天使と悪魔の暇潰し
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#1 [匿名]
読んでもらえたら嬉しいです。

⏰:10/10/17 12:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#2 [匿名]
天使と悪魔



天使。そう言われているのが僕。
人間を見守り幸せを与え、間違えた道に進みそうになる人間をそっと軌道修正するのが天使の仕事。
悪魔。そう言われているのが彼。
人間を観察し不幸を与え、間違えた道に入り込んでしまった者に罰を与えるのが悪魔の仕事。

⏰:10/10/17 12:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#3 [匿名]
天使は何万、何百万といるがそのほとんどが淡いキャラメルのような髪色をしていて肌は白い。
瞳は綺麗な青だったり緑だったり茶色だったり、それぞれだ。

それに比べて悪魔は皆黒髪。肌は少し黒く人間で言う日焼けを少しした程度。瞳は真っ黒だ。

⏰:10/10/17 12:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#4 [匿名]
「よぉ!」

彼が僕に話しかけてきた。彼が話しかけてくる理由はだいたい分かる。
面白い事があった時、何か面倒臭い頼み事、暇潰し。

そうだ、言っておくが人間は勘違いをしている。天使と悪魔は敵同士。悪魔は天使にこてんぱにやられてしまう。というのは間違いだ。本当は仲がいい。

⏰:10/10/17 12:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#5 [匿名]
僕と彼も仲良しと言える方だと思う。

「なに?面白い事でもあったか?」
ニヤニヤと近づいてくる彼を見たら、誰もが良い事があったんだなと思うだろう。

「おう。暇潰しに勝ったんだよ!なぁ、すげーだろ?しかも相手は大人だぜ。悔しがってたなー!」

⏰:10/10/17 12:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#6 [匿名]
彼は暇潰しに向いていない。短気で大雑把で、天使と悪魔には必要不可欠な人間の心を読む事を面倒臭がる。

なのに彼が大人に勝てるとは。同じ天使として恥ずかしくなる。そんな大人にはなりたくないと心の底から思った。

⏰:10/10/17 12:39 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#7 [匿名]
「本当かよ。君に負ける大人がいるなんて信じれない」

素直に思った事を口にする。嘘だろ?とは言わなかった。

「本当だよ!俺もびっくりだ。その人間がさ、簡単に自殺したんだよ、笑えるよな」

あははっと彼は大きく笑ったが、僕は苦笑いしかできなかった。

⏰:10/10/17 15:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#8 [匿名]
暇潰しというのが、天使と悪魔でやるゲーム。

ターゲットとなる人間を一人選び、近付く。

五日間で自殺させたら悪魔の勝ち。二日間自殺させずに過ごせたら天使の勝ち。


簡単なゲーム。
ただの暇潰し。

⏰:10/10/17 15:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#9 [匿名]
>>8

五日間自殺させずに過ごせたら天使の勝ち。


です。すみません。

⏰:10/10/17 15:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#10 [匿名]
大抵死にたそうな人間が選ばれる。というか、人間はほとんどが死にたいと軽々しく口にする。
僕達にはそれが理解出来ない。まあ、僕達は死なないからだろうけど。

その死にたいと口にする半分以上の人間は本当に死のうなど思っていない。

死に直面すると死にたくない!!と泣き叫ぶんだ。あんなに醜いものはない。

⏰:10/10/17 17:10 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#11 [匿名]
「なあ、暇潰ししようぜ」
僕は彼との暇潰しで負けた事はない。

「今ならお前にも勝てる気がするんだよなー」

「ターゲットは選ばせてあげるよ」
僕には自信がある。

まあ、負けた所でただの暇潰し。ただのゲーム。

⏰:10/10/17 17:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#12 [匿名]


「あいつに決めた!な、良さそうだろ?」

彼の言う良さそうというのは死にそうって事なんだろうな。
僕には全然良くないが、彼の指差す人間を見る。

年齢は三十代半ばくらいの中肉中背のいかにも地味な男。髪の毛が少し薄く、整えられてない。
スーツを着ているからサラリーマンとやらなのだろうけど、品がなく、不潔な雰囲気だ。

⏰:10/10/17 17:54 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#13 [匿名]
「いいよ。あの人にしよう。」
「よし!じゃあ早速行ってくるわ!」

じゃあな、とヒラヒラ手を降って彼は地上に降りた。
五日間、いつ、どこで、ターゲットと接触してもかまわない。ただし一日二時間とルールがある。

誰が作ったかわからないルールだが、僕達は必ず守る。でないと面白くないからだ。

僕はターゲットと彼を上から見守る事にした。

⏰:10/10/17 18:00 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#14 [匿名]
ちなみに人間の世界に行く時は人間の姿になる。まあ、あまり変化はないのだけれど羽が取れたり、表情が少し変わる。より人間らしくなるのだ。

彼はターゲットに向かって歩いて行く。人間でいうと二十歳くらいに見える。黒い髪、キリッとした目付きはそのまま。

⏰:10/10/18 00:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#15 [匿名]
ドンッ
彼の肩がターゲットに当たった。

「いてぇな」

ギロッと彼が睨む。あんなに怖い顔をして睨んだら悪魔である事がばれてしまうんじゃないかとハラハラする。

「ああ、す、す、すみません!ごめんなさい!」

ターゲットは必死に頭を下げて謝っている。
可哀想だと思ったが、必死な姿に笑えてしまった。

⏰:10/10/18 00:19 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#16 [匿名]
「死んで謝れ」

彼は直球に死ねと言う。
今時死ねと言われて、はい、わかりました。今から死んできます。と死にに行くやつがいるのだろうか。

そんなに簡単に死ぬやつはとっくに死んでいると思ってしまう。

⏰:10/10/18 00:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#17 [匿名]
「え、え?いや、あの、お金なら払います。す、すみません、もうしませんから許してください!!」

震える手で財布からお札を抜き彼に渡し、走って逃げて行った。

ターゲットは以前にも同じ様な経験があるのだろうか、怖がり方が異常だった。

⏰:10/10/18 00:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#18 [匿名]
ターゲットは死なない。
いや、いつかは死ぬだろうけど自殺はしない。

彼に睨まれてあんなに怖がって逃げて行ったやつは大体死に直面しても同じ様に逃げる。

こっちこいよ!

人間には聞こえない声で彼は僕に呼び掛けてきた。断る理由もないので地上に降りた。

⏰:10/10/18 01:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#19 [匿名]
「あいつすげぇびびってたな!こりゃ5日もいらねーんじゃねぇか?」

彼はケラケラ笑う。
本当に人間の心を読まないんだなーと呆れた。

「そんな事よりさこの金で何か食いに行かね?俺のおごりだよ!」

「いいね!」
彼に乗る事にした。

⏰:10/10/18 11:01 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#20 [匿名]
僕達は地上に降りるといつも行く場所がある。
人間からも大変人気だというハンバーガー屋さんだ。

こんなに美味しい物があるなんて人間は幸せだな〜とその時ばかりは思う。

「やっぱうめぇな!」
しみじみとハンバーガーを頬張る彼はもう3個目だ。

⏰:10/10/18 11:36 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#21 [匿名]
ふと視線を感じ隣を見ると、女子高生とやら三人組みが僕達を見ていた。
よくある。
なぜ見られているのか、僕が女子高生とやらを見返すと、こっち見た!!と騒ぎ出した。

そっちが見ていたのにもかかわらず僕が見たら騒ぎ出す。全く意味が解らない。不愉快だ。

⏰:10/10/18 11:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#22 [匿名]
もしかして、ばれている?
僕達が人間ではない事が奴らにはわかっているのか?

まずい、面倒だ。

「もう行くよ」

「え?お、おう。お前一つでいーのかよ」

「もう十分だよ。」

足早に彼を連れて席を立った。

⏰:10/10/18 11:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#23 [匿名]
「僕達の正体あの隣の子達にばれてたんじゃないかな」
不安を自分の中に抑え込んでおく事が出来なくて、店を出てからすぐに彼に言った。

「あ?ばれるわけねーだろ」

ばれた試しがねーよと、呆れた口調で彼は言うとまだお店の中にいる三人組にヒラヒラと手を降った。

するとまた騒ぎだした。

⏰:10/10/18 16:28 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#24 [匿名]
な?
と彼に言われたが、その意味が理解できず首を傾ける。

「俺らって若い人間の女に人気らしーよ」

「天使と悪魔がか?」

「だからばれてねーって!何かよくわかんないけど見た目?」

人間の見た目になれてるとはいえ、やはりどこか本当の人間とは違うのだろうか。

⏰:10/10/18 16:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#25 [匿名]
「お前は鈍感だな。」
ポンと彼に肩を叩かれムッとする。彼にだけは言われたくない。

「それよりお前はいいのかよ、ターゲット」

あぁ、忘れていた。

「今日はいいよ、帰ろう。」

「もう帰るのかよー。」

駄々をこねる子供の真似をする彼を無視し、僕は上へ帰った。

⏰:10/10/18 16:37 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#26 [匿名]
それにしても人間の女は解らない。
心を読む気にもなれない。

人間に僕達の正体がばれるのはとても面倒なのだ。

ばれると一年間くらい地上に降りられなくなる。
大好きなハンバーガーが食べられなくなるのだ。
まあ、ばれた事はない。
彼の言う通りだ。

⏰:10/10/19 10:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#27 [匿名]
二日目

「いってくるわ」
なんだかだるそうに、彼はふわっと降りて行った。

それほど興味はないのだが、僕も今日はターゲットと接触するつもりだったので眺める事にした。

今日のターゲットは休みのようで私服姿でスーパーにいた。

その私服も地味だ。
御世辞にもお洒落だなんて言えない。

⏰:10/10/19 11:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#28 [匿名]
沢山着たんだなー、これはTシャツも幸せだと感心するほどヨレヨレになった服は、お腹の脂肪を引き立てる。

彼はターゲットの後を2メートルほど開け追跡している。見事に怪しい。

だが他の客は、いかにお得な商品を買うかで一生懸命なのだろうか、商品しか見ていない。

⏰:10/10/19 11:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#29 [匿名]
彼は手に小さなお菓子の様な物を持っている。

あれだけ持っているのは怪しい。見た目が子供だったら文句はないが。

ただそんな怪しい彼を誰も怪しいだなんて思わないみたいだ。興味がないのだろう。

彼がサッとターゲットに近づくと、手に持っていたお菓子をターゲットの鞄の中に入れた。

⏰:10/10/19 11:58 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#30 [匿名]
何事もなかったように彼はまたターゲットとの距離を開け、さっきよりは自然に後をつけていた。

何も知らないターゲットはレジに並び会計を済ます。

自動ドアを出た所で彼が近づいた。

「あの!」

突然話しかけられたターゲットはびっくりして、恐る恐る彼を見上げてる。

「え、なんでしょうか?」

⏰:10/10/19 17:36 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#31 [匿名]
「万引き」

「…はい?」

「万引きしただろ?」

「え、何を言ってるんですか?してないですよ!!」

ターゲットは両手を前に出しぶんぶん振って否定をしていた。頭も激しく横に振る。

その姿がとても気持ち悪かった。

⏰:10/10/19 17:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#32 [匿名]
「嘘つくな!いーから来い!」
勢いよく背中を押す彼は何だか楽しそうに見えた。

「い、痛い!!嘘じゃないですよー僕はなにも…!!」


ターゲットは嘘などついていない。

嘘などついていないのに、ひどい扱われようだ。

⏰:10/10/19 17:44 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#33 [匿名]
「すみません、あなた店長ですよね?この人万引きしてたんですけど」

彼はスーパーの中までターゲットを連れて行き、レジ付近にいる店長と呼ばれた男に言った。

「え、本当ですか?びっくりだなぁ」

年齢は四十代前半。髪の毛は白髪混じりだが整えられ、お腹の肉もさほどない。ガリガリではなくガッチリした体格。学生時代ラグビーをやっていました!と自己紹介をしてきそうな雰囲気がある。

⏰:10/10/22 13:15 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#34 [匿名]
びっくりだなぁと笑いながら言う店長に彼は少し苛立った顔をした。

「とりあえず事務所で話を聞こう。」

君はどうもありがとう。とターゲットだけを中に入れた。

「ちょ、ちょ、あの待って下さい!!僕何もしてないんですよ」

ターゲットは泣きそうな顔で店長にすがり付く。

「中で聞きますから」

なだめるような言葉にターゲットは下を向き歩き始めた。
はぁ、本当についてない。ターゲットの心の声が聞こえてきそうだ。

⏰:10/10/22 13:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#35 [匿名]
「鞄の中のものを出してくれますか?」

「…はい」

財布、ティッシュ、メモ帳、チラシなどを次々出していくが、そこで手が止まった。

「どうしました?出せないものがあるんですか?」

「なんで…」

動いた手はお菓子を持っていた。

⏰:10/10/23 18:01 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#36 [匿名]
「なんで?あの!僕は本当にやってないんです。何かの間違いです!!」

見に覚えのない事が起き動揺している。

「そんな事言われても実際に鞄の中から出てきましたからねぇ。それに皆最初はやってないって言うんです。認めないと帰れないですよ。」

店長は慣れているみたいだ。

「しかもまた何でこんな安いお菓子を万引きしたんです?これくらい買えるでしょう?」

それもそうだ。

⏰:10/10/23 18:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#37 [匿名]
「お金は払います。」

「そういう問題じゃないんですよ!!」

「でも本当にやってないんです。」

「はぁ。」

「こんなばかな事しないですよ…」

「何で認めないんだ?」


そんな会話を15分くらい続けている。本当に可哀想なターゲットだ。
弱気な性格なのか怒鳴ったりはしない。

⏰:10/10/23 18:11 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#38 [匿名]
「分かりました。今回は一度目なので警察には通報しません。…お菓子一個だけですし。」

「…はぁ」

「もう帰っていいですよ。」

「はい…」

下を向いたままターゲットは立ち上がり、ドアの前で一礼し外へ出た。

⏰:10/10/24 15:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#39 [匿名]
僕はターゲットに接触しようと思った。もう彼は下には居ないみたいだし、何もしないでいるわけにはいかないからだ。

相変わらずターゲットは下を向いたまま暗い顔をしてゆっくり歩いている。ターゲットの周りだけ空気がどんよりしている

「あのすみません。」

ターゲットの鞄から落ちたハンカチを拾う。正確に言うと落ちたではなく、僕が落としたのだ。

⏰:10/10/25 18:05 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#40 [匿名]
今度はなんだ?と言いたげな嫌な顔をしてターゲットが振り返る。

「あの、これ落としましたよ。」
できるだけ優しい言い方で、できるだけ嫌味のない笑顔を向けた。

さっきの彼とは違う親切な青年に見えたみたいだ。ターゲットの顔が少し和らいだ。

「あぁ、すみません!ありがとうございます。」

⏰:10/10/25 18:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#41 [匿名]
なんだ…と呟き僕の手からハンカチを受けとる。

「すみません、ありがとうございました。」

ターゲットは丁寧にお辞儀をし、前を向こうとする。

「何かあったんですか?」
突然の僕の問いにターゲットは、え?と目を丸くする。

「いや、なんだって言われたので何かあったのかと思いまして。」

⏰:10/10/25 19:00 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#42 [匿名]
「あぁ、ちょっとね不運な事が起こりまして。最近そんな事ばかりでね、いろんなものを警戒してしまうんですよ。」

「そうでしたか」

「ああ、ごめんなさい!こんな愚痴聞きたくないですよね。」

頭をポリポリとかき、照れているのか恐縮しているのか分からない顔をしている。

⏰:10/10/25 19:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#43 [匿名]
「いえ、そんな事ないですよ。」

そんな事はない。あなたの気持ちが知りたいから。そこで優しい言葉をかけて自殺から救わなくてはいけないから。

「死にたいって思います?」
唐突な僕の質問にターゲットはまた、え?と驚いた顔をする。きっと彼の仕業以外にも不幸な事は沢山起きているのだろう。その度に死にたいと思うに違いないと僕は思った。

⏰:10/10/26 16:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#44 [匿名]
人間は小さな不幸があると、あーもう死にたい!と口にする。

テストの点数が悪かったり、恋人に振られたり、上手く行くはずの仕事が失敗したり、浮気された時。大好きなカレーを白い洋服にこぼした時や、沢山の人が通る場所で派手に転んだ時。

僕からしたらそんな事はどうだっていいのだ。

全く興味がない。

いや、馬鹿馬鹿しくて笑う事もできない。

⏰:10/10/26 16:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#45 [匿名]
「死にたいか…そうだな、死にたいかもなぁ。死んだら楽になるのかな。会社で上司には無意味に怒鳴られて、女性社員には気持ちわるがられてさ、僕、何もしてないのに。さっきも万引きしたと間違えられたし、昨日もおっかない若者に絡まれてとっさにお金渡しちゃったよ…だらしないよなー。僕の人生って不運な事で出来ているような気がするよ。」

ハハッと無理矢理笑うターゲットの顔は生気が感じられなかった。

⏰:10/10/26 16:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#46 [匿名]
彼の悪戯が効いているみたいだ。

さぁ、1、2、3で目を瞑ればそのまま死ねます!せーのっ!とカウントダウンを始めたら何の迷いもなく目を瞑るだろう。今のターゲットなら。

「死んでも大変ですよ?まず死人の行列に並ばなきゃいけないんです。」

⏰:10/10/26 20:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#47 [匿名]
そう。この地球にいる人間を含めた生き物は一日に何万と死んでいる。
死んだ瞬間死人の行列に並び順番を待つ。
神様への列だ。

神様は、何故死んだか、やり残した事はないか、生前の悪事など様々な事を聞かれる。

それまでの行列に大体二年は並ぶことになる。

⏰:10/10/26 21:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#48 [匿名]
「行列?」
ターゲットはハハッと笑う。

「そうです。神様までの。それから神様にいろんな事を聞かれるんです。面倒臭いですよ。特に自殺の場合は質問が多くて。」
僕は正直に事実を伝えた。励ますつもりではなく、笑わせようとしたつもりもない。

「君は面白い事を言うんですね!ありがとう。自殺は面倒臭そうだから止めとくよ。」

⏰:10/10/26 21:11 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#49 [匿名]
三日目

とりあえず昨日は良かったんじゃないかな。最後に笑ったターゲットは今まで見たことのない顔をしていた。

彼も自分がターゲットと接触してからはどこかへ行ってしまって、僕とターゲットの接触は全く見ていなかった。

きっとハンバーガーでも食べに行ったのだろう。マイペースな所が彼の長所だ。

⏰:10/10/29 19:52 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#50 [匿名]
ターゲットは昨日と同様、今日も休みのようだった。

ただ違うのは服装だ。ビシッとしたジャケットを着ていている。髪の毛も整えられていて昨日より五歳は若く感じる。

出勤の日も同じようにすれば、回りの態度も変わるのにと思う。

いったい何があるのだろう。仕事よりも気合いの入れる行事があるのだろうか。

⏰:10/10/29 20:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#51 [匿名]
僕と彼は上からターゲットを見守る事にした。

電車に乗り一番端に座る。そして立つ。ドアの前に歩いて行く。

そわそわと、キョロキョロ辺りを見回してる姿は実に怪しい。

挙動不審な男に、回りの乗客も嫌な目で見ている。絶対にかかわりたくない、目があってはいけないと、わざと目をそらす女性も沢山いた。

⏰:10/10/29 22:25 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#52 [匿名]
しばらくして電車が停車すると、ターゲットは慌てて降りた。慌てる必要はどこにもないのに。

少し歩き、大きな時計台の前で止まり、深呼吸をしている。

また辺りをキョロキョロし始めたので、誰かと待ち合わせをしているのだと分かった。

⏰:10/10/29 22:30 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#53 [匿名]
大体三十分は経っただろうか。ターゲットは時計を気にしながらキョロキョロと辺りを見回している。

「ちょっと僕行ってくる」

隣で退屈そうに頬ずえをついている彼は、おぅとあくび混じりの返事をした。

たいした作戦があったわけではない。ただ、なんとなく、行こうかなと思ったくらいだ。

⏰:10/10/30 11:50 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#54 [匿名]
ターゲットの後ろに立ち肩をポンポンと叩いた。するとビクッと肩が上がり、次には満面の笑みで振り返った。

「昨日はどうも。僕の事覚えてます?いや〜こんな所で会うなんて奇遇ですね!」

昨日と同じように、笑顔と人当たりの良さを全面に出し、声をかけた。

ターゲットは待ち合わせの相手が来たと思ったに違いない。笑顔から、目を見開きびっくりした顔になると、すぐに表情が曇った。

⏰:10/10/30 11:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#55 [匿名]
「やぁ、昨日はどうもありがとう。覚えているよ。あんな事を言う人には出会った事がなかったから、印象深かったよ。」

まあ、人間は神様の事なんて全く知らないから、あんな忠告は出来ないだろう。


「ところで何をしているんです?一人で。」

「あ、いや、ちょっと待ち合わせで。」

何故か顔を赤くし、照れ始めるターゲット。実に気持ちが悪い。

⏰:10/10/30 12:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#56 [匿名]
この手の反応はきっと異性が絡んでくる。

「もしかしてデート?」
僕は悪戯っ子のような笑顔を作り、ターゲットの顔を覗き込んだ。

「よくわかったね。そうなんだ。こんな年になって恥ずかしいんですが、お見合いで先日出会った人でして。」

また照れ始めたターゲットは、僕に久しぶりの敬語を使った。

緊張からなのだろうか。

⏰:10/10/30 12:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#57 [匿名]
そこで今日のターゲットがビシッと決めている理由が分かった。

「がんばってください!」
と応援してみせる。

「ありがとう。」
と先程の緊張が少しほどけた顔つきになった。

「あ!そうだ!良いこと教えてあげます。以前知り合った女の子が言っていたんですけど…」

アドバイスか?とターゲットは激しく頷きながら僕に近付いてきた。必死さが伝わってきて、また気持ちが悪いと思ってしまった。

⏰:10/10/30 12:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#58 [匿名]
「女性は誰でも褒められる事が好きみたいです。綺麗ですねだったり、その服とてもお似合いですねみたいな。」

あぁ!と今度は深く頷き始める。

「あとは適度な強引さだったかな?次はあそこに行きましょう!とか、このお店でご飯を食べましょうとか。だけどここが難しくて、一度女性に伺わなきゃ駄目みたいです。行きたい場所はありますか?とか何か食べたい物はありますか?と。」

⏰:10/10/30 12:19 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#59 [匿名]
なるほど。と頭の中で、何度も何度もイメージトレーニングを繰り返している様子だった。

「それじゃあ、僕はこれで。また会う機会があったら是非聞かせて下さい。」
ニコッと笑って、その場を離れた。折角だからハンバーガーでも食べようと、近くのハンバーガー屋さんに入る。

僕が入ると彼も降りてきて、一緒に食べる事にした。

⏰:10/10/30 12:28 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#60 [匿名]
「おい!なんだよあのアドバイス!あれは俺が教えてもらったんだぞ!」

彼がドンッとぶつかってきた。

「あぁ、そうだったっけ?だいぶ前の事だから忘れちゃったよ。」

とぼけた顔で言う僕が、気に食わなかったらしい。舌打ちをしてハンバーガー五つ、奢らされた。

⏰:10/10/30 18:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#61 [匿名]
しばらくして僕達はターゲットの事が気になり始め、また上から眺める事にした。

するとすでに待ち合わせしてたであろう女性と一緒に歩いていた。

女性は肩までのストレートな黒髪で、年齢は三十代後半だろうか。目の周りの皺が目立つ。身長はターゲットよりも少し小さい位なので、女性の中では大きい方なのかもしれない。ベージュのワンピースを着ている。

知的で真面目そうな印象。どこか優しそうで、良いお母さんになりそうだ。

⏰:10/11/02 12:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#62 [匿名]
女性も少し緊張しているように見える。

案外お似合いな二人なのではと思う。

「このワンピースお似合いですね!」

早速ターゲットは先程僕が教えた事を言っている。

「本当ですか?今日は何を着るか凄く悩んだので、そう言ってくださると、とても嬉しいです。」

まるで十代の女の子のように無邪気に喜ぶ女性を見て、女はいくつになっても少女の気持ちを忘れたくないのよ!!と教えられた事を思い出した。

⏰:10/11/02 18:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#63 [匿名]
「今日は、あ、あの、フレンチのお店を、予約したんですが、だ、大丈夫ですか?」

緊張が隠しきれない様子のターゲットは、とても頼りなく感じる。三十代になって何年もたつのに、女性との接点はなかったんだろうな、と予測できた。

「えぇ、大丈夫です!好き嫌いもないですから」

女性の方が余裕がある。

⏰:10/11/02 18:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#64 [匿名]
それから二人はそのお店に向かった。

会話という会話はとくになく、今日は雨じゃなくてよかったですね、そうですね、寒くないですか?大丈夫です。を続けている。

黙ったままの時間もあったが、運良く早めにお店に着いた。

予約名を伝え、テーブルへと案内される。

綺麗な内装で、スタッフも皆、プロのサービスマンというかんじだ。

⏰:10/11/02 18:29 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#65 [匿名]
「料理はディナーコースでお間違いないでしょうか?」

「あ、はい。」

「ではこちらがドリンクのメニューでございます。」

「あ、はい」

ぎこちなさすぎる。

⏰:10/11/02 21:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#66 [匿名]
「なににしますか?」

ターゲットは先程僕が教えた通りまず女性に伺った。

「えっと、あまりお酒は詳しくないのでお任せします。」

女性は簡単でいいなぁと思った。そうですか、とターゲットはメニューに目を戻す。

そうだなぁ、んー、どれがいいかなぁ、うーん、と目をキョロキョロ動かす。

⏰:10/11/04 16:45 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#67 [匿名]
きっとターゲットは僕のアドバイスなど関係なく、女性が決めてくれたドリンクと同じ物を頼もうと思い、伺ったのだろう。

「お客様、本日何かの記念日だったり特別なお日にちでしたら、乾杯はまずシャンパンなどはいかがでしょうか?」

店員が助け船を出してくれた。

「シャンパンは大丈夫ですか?」

ターゲットはここぞとばかりに女性に言う。

「えぇ、大丈夫です。」

「じゃあそれでお願いします。」

ふぅ、と息を吐く。
緊張が少し解かれたみたいだ。

⏰:10/11/04 16:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#68 [匿名]
あ、とターゲットは思い出したように呟いた。

「どうかしましたか?」
キョトンとした顔で女性は聞いた。

「いや、今日は記念日でもなんでもなかったなと思いまして。」

恥ずかしそうに下を向きながら頭をかく。

「それなら、二回目のデート記念でいいじゃないですか?」

ニコッと笑った女性を見て、ターゲットは幸せそうに頷いた。

今まで生きてきて女性に微笑まれた事などないような、新鮮な反応だった。

⏰:10/11/04 17:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#69 [匿名]
それからターゲットは適度に会話をして、適度に飲んで、食事を楽しんでいた。

お酒が弱いのか、女性を目の前にしているからなのか、徐々に顔が赤くなってきた。


そこで隣にいる彼は舌打ちをし始め、そわそわと動き出した。


「こりゃ悪魔として、放っておく訳にはいかねーよなー?」

⏰:10/11/04 17:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#70 [匿名]
同意を求められても僕は天使で、悪魔にはなれないから彼の気持ちは分からない。

「君は悪魔だもんね。」

と質問の答えにはなっていない返事をした。だが僕の答えに彼は納得したみたいだ。

「だよな!そうだよ。俺は生まれてこの方人間の幸せを願った事はねーんだよ。幸せそうな笑顔を見ると虫酸が走る!」

嫌な顔をして彼は肩と顔を震わせた。

⏰:10/11/04 17:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#71 [匿名]
その時下では、女性が席を立っていた。きっとトイレだ。

「ってことで行ってくるわ!幸せな時間はここまで」
ニヤッと笑う彼は実に恐ろしい。

お手柔らかに、と彼に言うが、聞く耳は持っていない。

⏰:10/11/04 17:17 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#72 [匿名]
女性トイレ付近で、女性が出て来るのを彼は待っている。

黒いスーツをきて、髪の毛も後ろに流して整えられている。僕達は思い描いた格好に一瞬にして変える事が出来る。


少しして女性は出てきた。
彼の前を通り過ぎようとしたとき、彼は呼び止めた。

「あの、あなたあそこに座ってる男性と一緒に来られた方ですよね?」

いつになく丁寧な喋り方の彼が、後ろ姿のターゲットを指差す。

「えぇ、そうですがなにか?」

いきなり見ず知らずの若者に言われ、警戒をしている。当たり前の事だ。

⏰:10/11/04 17:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#73 [匿名]
「これは忠告です。ター…た、多分あなたははめられています。」

何の話ですか?と女性は怒った顔をした。

「簡単に説明します。あの男性は詐欺師です。あの方は結婚していて、その妻と二人で詐欺をしているんです。」

「おっしゃってる意味がよくわかりません。からかっているのなら私ではなく、他を当たって下さい!」

完全に怒ってしまった。彼の口からあんな嘘が出てくるとは思わなかった。

⏰:10/11/04 17:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#74 [匿名]
「ちゃんと聞いてください!あの男性は複数の女性と関係を持っています。そう、不倫です。でもそれは本気ではない。お金の為なんです。」

彼の正義感溢れる口振りに、女性は騙され始めた。

「不倫している事が妻にばれたふりをして、妻が不倫相手に慰謝料を請求するという流れになっているんです。だから、あなたも危ないんです!!」

「そんな…まさか!」

恋人を信じたいという気持ちなのだろうか、女性は泣きそうな顔をしている。

⏰:10/11/04 17:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#75 [匿名]
「全て本当の話です。実は昨日も一人の女性がお金を払ってしまいました。次のターゲットはあなたなのです。」


「私はどうしたら…」
しばらくの沈黙のあと掠れた声で女性が呟いた。

「逮捕するのは警察の役目です。あなたの身に危険が及ぶ可能性がありますので、あの男性との関係をこの場で終わらせてください。」


「…分かりました。」

⏰:10/11/04 17:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#76 [匿名]
「あ、僕とのこの会話はあの男性にはバレないようにしてください。とても危険なので。…では、私は店の外で見張っております。」

一礼し、彼は外に出た。

女性はゆっくりとターゲットの元へ向かう。

「あ、大丈夫ですか?気分でも悪いですか?」

長い間トイレから帰って来ない女性を心配したのだろう。ただ今の女性にはターゲットの優しい言葉も全て嘘に感じている。

⏰:10/11/04 17:52 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#77 [匿名]
「え、えぇ。」

女性の顔は緊張していた。

「あの、一つお伺いしてもいいですか?」

女性はふぅと息を吐き、本題へと入ろうとした。

「ええ!何でも聞いてください!」

ターゲットは女性に興味を持たれているのが嬉しいようで、ウキウキしている。

⏰:10/11/04 17:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#78 [匿名]
「昨日何か大変なことが起こりましたか?」

遠回しのような、直球のような質問だ。

え?とターゲットは少し考えるが、すぐにはっと思い出した。

昨日は万引きの容疑をかけられていたのだ。

「あ、えっと、その…な、なにもなかったですよ!!何もしてないです!!」

ターゲットは万引きをしたと思われては確実にふられてしまうと思い、必死に隠そうとした。

⏰:10/11/04 18:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#79 [匿名]
素直に、やってもいない万引き犯だと思われて大変だったんですよ、と笑い飛ばせば良かったのに。

その怪しい反応に女性は確信したようだった。


「信じてました。残念です。ガッカリです!」

いきなり目を潤ませる女性を見て、ターゲットは慌て出した。

「な、な、なんの話ですか?」
万引きの事がばれたのか?と青ざめた顔になる。

⏰:10/11/04 18:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#80 [匿名]
「私を騙してたんですね!誠実そうな顔をして、そんな最低なことをするだなんて…!もうこれ以上あなたには会えなくなりました。もう顔も見たくありません!!二度と連絡してこないでください!!」

女性は勢いよく席をたつと、迷わずお店を出た。

ターゲットはポカーンと口を開けたまま、何が起きたのか理解出来ていない。

追い掛ける事すらできずにいる。

⏰:10/11/04 18:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#81 [匿名]
「思った以上に上手くいったぜ!」

店の外で見張るといった彼は、迷わず上へ戻ってきて、僕の隣で二人の様子を見ていた。

「店の外にいなくていーのか?」
僕が訪ねると

「こっちの方が見やすいしな!外からじっと見てたら怪しいだろ?」
と、答えた。

「あんな不様なふられ方しちゃー死にたくもなるよなぁ?唯一の光だった優しい女に嫌われたんだ!」

⏰:10/11/04 18:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#82 [匿名]
そうだなぁ、確かに今生きる人間は死にたくなるのかもしれない。と天使のくせに僕は思った。

ターゲットにとってあの女性は、最後のチャンスだったのだろう。

ターゲットは女性恐怖症になったかもしれない。

最後だと決めた恋が呆気なく終わりを迎え、何もかも終わったと勘違いをしただろう。

⏰:10/11/04 18:23 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#83 [匿名]
恋愛、仕事、学業、趣味、食事、友人。

人間の心は全てを1つの風船に入れてしまう。何かがダメになり、その部分に針が刺さるとパンッと風船は割れて、他の物まで一緒に粉々に萎れてしまう。

一つ一つを違う風船に入れればいいのだ。一つの風船、例えば恋愛の入った風船が割れても、他の友人が入った風船、趣味が入った風船は割れない。

他に頼る風船があるのだ。

⏰:10/11/04 18:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#84 [匿名]
今のターゲットは完全に前者だろう。

食事のコースはメインが出たばかりだった。
ターゲットは残りを食べる気もなく、途中で席をたち、会計を済まし一人で店を出た。

足取りが重く、一歩一歩にいろいろな思いが積もっているように感じた。

僕は今ターゲットの所に行こうか迷ったが、止めた。きっと僕の慰めの言葉は、逆効果になるような気がしたのだ。

⏰:10/11/04 18:39 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#85 [匿名]
四日目


今日のターゲットは一日目と同じスーツを着て、仕事をしている。

案の定表情は暗い。

仕事もはかどらない様で、パソコンに向かって作業をしたかと思えばすぐに手が止まり、考え事をしている。その繰り返しで、時計は12時を回っていた。

同僚達は昼食を取るべく出掛けていく。ターゲットはそれでもまだ考え事をしている様子だった。

⏰:10/11/06 22:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#86 [匿名]
結局ターゲットはそのまま動く事なく、何も食べずに昼休みを過ごした。

恋愛というものは、こうも人間の心を左右するのかと思うと、怖くなる。

子孫を残したいだけなら、死ぬ程悩まなくて良いはずなに。人間は面倒臭い。

⏰:10/11/06 23:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#87 [匿名]
今日も僕はターゲットと接触する気にはならなかった。

そう簡単には自殺するようには思えなかったし、それならわざわざ関わる必要はないと思ったからだ。

僕とは反対に、彼は今日も、何をしてやろうかと企んでいる。

悪戯をしようとする子供のように無邪気だが、考えてる事は残酷だ。

人間を自殺させるんだから。ただの暇潰しで。

⏰:10/11/07 01:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#88 [匿名]
ターゲットはのそっと席を立ち、トイレに向かった。

そのすきに彼は、ターゲットの机の上にある資料のようなものを消した。

彼は姿を消して、ターゲットの会社に入ったようで、他の人には彼の姿は見えていない。

⏰:10/11/08 12:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#89 [匿名]
しばらくしてターゲットは戻ってきた。相変わらず表情は暗く、足取りは重い。

席につき、ぼーっとバソコンの画面を見ている。いや、見ているというか、そちらに顔が向いているだけだ。

机の上にあるはずの資料が無くなった事に気付いたのは、暫くしてからだった。

⏰:10/11/08 19:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#90 [匿名]
「おい、お前。そろそろ出来ただろ?見せろ」

社長だか、部長だか、課長だか、僕には何者だか分からない偉そうな男が、ターゲットに声をかけた。

「あ、あ、はい!」

そこで初めて机の上に目をやる。あれ?という顔になる。そして徐々に焦りだし、ばたばたとあちらこちらを探し始めた。

⏰:10/11/08 19:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#91 [みか]
おもしろいです!
応援してるので頑張って下さい\(^O^)/

⏰:10/11/08 22:13 📱:SH904i 🆔:yfCdiuP.


#92 [匿名]
みかさん

ありがとうございます!!
めちゃくちゃ嬉しいです!

⏰:10/11/08 22:28 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#93 [匿名]
「おい、どうした?」

課長だか、社長だか、偉そうな人が、なかなか資料を持って来ないターゲットに対して苛立ち始めた。

「あ、すみません!いやーあの、ここに置いておいたんですけど」

ターゲットはさらに焦る。

⏰:10/11/08 22:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#94 [匿名]
「ないのか?」

社長だか…偉い人が、ターゲットの近くまで寄ってきた。

「いや、あ、あの、あるはずなんです!」

「…はず?」

「いや、いや、あるんですけど、ないんです。」

「どういう事だ?本当に仕上げたのか?さっきからボーッとして、仕事をしているようには見えなかったんだがねぇ。」

⏰:10/11/08 22:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#95 [匿名]
「…すみません。」

探しても探してもない資料。当たり前だ。彼がさっき消してしまったのだから。

「もう一度作り直します!」
ターゲットは椅子に座りパソコンに向かう。

「もういい。期限の守れない者は必要ない。おい!田中ー!こいつの代わりに新しく作ってくれ。」

ターゲットの斜め前に座る田中という男に、その社長だかなんだか偉そうな奴は声をかけた。

⏰:10/11/09 02:25 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#96 [匿名]
田中という男は、面倒くさそうな顔を一瞬だけしたが、すぐにキリッとした目付きに変わり、わかりました。と返事をした。

わざとらしくターゲットの前でため息をつく。

「先輩。何で後輩の僕が、先輩の尻拭いをしなきゃいけないんですかねぇ。」

嫌味たっぷりの言葉に、ターゲットは下を向く事しかできなかった。

⏰:10/11/09 02:29 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#97 [匿名]
その日ターゲットは定時になると、こそこそと帰った。
自分の居場所がなく、煙たがられる場所に居たくはなかったのだろう。

それに、残業するほどの仕事がなかったのだ。

なぜ、こんなにも僕の人生は上手く行かないのだろう。と思ってるに違いない。

教えてあげたい。
悪魔が取り付いてるからだよ、と。でも安心してほしい。天使も付いてるよ。

⏰:10/11/09 13:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#98 [匿名]
僕は今日、ターゲットと接触するかわりに、昨日の女性に会いに行こうと考えた。

ターゲットを今救えるのは、僕の言葉ではなく、あの女性の言葉だろう。

その女性の会社の前で待ち伏せする事にした。
スーツを着て、少し歳をとってみた。多分、二十代後半に見えるだろう。

僕が会社の前に着いてから、ほんの5分ほどで、女性は出てきた。

⏰:10/11/09 13:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#99 [匿名]
すぐに声をかける。

「あの、失礼します!」
なるべく誠実に、なるべく真面目そうに、なるべく優しく声を発した。

「どちら様で?」
顔だけこちらに向け、警戒した声で女性は答えた。

「昨日のレストランで、あなたに逃げていただく為にお手伝いをさせていただいた…覚えてます?その上司でございます。」

お手伝いというか、無理矢理というか。まあ、何でも良い。

⏰:10/11/09 13:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#100 [匿名]
「あぁ!お世話になりました。どうもありがとうございます。」

言葉は感謝しているが、その表情は暗かった。

「いえ。その件なんですが、ちょっとお話をしなければならない事がありまして。」

はあ、と女性は空気の出るような返事をした。

「ここではちょっとあれなので、場所を移してもよろしいでしょうか?」

「え、えぇ大丈夫です。」

⏰:10/11/09 14:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#101 [匿名]
僕達は近くのカフェに入る事にした。時間帯がよかったのか、あまりコーヒーが美味しくないのか、他の客はあまりいなかった。

店員に端の席に案内してもらい、コーヒーを2つ頼んだ。

「すみません、突然で。何かお約束などはなかったですか?」

警戒心を解いてもらおうと、良い人柄を演じる。

「いえ、帰るだけでしたから大丈夫です。…で、何かあったんでしょうか?」
女性は早く話が聞きたいみたいで、そわそわしていた。

「えっとですね、まず謝らなければなりません。」

⏰:10/11/09 14:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#102 [匿名]
「…謝る?」

女性が聞き返した所でコーヒーが運ばれた。話は中断となり、店員が置き終わるのを待つ。

「実は、昨日犯人だと申したあの男は無実でした。本当に申し訳ございません。」

えっと短い声を出した女性は口に手に抑え、目を見開いていた。

口ではなく、目を抑えた方がいいんじゃないかと思うほど、こぼれ落ちそうだった。

⏰:10/11/09 14:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#103 [匿名]
「僕達が追っていた詐欺師は、あの男性と良く似た風貌で、上の調査の手違いで犯人だと間違えられたようです。」

女性は驚いた顔のまま、あまり動かない。

「真犯人は今日捕まりました。あの男性には、まだ詐欺師の容疑がかけられていた事は知りません。」

「それは、本当ですか?」
ようやく女性は言葉を発した。零れそうな目も、先程よりはましになっている。

⏰:10/11/09 14:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#104 [匿名]
「えぇ。全て事実です。なので今日は謝りに参りました。本当に申し訳ございませんでした。」

女性は全身の力が抜けたように、脱力していた。

「今日の朝も、あの男性を会社まで尾行していたのですが、やはり元気がなかったです。きっとあなたに振られてしまったからでしょう。死にそうな顔をしていました。」

女性ははっと顔を上げた。

「私、彼に酷い事を言ってしまった。」

目には涙が浮かんでいて、今にも零れ落ちそうだった。

⏰:10/11/09 14:30 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#105 [匿名]
五日目 最終日


毎回ながら、最終日は少しドキドキする。ワクワクと言ってもいいかもしれない。

五日間付きまとったターゲットが死ぬのか、生き続けるのか…、今日決まる。天使が勝つのか、悪魔が勝つのか。

勝てば少なからず嬉しい気持ちはある。負けてもやはり少し悔しいと思う。ターゲットの命がなくなったからではない。勝負に負けるからだ。

⏰:10/11/10 15:59 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#106 [匿名]
この日のターゲットも会社にいた。

来たよ。来なきゃいいのに。使えない奴だよな。本日いらない。邪魔。

皆が皆、そこら辺でターゲットの悪口を言っている。

遠くにいても、上から見ている僕には分かる。ターゲットに同情はしなかった。むしろ、しょうがないんじゃないか、と思ってしまう。

⏰:10/11/10 16:06 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#107 [匿名]
「あいつらさ〜陰で言ってねぇで本人に直接言ってくんねぇかなぁ!」

彼は下を睨みながら舌打ちをした。

「そしたらもっともっと追い込まれんのによぉ。嫌いだったら直接言った方がスッキリすんじゃんなぁ」

その通りだ。

「嫌いじゃないんじゃない?」

⏰:10/11/10 16:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#108 [匿名]
ただ皆が悪口を言うから、私も言ってみた。そんな所なんだろうな。

彼の言った通り、直接言った方がスッキリする。見ててイライラしてるだけなんて、ストレスをわざと溜めてるようにしか見えない。

本当はそこまで嫌いじゃないんだ、きっと。だから直接言わない。皆に合わせてるだけ、ストレスなんて溜まらない。

⏰:10/11/10 16:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#109 [我輩は匿名である]
>>1-150

⏰:10/11/10 18:31 📱:P03B 🆔:84bByedM


#110 [匿名]
>>109さん
アンカーありがとうございます!

⏰:10/11/10 18:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#111 [匿名]
「嫌いじゃない?んなわけねーよ!俺はああいう男は大っ嫌いなんだよ!」

悪魔の彼が嫌いなら、世の中の皆が嫌いになるのか?そんな訳がない。

彼は本当に自分中心の考え方しか出来ない。絶対に天使にはなれないだろう。

そっか、と僕はあやふやな返事をした。

⏰:10/11/10 19:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#112 [匿名]
「君、ちょっと話があるんだ。会議室にきてくれるか?」

昨日の、社長だか、部長だか、課長だか、偉そうな人がターゲットだけに聞こえる声で言った。

ターゲットは驚いた様子もなく、はい、と小さな声で返事をすると、席を立った。


何となく良い話ではない事が予想出来た。

⏰:10/11/10 19:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#113 [匿名]
「昨日の資料の事でしょうか?それでしたら本当に反省しています。申し訳ありませんでした!もう、このような事は起こさないよう努力します!」

社長だか偉い人が喋り出す前に、ターゲットは頭を下げた。

「いや、もういいんだ。」

「ありがとうございます!」

もういい、という言葉にターゲットはまた頭を下げた。また頑張ればいいと、心に決めたような顔をしている。

⏰:10/11/10 19:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#114 [匿名]
「いや、違うんだ。もう君は今日限りでここには来なくていい。」

え?とターゲットは頭を上げる。

「いや、今は不況だろ?こっちは人経費を払うのもやっとなんだ。君には悪いけど、君が一番成果のない人間なんだ。すまないが、そういう事だ。」


ターゲットは首になった。

ターゲットとしては突然の話だったのかもしれない。

⏰:10/11/10 19:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#115 [匿名]
それからターゲットは、社内に戻らず、屋上に向かっていた。

ただただ、空を眺めている。

神様でも見えるのか?もし見えたとしたら、忙しく死人に質問をしているだろう。生きてる人間の事は見ていない。

神様は人間の為にいるんじゃないのかよ?と思われたら困るだろうな。そんなのは人間が勝手に決めつけただけで、神様は一言もそんな事は言っていない。

⏰:10/11/10 19:52 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#116 [匿名]
神様なんていない。という人間もいる。

神様はいる。

ただ人間の為に何かをする事はない。

そして、神様お願い!と願う人間も自由だか、そんな願い、神様は聞いていない。

そんな暇があるなら、自分で努力したり、他の事を考えた方が、時間の無駄にならなくていいよ、と教えてあげたくなる。

⏰:10/11/10 19:55 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#117 [みか]
続きが楽しみ

更新頑張って下さい

⏰:10/11/12 23:04 📱:SH904i 🆔:s8LPXFGY


#118 [匿名]
>>117みかさん
ありがとうございます!
凄く嬉しいです!!

⏰:10/11/13 12:43 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#119 [匿名]
「なんだよアイツ!自殺してぇならとっとと飛び降りりゃいーのによぉ」

屋上に行き、ただただ空を眺めてるターゲットに嫌気がさしたのか、舌打ちをしながら彼は下に降りて行く。

僕もターゲットの所へ行きたかったが、先を越されてしまった。


彼が何をするかは分からなかったが、彼がターゲットに接触する事で、死が早まるような気がして仕方がなかった。

⏰:10/11/13 14:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#120 [匿名]
「おい、お前!こんな所で何してんだよ!!」

彼はターゲットの後ろから話しかける。話しかけるというよりは、怒鳴るが近いかもしれない。


「…君は?」

ターゲットは驚く事もなく、振り向いた。もう、何もかも諦めているような顔だ。


「てめぇには関係ねぇだろ。」

なんて無愛想なんだろう。

⏰:10/11/13 14:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#121 [匿名]
「あぁ、関係ないね。なら僕がここで何しようと、君にも関係ないよね。」

「お前死ぬ気か?」

「…君には関係ない。」

ターゲットは冷静だった。

「ああ、そうだな。俺には関係ねぇことだな。」

「分かってくれたら、どこかへ行ってくれないか。人が目の前で死ぬなんて嫌だろう。」

「答えてんじゃねーかよ。」

⏰:10/11/13 14:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#122 [匿名]
「だから…」

「うるせぇ!」

ターゲットが話そうとしたとき、また彼は怒鳴った。

「悪いけど、人が死ぬ事には慣れてる。てめぇが目の前で飛び降りた所で俺は笑うだけだ!」

「僕を止めようとしても無駄だよ?」


「は?笑わせんな。俺はてめぇみてーな奴が大嫌いなんだよ!早く死んでほしくてわざわざ此処まで来てやったんだ!」

ターゲットはふふっと下を向き笑った。

「そっか。よかった。僕は意志が弱いから、君みたいに後押しをしてくれる人がいると心強いよ。」

⏰:10/11/13 15:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#123 [匿名]
するとターゲットは手すりに手をかけ、ゆっくりとまたぐ。そして柵の向こう側へと出た。

今までのターゲットの性格が嘘のように、落ち着き払っている。

ターゲットは死ぬ気だ。死ぬ事すら出来ない人間だったのに、もうここまで成長してしまった。

まずい、と思ったとほぼ同時に、その気持ちはなくなった。

「待って!!」

ターゲットの自殺を止める事が出来る、唯一の女性。

⏰:10/11/14 12:04 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#124 [匿名]
間に合った。

昨日女性には、ターゲットの会社の場所を教えていた。

行くのも行かないのも、あなたの自由です、とだけ伝えて。

よく屋上にいるとわかったもんだ。僕はほっと一安心した。

「待って!!死ぬなんてやめてください!!」

女性は今にも泣き出しそうな形相で、必死に言葉を出している。

⏰:10/11/14 12:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#125 [匿名]
「…あ、あなたは!どうしてここに?」

ターゲットは驚いた顔をしている。

「私、あなたに謝らなければならない。ごめんなさい!あんなに酷い事を言ってしまって。ずっと後悔してたんです。あなたを信じてあげなかった自分を恨みました。」

とうとう女性は泣き出してしまった。

「あなたは悪くありません!泣かないでください。」
ターゲットは柵に手をかけ、女性を心配している。

⏰:10/11/14 12:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#126 [匿名]
「もう一度私とデートしていただけませんか?」

「え?」

聞き取れなかった訳ではないだろう。

「もう一度私とデートをしてください。」

女性は必死だった。
ターゲットも泣き出しそうだ。目は真っ赤で涙が溜まっている。

「こんな僕とですか?…僕、たった今首になっちゃったんです。いらない人間なんです。誰からも必要とされない、邪魔な人間なんです!こんな僕があなたとデートだなんて…」

⏰:10/11/14 12:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#127 [匿名]
「邪魔なんかじゃない!」
女性は叫んだ。

「邪魔なんかじゃないです。必要なんです。私には、あなたが必要なんです!あなたに合わない会社なんて辞めればいい!私が支えますから、一緒に頑張りましょう?そして私を支えてください。」

ターゲットは泣いた。子供のように声をあげて。

足が震えている。やっと死ぬ事への恐怖が、戻ってきたみたいだ。

⏰:10/11/14 12:28 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#128 [匿名]
「また俺の負けかよ。」

彼はいつの間にか、僕の隣に戻って来ていた。

「でも今回は、今まで以上に手こずったよ。彼女が来なかったら僕は負けてた。」

「来るって分かってたんだろ?」

ああ、わかっていた。必ず来ると思っていた。だけど僕は、いや、と否定しておいた。

⏰:10/11/14 12:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#129 [匿名]
その後、ターゲットはあの女性と結婚をした。

不景気らしいが会社も決まり、以前とは見違えるように働いている。

お腹の肉は一回り余計についたようだ。きっと女性の料理が美味しいのだろう。

幸せそうに笑っているターゲットを見ると、少しだけ嬉しくなった。


いつまでも続いて欲しいものだ。

⏰:10/11/14 12:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#130 [匿名]



僕は、かれこれ何百人ものターゲットを決めて暇潰しをしてきた。

初めての彼との暇潰しは、僕の圧勝だった。彼は自分が悪魔である事を忘れてしまっていたから。

⏰:10/11/14 12:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#131 [匿名]
一日目


「暇潰しって知ってるか?」

企んだ顔をして、彼は近寄ってきた。

暇潰し、僕も早くやりたいと思っていた。子供の天使と悪魔は、暇潰しの遊びはやってはいけない事になっている。

産まれてから何千年とたった。もう子供ではないので、暇潰しをしても何も言われなくなる。

⏰:10/11/15 10:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#132 [匿名]
「知ってるよ。ずっとやりたいと思ってた。君もだろ?」

「おう!やろうぜ。どーせ暇だしよっ。」

暇じゃなくても、彼は無理矢理暇を作って、遊ぼうとしてきただろう。


ターゲットは彼が決めた。大きな病院に入院している高校生の女の子。

髪の毛は黒く、大きな目、小さめな鼻に、薄い唇。華奢なので、どこかか弱そうに見える。

⏰:10/11/15 10:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#133 [匿名]
「まぁ、とりあえず行ってくるわ!」

彼は何の作戦も考えていないのに、下に降りて行った。僕には真似出来ないな、と少し感心した。

ターゲットは屋上で空を眺めていた。

「なんか見えんのか?」

何の躊躇いもなく、彼はターゲットの隣に立つと、声をかけた。

「ずっと空を見てたら、天使が見えたりしないかなーって。」

ターゲットは警戒もせず答える。

⏰:10/11/15 12:24 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#134 [匿名]
「天使じゃなくて、悪魔じゃダメなのか?」

その言葉に、ターゲットは一瞬戸惑うような顔付きになったが、すぐに緩んだ。

「悪魔は何かしてくれるの?」

「うーん、自殺を促す。」

彼は少し考えたが、あまりいい答えが出来ていないようだ。だがターゲットは笑った。

⏰:10/11/15 12:30 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#135 [匿名]
「じゃあ、悪魔に会いたいかも!天使を待つのはもう意味ないから。」

「意味ない?」

「うん、意味ないの。」

「なんで?」

「天使っているの?」

「いるよ。悪魔もいる。」

「悪魔に会いたい。」


ターゲットは僕には会いたくないらしい。隣に悪魔がいるからなのか。

⏰:10/11/15 12:39 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#136 [匿名]
それから二人は近くにあったベンチに座って、話をしていた。

天使がどーとか、悪魔は凄いとか。病院の怖い話だったり、今流行っているアイドルグループの話。

彼は何がしたいのか。ターゲットを追い詰めるなりして自殺させないと、負けてしまうというのに、楽しく話している。

⏰:10/11/15 12:51 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#137 [匿名]
「あ!やっべ、もう行かなきゃ。」

そう、彼が下に降りてから、もうすぐ二時間が経つのだ。

「あ、そっか。」

「おう、じゃあな。」

彼は立ち上がり、歩き出す。

「次はいつくるの?」

ターゲットは彼を呼び止めた。

「明日かな。」

「わかった。この時間に、私明日もここにいるから、気が向いたら来てよ!」
「おう、気が向いたらな。」

ターゲットは笑顔で手を振った。

⏰:10/11/15 19:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#138 [匿名]
「何で仲良くなってるの?」

二時間たっぷりと使い、彼が今日した事は、会話。時には笑い、時には真剣に、会話。

「いや…これからだよ!ったくお前はいつもせっかちなんだよ!」

彼にだけは言われたくない台詞だ。だけど僕は我慢して、作戦?とだけ聞いた。

「お、おう!当たり前だろぉが!仲良くしといて、いろいろ情報を集めてから、突き落とす!」

絶対に今考えた。僕は断言出来る。

⏰:10/11/16 00:00 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#139 [匿名]
「てかお前は俺の心配してる場合かよ!いーのかよ、行かなくて。」

彼は下を眺めながら言う。

正直僕は、初めての暇潰しだから、しっかりと作戦を考えてから行動したかった。

何も考えずむやみにターゲットに近付くのは、危険な気がしたのだ。特にこのターゲットは何らかの病気なはずで、慎重にいく必要がある人間だと思っていた。

⏰:10/11/16 00:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#140 [匿名]
仲良くなるのも一つの手だとは思ったが、彼に先を越されてしまった。

しかもターゲットはあんなに楽しそうに笑っていたので、僕はそれ以上にターゲットを楽しませる自信がなかったのだ。


女は難しい。
人間も、天使も、悪魔も。

⏰:10/11/16 00:11 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#141 [匿名]
二日目



結局僕は、考えても考えても、良い作戦は思い浮かばなかった。

人間は何が起きた時、死にたくないと思うのだろうか。死なない僕には検討も付かなかった。

「そろそろ時間だ。」
と彼は独り言を呟き、下に向かった。昨日と同じ時間。同じ場所。

⏰:10/11/16 00:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#142 [匿名]
「よお。来てやったぞ。」

彼の上から目線にも、ターゲットは苛立つ事はないようだ。

「昨日と同じ!ぴったしじゃん!」

ターゲットは嬉しそうにニコッと笑った。その笑顔を見て、心なしか彼が照れているように感じた。

ベンチに座り、昨日と同様、二人は話し出す。たいした話ではなさそうだったが、一時間位経って、彼がターゲットに質問した。

「お前、死にたいか?」

⏰:10/11/16 00:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#143 [匿名]
ターゲットは一瞬、何を聞かれたのか理解に苦しむ表情を見せたが、すぐに笑った。

「そんな質問、初めてされた!」

アハハと今度は声を出して笑う。

「何が可笑しいんだよ!」
彼は不機嫌になる。


「違うの。皆はさ、生きようね!って、頑張ろうね!って言うの。死、なんて口に出さないんだよ。」

「なんで?」

「リアルなんだよ、死ぬ事が。だから誰も口にしないの。皆の反応見てたらさ、嫌でも分かっちゃうんだよね。」

ターゲットの笑顔は少しずつ消えて行った。

⏰:10/11/16 00:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#144 [匿名]
「最初はさ、一週間ほど入院しましょう。って言われてたんだけど、気がついたらもう半年入院してるんだ。毎日のようにお母さんはお見舞いに来てくれるけど、毎日のように目を腫らしながら来るんだよー。」

ターゲットの言葉に、彼は無言で頷くだけだった。

「最近特に優しくてさ、我が儘何でも聞いてくれる。それに…」

言葉がつまった。

「私、どんどん痩せていってるんだ。最近は歩くのも辛くて、すぐに疲れちゃうの。熱も頻繁に出るし、身体中が痛くて寝れない時もある。徐々に悪くなってるのが自分でも分かるの。」

⏰:10/11/16 00:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#145 [匿名]
「でもさ、手術したら治るんだろ?」

彼はやっと口を開いた。悪魔である事を疑いたくなる、励ましの言葉。

ターゲットは彼の言葉に無言で首を振った。

「多分手術出来ないんだよ。先生とか、ナースさんとかを見てたらわかっちゃった。」

ターゲットは無理矢理笑顔を作ってみせた。

⏰:10/11/16 00:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#146 [匿名]
「あ!さっきの質問だけど、どーせ私はもうすぐ死ぬんだし、死ぬなら楽に死にたいな!このままだと私絶対苦しみながら死んじゃうと思うんだよねぇ。だから、死ぬほど苦しくなる前に…」

ターゲットは真っ直ぐ彼を見た。笑顔はなく、表情は無に等しい。

「死にたい。」


…死にたい。その言葉に彼はニコッと笑った。優しい笑顔ではなく、悪魔という名前にぴったりの笑顔だ。

⏰:10/11/16 00:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#147 [匿名]
彼はターゲットの、死にたい、という言葉を聞くと、その日はそれで帰った。

僕は彼に一歩リードされ、少しだけ焦りを感じた。


彼が僕の隣に戻ってきてからしばらくすると、ターゲットの母親らしき人が来た。

「ここにいたの?体調は大丈夫?」

母親はターゲットの後ろから声をかけた。出来るだけ明るい声で、明るい顔で言葉を発したつもりだろうが、裏目に出ている。

顔は疲れきっていて、やつれている。ターゲットの言っていた通り、目は腫れていた。

⏰:10/11/17 19:26 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#148 [匿名]
母親が来たというのに、ターゲットは空を見たまま黙っていた。

「さや!聞いてるの?」

「…ああ!お母さんいたの?」

「いたの?じゃないわよ!ぼけーっとして、何かあったの?」

ターゲットはさやという名前らしい。

「別に。」

そう言い、また空を眺め始めた娘に、可笑しな子ね、と笑いながら言う母親。

どこにでもいる親子だ。どちらかといったら、仲の良い方かもしれない。

⏰:10/11/17 19:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#149 [匿名]
僕は母親が一人になった時を見計らい、下に降りる事にした。

時間がかかるかな、と思ったが、チャンスはすぐに訪れた。

「ちょっと洗濯物取ってくるわね。」

そう言い、母親は病院の地下まで降りて行った。

⏰:10/11/17 19:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#150 [匿名]
「あの、さやちゃんのお母さんですよね?」

僕は洗濯物を取り込んでいるお母さんの後ろ姿に声をかけた。

「えぇ、あなたは?さやのお友達かしら?」

「はい!高校が一緒で。加藤と申します。」

僕は日本人にはよくある名前を言った。

「あら、お見舞い?どうもありがとう。さやなら今屋上にいるわよ。」

優しい顔で微笑んでくれたが、近くで見ると先程よりくまが目立つ。

⏰:10/11/20 14:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#151 [匿名]
「あ、多分お母さんが来る前にもう会ってきました。」

僕はまたサラッと嘘をつく。

「そうなの!どうもありがとうね。」

それから僕は、高校の話、勉強や部活やグラスの事などを適当に話した。
さやの友達のみかちゃん達は元気?と質問されたので、それもまた適当に答えた。

⏰:10/11/20 14:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#152 [匿名]
「あの…さやちゃんはどれくらい悪いんですか?」

一通りの会話をした後、僕は一番聞きたかった事を言ってみた。案の定、先程までの頑張って作り上げた笑顔はひきつり、お母さんは下を向いてしまった。

「やっぱり、そうとう悪いんですね。」

「…でも大丈夫よ!必ず治るから。さやは強い子だもの。病気なんかに負けないわ。」

⏰:10/11/21 14:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#153 [匿名]
その言葉は、僕の心配を晴らしてくれるための物ではなく、自分自身に言い聞かせてる物だと感じた。

「手術とかって?」

僕はまた質問をした。


「うん…今の技術だと手術出来ないんですって。ただ進行するのを緩める事しかないみたいなのよ。」

⏰:10/11/21 14:24 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#154 [匿名]
「そうなんですか。」

いかにも深刻そうな相づちに聞こえるように演技した。

「新しい技術が開発されて、手術が出来るようになるまで、さやの体がもつかわからないのよ。」

お母さんは必死に涙を堪えている。

それにしても、初めて会った、娘の友達と名乗る男に、よく話してくれたものだ。追い詰められて、一人では抱え込めないのかもしれない。

「大丈夫ですよ!」

何の根拠もないのに、僕は励ました。

⏰:10/11/21 21:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#155 [匿名]
三日目



彼は今日も同じ時間に、ターゲットの所へ足を運んだ。相変わらずくだらない事ばかり話している。

ターゲットは声を出して笑っていた。

その姿を見ると、もうすぐ死んでしまうとは、とても思えない。

若い人は進行が早く、急に死んでしまう事もあるらしい。昨日ターゲットのお母さんが話してくれたのだが、難しい話で、あまり頭に入ってこなかった。

⏰:10/11/24 11:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#156 [匿名]
とにかく、いつ死んでもおかしくない病気なのだ。明日朝になっても、目を覚まさないかもしれない。

この暇潰し五日間の間に体調が急変して、死んでしまった場合は、僕達の勝負は引き分けとなる。

負ける事よりもモヤモヤする引き分けだけには、絶対になりたくなかったので、急変だけはやめてくれ!と神様に祈った。

神様は聞いてないけど。

⏰:10/11/24 11:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#157 [匿名]
「お前が死ぬのは明後日だ。」

彼の低い声が聞こえた。

「何で明後日なの?私今すぐにでも死にたいのに。」

ターゲットは頬っぺたをぷくっと膨らませた。まるで、彼氏に我が儘を言う彼女のようだ。

なんで今日会えないの?早く会いたいのに。…うん、こんなかんじだ。

⏰:10/11/24 11:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#158 [匿名]
「お前はやり残した事とかないのか?」

普段の彼は、人間にそのような事は聞かない。
やり残した事があると主張してきた人間には、知るかと冷たい一言を発するのが、彼の流れだ。

「やり残した事か。…そんなのいっぱいあるよ。大学だって行きたかったし、結婚もしたい!独り暮らしとか海外に行くとか…やり残した事だらけだよ。」

ターゲットは寂しそうな顔をした。今まで考えないようにしていたのかもしれない。

⏰:10/11/24 11:54 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#159 [匿名]
「明日、一つだけ叶えてやる。だから今日のうちにやり残した事を一つに絞っとけ!」

「え?そんな事できるの?」

「誰だと思ってんだよ。」

「神様?」

「あんな自分の事で精一杯で、人間の願いの一つも聞けねぇようなやつと一緒にすんなよ!」

「え?」

「神様なんかより、俺の方がもっとすげぇよ!」

⏰:10/11/24 11:58 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#160 [くぽ]
あげ(´・ω・`)

⏰:10/11/29 23:47 📱:S001 🆔:GpLvkPFQ


#161 [匿名]
>>160くぽさん
ありがとうございます!

⏰:10/11/30 09:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#162 [匿名]
彼はそう言い残して帰って来た。

「暇潰しになると、君は人間に優しくなるの?」

僕は嫌味っぽく聞いてみた。

「別に優しくしてねーよ!俺は突き落とすのが好きなんだ!」

必死に怒鳴る彼は、子供っぽく感じる。

⏰:10/11/30 12:31 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#163 [匿名]
僕は今日もお母さんと接触する事にした。

病院に入る入り口で、偶然を装い声をかけた。

「あら!今日も来てくれたの?ありがとう。」

相変わらずやつれた表情は変わりなく、ターゲットよりも先にお母さんが倒れてしまいそうだ。

⏰:10/11/30 12:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#164 [匿名]
「あの、昨日は黙っていたんですけど…」

僕は深刻そうな暗い顔を作った。お母さんは首を少し傾げ、なにかしら?と目で伝えるように僕を覗き込んだ。

「さやちゃんなんですけど…昨日僕が会った時、死にたいって言ってたんです。私はもうすぐ死んじゃうと思うから、苦しくなる前に死にたいって。」

彼が昨日、ターゲットと話していた内容を思い出しながら言った。

え?と短く声にならない声を発したまま、お母さんは黙ってしまった。

⏰:10/12/04 20:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#165 [匿名]
「さやには、病気の事何も言ってないのに…。あの子、分かってたの?」

やっと話始めたお母さんの目には、やはり涙が溜まっている。

「悟ってるみたいでした。自分の体の事は、本人が一番分かっているのかもしれないです。」

何と言えばいいのか分からなかった。この人は、どれだけ泣くのだろう。涙が出なくなる魔法が使えるなら、僕はこの人に掛けてあげたい。

⏰:10/12/04 20:47 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#166 [匿名]
「支えてあげて下さい。」

何かもっと、人を勇気付けられる言葉を知っておきたかった。

「私がこんなんじゃ駄目よね。今日は先生に呼ばれててね。…でも覚悟が出来ないのよ。」

自分の子供が死んでしまう。どういう気持ちなのだろう。どれだけ苦しいだろう。

「良い話ですよ。覚悟だなんて…。決めつけちゃ駄目ですよ!さやちゃんは強いんですよね?」

他に何が言えただろうか。

⏰:10/12/04 21:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#167 [匿名]
「…ありがとう。じゃあ、さやの所に行ってあげてくれる?あの子、暇してると思うから。」

最後に笑みを見せると、慣れた足取りで歩いていく。

僕はターゲットの元へは行かずに、上へ戻って来た。医者とお母さんの話を聞こうと思ったからだ。

彼はいない。

⏰:10/12/04 21:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#168 [匿名]
四日目


今日は彼が、ターゲットのやり残した事一つ、叶えてあげる日。

これまでと同じ時間、同じ場所に、彼は向かう。
そこにはやっぱり、もうターゲットはいて、笑顔で彼を迎える。

「決まったか?」
彼はターゲットの座るベンチに腰を下ろすと、一言目にそう聞いた。

「うん。でも、まずはおはよう!って挨拶してよ!」

頬を膨らませて、ターゲットは彼に言った。

「はぁ?どうでもいいだろ!」

「どうでもよくないよ!」

「…おはよ。」

彼は面倒くさそうに呟いたが、ターゲットはそれで満足みたいだ。

「で、決まったのかよ。」

彼はもう一度聞く。

⏰:10/12/04 21:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#169 [匿名]
「キス。」

「ん?」

「キスがしたい。」



「誰と?」

「…誰でもいい。」



「じゃああそこにいる…」

「おじさんは嫌!」

「じゃああの…」

「子供も嫌!」

⏰:10/12/04 21:26 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#170 [匿名]
「誰でもよくねぇじゃねぇかよ!」

多分、ターゲットは決まっている。キスは、好きになった人としたいものだ。人間はそういうものだ。

「何で分かんないの!」

ターゲットはまた頬を膨らます。

「わからないの?って何だよ!分からねぇよ。」

⏰:10/12/04 21:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#171 [匿名]
彼がターゲットの方に顔を向けた。

一瞬だった。



ターゲットが彼にキスをした。

「本当は私からしたくなかったのに。」

ターゲットは前に向き直った。下を向いて、赤くなった顔を隠している。

⏰:10/12/04 21:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#172 [匿名]
彼は立ち上がり、ターゲットの前に立ち、

「立て!」
と命令をした。


「え?なんで?」

ターゲットの疑問は、彼によってかきけされた。彼はターゲットの腕を掴むと、無理矢理立たせる。

⏰:10/12/04 21:51 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#173 [匿名]
一瞬だった。

一瞬だけ、彼はターゲットの肩を抱きながら、キスをした。


「お前のやり残した事は、叶ったか?」

「…うん。」

下を向いたのは二人ともで、目を合わせようとしなかったのも二人ともだった。

⏰:10/12/04 21:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#174 [匿名]
人間の恋人同士を見ているようで、心が温かくなる。でも実際は違う。

人間と悪魔。
一緒に過ごす事は出来ない。

彼は、ターゲットのやりの残した事を、叶えてあげただけだ!と言い張るが、本心には聞こえなかった。

その日は1日中、彼の様子がおかしかった。

⏰:10/12/06 15:04 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#175 [匿名]
五日目 最終日


あれから、彼はターゲットの様子を見る事なく、ボーッとしたり、あたふたしたりの繰り返しで、忙しそうに過ごしていた。

僕は下に降りるタイミングを計っていたが、なかなか掴めず、見舞いに来たお母さんが、ターゲットのいる病室に着いてしまった。

今日も目が腫れている。

⏰:10/12/06 15:10 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#176 [匿名]
大切な話がある、とお母さんはターゲットをどこかへ連れて行った。

そして結局、下に降りる事なく、四日目が終わってしまった。

そして今日、最終日。
僕は下に行く必要はなかった。もうターゲットの気持ちは固まっているに違いない。

僕が何をしても、きっと何も変わらない。変える必要もない。

彼には何も言わず、二人を上から眺める事にした。

⏰:10/12/06 15:15 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#177 [我輩は匿名である]
あげ”(ノ><)ノ

⏰:10/12/09 07:35 📱:S001 🆔:w3hWK2fI


#178 [もも◆DwVzW5MnkQ]
続ききになります

⏰:10/12/09 13:59 📱:SH02A 🆔:3xmwpjNA


#179 [匿名]
>>177さん

>>178さん

どうもありがとうございます!

⏰:10/12/10 01:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#180 [匿名]
「これ。」

彼が手に持っているのは小さなビンで、中に薬のようなものが入っている。それをターゲットに手渡した。

「盗んできた。これ飲めば、楽に死ねる。あとはお前のタイミングで飲め。俺が居たら嫌なら帰る。見届けて欲しいなら此処に居る。」

「…うん。」

ターゲットは、手に持っているビンを見つめながら呟いた。

⏰:10/12/10 01:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#181 [匿名]
「私さ、絶対に治らないから、早く死にたいって思ったんだ。」

「おう、聞いた。」

「これ以上苦しむのが怖くて…これ以上、私が私じゃなくなるのが怖かった。」

彼は黙ってターゲットの話を聞いている。

⏰:10/12/10 01:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#182 [匿名]
「これ以上、お母さんに泣いて欲しくない。私のせいで誰かが苦しんでると思ったら、なんか…なんか痛くて。」

ターゲットは苦しそうな顔をしている。

「こんな状態で生きているのが、辛かった。」

今まで溜まっていた物が、言葉と一緒に流れ出た。

辛いに決まっている。
痛いに決まっている。

⏰:10/12/10 01:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#183 [匿名]
「もし、1%でも助かる可能性があるなら…」

「え?」

黙ってターゲットを見ていた彼が口を開いた。


「1%でも助かる可能性があるなら、それに賭けたいと思うのは、間違った事かな?」

ターゲットは彼を見る。

⏰:10/12/10 01:47 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#184 [匿名]
昨日お母さんが言った話は、寿命だとか延命治療だとか、そういう話ではなかった。

治る可能性がある。

外国へ行けば、新たな技術が進歩しており、手術が出来る。

ただ成功する可能性は低い。手術を始めてみなければ何も分からない、というような話だった。

何もせず死を待つか、少しでも可能性があるなら、それに託してみるか。

⏰:10/12/10 01:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#185 [匿名]
「生きれるかもしれないと思ったら、急に生きたい!っていう気持ちに変わったの。」

ターゲットはまっすぐ彼を見つめている。

「…私…死にたくない。死にたくないよ。…生きていたい。死にたくない!」

「……………」

彼は何も話さない。ただ強くターゲットを抱き締めていた。

「怖いよ。死ぬのが怖い。」

ターゲットは泣いている。

⏰:10/12/10 02:00 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#186 [匿名]
「お前は死なねぇよ!俺が保証してやる。」

彼が悪魔である事を忘れた時だった。忘れたというよりも、悪魔である事を放棄した瞬間だ。


ひたすら泣くターゲットを、ひたすら強く抱き締めていた。


時間というのは残酷で、いつも規則正しく動いている。なのにこんなにも、この二時間が早いとは思わなかった。

呆気なく、僕は勝利した。

⏰:10/12/10 02:06 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#187 [匿名]
あれから一週間ほど経ったある日、ターゲットは外国へ飛び立った。

アメリカの病院に入院し、2週間ほど経ち、状態が安定した頃に手術を受けた。

手術は十数時間にも及ぶ、大変な手術だった。

何がどうなっているのか、僕には全く分からない事が行われていて、ターゲットは眠っていたけど、とても胸が痛かった。

⏰:10/12/11 12:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#188 [匿名]
お母さんはずっと両手を合わせて、祈っている。神様!って聞こえてきそうだった。神様は聞いていないよって教えてあげたかったけど、僕にはできない。神様は聞いてるよって嘘をつきたくなる。


手術は終わった。
ターゲットはまだ生きている。だけど、大変な状況に代わりはないらしい。


それから五日間、ターゲットは寝たきりで、意識は戻らないでいた。

⏰:10/12/11 12:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#189 [匿名]
そしてとうとう、意識が戻らないまま、亡くなった。

ターゲットの体力では、耐えられなかったらしい。

泣き声が聞こえて、耳から離れなかった。


僕の隣で見ていた彼も、泣きそうだったに違いない。何も言わず去って行った。

⏰:10/12/11 12:43 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#190 [匿名]
ターゲットに再会するのはあれから二日後。神様への行列に並んでいた。

「よぉ。また会ったな!」

彼は以前と変わらない態度でターゲットに話しかけた。

ターゲットは驚いている。それはそうだ。死後の世界で、この間まで会話をしていた知人に会ったのだから。

「え?何でいるの?あなたも死んじゃったの?」

「死んでねぇよ!元から生きてねぇからな。」

「幽霊だったの?」

ターゲットは青ざめた。自分も死んでしまったというのに、同じ幽霊が怖いらしい。

⏰:10/12/11 12:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#191 [匿名]
「ちげぇよ!悪魔だよ、悪魔!」

「あくま?あくまってあの悪魔?じゃあ私、あなたのせいで死んだんだ。」

怒っているような、悲しんでいるような複雑な顔をしている。

「悪魔に会いたがってたじゃねーかよ!それに俺はお前から手をひいてやったんだ!じゃなかったらもっと早くお前は死んでたんだそ!」

「意味わかんない!」

ターゲットは笑っていた。

⏰:10/12/11 13:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#192 [匿名]
「ねぇ、あなたモテないでしょ?」

その言葉から始まった。

「女心教えてあげるよ。」

長い長い講義。

彼はちゃんと、ターゲットの話を聞く訳もなく、何度も怒られていた。

⏰:10/12/11 13:06 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#193 [匿名]
一応、二つの話が完結しました!次、どんなターゲットにしようか悩んでます(/_;)

⏰:10/12/11 13:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#194 []
楽しみです

⏰:10/12/11 21:11 📱:SH02A 🆔:FA1aBuIs


#195 [匿名]
>>194さん
嬉しいです!
ありがとうございます。

⏰:10/12/11 23:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#196 [みか]
ニートがいいです(^O^)

⏰:10/12/12 10:57 📱:SH904i 🆔:lav45Ib6


#197 [匿名]
>>196みかさん
ご意見ありがとうございます!
ニートかあ。どっちに勝たせようかなあ。

⏰:10/12/12 18:37 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#198 [まな]
その後の2人とか
見てみたいなァ

⏰:10/12/13 23:04 📱:P02B 🆔:☆☆☆


#199 [匿名]
>>198まなさん
その後の二人ですね! 一番最後に書こうと思います(^^)

ご意見ありがとうございます!

⏰:10/12/14 13:47 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#200 [ゆとり丸]
>>100-200

⏰:10/12/16 02:47 📱:PLY 🆔:3xKqJE3w


#201 [匿名]
>>200ゆとり丸さん
アンカーありがとうございます。

⏰:10/12/17 13:58 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#202 [匿名]




一日目



「次は誰にする?」


彼は本当に暇潰しが好きみたいだ。僕に一度も勝っていないのに、懲りない。

きっと勝つまでやる気なのだろう。いや、勝ったら調子に乗るかもしれない。

「今回はお前に選ばせてやるよ。」

何故上から目線なのだろう?負けているのに。

⏰:10/12/17 14:04 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#203 [匿名]
彼は言ったら聞かないタイプだから、僕は言う通りにターゲットを選ぶ事にした。

最近張り合いのない暇潰しばかりしていた。だいたいの人間は僕の言葉に勇気をもらっているみたいで、簡単に死ぬのを止める。

それがつまらなくて、今回は救いようのない人間をターゲットにしようと思った。

⏰:10/12/17 14:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#204 [匿名]
「あの人にしよう!」

僕が指差した先には、今まさに人殺しをした人間。

人を刺したというのに、不気味に笑う男。

髪の毛は長く、肩にかかっている。度の強いメガネをかけて、無精髭が汚く映えている。服装は黒。上から下まで全身黒しかない。

「気持ちわりーの選んだなー。」

彼は苦い顔をしている。

⏰:10/12/17 14:17 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#205 [葵]
>>1-204

⏰:10/12/18 00:47 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#206 [匿名]
>>205葵さん
ありがとうございます。

⏰:10/12/18 16:39 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#207 [匿名]
「とりあえず行くかー!」

彼が何も考えずに、ターゲットの所へ行くのは毎回だ。それを僕は毎回眺めている。

でも今回は変えてみた。
「待って。僕も一緒に行くよ!」

毎回一緒だとつまらないから、何となくそうした。

⏰:10/12/19 13:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#208 [匿名]
ターゲットは人気の無い路地裏にいる。手には血がべっとり付いた包丁が握られていて、目の前をには男の死体。

その先に僕たちが現れた。

「あれ、君達いつから居たの?」

ターゲットは慌てる様子はなく、淡々としている。

「おめぇが刺したと同時くらいだよ。」

⏰:10/12/19 13:51 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#209 [匿名]
正確に言うと、刺してから二分程経っていた。刺した瞬間を上で見ていたから、いつからだなんてどうでもよかった。

「そっかー。見られてたか。君達、誰にも言わないでいてくれるー?」

ターゲットはニヤニヤ笑っていて、気味が悪かった。

「簡単にはいかねぇな!人にもの頼む時の態度か?」

彼もニヤニヤしながら言うが、気味の悪さはない。

⏰:10/12/19 14:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#210 [匿名]
「…別にいいや。」

ターゲットが空をあおいだ。

「警察に言ってもいいよ?多分僕って、生きていても意味のない人間だと思うんだよねぇ。ねぇ、君達も思う?」

首を傾げて聞いてくるターゲットを見ると、なぜか鳥肌がたった。

⏰:10/12/22 15:04 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#211 [匿名]
「ああ、思うね。お前は生きている価値のねぇ奴だな。」

彼は睨みながら言う。

「生きてる価値のない人間なんていないよ!」

僕は天使らしい事を言ってみた。

「はあ?お前本気で言ってんのかよ!こんなクズに。」

彼がクズと言った瞬間に、ターゲットの顔色が変わった。真っ直ぐ彼を睨み付けている。

⏰:10/12/22 15:10 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#212 [匿名]
「うわあああああ!!」

いきなり叫び出したターゲットが、彼に向かって走ってきた。

手には包丁が握られていて、彼に向けている。

ブスッ!
その瞬間、彼が刺された。

包丁は腹に刺さったまま、彼は膝を着いた。

「君がいけないんだよー。僕をクズだなんて言うから。僕は悪くないんだからね。」

彼がドサッと倒れると、ターゲットは笑いながら、走って逃げて行った。

⏰:10/12/22 15:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#213 [葵]
気になる(`・ω・')

⏰:10/12/23 00:30 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#214 [匿名]
>>213葵さん
ありがとうございます!

⏰:10/12/23 17:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#215 [匿名]
彼は目を瞑り、刺されたお腹辺りを押さえていた。

「もうどっか行ったよ。」

僕かそう教えてあげると、彼はパチッと目を明け、スクッと立ち上がった。

「俺演技上手くね?」

刺さった包丁を抜くと、放り投げた。

⏰:10/12/23 17:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#216 [匿名]
前にも言ったが、僕達は死なない。怪我もしないし、風邪も引かない。

包丁を抜いて出来た穴は、触っていれば塞がる。

刺されて平気な人間などいないから、ターゲットは彼を殺したと思うかもしれない。かなり深く刺さっていたみたいだし、致命傷になってもおかしくない。

死ななくても、重症である事は間違いないだろう。

⏰:10/12/23 17:55 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#217 [匿名]
「あ!俺、いい事思い付いた!幽霊になるわ。」

僕達は死なない。だから幽霊にはなれない。

人間のように生きていないから、人間からしてみれば、幽霊も天使も悪魔も、同じなのかもしれないけど。

「幽霊のふりして、あいつにとりつくってのはどーだよ!かなり怖くねーか?怖いよな!毎日耳元で、呪ってやるーって囁くんだよ!怖くなって、死にたくなるよな?な?」

⏰:10/12/23 18:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#218 [匿名]
やっぱり彼は楽しそうだ。人間の不安や恐怖心を煽るのが、この上ない楽しみのようだ。

悪魔だからいいものの、天使や人間だったら、かなりの悪趣味だと思う。

「僕だったら泣いちゃうかも。」

ちょっと馬鹿にして言ったつもりだったのだが、彼には理解されていなくて、ただ自信を付けさせてしまったみたいだ。

⏰:10/12/23 18:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#219 [匿名]
「まあ、作戦も決まった事だし!…あれでも食いにいくか?」

彼の言うあれとは、ハンバーガー。僕達の大好物だ。

作戦が決まったのは彼だけで、僕は何も決まっていないが、彼の話に乗る事にした。

ハンバーガーが食べれるなら、勝ち負けなんてどうでもいい。と、思ったりもする。

⏰:10/12/23 18:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#220 [匿名]
二日目


とりあえずターゲットの様子を見る事にした。

仕事に行く時や、どこかに出掛ける時などに、偶然を装い遭遇出来たらいいなと考えた。
が、一向に外へ出ない。朝から様子を見て、もう18時を回ってしまった。

ずっとパソコンをいじっていて、そこから動こうとしない。ポテトチップスやらのお菓子の袋やカップラーメンのカップなどが散乱している。

⏰:10/12/26 11:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#221 [匿名]
「あいつヒデェ生活してんなー。あの散らかりよう見ると、毎日こんな生活してんじゃねぇの?」

彼はターゲットを見る時、いつも苦い顔をする。生理的に受け付けないんだろうな。彼と一緒で、僕も受け付けない。

人を殺しておいて、いつもと変わらない毎日を送っているなんて、信じられない。

「僕、あの家行って来ようかな。」

一軒家で、両親と住んでいる事は分かった。父親はいなかったが、きっと仕事だろう。母親がせっせと晩御飯を作っている。

⏰:10/12/26 11:44 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#222 [匿名]
「じゃあ俺も行くよ。幽霊になってな!」

あまり乗り気にはなれなかったけど、彼と一緒に行く事にした。勿論彼は姿を消している。人間には見えないけど、僕には見える。彼の前に来たらうっすら姿を現すんだろう。

ターゲットの家の前。何のへんてつもない普通の一軒家だ。「金子」というらしい。

ピンポーン。
彼がインターホンを勝手に押した。

⏰:10/12/26 11:52 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#223 [匿名]
「はい!」

きっと母親だろう。女性の声が聞こえる。

「あ、すみません。鈴木と申しますが、息子さんとお話がしたいんですけど。」

鈴木と適当に名乗った。

「お前なんか怪しくねーか?もっとそれらしーこと言えねぇのかよ。」

「君が勝手に押したから、何も考える時間なかったんだよ。」

⏰:10/12/26 11:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#224 [匿名]
僕たちが言い合っていると、ガチャっとドアが空いた。

「どうも。あのーどういったご用件で。うちの息子は人と関わりを持たない方なので…。」

とても優しい雰囲気を感じたが、どこかビクビクしていて、何かに怯えているようだった。

「この間知り合いましたので、もう少しお話がしたいと思いまして。」

当たり障りのないように言ったつもりだった。

⏰:10/12/26 12:05 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#225 [匿名]
「あぁ。とてもありがたいのですが、話すことが苦手な子なので、あなたには会うかどうか…。でも、どうぞ。せっかくですので上がってください。」

結構簡単に家に入れてくれた。とても綺麗で、埃一つないほどだ。居間でお茶を入れてくれ、息子に声をかけてきますね、と二階に上がって行った。

僕は二人の会話を聞くことにした。

⏰:10/12/26 12:15 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#226 [匿名]
「たけるー?お友達がきてるわよ。」

ドアをノックして、中には入らずにターゲットに声をかけている。ターゲットは「たける」というらしい。

「……………」
ターゲットの部屋からは何の声も聞こえて来ない。無視している。

「たけるー?」

母親はもう一度呼び掛けた。

その瞬間ドンっと何かがドアに当たる音がした。たまらず短い悲鳴をあげてしまった母親や、何も言わずに僕達がいる居間に下りてきた。

⏰:10/12/27 17:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#227 [匿名]
だいたいの予想はつく。
ターゲットは母親との会話を拒否し、僕たちとの面会も拒否した。

昨日会った時の印象と、何も変わらない。ただただ、不愉快だった。

「ごめんなさいねぇ。あの子いつもあんな感じなのよ。」

母親は苦笑しながら言う。そして遠回しに帰ってくれないかしら、と僕に伝えて来た。

⏰:11/01/03 22:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#228 [匿名]
僕には帰る気などなかった。もし僕が帰ろうとしても、彼は残るだろう。それが気に食わなかったのだ。

「僕から声をかけてみます。」

僕は母親の、帰れという意味合いの言葉を無視し、そう伝えた。

そして立ち上がり、え?あ?と動揺している母親を完全に無視して階段を上がる。

僕が部屋をノックするまで、母親は下から僕の様子を見ていたが、ノックがすみ、ターゲットの部屋から大きな物音が聞こえると居間の奥の方へと引っ込んでしまった。

⏰:11/01/03 22:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#229 [匿名]
「あのー僕のこと分かりますか?あ、声だけじゃ分からないかな…。君とお話がしたくて来たんだけど。」

僕の得意な、出来るだけ優しい声でターゲットに問いかける。

物音は聞こえない。


「中に入ってもいいかな?」

何も聞こえない。

「じゃあ開けるよ!」

半ば強引に中に入る事にした。ドアノブを握り、捻る。

鍵がかかっていて、少ししかドアノブは回らない。事を想像していたが、意外にも鍵はかかっていなく、すんなりと開いてしまった。

⏰:11/01/03 22:59 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#230 [匿名]
ドアを開けると上で見ていた通り、とても汚い。そして臭いもきつい。汗のような油のような臭いと、食べ物の腐った臭い、そしてタバコ。

一瞬にして気分が悪くなった。

「僕の事を覚えているよね?」

吐きそうな気持ちを押さえて、ニコッと微笑んだ。

ターゲットは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻った。

「何で家が分かったのー?怖いねー。もしかして昨日つけてたのー?気付かなかったな。」

にやにやとパソコンを見ながら言葉を発しているターゲットは、僕を全く見ない。

「昨日の事、誰かに言ったのー?ニュースでは犯人は捜索中ってなってたけど。」

⏰:11/01/03 23:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#231 [匿名]
「昨日の事は誰にも言ってないよ。僕の刺された友達は、隠しておいた。だから君の罪は、少し軽くなるかもね。」

僕はやっぱり、得意の出来るだけ優しい笑顔で語りかける。

「面白い事をするねー!」
ターゲットが僕を見た。目を見開き、不気味な笑い声を発して笑っている。キャーキャッキャとも、ヒャーヒャッヒャとも取れない声だ。

⏰:11/01/03 23:17 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#232 [匿名]
ちなみに彼は、ターゲットには見えない姿で僕の隣にずっといる。

僕にしか聞こえない声で、くっせぇ!だの、きたねぇ!だの、うぜぇ!だの騒いでいる。

たまに歩き回り、ターゲットの目の前まで行ったり、パソコンを覗き込んだりしている。

やめてほしい。目障りで、ついつい彼の動きが気になって見てしまう。

僕には見えないが、ターゲットにだけ見えるという、演技をこれからしなくてはいけないのに。

⏰:11/01/03 23:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#233 [匿名]
「自首…しなよ。」

僕は真顔を作った。
ターゲットは僕の言葉を無視している。

「君がした事は犯罪だよ。どうして人を殺したのに、平気でいられるの?」

僕は気にせず質問をぶつける。無視されてもいいや、と投げやりな気持ちでいた。だがターゲットは、僕の気持ちとは裏腹に、ギロッとこちらを睨んだ。

⏰:11/01/04 12:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#234 [匿名]
「人を殺して平気でいられないような弱い人間じゃないんだよ僕は。人を殺す事に迷っているから震えるんだ。殺したいと思ったら、迷わないんだよー僕は、強いから。」

早口でターゲットは喋る。

人間の強い、弱いが、人を殺す事で決めていいのだろうか。

水泳、格闘技、野球、ろいろな種目で一番強い者が決められている。それなら人殺しという種目で一番強い者を決めてもいいのか!と思った。思った瞬間その考えを捨て去った。馬鹿げてる。

⏰:11/01/04 12:25 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#235 [匿名]
そんな戦い、悪魔の彼が優勝に決まってる。

とても気にくわない。

「じゃあ聞くけど、どうしてあの人を殺したの?殺したい程憎んでいたのか?」

ターゲットが少し興奮していたので、今なら何でも話してくれるような気がしていた。

⏰:11/01/04 12:28 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#236 [匿名]
「あいつは人間のくずだから!あんな大人がうじゃうじゃいるから、この国がダメになるんだ!」

どうやら、殺したいと思った原因はあるらしい。

「あいつらは皆汚い。金があればよくて、いらないものは全て廃除。自分がよければそれでいいと思ってるんだ!許せないよねー?」

そんな事を聞かれても、僕にはどうでもよかった。この国が終わりを迎えようと、関係ない。

「そんな君も、自分がよければそれでいいと思っているんじゃないのかな?」

冷静に言葉を発した。

沸々と怒りが込み上げてくるのが、手に取るように分かる。ターゲットはハァハァと息を荒くし、髪の毛をくしゃくしゃと触り始めた。

⏰:11/01/04 12:37 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#237 [匿名]
それから何だかよく分からない事を、大声で怒鳴り始めた。大声すぎて聞き取れなかった。

ただとてつもなく怒っているのは、誰が見ても分かるだろう。

騒いだままターゲットは手に何かを掴んだ。黒くて固そうな何か。

あ、殺される。

僕の直感が働く。死なないのだけれど。

⏰:11/01/05 17:19 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#238 [匿名]
僕がそう思うと同時に、彼が姿を表した。

僕には何も変わらずに見えるのだけど、今、ターゲットにも見えるようになった。


「うわああああ!!」

ターゲットが叫んだ。
僕を殺そうとしたのではなく、死んだはずの彼が見えたから、恐怖を感じているのだ。

「よくも…よくも…!」

彼も幽霊らしい演技をしている。

⏰:11/01/05 17:24 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#239 [匿名]
「どうした?」

うわああと叫びながら、後ろに尻餅を付いたターゲットに言った。

僕には何も見えない。
幽霊のフリをして、少し床から浮いている彼は、僕には見えない。見えるのはターゲットにだけ。

と、心の中で何度も唱えて、出来るだけ彼を見ないようにする。

「き、きき、きみ、き、きみには、み、み、みえ、み、みえないのか!」

見えます。

⏰:11/01/08 15:25 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#240 [匿名]
「何が?」

危うく彼の方に視線を移す所だった。彼は僕の斜め前に立ち、ターゲットの方を向いている。


「き、き、きみ、きみの友達だ!」

幽霊がそんなに怖いのかってくらい、ターゲットはビクビクしていた。

「僕は悪くない。僕は正しい。歯向かった罰だ。彼が悪い。死んだ奴が悪い。死んで当然だ…」

ターゲットはうずくまり、小さな声で呟き始めた。

⏰:11/01/08 15:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#241 [匿名]
自分を正当化するような言葉の数々に、徐々に苛立ち始めた。

死んだ彼が悪い?正しくは死んではいないけど。

彼は急に刺された。確かに言葉は汚かったが、悪いのは完全にターゲットだ。

なのに、自分の罪は認めない。悪いのは自分じゃない。全て周りが悪い。

僕は天使だ。
こんな人間でも救いたい。

なんて思うはずがない。こんな人間は死んでしまえばいい。

僕は天使だけど、悪魔の友人を持つと、こうなってしまうみたいだ。

⏰:11/01/08 15:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#242 [匿名]
三日目



「お前も怒った顔、初めて見たわー!」

清々しい顔をして現れたのは彼。

確かに僕は、滅多に怒らない。イラッとしても顔に出す事はまずない。

だが昨日は、こんな僕でも怒りは抑えられなかった。

ターゲットのあの言葉を聞いてから僕は、すぐに家を出た。

すぐにというか実際には、

「人間の中にはクズがいると聞いたが、まさに君のことだな!」

と言ってから、その場を去った。

⏰:11/01/08 22:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#243 [匿名]
「お前があんな事言うとはなー!俺可笑しくなって笑いそうになっちまってよー、必死に堪えたんだよ!」

ゲラゲラと笑いながら、彼は昨日の話をする。

半分は彼の為に怒ったようなものだが、全く理解していなかった。

少しくらい察しても良いのでは、と思ったが、やっぱり理解しなくていい。

変に恥ずかしい気持ちになる。

⏰:11/01/08 22:15 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#244 [匿名]
「お前が出てったからどーしようかと思ったけど、充分びびらせたぜ!お前が死ぬまで呪ってやるーって言ったら、あいつ泣きそうになってやんの!」

ギャハハッと彼は笑う。

いつもなら、彼の好きにさせてたまるか!と思うのだけれど、今回は思わない。

このまま彼の圧勝でも構わない程、僕はターゲットが嫌いになっていた。

⏰:11/01/09 19:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#245 [匿名]
「じゃあ俺はターゲットんとこ行くから!二時間たっぷりびびらせてくるからよー!」

ひらひらと手を降って、彼は消えて行った。


僕はこれからどうしようか、彼の幽霊ぶりを上から見て、悩んだ。

⏰:11/01/09 19:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#246 [匿名]
彼はターゲットの部屋にふわっと現れると、ずーっと睨み付けた。

許さない。だとか、呪ってやる。なんて台詞を幽霊の演技で言っている。

死ねばいいんだ。とも言っていた。


そしてターゲットは、二時間ずっと震えていた。

最後の方は、ごめんなさいと謝りもしていたが、それが本心から出た言葉なのかは、判断出来なかった。

ただ恐怖から逃れたくて、出た言葉にも感じる。それなら僕は、本当に呆れる。
暇潰しだろうと関係ない。勝負なんてどうでもいい。

⏰:11/01/09 23:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#247 [匿名]
イライラとした気持ちが晴れないまま、1日が終わった。

彼は相変わらず楽しそうに、今日のターゲットの様子を喋っている。

このまま彼の事を援護し、自殺させてやろうかと考えた。が、彼に拒否された。

「そんなつまらねぇ暇潰しはしたくねぇな!」

⏰:11/01/09 23:45 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#248 [匿名]
僕は何度もつまらない暇潰しをしてきたのに、まさか彼にそんな事を言われるとは。

ターゲットに特別な気持ちを抱き、お前は死なないって言ったのは忘れたのか?

随分前の話だが、僕は鮮明に覚えているのに。

まぁ、どうでもいいか。

だから僕は決めた。

ターゲットを自主させ、一生牢屋の中で暮らしてもらう。

⏰:11/01/09 23:50 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#249 [ミナト]
まってます

⏰:11/01/17 10:37 📱:SH02A 🆔:lwuc/cGM


#250 [我輩は匿名である]
>>249ミナトさん
どうもありがとうございます!最近忙しくてなかなか書けなくて…(T_T)
でも嬉しいです!本当ありがとうございます!!

⏰:11/01/17 20:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#251 [葵]
毎日チェックしてずっと待ってます

⏰:11/01/18 01:12 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#252 [我輩は匿名である]
>>251葵さん
本当に本当にありがとうございます!!嬉しすぎます!もう誰も見てないと思ったので…。
今日は時間が出来そうなので書けたらいいな、と思います!

⏰:11/01/18 11:55 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#253 [我輩は匿名である]
四日目



彼は今日も幽霊になっている。

相変わらず、ターゲットの怖がりようは異常で、ベッドの中で丸まり小刻みに震えていた。

彼を見ようともしない。

「お前が死ぬまで…とりついてやる…」

彼はターゲットの側まで寄り、囁く。

顔は笑っている。

本当に悪魔でよかったな!と言いたくなった。

⏰:11/01/18 13:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#254 [匿名]
二時間が過ぎ、彼が僕の隣に戻ってきた。

やっぱり笑っている。

「あいつ、目の下にくまができてたぞ!顔も心なしかげっそりし始めてる!しかもなー最後にあいつ何て言ったと思う?」

僕にはターゲットの言葉が聞き取れなかった。

「死にますから。っつったんだよ!笑えるよなー!」

僕がまだ考えている途中で何も話していないのに、彼は答えを言った。質問した意味がないじゃないか!と怒鳴りたくなる。

⏰:11/01/18 13:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#255 [匿名]
結局僕は怒鳴ったりはしないんだけど。

そんな事より、ますます僕の負けが近付いて来ている。

あと2日。僕に出来る事を考えた。僕がターゲットを無理矢理捕まえて、強制的に警察へ向かう事も出来る。

ただそれじゃあつまらない。僕は力ずくという言葉が嫌いだ。それじゃあ悪魔の彼と何も変わらない。

僕は天使だ。
人の心を良い方に動かしたい。誰でも幸せになる義務はある。

幸せになってはいけない人間など、元はいない。ただどこかで歪む人間がいる。歪みは簡単には消えない。

⏰:11/01/18 13:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#256 [匿名]
ずっと前に誰かが言っていた。


本人は悪くない。

根にある悪を取らなくてはいけない。

それは何だか分かるかい?

それは悪意などない。

歪んだ愛なのだ。



僕は今思い出した。
変えなければいけないのはターゲットではない。諭さなきゃいけないのは母親だ。

⏰:11/01/18 13:37 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#257 [匿名]
ターゲットは歪んだ人間だ。これは間違いない。

ただターゲットよりも歪んでいるのは母親に違いなかった。


四日目の今日、僕はターゲットの家に向かった。ターゲットは滅多な事がない限り、自分の部屋にこもっている。トイレも一階と二階両方にあるので、一階に降りてくる事はまずない。

この3日間ターゲットは風呂に入る様子もなかったから、今日も入らないだろう。多分。

とにかく僕はターゲットに会うのは逆効果に思えた。
僕を見れば、ターゲットは幽霊の彼を思い出すだろう。

⏰:11/01/18 13:44 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#258 [匿名]
インターホンを押す。

相変わらず愛想の良い母親の声が聞こえ、外に出てきた。

今日も簡単に家の中に入れてくれたが、玄関から先には入れてくれなかった。

家の外だと近所の人の目が気になるのかもしれない。

⏰:11/01/18 13:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#259 [匿名]
僕は玄関で、ターゲットが人殺しをした事を母親に言った。

案の定信じない。

僕が知っている限り二人殺した事、一人は今ニュースになっている男性、そしてもう一人が僕の友人である事を、立て続けに話した。

この間僕が来た時に、もう犯行は認めていて、悪びれる様子はなかった事。そして自主して欲しい事を熱心に伝えた。


母親は黙って聞いていたが、多分信じていないだろう。

「証拠はあるんですか?」

余裕があるのか、自分の子供を信じているのか、母親は笑顔を崩さない。

⏰:11/01/18 15:59 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#260 [匿名]
「一度、しっかりと話し合ってみて下さい。彼はもう大人ですよ?甘やかしすぎじゃないですか?」

嫌味たっぷりに言葉を返す。

「自分の子供はいくつになろうと、自分の子供なんです。あなたにはまだ分からないでしょうね?ちょっと人見知りで、人が苦手なだけなんです。」


母親も食い下がらない。
「仕事は?」

「仕事はしていませんが、息子は才能がありますから、ご心配なさらなくても大丈夫です。」

⏰:11/01/18 16:05 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#261 [我輩は匿名である]
自主→自首

⏰:11/01/18 16:05 📱:T001 🆔:zGKzgakc


#262 [匿名]
母親はいったい、何を信じているのだろう。才能はあるかもしれない。それは僕には分からないから否定はしない。

ただ毎日部屋にいるだけで才能が開花するなら、誰もがそうしているだろう。

「とにかく、話をしてみてください。あなたのせいで彼は苦しんでいると思います。」

そう言い、僕は一礼をし、外へ出た。


何かが変わる事を信じて。

⏰:11/01/18 16:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#263 [匿名]
>>261さん
あ、そうですね。
失礼いたしました。

ご指摘ありがとうございます。

⏰:11/01/18 16:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#264 [匿名]
五日目 最終日




ターゲットの隣には母親。前には悪魔。

彼を見て驚くターゲットと母親が二人で丸くなって怯えている。


最初は何がなんだか分からない様子だった母親も、次第に状況が読み込めていったみたいだ。

自分の息子は、大好きな息子は、目の前にいる青年を殺した。そして呪われている。

⏰:11/01/22 16:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#265 [我輩は匿名である]
一気に読ませて頂きました!おもしろい!

頑張って下さい(^O^)

⏰:11/01/22 22:09 📱:P02A 🆔:Jxno/.jw


#266 [匿名]
>>265匿名さん

うわ!!凄く嬉しい!
読んでくれてどうもありがとうございます(^^*)

⏰:11/01/22 23:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#267 [匿名]
「お前が死ねば…。」

今日も彼は幽霊になりきっている。幽霊を演じる事を続けたおかげで、幽霊姿も様になってきた。


母親は恐怖が薄れていったのか、一時間程経った今、彼を睨み始めた。


一時間前、ターゲットの叫び声を聞いて、母親は無理矢理部屋に入った。

そこには半透明な男が立っているのだから、怖がるのは当たり前だ。

⏰:11/01/24 11:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#268 [匿名]
ただ母親というのは強い。

もう今じゃ、彼を睨み付ける程だ。落ち着いてるようには見えないが、どこか余裕がある。

お前が死ねばいい、死ね、殺す。と怒りを言葉にする目の前の幽霊から、どう息子を救おうかと考えているみたいだ。


さすがだな、と思ってしまう。


とりあえずあと一時間母親に頑張ってもらえれば、僕の勝ちは近付く。

⏰:11/01/24 11:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#269 [匿名]
ただ母親は、睨み付けるだけで何も言わない。

幽霊とは会話をしたくないのか、もしくは会話をする意味はないと思っているのかもしれない。


そしてターゲットは相変わらずびくびくしている。

みっともない。


みっともなくて、見ていて恥ずかしくなる。

⏰:11/01/24 11:17 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#270 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-280

⏰:11/01/24 11:20 📱:SA001 🆔:wPlWYTqY


#271 [匿名]
だがその時、ターゲットが動いた。

「もう…耐えられない。死ぬ…」

泣いているように見えたが、その目は正気を失っている。

なぜかターゲットの目の前には包丁が転がっていて、それを見つけると、スッと両手で持ち上げた。

きっと彼が用意したんだろう。すぐに死ねるように。

「やめて!!」

母親の叫ぶ声は、ターゲットには届いていない。

⏰:11/01/24 12:54 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#272 [匿名]
唇の片方だけを吊り上げて、彼が不気味に微笑む。

これでターゲットが自分自身に包丁を向けて、グサッと刺せばそれで終わってしまう。

包丁がターゲットの心臓の目の前にある。

手が震えている。

⏰:11/01/29 17:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#273 [匿名]
死ぬ事は怖い。

誰でもきっとそうだ。
それは今まで経験がないからなんだと思う。

死んでしまえば、こんなもんか!もっと早く死んでおけばよかった!と思ってしまうほど、呆気ない。

のかもしれない。僕は死んでないから分からないけど。

ただ神様の列に並んでいる自殺をした人は皆後悔している。

今なら何でも出来る気がする。もう一度生きたい。そう言いながら泣いたりする。

⏰:11/01/30 14:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#274 [匿名]
もう何を思っても遅いのに。だから僕は出来るだけ人間を生かしておきたい。

後悔するのが目に見えて分かるからだ。

何かに追い込まれて、冷静に物事を考えられなくなると、死ぬ事が最善策だと考えてしまう。何も解決なんてしていないのに、人間は馬鹿だ。



そう考えながら、僕はターゲットの部屋に入った。

ターゲットは自分に向かう包丁を見ていて、僕には気付かない。

彼はチラッと僕を見て、
「遅せぇぞ。もうすぐ死ぬんだから見とけよ!」
と言った。

⏰:11/01/30 14:44 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#275 [匿名]
「あなた!」

母親がようやく僕の存在に気が付いた。


「あなた!!助けて!うちの子を止めて!」

この人は何を言っているのだろう?いつもこうして生きてきたのか。

「なぜ僕が?」

僕もターゲットが死んでしまうのは避けたいが、なぜ母親は自分で止めようとしないのだろう。

なぜ必死にならない?

⏰:11/01/30 14:45 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#276 [匿名]
「あなたの友達のせいなのよ!責任取りなさいよ!!うちの子が死んだらどーしてくれんのよ!」

「僕の友達は死んだんです。責任取ってもらいたいのは僕の方だ!何でもかんでも人のせい。あなたがそんな人間だから、あなたの息子はこうなったんだ!」

僕は怒鳴った。

母親は唇を噛み締めて、僕をギッと睨み付けている。

「死んでほしくないなら、あなたが説得しろ。僕は赤の他人だ。」

⏰:11/01/30 14:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#277 [匿名]
母親はターゲットを見た。ターゲットは目を瞑り、震えている。

「死ぬ…死ぬ…死ぬ…」


ターゲットが包丁を振りかざした。勢いをつける。

さっきまでの震えはない。

彼はその様子を見ながら、笑っている。悪魔の笑顔はいつ見ても、不気味だ。


僕の負けか。
やっぱり母親はどうしようもない人間だった。

これもまたありかもしれない。

⏰:11/01/30 14:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#278 [匿名]
僕の目の前から母親がいなくなるのが分かった。勝利を諦めて、ふと視線を下に落とした瞬間だ。

「っんだよ!」

彼の声が聞こえた。
予想外の事が起き驚いているような、悔しがっているような、苛立ちを抑えられない声だった。

何となく、何が起きたか理解できた。視線をターゲットに向ける。

⏰:11/02/01 15:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#279 [匿名]
ターゲットは包丁を刺した。自分に向かって振りかざした包丁を真っ直ぐ胸辺り目掛けてふった。

うっという声が漏れる。
その声に気付き、ターゲットは目を開けた。ターゲットの目の前には抱きつくように、ターゲットと包丁の間に立つ母親がいる。そして、自分に向けたはずの包丁が、自分自身に刺さっていない事に気付いた。

⏰:11/02/01 15:20 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#280 [匿名]
目の前の母親の背中には、ターゲットに刺さるはずだった包丁が刺さっている。ターゲットは震え出した。

膝から崩れる様に母親が倒れた瞬間、ターゲットは悲痛な表情を浮かべ後退りした。

「うわあああ!」

彼を殺しても、あの男を殺しても動じなかったターゲットが、母親を刺したらこの有り様だ。

⏰:11/02/06 13:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#281 [匿名]
「…ごめんね」

倒れた母親が声を絞り出す。

「あなたは…生きてなきゃ駄目よ。何度でもやり直せるんだから…」

母親は目に涙を浮かべ、ターゲットを諭した。初めて見た、まともな母親の顔だ。

ターゲットはガタガタと震え、泣いている。

「何で…どうして…僕は…」

⏰:11/02/07 00:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#282 [匿名]
「悪いのは全部、お母さんなのよ。…大丈夫。…ごめんね、間違えてたみたい。お母さんがした事は、全部あなたの為にはなってなかったみたいね。」

ターゲットが膝をつき、母親の手を握る。こんなにも親子という関係は素晴らしいのに、どうして今まで上手く行かなかったのだろう。


この歪みがなくなった今、母親は死んだ。

⏰:11/02/07 00:29 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#283 [匿名]
ターゲットは暫く方針状態で、僕が声をかけても反応しなかった。一言も話さないまま僕たちの二時間は過ぎてしまい、その場を離れなければならなくなった。

この二時間が過ぎたので、これからどうなろうと僕の勝ちが決まった。

「またおめぇの勝ちかよ。気に食わねぇな!」

彼は僕より先に上に戻っていて、僕が戻るとすぐにこう言った。

⏰:11/02/07 00:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#284 [匿名]
「でももしかしたら今日中にターゲットは自殺するかもよ。ずっとあの調子だし。」

僕は彼の機嫌を取ろうとした訳ではなく、本当にそう思ったから言った。だけど彼は、僕が気を使ったと思ったらしい。

「もう暇潰しは終わったんだ。これからあいつがどーなろうと、俺の負けが勝ちになるわけじゃねぇんだよ。…次だな!次!」

彼はここ最近成長した。大人になった。僕はそれが少し嬉しくて笑ってしまった。

⏰:11/02/07 00:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#285 [匿名]
そしてターゲットは、次の日自首をした。

自殺をするか、もしかしたら逃げるかもしれないと考えていたので、正直嬉しかった。最後の母親の言葉が効いたのかもしれない。

僕はいつの間にか笑っていた。隣にいるターゲットの母親が、嬉しそうに泣くからだ。

⏰:11/02/07 00:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#286 [匿名]
>>283
×方針状態

放心状態


誤字ばかりですみません(x_x;)

⏰:11/02/08 02:05 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#287 [匿名]




今日は暇潰し最終日。
今回のターゲットは、妻子ある者を愛してしまった、愚かな女。

男の言う「愛している」という言葉を信じ、奥さんと離婚する事を願っている女。

年齢は二十代前半。相手の男は三十代半ば。

当たり前かもしれないが、男は本気ではなく、ただ若い女と体の関係を持ちたいと思っているだけの、どこにでもいる最低な男だ。

⏰:11/02/08 22:19 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#288 [匿名]
ターゲットは昨日、自殺をしようとした。その男に遊ばれていたとやっと気がつき、ショックが大きかったみたいだ。自分の命を捨てる程、あの男に魅力があるとは思えない。

ターゲットはビルの屋上にあがり、飛び降りようとした。だが、良いタイミングで僕が現れた。

「死んだらダメだ。僕は君が死んだら悲しい。」というような事を、一生懸命感情を込めて、ターゲットの目をずっと見つめながら言う。

突然現れた男にそのような事を言われたターゲットは、驚く程簡単に自殺をやめた。

⏰:11/02/11 19:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#289 [匿名]
「もっと早くあなたに会っていれば…」

とろーんとした目で僕を見つめるターゲットは、泣き真似みたいに涙を流した。

やっぱり人間は、簡単な理由で生き続ける事が出来る。死にたい理由が小さな事のように、生きたい理由も小さな事だ。僕からしてみたら。

彼女がいるから生きる。彼氏の為に生きる。まだ海外旅行に行ってないから、新しい靴を履きたいから。仕事がしたいから、家族が欲しいから。春が好きだから、来月好きな漫画の発売日だから、夢があるから、友達と遊ぶから。

⏰:11/02/11 19:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#290 [匿名]
だから生きる。
意識なんてしてなくても、人間の回りには生きる理由が沢山ある。ない人間なんて、僕は見た事がない。


今回のターゲットも、頭は悪いけど生きる理由なら死ぬ程ある。そして何故か僕は、命の恩人と言われ、ターゲットの実家に招待されてしまった。

それが今日、最終日。


もうターゲットが自殺をする事はないと断言出来る。その為にも僕は行かなくてはならない。ただ、面倒臭い。

⏰:11/02/11 19:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#291 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>100-200
>>200-300
>>300-400
>>400-500

⏰:11/02/14 01:42 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#292 [匿名]
ターゲットと駅で待ち合わせをして、家へと向かう。歩いて10分程の距離だったが、ターゲットがひたすら喋っていたので、とても長く感じた。

お父さんは普通のサラリーマンで、お母さんは専業主婦。という事だけは覚えているが、他は覚えていない。興味がない事や、自分の為にならない事は覚えない事にしている。

「ただいま!」とターゲットが元気よく玄関のドアを開けると、中から両親が出迎えてくれた。

⏰:11/02/20 14:18 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#293 [匿名]
ぷくっとお腹の出た父親は眼鏡をかけていて、白髪頭を後ろに流している。たれ目がとても優しそうに見えた。母親は肩まである髪の毛、上品なワンピース、品のある笑顔で、理想の母親像だな、と思った。

どこかで見た覚えのある二人だと感じたが、それもそのはずだ。どこにでもいる幸せそうな家族だからだ。暇潰しをする時に地上に降りると、1日5組くらいは、このような夫婦とすれ違う。見覚えがあると勘違いしても無理はないだろう。

⏰:11/02/20 14:26 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#294 [匿名]
「やあ!よく来てくれたね。さあ!上がって上がって!」

父親が笑顔で僕に言うと、隣にいる母親もうんうんと頷いた。

「お邪魔します」

僕も笑顔で答える。頭の中は、どんな理由をつけて早く帰ろうかと、必死に考えていた。

⏰:11/02/20 14:30 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#295 [匿名]
「いやー本当に君には感謝しているよ!娘の命の恩人だからなー。さあ!沢山食べて下さい!お口には合いますか?」

お酒が進んでいる父親は赤い顔をしながら、ご機嫌な様子で笑っている。
その隣で品よく笑う母親は、父親の言葉にうんうんと頷く。

「はい、ありがとうございます。」

何故僕がここにいるのだろう、と疑問に思いながらも、精一杯笑顔を作る。

それにしても、料理は美味しい!

⏰:11/03/02 14:22 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#296 [匿名]
「そうだ!お父さん、昔のアルバム見ましょうよ!」
そう言い出したのはターゲット。そういう家族の思い出話は、赤の他人の僕が帰った後にしてほしい。

「持ってくるわ!」

そんなにアルバムが見たいのか、母親はターゲットが言い終わるとほぼ同時に立ち上がり、アルバムを探しに隣の部屋へ行ってしまった。

面倒だ。
僕が興味のない家族の昔の写真を見て、どんなリアクションをとればいいのだろうか。

⏰:11/03/02 14:23 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#297 [匿名]
「皆さん若いですねー!」でいいのだろうか。
「もしかしたらこれは海ですか?」そうだ、背景が海だったらこう言おう。
「可愛いですね!」ターゲットが産まれたばかりの頃の写真だったらこうだな。


「沢山ありすぎて、とりあえず5冊だけ持ってきたわよ!」

僕が言葉を必死に考えていると、母親が重たそうにアルバムを抱えて戻ってきた。

僕以外の3人はそれぞれ違うアルバムを見始めた。

⏰:11/03/02 14:25 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#298 [匿名]
僕の向かいに座っている父親と母親は、お互いのアルバムを見合いながら、これがあの時だーだとか、この後転んで大泣きだったなーだとか、その頃の記憶を蘇らせている。

隣に座っているターゲットは、他のアルバムよりも少し小さめの薄いアルバムを見ていた。

「お父さんもお母さんも若ーい!」

そのアルバムを見ながら楽しそうに笑っている。どうやらターゲットが産まれる前の、父親と母親だけの写真らしい。

⏰:11/03/02 14:27 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#299 [匿名]
「ねぇ、見てください!お母さんって昔は綺麗だったでしょー!お父さんは変わらないけどね!」

ターゲットが僕にも見えるように、アルバムを広げてくれた。別に見たかった訳ではないが、見ない訳にもいかずに覗き込む。

「昔はね〜お母さんも綺麗にしてたから。」
いえいえ、今も十分綺麗ですよ!と言おうとしたが、お世辞に聞こえると思ったので辞めた。

「お母さんは昔からずっと変わってない。」

ボソッと父親が言う。
そして照れ隠しのように、アルバムを直視する。

⏰:11/03/02 14:29 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#300 [匿名]
やっぱり最初に、この両親に会った時に感じた違和感は、ただの思い過ごしではなかった。

父親の恥ずかしがる時の顔、そしてアルバムの写真。

何十年経っても覚えているものだ。


僕は昔この父親をターゲットにして、彼と暇潰しをした。

父親は飛び降り自殺をしようとしたが、今の母親に助けられた。

⏰:11/03/08 18:13 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#301 [匿名]
親子に渡ってターゲットにしてしまうとは、偶然なのか必然なのか、人生は面白いと思ってしまう。

それから僕は適当に理由をつけて上へと帰る事に成功した。

ふてくされた彼が僕を待っていて、僕の顔を見るなり舌打ちをした。

「つまんねー。早く次のターゲット決めようぜ!」


そうだね、と適当に相槌をうって考えた。あの父親はあの時死なないでよかったと思っているに違いない。

⏰:11/03/08 18:19 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#302 [匿名]
僕が暇潰しに勝たなくてはいけない理由だ。



end

⏰:11/03/08 18:20 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#303 [夢。*]
とても楽しんで読ませて頂きました。 もし続編をやる機会があるのであれば、ぜひお願いいたします

⏰:11/03/08 23:29 📱:F02B 🆔:q9.btUyc


#304 [匿名]
>>303夢さん

どうもありがとうございました!すっごく嬉しいです(^^*)

また書きたい内容が思い付いたら頑張ってみます!本当に読んでくださってありがとうございました!!

⏰:11/03/08 23:48 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#305 [のぞみ]
ずっと見てました!!
コメントしようと思ってたけど
邪魔になると思ったので
終わってからコメントしました!
めっちゃ面白かったです(´Д`)
本当にこんなんがあったら
怖いなぁと思いました(笑)

⏰:11/03/18 21:11 📱:N07A3 🆔:☆☆☆


#306 [我輩は匿名である]
>>305のぞみさん
遅くなってしまいましたが読んでくれてありがとうございました!!すごーく嬉しいです(^^*)

現実だったら怖いですね(笑)だからこそ強く生きなきゃです!!

⏰:11/03/21 22:51 📱:F06B 🆔:dorVs0jU


#307 [葵]
おもしろかったです(^ω^)

⏰:11/03/22 01:12 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#308 [我輩は匿名である]
>>307葵さん
最後まで読んでくださって本当にありがとうございます!

⏰:11/03/22 08:43 📱:F06B 🆔:m3bDfx92


#309 [るる]
面白かった

⏰:11/03/27 02:05 📱:F02A 🆔:EFg5pJQc


#310 [我輩は匿名である]
>>309るるさん
どうもありがとうございました!読んでいただいて凄く嬉しいです!

⏰:11/03/28 08:15 📱:F06B 🆔:P4oFrIWs


#311 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400

⏰:11/03/28 14:18 📱:SH005 🆔:aze04mrs


#312 [我輩は匿名である]
あげ↑

⏰:11/05/18 12:50 📱:SH001 🆔:KSv4oJN6


#313 [阪本]
あげます

⏰:11/08/23 12:39 📱:F09C 🆔:RqlSIqKc


#314 [我輩は匿名である]
ほしゅ。

⏰:13/01/18 23:33 📱:F09C 🆔:gWeLapPU


#315 [我輩は匿名である]
ほしゅ!

⏰:16/04/13 07:11 📱:F-01F 🆔:7y/JcGpA


#316 [(*^。^*)]
保守(・          ∀          ・)

⏰:22/05/13 20:43 📱:Android 🆔:RFpvLZzA


#317 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑a

⏰:22/10/01 22:02 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#318 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/05 00:48 📱:Android 🆔:dfJ9pWTw


#319 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑(∩゚∀゚)∩age

⏰:22/12/26 23:43 📱:Android 🆔:K0o6YEWM


#320 [わをん◇◇]
>>280-310

⏰:22/12/26 23:43 📱:Android 🆔:K0o6YEWM


#321 [わをん◇◇]
>>270-303

⏰:22/12/26 23:44 📱:Android 🆔:K0o6YEWM


#322 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)

⏰:23/01/21 20:14 📱:Android 🆔:IhSnmgVI


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