天使と悪魔の暇潰し
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#95 [匿名]
「…すみません。」

探しても探してもない資料。当たり前だ。彼がさっき消してしまったのだから。

「もう一度作り直します!」
ターゲットは椅子に座りパソコンに向かう。

「もういい。期限の守れない者は必要ない。おい!田中ー!こいつの代わりに新しく作ってくれ。」

ターゲットの斜め前に座る田中という男に、その社長だかなんだか偉そうな奴は声をかけた。

⏰:10/11/09 02:25 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#96 [匿名]
田中という男は、面倒くさそうな顔を一瞬だけしたが、すぐにキリッとした目付きに変わり、わかりました。と返事をした。

わざとらしくターゲットの前でため息をつく。

「先輩。何で後輩の僕が、先輩の尻拭いをしなきゃいけないんですかねぇ。」

嫌味たっぷりの言葉に、ターゲットは下を向く事しかできなかった。

⏰:10/11/09 02:29 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#97 [匿名]
その日ターゲットは定時になると、こそこそと帰った。
自分の居場所がなく、煙たがられる場所に居たくはなかったのだろう。

それに、残業するほどの仕事がなかったのだ。

なぜ、こんなにも僕の人生は上手く行かないのだろう。と思ってるに違いない。

教えてあげたい。
悪魔が取り付いてるからだよ、と。でも安心してほしい。天使も付いてるよ。

⏰:10/11/09 13:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#98 [匿名]
僕は今日、ターゲットと接触するかわりに、昨日の女性に会いに行こうと考えた。

ターゲットを今救えるのは、僕の言葉ではなく、あの女性の言葉だろう。

その女性の会社の前で待ち伏せする事にした。
スーツを着て、少し歳をとってみた。多分、二十代後半に見えるだろう。

僕が会社の前に着いてから、ほんの5分ほどで、女性は出てきた。

⏰:10/11/09 13:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#99 [匿名]
すぐに声をかける。

「あの、失礼します!」
なるべく誠実に、なるべく真面目そうに、なるべく優しく声を発した。

「どちら様で?」
顔だけこちらに向け、警戒した声で女性は答えた。

「昨日のレストランで、あなたに逃げていただく為にお手伝いをさせていただいた…覚えてます?その上司でございます。」

お手伝いというか、無理矢理というか。まあ、何でも良い。

⏰:10/11/09 13:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#100 [匿名]
「あぁ!お世話になりました。どうもありがとうございます。」

言葉は感謝しているが、その表情は暗かった。

「いえ。その件なんですが、ちょっとお話をしなければならない事がありまして。」

はあ、と女性は空気の出るような返事をした。

「ここではちょっとあれなので、場所を移してもよろしいでしょうか?」

「え、えぇ大丈夫です。」

⏰:10/11/09 14:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#101 [匿名]
僕達は近くのカフェに入る事にした。時間帯がよかったのか、あまりコーヒーが美味しくないのか、他の客はあまりいなかった。

店員に端の席に案内してもらい、コーヒーを2つ頼んだ。

「すみません、突然で。何かお約束などはなかったですか?」

警戒心を解いてもらおうと、良い人柄を演じる。

「いえ、帰るだけでしたから大丈夫です。…で、何かあったんでしょうか?」
女性は早く話が聞きたいみたいで、そわそわしていた。

「えっとですね、まず謝らなければなりません。」

⏰:10/11/09 14:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#102 [匿名]
「…謝る?」

女性が聞き返した所でコーヒーが運ばれた。話は中断となり、店員が置き終わるのを待つ。

「実は、昨日犯人だと申したあの男は無実でした。本当に申し訳ございません。」

えっと短い声を出した女性は口に手に抑え、目を見開いていた。

口ではなく、目を抑えた方がいいんじゃないかと思うほど、こぼれ落ちそうだった。

⏰:10/11/09 14:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#103 [匿名]
「僕達が追っていた詐欺師は、あの男性と良く似た風貌で、上の調査の手違いで犯人だと間違えられたようです。」

女性は驚いた顔のまま、あまり動かない。

「真犯人は今日捕まりました。あの男性には、まだ詐欺師の容疑がかけられていた事は知りません。」

「それは、本当ですか?」
ようやく女性は言葉を発した。零れそうな目も、先程よりはましになっている。

⏰:10/11/09 14:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#104 [匿名]
「えぇ。全て事実です。なので今日は謝りに参りました。本当に申し訳ございませんでした。」

女性は全身の力が抜けたように、脱力していた。

「今日の朝も、あの男性を会社まで尾行していたのですが、やはり元気がなかったです。きっとあなたに振られてしまったからでしょう。死にそうな顔をしていました。」

女性ははっと顔を上げた。

「私、彼に酷い事を言ってしまった。」

目には涙が浮かんでいて、今にも零れ落ちそうだった。

⏰:10/11/09 14:30 📱:F06B 🆔:☆☆☆


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