その日が来る前に、2
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#301 [愛華]
「暗いのやだけど………
道聞きながら帰るもん」

「…そーゆー意味じゃねっつの」

直純くんはあたしの髪をくしゃっ
と撫でてまた歩きだした。
……ついていっていいのかな?



ついたアパートは一本道路を
はさんだ交差点の角にあった。


………確かに……ぼろい。

⏰:10/11/17 00:28 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#302 [愛華]
「…なにおどろいてんの?
入るの?入んないの?」

「あ、入る。入るよ」


キィー……


ドアのきしむ音。
すごく静かだ。
直純くんは……こんなところで
一人で暮らしているんだ。



「てきとーに座って。コーヒーか
緑茶しかないけどどっち?」

「あ………緑茶で……」

⏰:10/11/17 18:33 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#303 [愛華]
テレビもないし……静かだな。
勝手についてきちゃったけど…

でも伝えたいことがある。



「………はい」

「あ、ありがとう」

あたたかい緑茶。
直純くんはスーパーの袋から
買ったものを出していく。
インスタントばかりだ。

「いつもこんなの食べてるの?」

「料理、めんどくさいし」

⏰:10/11/17 18:39 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#304 [愛華]
……似てるな、隆則に。


「………で。話ってなに?」

「あ………うん」

いつのまにか直純くんは自分の分の緑茶を持ってソファに座っていた。……なんか、痩せた。

前の直純くんじゃないみたい。



「……どうして学校こないの」

⏰:10/11/17 18:48 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#305 [愛華]
「…めんどくさかったから」

「………ちゃんと学校来て。
それがひとつめのお願い」

「ひとつめって……まだあんの」

直純くんは反らしていた目を
あたしに向けた。


あたしのするべきこと。
今ははっきりわかるよ。


「………復讐なんてやめて」

⏰:10/11/17 18:58 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#306 [愛華]
強い風が窓をたたいた。
強い風は神様が風邪をひいている
昔誰かが言っていたっけ。



「………無理。」
直純くんは小さくつぶやいた。
冷たくて………哀しい声。

「無理じゃない。直純くんは
隆則を憎んでなんていない。
どうして嘘つくの?」

「嘘なんかついてねぇよ!」

⏰:10/11/17 19:05 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#307 [愛華]
「じゃあどうして………
まだ『隆兄』なんて呼んでるの」

「は……………?」

直純くん………
嘘なんかつかないでよ。

「隆則のこと………お兄さん
として慕っているからでしょ?」


つぶれていた痛みを。
ほぐれなかった苦しみを。

ゆっくり解き明かす。

⏰:10/11/17 19:09 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#308 [愛華]
「隆則だってそうだよ。直純くんが必要なんだよ。直純くんも
そうでしょう?」

直純くん。
私の声を、聞いて。

「直純くんが………」

「綺麗事ばっか言うなよ!!」

窓が、また叩かれた。
息が止まっていたことに気づいた
直純くんから目は反らさない。

⏰:10/11/17 19:14 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#309 [愛華]
「結局白石は隆兄を救いたいってだけだろ?俺なんか少しも関係ないだろ?もう構うなよ!」

「あたしは……隆則も直純くんも同じくらい大切なんだよ」

大切な人の大切な人は
いずれ自分にとっても大切な人になってゆく。
梓。今なら気持ちがわかるよ。


直純くんは大切な人。
だから、助けたい。
余計なお世話だって思われても
綺麗事だって言われてもいい。

⏰:10/11/17 19:20 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#310 [愛華]
「………ばかじゃねーの……」

『愛されてるっていう実感なんて
もう忘れちゃったし………』

それは違う。気づいてよ。


「直純くん……お願いだよ」



「なんで……………

     泣くの」

⏰:10/11/17 19:38 📱:840SH 🆔:.5HozOI.


#311 [愛華]
あたし、最近泣いてばっかだ。
カッコ悪い。ばかみたい。


「………直純くんは…………
隆則のこと、憎んでないよ」


静かな時間が流れる。


「…じゃあさ、俺の気持ちは?」

…………え?

「白石が好きだっていった……
俺の気持ちは?」

⏰:10/11/18 00:59 📱:840SH 🆔:uBkUQTYM


#312 [愛華]
「俺は白石が好きだって言った。
絶対に手に入らないものが目の前にあって、見せ付けられる。

白石には、わかんないよ」

「直純くん………」

「白石は隆兄から離れないだろ?
それとも……俺のものになって
くれるわけ?」


あたしのしていることは……
もっと直純くんを傷つけるの?

⏰:10/11/18 21:16 📱:840SH 🆔:uBkUQTYM


#313 [愛華]
「あたしはそんなつもりじゃ…」

「だからさ……」


ドサッ

「そーゆーのが綺麗事だってば」


世界が逆さになった。
前にも見た、この状況。

目の前には直純くん。


あの時と違うのは………
直純くんは悲しそうに、そして
真剣な顔であたしを見てる。

⏰:10/11/19 01:03 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#314 [愛華]
「直純くん……どうした、の」

「帰れなくなるかもよって、
言ったじゃん。一人暮らしの男の家に来るなんてさ、どーぞ
食べてくださいって言ってる
よーなもんだけど。


それも、好かれてる男の家に」


床が冷たい。
直純くんの本気が伝わってくる。
体の中がどくどく脈打つ。

⏰:10/11/19 01:08 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#315 [あんちむ]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:10/11/19 01:54 📱:SH05A3 🆔:Rwe3yfXc


#316 [愛華]
>>315 あんちむ様

アンカーありがとうございます!

⏰:10/11/19 22:57 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#317 [愛華]
「白石にはわかんねぇよな。
欲しいものがすぐ側にあるんだし
なぁ、梓から奪ったときとかさ
どういう気持ちだったわけ?」

どうしてそんなこと言うの?
どうして………


「わかるか?人間は自分の欲の
為なら平気で人を不幸にする。
結局は自分が1番なんだよ。
他の人間は大切だって言っても
2番目以降でしかない。

それでも俺と隆則を助けたいって
言うんなら、俺を1番にしろよ。
俺の望みを叶えてみろよ」

⏰:10/11/19 23:04 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#318 [愛華]
「直純くんの……望み……?」

「お前が欲しい」



わたしはいつから
こんなに直純くんの気持ちが
わかるようになったのかな。

するすると、水みたいに
私の中にはいってくる。



「…………べつに、いいよ」

「……………は?」

⏰:10/11/19 23:07 📱:840SH 🆔:LWhAa5yQ


#319 [愛華]
「直純くんがそうしたいんなら
べつにいーよ」


「……後悔すんなよ」



直純くんの顔が近づく。



…………キスされる!!

⏰:10/11/20 17:08 📱:840SH 🆔:h3TbMS3A


#320 [愛華]
でも直純くんの唇はあたしの
頬に優しくふれた。


「………へ……」

「んな顔すんな」

頬に唇をつけたまま直純くんは
つぶやいた。くすぐったい。


やっぱり。
直純くんは嘘つきだよ。


いつも思ってないことばかり。

⏰:10/11/20 19:21 📱:840SH 🆔:h3TbMS3A


#321 [愛華]
「直純くん。隆則も同じくらい
苦しんでたんだよ」


「……また綺麗事かよ」


直純くんはそう言って顔を背け
またソファに座りなおした。


襲う気なんて最初から
少しもなかったくせにさ。

ほんとに嘘つき。

でも、優しいんだね。

⏰:10/11/21 19:21 📱:840SH 🆔:wRh6S.zA


#322 [愛華]
「俺は憎まなきゃダメなんだ。
許しちゃいけないんだよ。
俺をほっといたあいつを……」

「しなきゃいけない、なんて
おかしいよ。直純くんだって
本当はわかってるでしょう?」

「おかしくなんてない。白石が
そう言うのは隆兄のためだから
だろ。 そんなの俺にとっては
迷惑なだけなんだよ!
同じことを言わせんなよ!」


どうしても口調がきつくなる。

⏰:10/11/21 21:23 📱:840SH 🆔:wRh6S.zA


#323 [愛華]
「……確かに直純くんを1番に
することなんてできないよ」

直純くんは少しだけ顔を歪ませた何かをこらえてるみたいに。


「…でもね、直純くんも大事なの
出会ってからの時間なんて少しも
関係ないんだよ。
あたし、欲張りなんだ。
直純くんも、隆則も大切なの」


それが綺麗事というのなら
それでもいい。

⏰:10/11/22 00:47 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#324 [愛華]
「あたしは直純くんも隆則も
傷ついてるの、耐えられない。

あたしは………きっとまた泣く」


「白石…………」


わかってるよ。
だからこっちを向いて。
前を向くには誰かのぬくもりが
必要なの。

あなたにそれをくれる人は
たくさんいるんだよ。
気づいていないだけなんだよ。

⏰:10/11/22 00:51 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#325 [愛華]
気がつくと、直純くんの家に
来てから1時間経っていた。

外は真っ暗だ。


どこまで自分の気持ちが
伝わったのかわからない。


でもあたしは、伝えた。



「言いたいことは終わり」

⏰:10/11/22 01:01 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#326 [愛華]
そう言ってあたしは立ちあがる。


直純くんを見ていると、
過去の自分を思い出す。

自分を放っておいたお父さんと
お母さんが許せなかった。
憎んで苦しんで傷ついて……

そんな世界から救ってくれたのは
隆則。

誰かが手をさしのべてくれれば
誰だって暗闇から抜け出せる。

⏰:10/11/22 01:05 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#327 [愛華]
きしむドアを開き、
もとの道を戻る。


「…………ばいばい」




運命の日は近づいていた。

あたしはまだ知らない。


あたしの大切な人を

失ってしまうこと。

なによりもつらい現実が

あたしを待ち受けていた。

⏰:10/11/22 01:12 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#328 [愛華]
-直純side-

⏰:10/11/22 20:00 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#329 [愛華]
何度も何度も考えた。


今まで俺の歩んできた道。
金だけ持ってじじいのとこを
飛び出してきてから今まで。


隆兄に復讐してやる。
それだけを考えていた。


隆兄は俺を必要となんか
していなかった。

それがなにより悲しくて…
悔しくて、仕方なかったんだ。

⏰:10/11/22 20:04 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#330 [愛華]
「隆則も同じくらい
苦しかったんだよ」


なにいってんだよ。
そんなの知らねぇよ。


「隆則をお兄さんとして
慕っているからでしょう?」


そんなわけねぇだろ。
あんなやつ………
あんな男………

⏰:10/11/22 20:09 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#331 [愛華]
「隆則を憎んでなんていない」


違う。
俺はあいつが憎くて仕方ない。
俺の欲しいものを全て持って
いってしまったあの男。

自由も幸せも…………お前も。


お前は隆兄しか見ていない。
俺なんかちっとも見ていない。


「直純くんも同じくらい
大切なんだよ」

⏰:10/11/22 20:14 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#332 [愛華]
どうして泣くんだよ?
俺の名前を呼びながら……





あぁ、そうか。
俺は隆兄が憎かったんじゃない。




羨ましかったんだ。

⏰:10/11/22 20:17 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#333 [愛華]
幸せそうな笑顔。
大切なひとが側にいて。
愛にあふれている。


俺も、こんなふうに笑いたくて。
大切な人に側にいてほしくて。


失っていた時間を
取り戻したくて。




俺だって幸せになりたい。

好きな人と一緒に。

⏰:10/11/22 20:26 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#334 [愛華]
復讐なんてほんとうはさ、
どうでもよかったんだよ。


白石。
この6年間誰かに「大切」だ
なんて言われたことなかった。
涙を流されたことも。

「泣いていいんだよ」
って言われたことも

抱きしめられたことも。



ありがとう。

⏰:10/11/22 20:29 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#335 [愛華]
「隆兄に…………会わなきゃ」


俺はつぶやいた。
白石が去ったあとの部屋で。



なんでもいいから話したい。
憎しみとか、そんなの全部抜きに
して。
隆兄と話したい。


白石が手に入らなくたっていい。
たまに笑顔が見られればいい。

ぜいたくなんて言わない。

⏰:10/11/22 20:32 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#336 [愛華]
人のぬくもりは心を溶かす。


あぁ………綺麗事だけどさ。
でもそんな言葉がぴったりだ。



会いに行こう、隆兄に。


憎しみとか苦しみとか全部
ぶちまけて。


そして最後に笑えたら


それが本当のハッピーエンドじゃないかよ。

⏰:10/11/22 20:37 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#337 [愛華]
-隆則side-

⏰:10/11/22 20:38 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#338 [愛華]
「直純くんが会いたいんだって」


那佑からその言葉を聞いた時。
俺はどんな顔してただろうか。


ただ、夢の中にいるみたいな。

今日という日まで
夢の中に出てくる直純の姿は
いつも俺を睨んでいたから。


だから信じられなかった。

直純が………俺に会いたい?

⏰:10/11/22 20:41 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#339 [愛華]
「今日、学校に来たんだ。
詳しくはわからないけどね、
明日、隆則に会いたいって」

「直純は俺を………」

「あたしもよくわからない。
でもなんらかの変化はあった
んだと思う。

直純くんの口から……聞いて」


怖い。
情けないけど………


怖くてたまらない。

⏰:10/11/22 20:45 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#340 [愛華]
「隆則!!」

那佑に怒鳴られびくっとする。


「直純くんがどんな気持ちで
隆則に会うの決めたと思う!?
隆則がそんなんでどうするの!」

心の中にかかっていた霧みたいな
ものがゆっくり晴れていく。

お前は魔法使いみたいだ。
存在だけで俺に勇気をくれる。

⏰:10/11/22 20:48 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#341 [愛華]
「あたしはここで待ってる。
だから…………

直純くんとふたりで帰ってきて」


直純と、ふたりで。


あの約束を、誓いを。
果たすんだ。




『絶対会いに行くからな!!』

⏰:10/11/22 20:50 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#342 [愛華]
「………おぅ。いつまでも
こんな状態ごめんだっつの。
こんなのは性にあわねぇ!」

「…………うん!!」


ちょっとだけ不安はあるけど
でも大丈夫だ。大丈夫。


次は、笑顔で会える。


笑顔で会う。


そのつもりだった。

⏰:10/11/22 20:54 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#343 [愛華]
-直純side-

⏰:10/11/22 22:52 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#344 [愛華]
「………なんか変な感じ」

鏡に映った自分はひどく
幼く見えたのは気のせいかな。


今日、俺は隆兄に会う。


前にも会ったのに。


ちゃんとした形で会うのは
これが初めて。

6年振りなんだ。

⏰:10/11/22 22:55 📱:840SH 🆔:dT1tHja6


#345 [愛華]
俺は隆兄に会ってなにを言う
つもりなんだろう。
自分でもわからない。


憎しみだと思っていた感情。
きっとそれは嫉妬だった。


許すことができるのか。

笑いあえるんだろうか。


復讐だとかなんとか言っても
心のどこかではいつもそんな
未来を期待していた気がする。

⏰:10/11/23 00:36 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#346 [愛華]
白石に言われてそうわかった。


俺は白石が好きだ。
白石の幸せを願いたい。
でもそこまで大人じゃない。

笑顔が見たい。
俺のために笑っててほしい。


ほらな。
人間はいつだって欲のかたまり
なんだ。

たまに見られればいい、なんて
自分に嘘ついてるだけだ。

俺はシャツに腕を通した。

⏰:10/11/23 00:40 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#347 [愛華]
復讐とかそんなんじゃなくて
いつか白石に

俺がいいって言われたい。


心から、笑ってみたい。

白石に出会えてそう思った。


靴をはき、俺はバス停に向かう。


行く先は公園。
昔隆兄とよく遊んだ公園だ。

⏰:10/11/23 00:43 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#348 [愛華]
どんな顔で隆兄は待ってるかな。


バスにゆられながら
そんなことを考えていた。

遊園地に向かう子供のように
俺の心は騒いでいる。


バスを降りて、
公園へ歩いて向かう。


ふ、と前を見ると
5歳くらいの男の子が目に入った。

⏰:10/11/23 00:49 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#349 [愛華]
……道路わきで何やってんだ。
母親どこいってんだよ?


「……おい、そこの子。
母ちゃんどこにいった?」

俺が話しかけると、男の子は
泣きそうな顔で振り向いた。

「……母ちゃんじゃなくて。
きょうは兄ちゃんときてたの。
でも兄ちゃんいなくて………」


……うわ、泣くなよ〜

⏰:10/11/23 00:52 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#350 [愛華]
話しかけたのが間違いか?
ちょっと時間くいそうだ。

「兄ちゃん〜………」

男の子は泣き出してしまった。


「かんべんしてくれよ〜…」

「…兄ちゃんなんか嫌いだ!!」

男の子はぐしゃぐしゃの顔で
叫んだ。

兄ちゃんに置いていかれた
怒りがこもっている。

⏰:10/11/23 00:56 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#351 [愛華]
それだけは耳によく響いた。



「………そゆことゆーな。
兄ちゃんもきっと探してる」

「嘘だよ。きっとお菓子とか
買ってひとりで食べてるよ」

「じゃあ買ってもらえばいい。
お前の兄ちゃんだろ?
探しに行け。兄ちゃんもお前を
探してるんだから」

自分のことじゃないと、こんな事
言えるもんだな。
少し自分にびっくりした。

⏰:10/11/23 01:00 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#352 [愛華]
「…………恭介!!」

横を見ると、道路の向こう側で
男の子の兄らしき人が手を振っているのが見えた。
息をきらしている。
探し回ったんだろう。


「兄ちゃん!!」

「ほらな。探してたろ?」

「うん。ありがと、お兄さん!」

男の子は走っていった。
あの男の子は笑顔で会える。
会えるんだ。

⏰:10/11/23 01:04 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#353 [愛華]
目に入ったのは走りゆく男の子と
青になった信号。


………え。

道路の向こうで男の子の兄ちゃんが何か叫んでいる。


男の子は止まらない。


全てがスローモーションになる。
走ってくる車が見える。

⏰:10/11/23 01:07 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#354 [愛華]
気がつくと走りだしていた。


おい、止まれ。
なにやってんだよ。

口に出てたのかわからない。


男の子を突き飛ばし、それを
抱き留めた兄を見て安心した。


よかったな。会えたな。


ブレーキ音と衝撃音が
あたりに響いた。


あぁ…………よかった。

⏰:10/11/23 01:13 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#355 [愛華]
-隆則side-

⏰:10/11/23 14:12 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#356 [愛華]
笑顔で会えるはずだった。

一緒に泣くつもりでもいた。

お互いいっぱい苦しんだから

もう充分だろって……思って。



なのに。直純。
お前こんなとこで何寝てんだよ。
傷だらけの顔で………


いっぱい管につながれて。

⏰:10/11/23 14:15 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#357 [愛華]
あの公園で待っているとき。
じいさんから電話がはいった。

『直純が事故ったらしい。
俺は行く気はないが伝えておく』

直純が…………事故った?


頭のなかが真っ白のまま
病院に走った。

多分、タクシーのなかで
じいちゃん、ばあちゃん、那佑
にも連絡したんだと思う。

全然覚えていないけれど。

⏰:10/11/23 14:19 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#358 [愛華]
那佑が病院に到着したのは
それから30分後のこと。



「…………隆則!!」

息をきらした那佑がはいってきた


「……お前、走って大丈夫かよ」

「ちょっとなら、大丈夫。
それより………直純くんは?」

⏰:10/11/23 14:22 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#359 [愛華]
「……意識、戻んないかも。
外傷はあんまひどくないけど
頭強く打ってるらしい。
このままってこともありえる」

「そん、な…………」


「じいちゃんとばあちゃんも
そのうち来ると思う。
九州からだから時間はかかると
思うけど…………


お前はもう少ししたら帰れ」

⏰:10/11/23 14:26 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#360 [愛華]
「帰れないよ。隆則をひとりに
なんてできるわけないじゃん。
あたしも意識もどるまで待つ!」


意識、もどるのかな………


あ、梓に連絡してねぇや……
那佑がしてくれたのかな?




なんで俺、こんな冷静なんだ?

⏰:10/11/23 14:28 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#361 [愛華]
暗くて、静かな時間。
時を刻む音が低く響く。



「子供、かばったんだってさ」

「…………え」

「あいつらしいよな。ほんとは
助けられた子供と親も来るって
言ってたんだけど………
来るなって言っちゃった。」


どんな顔をするかわからない。
責めてしまうかもしれない。
自分がなにをするかわからない。

⏰:10/11/23 14:32 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#362 [愛華]
「…………直純くん」

那佑はつぶやいた。
泣いてるみたいだ。




「直純くん………直純くん……
戻ってきてよ…………嫌だよ…


いやだぁぁぁ…………」



神様はどうしてこんなにも
残酷で、意地悪なんだろう。

⏰:10/11/23 14:34 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#363 [愛華]
俺の大切なひとを
いつも奪っていってしまう。

父さんも母さんも、直純も。


俺はまだなにも話していない。
まだ直純になにも言ってない。

罪をつぐなっていない。


俺のせいなのか?
俺が6年間直純を放って
おかなかったら………



こんなことにはならなかった。

⏰:10/11/23 14:38 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#364 [愛華]
ガラガラッ

病室の扉があいた。


「タカ……那佑………」

「あず、さ………」

梓はゆっくり歩いて椅子に座る。
直純の顔をゆっくり見つめる。


「………直純。なにやってんの
あんたまだやってないことある
でしょーが。

わかったなら戻ってきなさい!」

⏰:10/11/23 14:42 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#365 [愛華]
ぽたぽたと涙が、直純の頬に
落ちていく。


みんな泣いてる。
どうして俺は泣かないんだろう。



「直純は戻ってくるよ。
直純は強い子だもん。絶対に!」


梓にそう言われても、
悪い未来だけが頭を支配する。

⏰:10/11/23 14:45 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#366 [愛華]
一度は忘れようとした罪が
また胸を支配して


梓と那佑の涙が
俺を黒く染めてゆく。



俺の、せいだ。



どうしたら償える?

どうしたら……………

⏰:10/11/23 14:47 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#367 [愛華]
'





2日たっても直純の意識は
戻らなかった。

毎日病室に通って直純に話し
かける。

そのたび、責められているかの
ような気分になってしまう。


そしてずっと考えている。
直純に償う方法を。

⏰:10/11/23 14:52 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#368 [愛華]
「隆則!お前少し休めよ。
顔真っ青だ。そんなんだと
体もたなくなるぞ……」

「別にたいしたことねーよ」

誨から心配されても、今は
鬱陶しく感じてしまう。


最低だな、俺。




ピンポーン

⏰:10/11/23 14:56 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#369 [愛華]
「………梓」

はいってきたのは梓だった。

「ごめん、誨さん。
ちょっと席はずしてくんない?
タカと話したいことあるの」

「……わかった」


誨はそう言うと家からでていった


「…………なんだよ、話って」

⏰:10/11/23 15:02 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#370 [愛華]
あれからあまり梓とは話して
いなかった。病室で会うことは
あったけど、会話をかわすこともなく……それは那佑も同じで。




ズカズカと梓は歩き、
ソファに腰掛ける。



「………なにかんがえてんの」

⏰:10/11/23 15:05 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#371 [愛華]
「………なにって……?」

「とぼけないで。タカの考えてることなんかすぐわかるよ。

タカが悪いわけじゃない。
だから罪を償うとか……もう
そーゆーのはいらないの」


違う。梓、それは違う。


「それでまた誰かを傷つけるの?
そんなことはやめて。あたし、
いくらタカでも許さない。
直純もそんなの望んでいない」

⏰:10/11/23 15:13 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#372 [愛華]
梓は強く言った。
目は赤く腫れていたけれど
まっすぐな、瞳。


「…………強いな」

「………え?」


「梓も………那佑も強い。でも
俺は…………臆病で。

ほんとは弱いんだ」


「タカ……………」

⏰:10/11/23 15:15 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#373 [愛華]
そう。俺は弱い。

自分を守るのに精一杯で

周りなんか少しもみえなくて。


それでも守りたいものがあった。

だから今まで歩いてこれた。


何度でも言う。

それは那佑のおかげなんだ。

だから、言いたいことがある。

⏰:10/11/23 15:18 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#374 [愛華]
泣きたい夜もあったし。

叫びたい夜もあった。

でも、あの日。
あの桜の木の下で泣いている
君を見て。強く、強く。


守りたいと。


はじめて自分が強くなれた
そんな気がしたんだ。


ありがとう。

⏰:10/11/23 15:22 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#375 [愛華]
'




プルルル…………


「………もしもし?隆則!?」

「……興奮しすぎ。びくるわ」

俺はふっと笑った。
すごく久しぶりな気がした。


「今から会えるか?」

⏰:10/11/23 15:24 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#376 [愛華]
'


何度この場所で待ち合わせした
だろう。数えきれない。
いつも笑顔で君はやってくる。


「あ、隆則!!」

人混みをかきわけて君は俺のもとに走ってくる。
いつもと同じ。同じだ。

⏰:10/11/23 15:27 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#377 [愛華]
「走るなって言ってるだろ」

「あ、ごめん………ね、今日は
病院いかなくっていーの?」

「んー……うん」

「どしたの、隆則………」


「………話があるんだ」


大切な、大切な話。
きっと君は泣くだろう。


そんな俺を、許してくれ。

⏰:10/11/23 15:31 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#378 [愛華]
大分暖かくなってきた道を、
那佑とふたりで歩く。


「……もう少しで桜咲くね」

「あー……もう一年かぁ」

もうすぐ那佑と出会って一年。
なんかいろいろありすぎた一年
だったと思う。


「バケツプリン、食べた?」

「あーまだ食べてないや。
食べきれないよ、きっと。
いつか隆則と直純くんと、3人で食べれたらいーね」

⏰:10/11/23 15:35 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#379 [愛華]
那佑は悲しそうに笑った。


「そうだな………」


『プリン、好きなの?』

『うん、いつかバケツプリンってゆーの食べたいなぁ』

『退院したら食べろよ』

『退院………できるかなぁ』


できたじゃんか。ざまぁみろ。

⏰:10/11/23 15:38 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#380 [愛華]
着いた先は公園だ。

直純と再会したあの日。
那佑が追いかけてきてくれた公園


「え……隆則の家から来たほうが
早かったじゃん」

「那佑と歩きたかったんだよ」

俺はベンチに腰掛けた。
那佑は隣に腰掛ける。

⏰:10/11/23 15:42 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#381 [愛華]
生温い風が吹いた。


「話ってなぁに?

直純くんの…………こと?」


「………まぁそれもあるかな?」


那佑がぴくっと反応する。
やっぱり敏感になってるみたいだ

⏰:10/11/23 15:51 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#382 [愛華]
「………那佑は、強いな」

「…………はぁ?なにそれ?」

那佑は意味がわからない、
という顔をして俺を見た。


確かにそうだな。
でも聞いてくれ、最後まで。


「はじめて会った時はすごい
弱くて……なんつーか小さい
猫みたいなやつだったけど…」

⏰:10/11/23 15:56 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#383 [愛華]
『あたし……死にたくないよ…』


泣きながら言う君を見て
君を守れるのは俺しかいない

そう思った。

願いをこめて、抱きしめた。


「ほんと……強くなった……」

「隆則…………?」


なのに俺は弱いままだった。
ごめんな。

⏰:10/11/23 16:01 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#384 [愛華]
『隆則は黒が似合うね!』

黒髪が好きだったわけじゃない。
からまれるとこ見られるのが
嫌だったから、変えただけ。

そういえばクリスマスにくれた
ブレスレットも黒だった。


「ありがとな。ほんとに」

「隆則………なにいってんの」

⏰:10/11/23 16:18 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#385 [愛華]
『絶対あたしのところに
帰ってきてね。約束だよ』


「那佑…………」


「隆則………なに?」


約束、だよ。



「…………………別れよう」


約束は人を強くして
そして別れには悲しみで縛る。

⏰:10/11/23 16:25 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#386 [愛華]
読んで下さってる方、いつも
ありがとうございます!
愛華です。

今読み直したのですが、最近
大変なスランプでして文章が
めちゃくちゃです(:_;)
本当にすいません………

感想板へアドバイスをもらえたら大変うれしく思います。

アドバイス、もちろん感想も
待っています。

今後とも その日が来る前に、
をよろしくお願いします。

⏰:10/11/23 16:44 📱:840SH 🆔:rxjRbokQ


#387 [愛華]
絶対に口に出すことはない。
そう思っていた言葉。
気持ちの入っていない言葉。
まさにそんな感じだった。



那佑。あの時のお前の顔。
俺はきっと忘れられない。


俺はお前との約束を破る。


恨んでいい。許さなくていい。

でもいつか、笑ってくれ。

⏰:10/11/24 21:55 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#388 [愛華]
「あたし、馬鹿な男に
引っ掛かっちゃったよ」って

いつか笑い話にしてくれ。


そして、俺を思い出さないで。


こんな弱い俺を。





お前の人生の『汚点』に
してくれてかまわないから。

⏰:10/11/24 21:58 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#389 [愛華]
'






「な………に言ってんの隆則」

「………………」

「悪い冗談?なに?」

「…………………」



「どして……なんも言わないの」

⏰:10/11/24 22:00 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#390 [愛華]
俺はなにも答えない。
那佑の顔も見ることができない。



「隆則!!答えてよ!!」


俺は那佑を抱き寄せた。


ゆっくり大切な人を
優しく、抱きしめる。


トクトクと心音が聞こえる。
那佑の命を刻む音。

⏰:10/11/24 22:06 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#391 [愛華]
「たかの………なに………」

那佑は震えた声で言った。
怖がっているのかもしれない。
俺の次の言葉を聞くのを。


「…………そのまんま、聞いて」


俺は那佑の肩に顔を埋める。
那佑のにおい。


温かくてしめったような
俺を安心させてくれるにおい。

⏰:10/11/24 22:17 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#392 [愛華]
きっとこれで最後。
最後にするから。抱きしめたい。



「………俺、那佑と会えて
すっげぇ幸せだったよ」

「あたしもだよ。だから……」

「今までの人生で一番幸せだった
多分、ダントツだよ。
めちゃくちゃ大事だった」


大事………だよ。今も。

⏰:10/11/24 22:23 📱:840SH 🆔:e5xjNigI


#393 [愛華]
「………なんで……?
どうして………あたしのせい?」

「那佑はなにも悪くないよ」

「じゃあ理由を言ってよ……」


那佑が震えているのがわかる。
でも俺は、もうなにもできない。


大切なものは全ては守れない。
いずれ離さなくちゃいけない時が
来てしまう。


大事なものをつくりすぎて
失うことが恐怖となった。

⏰:10/11/25 21:00 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#394 [愛華]
大切すぎて失うことが恐い。


そんな悩みさえも幸せだった。



俺にたくさんの幸せを教えて
くれて………



ほんとうに、ありがとう。


何度言い尽くしても足りないけど

⏰:10/11/25 21:03 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#395 [愛華]
強い風が吹いた。
もうすぐ春がやってくる。

那佑と出会った季節。


その前に君に別れを告げる。




「……隆則……なんか言ってよ」

絞りだしたような那佑の声。

君を傷つける。

きっと、今までにないくらいに
残酷に。強く。

⏰:10/11/25 21:08 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#396 [愛華]
'



「…………重いんだよ」

「………………え?」


頼む。耐えろ。あと少しでいい。


「那佑のことを背負い続けるの。
俺、弱いからさ…………
もう、限界なんだよ……」

⏰:10/11/25 21:11 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#397 [愛華]
「なに…………それ」

「そのまんまだよ………
ごめんな、俺にはもう無理だ」


大丈夫。あと少し。
あと少し耐えられる。


「約束………したじゃんかぁ…」

「そーゆーのが重いん……」




あれ………

⏰:10/11/25 21:14 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#398 [愛華]
なんでだ?声でねぇ。

苦しい。張り裂けそうだ。




あぁ……終わってしまう『実感』



嘘ばっか並べて
いまさら苦しくなって


俺はほんとうに馬鹿者だな。

⏰:10/11/25 21:16 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#399 [愛華]
俺は那佑を更に強く抱きしめた。

忘れたくない。この体温。



強く、強く、


こわれてしまうほどに。



悲しみがばれないように。

⏰:10/11/25 21:19 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


#400 [愛華]
好きだ。好きだ。


誰よりも大好きだ。



もうそんな言葉じゃ表せない。




それくらい、大切だった。


君もそうであったのなら
それでもう充分だよ。

⏰:10/11/25 21:21 📱:840SH 🆔:/ryHTVQM


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