゃん。
隆則も那佑ちゃん好きなの?」

「…………」

隆則は、なにも答えない。
言葉の変わりかのように、
鋭い目でちひろを睨む。





「…………んな目で睨むなよ。
冗談だってーの。手なんか
出さないから安心しろよ」

⏰:10/12/26 21:36 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#654 [愛華]
ちひろは軽く隆則の手をどけ、
肩をぽんっと叩く。



「……前に、那佑ちゃんと、
なんかあったんだろ?」

「………」

「なにあったか知らないけど。
お前今日、仕事何回ミスってん
だっつの。毎回こんなの
ごめんだからな」

ちひろは苦笑いした。

⏰:10/12/26 21:44 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#655 [愛華]
「……ちひろ、悪い」

「まーいいさ。別に。俺が
首つっこむほどのことじゃない
しねー。でも仕事も手につかないくらい好きならつきあえば?」

「…………ムカつくな、お前」

「うるせーヘタレやろー!!」


ちひろは思いきり舌を出して、
出口に歩きだした。

⏰:10/12/26 21:49 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#656 [愛華]
「まぁ、ちゃんとしろよ!!」

ちひろは後ろ姿で手をふりながら
出ていった。





俺…………なにやってんだろ。



暗い室内で、水道の水滴が
落ちる音が響く。

⏰:10/12/26 21:55 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#657 [愛華]
長いため息をつきながら、
ゆっくりと目をつむる。

久しぶりに会った那佑の姿。
目に焼きついて、消えない。




「………ダセーな、俺」






月が綺麗な夏の始まりの日。
また運命が動きはじめた。

⏰:10/12/26 21:58 📱:840SH 🆔:G5R.aRfw


#658 [愛華]







「よいしょっ」

段ボールを2個、ついでに袋を
片手に5個かついで、走る。


「ちょっと那佑…大丈夫?」

梓が心配そうにあたしに言う。
心配しすぎだよなぁ……梓は。

⏰:10/12/27 23:19 📱:840SH 🆔:qvb/ZXhc


#659 [愛華]
「大丈夫なわけないだろーが」

「あ」

抵抗するひまがないうちに、
あたしの手から段ボールと袋が
奪われてしまった。


「持ちすぎ。男だっていっぱい
いんだからもっと頼れよ」

「うん!ありがとう」


あたしは隆則に微笑んだ。

⏰:10/12/27 23:26 📱:840SH 🆔:qvb/ZXhc


#660 [愛華]
あれから1週間。
バイトにも慣れてきた。


隆則とも、上手く話せるように
なったし笑えるようにもなった。


でも………バイトに隆則が
いることを直純くんには
話してはいない。


話したらきっと……止められる。
卑怯だけど、それがいやだから。

⏰:10/12/27 23:29 📱:840SH 🆔:qvb/ZXhc


#661 [愛華]
それでもやっぱり、隆則を
見ると少しつらい。

でもこの辛さを乗り越えたい。


きっとまた強くなれるから。






「じゃあ隆則!ばいばーい」

「ん。気をつけてな〜」

⏰:10/12/29 20:33 📱:840SH 🆔:jT.Vrocs


#662 [愛華]
「那佑。バイト大分慣れたね」

「うん。楽しいね」

「あのさ……」

梓は言いづらそうに言う。

………なんだろ?


「……直純に、まだ言わないの?
バイトにタカがいること…」

「……………」

⏰:10/12/29 20:36 📱:840SH 🆔:jT.Vrocs


#663 [愛華]
「直純きっと怒るよ。隠してて
ばれたら……きっと怒るよ」

「わかってるよ。でもバイト
やめたら……隆則会う理由が
なくなっちゃうじゃん」

「那佑……………」

「あたしはいつか直純くんと…
梓とあたしと隆則で。みんなで
笑いたいの。それが夢なの。
時間がないかもしれないから。

だから………」


だから。もう少し待って。

⏰:10/12/29 20:44 📱:840SH 🆔:jT.Vrocs


#664 [愛華]
きっと話すから。
直純くん。待っていて。









そして、事件は起きた。

⏰:10/12/29 20:50 📱:840SH 🆔:jT.Vrocs


#665 [愛華]
「………んー…」

「那佑、顔色わるいね。
病院行こう。一回帰ろう」

「いや…薬飲んだから、ちょっと休めば平気………」

「だめ。次体育だから、それが
終わったら帰ろう。それまで
保健室にいて。絶対に」


梓………お母さんみたいだな。
なんて言ったら怒るだろうか。

最近、また体調が悪くなって
きてしまった。………つらい。

⏰:10/12/30 00:10 📱:840SH 🆔:g/TYES8.


#666 [愛華]
「白石……大丈夫か?」

「うん………へーき」

隠し事をしている罪悪感からか
あまり直純くんの目が見れなく
なってしまった。

……隆則と再会してから。



「じゃ、ちゃんと寝てなね」

「ん。ばいばーい」

保健室のベッドから2人を送る。

⏰:10/12/30 00:15 📱:840SH 🆔:g/TYES8.


#667 [愛華]
ベッドは気持ちよくって、すぐ
あたしは眠りについた。





そしてまた、夢を見た。



また誰かが泣いてる。


あれは誰だろうか?


あれは…………あたしだ。

⏰:10/12/31 00:28 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#668 [愛華]
どうして泣いてるの?


もう泣かなくていいんだよ。
泣きたくなんかないよ。



ねぇ………泣かないでよ。





あなたは誰を求めているの?

⏰:10/12/31 00:30 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#669 [愛華]
「…………ん」


目が覚めると、眠る前よりも
すっきりとした気分になっていた

よかった。薬が効いたんだ。




「……なんの夢見てたっけ……」


忘れちゃった。ま、いいか。

⏰:10/12/31 00:33 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#670 [愛華]
「………白石」

「!?」


ドアのほうを覗くと、そこには
直純くんがいた。


「直純くん……授業は?」

「……………」


なに?
なんか………様子が変だ。
なんか……怒ってる。

⏰:10/12/31 00:35 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#671 [愛華]
直純くんはあたしの隣のベッドに腰掛けて、あたしを見る。

視線が怖い。刺さるような……



「どうし、たの?」

「白石さぁ、俺になんか隠し事
してない?なんでもいいけど」




………え?

⏰:10/12/31 00:37 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#672 [愛華]
「隠し事って………」

「そうだなぁ、例えば………
隠しとくと俺が怒りそうなこと。
んなもん1つしかねぇよなぁ。
…………隆兄がらみのことだよ」



………バレてる?どうして……


「バイトに隆兄がいるらしいね」

⏰:10/12/31 00:40 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#673 [愛華]
顔は笑ってるのに、目は
笑ってない。………怖い。



「……隠してたわけじゃ……」

「じゃあ何?言えば俺がバイトをやめろ、とでも言うと思った?
だから隠してたのかよ?
そこまで隆兄に会いたかった?」

「直純くん……」

⏰:10/12/31 00:43 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#674 [愛華]
何も言えない。
全部そのとおりだったから。


どんな言い訳したって……
あたしは隠していた。

自分のために。
卑怯で汚い……方法を使って。




「直純くん……ごめんなさ…」

「俺、全然信用されてないんだ。な、そうだろ?」

⏰:10/12/31 00:47 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#675 [愛華]
直純くんの顔が近づく。


「直純………くん?」

「………ムカつく」






ギシっとベッドのきしむ音が
静かな保健室に響いた。

⏰:10/12/31 00:58 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#676 [愛華]
「直純くん……やだ!」

手首を強くつかまれる。
直純くんはもう何も言わない。

ただ、直純くんの目に
吸い込まれそうになる。



…………本気だ。



「………や、だ」

声が出ない。
別人みたいな直純くん。

⏰:10/12/31 01:03 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#677 [愛華]
'





「……………んっ…」


ゆっくりと直純くんと唇が
重なった。

ジタバタしてもびくともしない。


やだ………やだ……やだ!

⏰:10/12/31 01:07 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#678 [愛華]
目を閉じると思い浮かぶのは
全部優しい直純くんなのに。


今ここにいるのは………




「………はっ………ん…」


息がもれる。苦しい。

直純くんはどんな顔を
してるんだろう。

もう……涙でにじんで見えない。

⏰:10/12/31 01:10 📱:840SH 🆔:Eqb/iWps


#679 [愛華]
「やだ………………」

唇が離れたのと同時にあたしは
つぶやいていた。


「しらい………」

「やだ………やだよ……」


涙でぐしゃぐしゃの顔を隠し
あたしは何度も何度も呟く。

嫌だったんだ。
あたしと直純くんの関係が
音をたてて崩れた気がして。

⏰:11/01/03 00:07 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#680 [愛華]
隆則のキスと全然違う。
苦しくて悲しい。



「………白石、ごめん俺……」

「出ていって。今顔見れない」

「でも…………」

「顔見たくないの!!
きっとあたしひどいことしか
言えないから………お願い」


ドアが閉まる音が聞こえた瞬間
さらに涙があふれだした。

⏰:11/01/03 00:12 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#681 [愛華]
'





「………ばか。このくらい…」


このくらいのことで、なに
泣いてんだよ。あたし。


この先もっと辛いことあるよ?

泣いてる場合じゃないだろ。

⏰:11/01/03 00:14 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#682 [愛華]
ただ、直純くんが怖くて。





お願い。
誰かあたしを守って。
苦しさから、悲しさから、
あたしをこの世の全てから
解放して。連れ出して。






「………隆則………」

⏰:11/01/03 00:17 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#683 [愛華]
涙は頬をつたって

落ちて



またなにかを変えていく。



正解はどこにあるの?
あたしは間違っていたの?

この気持ちに正直になれたら
こんなに苦しまなくて済むの?

嘘でもいいからそう言ってよ。
あたしに……答えをください。

⏰:11/01/03 00:21 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#684 [愛華]
-直純side-

⏰:11/01/03 00:21 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#685 [愛華]
わかりきってた。


白石の心に居座り続けてる
白石を支えているもの。


わかってるから、悔しくて。


キスをした。




俺は本当に最低だ。

⏰:11/01/03 00:24 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#686 [愛華]
「……あ、直純………」

「梓か。なんだよ」

息をきらして教室に入ってきた
のは梓だった。窓の外を見てた
ので、顔は見えないけど……
きっと泣きそうな顔してる。



「……あのさ、バイトのこと。
隠してたわけじゃなくってさ」

「別にいーよ。もう」

俺は振り返って微笑んだ。

⏰:11/01/03 00:30 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#687 [愛華]
隆兄がバイトにいるのを知った
のはついさっき、梓から聞いた。



『那佑、バイト頑張ってるよ。
タカがフォローしてくれてるし』


梓とバイトの話をしていた時、
梓が口を滑らせた。

問い詰めて、全部聞いた。

白石と隠していたことを全部。

⏰:11/01/03 00:37 📱:840SH 🆔:8TNSGwW2


#688 [愛華]
隆兄と白石が再会した。

そんなことよりも………
白石に隠されていた。

白石に……信用されてなかった。


なんか辛かったのかも。




梓が今にも泣きそうだけど……
泣きたいのこっちだっての。

⏰:11/01/04 22:41 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#689 [愛華]
いや…………違うか。
今泣きたいのは白石か。

きっとこの瞬間も泣いてる。


俺の、せいで。




「………直純………」

「俺、白石にひでぇことした。
嫌われてっかもしんねぇわ」

「な、に…………それ」

⏰:11/01/04 22:50 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#690 [愛華]
空気が冷えてゆく感じがした。

違うところにあった気持ちが
自分のところに戻ってきた。

そんな感覚。








「……………潮時、かな」

諦めるなら今なのかな。

⏰:11/01/04 22:58 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#691 [愛華]
「直純…………」

「俺、白石から病気が進行した
こと聞いてさ………白石は
手術受けないって言ったけど

俺は受けてほしいって思った。
病気が治って、ここに戻って
きてほしいって。

でも言えなかった。

梓、なんでかわかるか?」


「…………」

⏰:11/01/04 23:07 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#692 [愛華]
「俺には自信がなかったんだ。


白石にそう言ったとして。
『成功しなかったら……』
って不安をもらされたら。


受け止められる自信がなかった。
だから、言えなかった」



冷えた空気を吸い込む。
冷えていたように感じたのは
俺だけかもしれないけれど。

⏰:11/01/04 23:16 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#693 [愛華]
窓の外ではたくさんの生徒たちが
疲れた顔で走り回ってる。


あ、梓のやつも授業抜け出して
きたのか。





………なんで俺、こんなに
冷静なんだろ。


すごい辛いはずなのに。

⏰:11/01/04 23:26 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#694 [愛華]
「………………やっぱ、さ。




隆兄はすげぇよなぁ」


あの日から。
白石は俺の側にいてくれて。
いっぱい時間はあったはずなのに


白石には近づけなかった。

⏰:11/01/04 23:28 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#695 [愛華]
だから、もういいんだ。


白石が一緒に居たいやつと
一緒にいればいい。




その前に、君に伝えたい。
俺が思ってること全部。



たくさん傷つけてごめん。
兄弟そろって馬鹿でごめん。

でも好きだった。ということを。

⏰:11/01/04 23:36 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#696 [愛華]
「………あんた馬鹿だね……」


梓は泣きながら俺をゆっくりと
抱きしめた。


懐かしい、ぬくもり。





「……でも、いい男!!
タカなんかよりも、もっとね!

すっげ好き!!直純好き!!」

⏰:11/01/04 23:42 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#697 [愛華]
「ちょ、お前変な噂たつから!
やめろっての!!」

「なに?キスしてやっか?
ほら、こっち向いてみな!」

「やーめーろー!」




白石、もう一個伝えたい。



ありがとう。
俺を、変えてくれて。

⏰:11/01/04 23:51 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#698 [愛華]
-那佑side-

⏰:11/01/04 23:52 📱:840SH 🆔:SJMj34kI


#699 [a]
>>300ー600

⏰:11/01/05 00:55 📱:F906i 🆔:lJ/Laj8o


#700 [愛華]
>>699
ありがとうございます!

⏰:11/01/05 15:38 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#701 [愛華]
もうすぐ夏なのに、
喉の奥がスンとする。
寒いのか、暑いのか

もうそんなものもわからない。




『日曜日、2人で出かけよう。
大切な話があるんだ』


そういった直純くんは
ほんとうにいつも通りで。
あの保健室での直純くんは
まるで幻だったみたいで。

⏰:11/01/05 15:42 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#702 [愛華]
大切な話ってなに?

聞きたくないよ。


なにが正しくてなにが間違い
なのかわからない。


ただ、あたしは………
みんなで笑っていたいだけ。


隆則も大切で、直純くんも大切で

それは……直純くんを傷つける
原因にしかならないのかな。

⏰:11/01/05 15:46 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#703 [愛華]
「………白石さん、大丈夫?」

「………え、はい」


店長に話しかけられて、
我にかえる。

やば………バイト中だった。



「……店長、すいません。
那佑調子悪いみたいなんで
休憩室で休ませていいですか?」

「それはかまわないけど……」

⏰:11/01/05 15:50 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#704 [愛華]
「梓、あたしは大丈夫……」

「ほら、いくよ」


あたしの言葉を無視して梓は
休憩室に引っ張っていく。



「ほら、横になって。少し
寝なよ。薬は?飲んだ?」

「あ、忘れてた………」

「……………馬鹿だね」

⏰:11/01/05 15:53 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#705 [愛華]
薬を飲んで、横になってると
少しだけ気分が楽になった。

その間、梓はずっと側にいて
くれた。何も言わず、ずっと。




「………ありがとう、梓」

「べっつにー。仕事サボれて
ラッキーだよ」

「…………ん」

素直じゃないこのひとの
優しさに何度助けられただろう。

⏰:11/01/05 15:56 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#706 [愛華]
「……………梓、あのね…」

「うん?」




「……直純くんに大切な話が
あるって言われたの。あたし
どうしたらいい?また直純くんを傷つけちゃう気がする」



思い出すと、また苦しくなる。

⏰:11/01/05 15:58 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#707 [愛華]
「那佑はさ………結局はまだ
タカが好きなんでしょ?」

「……わからない…………」


「直純は、那佑自身でさえ気づいてない那佑の気持ちを全部
わかってるんだよ。
那佑が今、何を望んでるか。


もうすぐだよ。直純が……
終わらせてくれるから。

きっと那佑の望んでいる通りに
なるから」

⏰:11/01/05 16:03 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#708 [愛華]
あたしの………望み?


梓の言っていることは
なにひとつわからなかった。


「いつも通りに直純に会って
おいで。大丈夫だよ」

梓はそう言って微笑んだ。

大丈夫…………?


日曜日に、何かが終わって
また何かが始まるような

そんな気がした。

⏰:11/01/05 16:07 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#709 [愛華]
気がつくとあたしは眠りに
ついていて。





その日は、夢を見なかった。




……なんだろ、気持ちいい。
あったかくて優しい………



あたし、このあったかさを
知ってる。

⏰:11/01/05 16:13 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#710 [愛華]
何度もこのあたたかさに
救われた。


苦しい時は涙を拭ってくれて

楽しい時は頭を撫でてくれて

悲しい時は力いっぱい
このあたたかさに抱きしめられた



いつもいつも、どうしようも
ないくらいに愛しくて。

⏰:11/01/05 16:15 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#711 [愛華]
あぁ…………あたし。




このあたたかさがないと、
やっぱりダメなんだよ。


いつのまにか、あたしの一部
みたいに入り込んで

消えなくなって………


やっぱり、ダメなんだ。

⏰:11/01/05 16:17 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#712 [愛華]
'






「………………やっ」




「わ!!起きた…………」

⏰:11/01/05 16:18 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#713 [愛華]
起きるとそこには
驚いた顔の隆則がいた。



「……隆則、なにして……」

「や、今休憩中でさ………
来たらお前寝てるから……」

「そか、ごめん。出ていくよ」

あたしはゆっくり起き上がる。


「いや、具合悪いんだろ?
寝てろよ。構わないから」

⏰:11/01/05 16:21 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#714 [愛華]
あたしは急に起き上がったので
頭がフラフラした。

言葉に甘えてまた横になる。




………なんだったんだろ、あれ。




「……隆則、あたしが寝てる
間にあたしになんかした?」

⏰:11/01/05 16:23 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#715 [愛華]
「お前、俺をなんだと思ってる
わけ?変態か俺は?」

「や、そゆ意味じゃ………」

ないんだけど。



隆則は近くにあったソファに
腰を下ろして、買ってきたので
あろうコーヒーを飲んだ。



「………泣いてた、から」

⏰:11/01/05 16:26 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#716 [愛華]
「…………は?」

「お前、寝てる時になんか
泣いてたからさ……………
それ拭いてやっただけ」




あたし………泣いてた?



……ううん、そんなことより。

隆則が、あたしの涙を拭いて
くれていた。

⏰:11/01/05 16:29 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#717 [愛華]
そっか。
あのあたたかさは…………




「………な、お前さ………
最近、病気のほうどうなんだ?


「うん。調子いいよ」


あたしは微笑んだ。

今は言わないよ。
言えないだけかもしれない。

⏰:11/01/05 16:34 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#718 [愛華]
だけど…………




「…………隆則」

「なに?」




「日曜日、直純くんと会うの。
大切な話があるんだって」


隆則の表情が固まった。

⏰:11/01/05 16:36 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#719 [愛華]
「…………そっか」


隆則はそれだけ言った。



「………あたしと直純くんが
つきあったら……どうする?」

「……………え?」


なに聞いてんだろ、あたし。
隆則はもうあたしのことなんか
好きじゃないのかもしれないのに

あたしだってもう………
隆則のことなんか……

⏰:11/01/05 17:18 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#720 [愛華]
「…………嬉しいよ、俺は」





…………ウレシイ?




「直純も、那佑も大事なやつ
だし……一緒になってくれたら
俺は嬉しいかな」


………そっか。そうだよね。

⏰:11/01/05 17:21 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#721 [愛華]
「……………あ、そう!!!」


あたしは今出る限りの声で叫ぶ。



「じゃあ直純くんとつきあおう
かな!!直純くんは優しいし!
隆則もそれでいいんでしょ!?」


「………え、那………」

「あー悩み解決!!
ありがとうね隆則!!」

⏰:11/01/05 17:25 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#722 [愛華]
あたしは思いきりドアを開けて
飛び出した。


「ちょ、那佑どうし……」

「梓ごめん、今日帰る!!」


それだけ言って店を出た。




…………なんだよ、これ。

⏰:11/01/05 17:27 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#723 [愛華]
隆則からもらった久しぶりの
あたたかさが嬉しかった。


自分の進む道がわからなくて
迷っていて…………


隆則が答えをくれる気がした。



でも、違うんだ。

あたしが隆則をどう思って
いようと、隆則はもう………

あたしのことなんか好きじゃない

⏰:11/01/05 17:30 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#724 [愛華]
もういい。


隆則に気をつかうことなんか
なにひとつないんだ。





わかってたはずなのに苦しい。




溢れる涙をぬぐいながら、
行く先もわからないまま歩く。

⏰:11/01/05 17:35 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#725 [愛華]
「………日曜日、言うんだ」



自分に確認するように呟く。


直純くんとつきあえばいい。
そうしたらきっと幸せになる。


そのあとでゆっくり好きに
なれればいい。



そうだよね?

⏰:11/01/05 17:39 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#726 [愛華]
出会いは別れの始まり。


そんな偉い誰かの言葉を
思い出していた。


出会うことが別れる為ならば
なぜ人は繋がりを求めるのか。


誰もが信じたいのかもしれない。


その別れがまた、何かの出会いの
始まりなのかもしれない、と。

別れのない出会いだって
存在するのかもしれない、と。

⏰:11/01/05 17:48 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#727 [愛華]
こんにちは、愛華です。

今日多めに更新したのですが
急いだので、文がおかしい所が
あるかもしれません……
申し訳ないです……


このスレで話が終わるかどうか
かなり微妙なところなので、
勝手ながら、新しいスレを
早めに建てることにしました。

次はそちらに更新します。


最後まで『その日が来る前に、』をよろしくお願いします!

⏰:11/01/05 17:56 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#728 [愛華]
今日の更新分

>>701-728

⏰:11/01/05 17:58 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#729 [愛華]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>700-800

⏰:11/01/05 18:00 📱:840SH 🆔:22xhhoZo


#730 [に〜な]
続き気になる〜号泣しながら読みました。

⏰:13/01/05 02:33 📱:S001 🆔:WQunjCYA


#731 [我輩は匿名である]
これ好き
でももう完結したよ

⏰:13/01/05 23:35 📱:iPhone 🆔:XLhobl9Y


#732 [&◆JJNmA2e1As]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/01 19:35 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#733 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/07 17:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#734 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/19 20:15 📱:Android 🆔:A4ZzuHng


#735 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>700-730

⏰:22/10/19 20:16 📱:Android 🆔:A4ZzuHng


#736 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/20 09:31 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194