天使と悪魔の暇潰し
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#280 [匿名]
目の前の母親の背中には、ターゲットに刺さるはずだった包丁が刺さっている。ターゲットは震え出した。

膝から崩れる様に母親が倒れた瞬間、ターゲットは悲痛な表情を浮かべ後退りした。

「うわあああ!」

彼を殺しても、あの男を殺しても動じなかったターゲットが、母親を刺したらこの有り様だ。

⏰:11/02/06 13:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#281 [匿名]
「…ごめんね」

倒れた母親が声を絞り出す。

「あなたは…生きてなきゃ駄目よ。何度でもやり直せるんだから…」

母親は目に涙を浮かべ、ターゲットを諭した。初めて見た、まともな母親の顔だ。

ターゲットはガタガタと震え、泣いている。

「何で…どうして…僕は…」

⏰:11/02/07 00:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#282 [匿名]
「悪いのは全部、お母さんなのよ。…大丈夫。…ごめんね、間違えてたみたい。お母さんがした事は、全部あなたの為にはなってなかったみたいね。」

ターゲットが膝をつき、母親の手を握る。こんなにも親子という関係は素晴らしいのに、どうして今まで上手く行かなかったのだろう。


この歪みがなくなった今、母親は死んだ。

⏰:11/02/07 00:29 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#283 [匿名]
ターゲットは暫く方針状態で、僕が声をかけても反応しなかった。一言も話さないまま僕たちの二時間は過ぎてしまい、その場を離れなければならなくなった。

この二時間が過ぎたので、これからどうなろうと僕の勝ちが決まった。

「またおめぇの勝ちかよ。気に食わねぇな!」

彼は僕より先に上に戻っていて、僕が戻るとすぐにこう言った。

⏰:11/02/07 00:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#284 [匿名]
「でももしかしたら今日中にターゲットは自殺するかもよ。ずっとあの調子だし。」

僕は彼の機嫌を取ろうとした訳ではなく、本当にそう思ったから言った。だけど彼は、僕が気を使ったと思ったらしい。

「もう暇潰しは終わったんだ。これからあいつがどーなろうと、俺の負けが勝ちになるわけじゃねぇんだよ。…次だな!次!」

彼はここ最近成長した。大人になった。僕はそれが少し嬉しくて笑ってしまった。

⏰:11/02/07 00:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#285 [匿名]
そしてターゲットは、次の日自首をした。

自殺をするか、もしかしたら逃げるかもしれないと考えていたので、正直嬉しかった。最後の母親の言葉が効いたのかもしれない。

僕はいつの間にか笑っていた。隣にいるターゲットの母親が、嬉しそうに泣くからだ。

⏰:11/02/07 00:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#286 [匿名]
>>283
×方針状態

放心状態


誤字ばかりですみません(x_x;)

⏰:11/02/08 02:05 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#287 [匿名]




今日は暇潰し最終日。
今回のターゲットは、妻子ある者を愛してしまった、愚かな女。

男の言う「愛している」という言葉を信じ、奥さんと離婚する事を願っている女。

年齢は二十代前半。相手の男は三十代半ば。

当たり前かもしれないが、男は本気ではなく、ただ若い女と体の関係を持ちたいと思っているだけの、どこにでもいる最低な男だ。

⏰:11/02/08 22:19 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#288 [匿名]
ターゲットは昨日、自殺をしようとした。その男に遊ばれていたとやっと気がつき、ショックが大きかったみたいだ。自分の命を捨てる程、あの男に魅力があるとは思えない。

ターゲットはビルの屋上にあがり、飛び降りようとした。だが、良いタイミングで僕が現れた。

「死んだらダメだ。僕は君が死んだら悲しい。」というような事を、一生懸命感情を込めて、ターゲットの目をずっと見つめながら言う。

突然現れた男にそのような事を言われたターゲットは、驚く程簡単に自殺をやめた。

⏰:11/02/11 19:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#289 [匿名]
「もっと早くあなたに会っていれば…」

とろーんとした目で僕を見つめるターゲットは、泣き真似みたいに涙を流した。

やっぱり人間は、簡単な理由で生き続ける事が出来る。死にたい理由が小さな事のように、生きたい理由も小さな事だ。僕からしてみたら。

彼女がいるから生きる。彼氏の為に生きる。まだ海外旅行に行ってないから、新しい靴を履きたいから。仕事がしたいから、家族が欲しいから。春が好きだから、来月好きな漫画の発売日だから、夢があるから、友達と遊ぶから。

⏰:11/02/11 19:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#290 [匿名]
だから生きる。
意識なんてしてなくても、人間の回りには生きる理由が沢山ある。ない人間なんて、僕は見た事がない。


今回のターゲットも、頭は悪いけど生きる理由なら死ぬ程ある。そして何故か僕は、命の恩人と言われ、ターゲットの実家に招待されてしまった。

それが今日、最終日。


もうターゲットが自殺をする事はないと断言出来る。その為にも僕は行かなくてはならない。ただ、面倒臭い。

⏰:11/02/11 19:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#291 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>100-200
>>200-300
>>300-400
>>400-500

⏰:11/02/14 01:42 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#292 [匿名]
ターゲットと駅で待ち合わせをして、家へと向かう。歩いて10分程の距離だったが、ターゲットがひたすら喋っていたので、とても長く感じた。

お父さんは普通のサラリーマンで、お母さんは専業主婦。という事だけは覚えているが、他は覚えていない。興味がない事や、自分の為にならない事は覚えない事にしている。

「ただいま!」とターゲットが元気よく玄関のドアを開けると、中から両親が出迎えてくれた。

⏰:11/02/20 14:18 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#293 [匿名]
ぷくっとお腹の出た父親は眼鏡をかけていて、白髪頭を後ろに流している。たれ目がとても優しそうに見えた。母親は肩まである髪の毛、上品なワンピース、品のある笑顔で、理想の母親像だな、と思った。

どこかで見た覚えのある二人だと感じたが、それもそのはずだ。どこにでもいる幸せそうな家族だからだ。暇潰しをする時に地上に降りると、1日5組くらいは、このような夫婦とすれ違う。見覚えがあると勘違いしても無理はないだろう。

⏰:11/02/20 14:26 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#294 [匿名]
「やあ!よく来てくれたね。さあ!上がって上がって!」

父親が笑顔で僕に言うと、隣にいる母親もうんうんと頷いた。

「お邪魔します」

僕も笑顔で答える。頭の中は、どんな理由をつけて早く帰ろうかと、必死に考えていた。

⏰:11/02/20 14:30 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#295 [匿名]
「いやー本当に君には感謝しているよ!娘の命の恩人だからなー。さあ!沢山食べて下さい!お口には合いますか?」

お酒が進んでいる父親は赤い顔をしながら、ご機嫌な様子で笑っている。
その隣で品よく笑う母親は、父親の言葉にうんうんと頷く。

「はい、ありがとうございます。」

何故僕がここにいるのだろう、と疑問に思いながらも、精一杯笑顔を作る。

それにしても、料理は美味しい!

⏰:11/03/02 14:22 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#296 [匿名]
「そうだ!お父さん、昔のアルバム見ましょうよ!」
そう言い出したのはターゲット。そういう家族の思い出話は、赤の他人の僕が帰った後にしてほしい。

「持ってくるわ!」

そんなにアルバムが見たいのか、母親はターゲットが言い終わるとほぼ同時に立ち上がり、アルバムを探しに隣の部屋へ行ってしまった。

面倒だ。
僕が興味のない家族の昔の写真を見て、どんなリアクションをとればいいのだろうか。

⏰:11/03/02 14:23 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#297 [匿名]
「皆さん若いですねー!」でいいのだろうか。
「もしかしたらこれは海ですか?」そうだ、背景が海だったらこう言おう。
「可愛いですね!」ターゲットが産まれたばかりの頃の写真だったらこうだな。


「沢山ありすぎて、とりあえず5冊だけ持ってきたわよ!」

僕が言葉を必死に考えていると、母親が重たそうにアルバムを抱えて戻ってきた。

僕以外の3人はそれぞれ違うアルバムを見始めた。

⏰:11/03/02 14:25 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#298 [匿名]
僕の向かいに座っている父親と母親は、お互いのアルバムを見合いながら、これがあの時だーだとか、この後転んで大泣きだったなーだとか、その頃の記憶を蘇らせている。

隣に座っているターゲットは、他のアルバムよりも少し小さめの薄いアルバムを見ていた。

「お父さんもお母さんも若ーい!」

そのアルバムを見ながら楽しそうに笑っている。どうやらターゲットが産まれる前の、父親と母親だけの写真らしい。

⏰:11/03/02 14:27 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#299 [匿名]
「ねぇ、見てください!お母さんって昔は綺麗だったでしょー!お父さんは変わらないけどね!」

ターゲットが僕にも見えるように、アルバムを広げてくれた。別に見たかった訳ではないが、見ない訳にもいかずに覗き込む。

「昔はね〜お母さんも綺麗にしてたから。」
いえいえ、今も十分綺麗ですよ!と言おうとしたが、お世辞に聞こえると思ったので辞めた。

「お母さんは昔からずっと変わってない。」

ボソッと父親が言う。
そして照れ隠しのように、アルバムを直視する。

⏰:11/03/02 14:29 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#300 [匿名]
やっぱり最初に、この両親に会った時に感じた違和感は、ただの思い過ごしではなかった。

父親の恥ずかしがる時の顔、そしてアルバムの写真。

何十年経っても覚えているものだ。


僕は昔この父親をターゲットにして、彼と暇潰しをした。

父親は飛び降り自殺をしようとしたが、今の母親に助けられた。

⏰:11/03/08 18:13 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#301 [匿名]
親子に渡ってターゲットにしてしまうとは、偶然なのか必然なのか、人生は面白いと思ってしまう。

それから僕は適当に理由をつけて上へと帰る事に成功した。

ふてくされた彼が僕を待っていて、僕の顔を見るなり舌打ちをした。

「つまんねー。早く次のターゲット決めようぜ!」


そうだね、と適当に相槌をうって考えた。あの父親はあの時死なないでよかったと思っているに違いない。

⏰:11/03/08 18:19 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#302 [匿名]
僕が暇潰しに勝たなくてはいけない理由だ。



end

⏰:11/03/08 18:20 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#303 [夢。*]
とても楽しんで読ませて頂きました。 もし続編をやる機会があるのであれば、ぜひお願いいたします

⏰:11/03/08 23:29 📱:F02B 🆔:q9.btUyc


#304 [匿名]
>>303夢さん

どうもありがとうございました!すっごく嬉しいです(^^*)

また書きたい内容が思い付いたら頑張ってみます!本当に読んでくださってありがとうございました!!

⏰:11/03/08 23:48 📱:F06B 🆔:fwOrpEHk


#305 [のぞみ]
ずっと見てました!!
コメントしようと思ってたけど
邪魔になると思ったので
終わってからコメントしました!
めっちゃ面白かったです(´Д`)
本当にこんなんがあったら
怖いなぁと思いました(笑)

⏰:11/03/18 21:11 📱:N07A3 🆔:☆☆☆


#306 [我輩は匿名である]
>>305のぞみさん
遅くなってしまいましたが読んでくれてありがとうございました!!すごーく嬉しいです(^^*)

現実だったら怖いですね(笑)だからこそ強く生きなきゃです!!

⏰:11/03/21 22:51 📱:F06B 🆔:dorVs0jU


#307 [葵]
おもしろかったです(^ω^)

⏰:11/03/22 01:12 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#308 [我輩は匿名である]
>>307葵さん
最後まで読んでくださって本当にありがとうございます!

⏰:11/03/22 08:43 📱:F06B 🆔:m3bDfx92


#309 [るる]
面白かった

⏰:11/03/27 02:05 📱:F02A 🆔:EFg5pJQc


#310 [我輩は匿名である]
>>309るるさん
どうもありがとうございました!読んでいただいて凄く嬉しいです!

⏰:11/03/28 08:15 📱:F06B 🆔:P4oFrIWs


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