天使と悪魔の暇潰し
最新 最初 🆕
#101 [匿名]
僕達は近くのカフェに入る事にした。時間帯がよかったのか、あまりコーヒーが美味しくないのか、他の客はあまりいなかった。

店員に端の席に案内してもらい、コーヒーを2つ頼んだ。

「すみません、突然で。何かお約束などはなかったですか?」

警戒心を解いてもらおうと、良い人柄を演じる。

「いえ、帰るだけでしたから大丈夫です。…で、何かあったんでしょうか?」
女性は早く話が聞きたいみたいで、そわそわしていた。

「えっとですね、まず謝らなければなりません。」

⏰:10/11/09 14:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#102 [匿名]
「…謝る?」

女性が聞き返した所でコーヒーが運ばれた。話は中断となり、店員が置き終わるのを待つ。

「実は、昨日犯人だと申したあの男は無実でした。本当に申し訳ございません。」

えっと短い声を出した女性は口に手に抑え、目を見開いていた。

口ではなく、目を抑えた方がいいんじゃないかと思うほど、こぼれ落ちそうだった。

⏰:10/11/09 14:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#103 [匿名]
「僕達が追っていた詐欺師は、あの男性と良く似た風貌で、上の調査の手違いで犯人だと間違えられたようです。」

女性は驚いた顔のまま、あまり動かない。

「真犯人は今日捕まりました。あの男性には、まだ詐欺師の容疑がかけられていた事は知りません。」

「それは、本当ですか?」
ようやく女性は言葉を発した。零れそうな目も、先程よりはましになっている。

⏰:10/11/09 14:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#104 [匿名]
「えぇ。全て事実です。なので今日は謝りに参りました。本当に申し訳ございませんでした。」

女性は全身の力が抜けたように、脱力していた。

「今日の朝も、あの男性を会社まで尾行していたのですが、やはり元気がなかったです。きっとあなたに振られてしまったからでしょう。死にそうな顔をしていました。」

女性ははっと顔を上げた。

「私、彼に酷い事を言ってしまった。」

目には涙が浮かんでいて、今にも零れ落ちそうだった。

⏰:10/11/09 14:30 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#105 [匿名]
五日目 最終日


毎回ながら、最終日は少しドキドキする。ワクワクと言ってもいいかもしれない。

五日間付きまとったターゲットが死ぬのか、生き続けるのか…、今日決まる。天使が勝つのか、悪魔が勝つのか。

勝てば少なからず嬉しい気持ちはある。負けてもやはり少し悔しいと思う。ターゲットの命がなくなったからではない。勝負に負けるからだ。

⏰:10/11/10 15:59 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#106 [匿名]
この日のターゲットも会社にいた。

来たよ。来なきゃいいのに。使えない奴だよな。本日いらない。邪魔。

皆が皆、そこら辺でターゲットの悪口を言っている。

遠くにいても、上から見ている僕には分かる。ターゲットに同情はしなかった。むしろ、しょうがないんじゃないか、と思ってしまう。

⏰:10/11/10 16:06 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#107 [匿名]
「あいつらさ〜陰で言ってねぇで本人に直接言ってくんねぇかなぁ!」

彼は下を睨みながら舌打ちをした。

「そしたらもっともっと追い込まれんのによぉ。嫌いだったら直接言った方がスッキリすんじゃんなぁ」

その通りだ。

「嫌いじゃないんじゃない?」

⏰:10/11/10 16:14 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#108 [匿名]
ただ皆が悪口を言うから、私も言ってみた。そんな所なんだろうな。

彼の言った通り、直接言った方がスッキリする。見ててイライラしてるだけなんて、ストレスをわざと溜めてるようにしか見えない。

本当はそこまで嫌いじゃないんだ、きっと。だから直接言わない。皆に合わせてるだけ、ストレスなんて溜まらない。

⏰:10/11/10 16:18 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#109 [我輩は匿名である]
>>1-150

⏰:10/11/10 18:31 📱:P03B 🆔:84bByedM


#110 [匿名]
>>109さん
アンカーありがとうございます!

⏰:10/11/10 18:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#111 [匿名]
「嫌いじゃない?んなわけねーよ!俺はああいう男は大っ嫌いなんだよ!」

悪魔の彼が嫌いなら、世の中の皆が嫌いになるのか?そんな訳がない。

彼は本当に自分中心の考え方しか出来ない。絶対に天使にはなれないだろう。

そっか、と僕はあやふやな返事をした。

⏰:10/11/10 19:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#112 [匿名]
「君、ちょっと話があるんだ。会議室にきてくれるか?」

昨日の、社長だか、部長だか、課長だか、偉そうな人がターゲットだけに聞こえる声で言った。

ターゲットは驚いた様子もなく、はい、と小さな声で返事をすると、席を立った。


何となく良い話ではない事が予想出来た。

⏰:10/11/10 19:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#113 [匿名]
「昨日の資料の事でしょうか?それでしたら本当に反省しています。申し訳ありませんでした!もう、このような事は起こさないよう努力します!」

社長だか偉い人が喋り出す前に、ターゲットは頭を下げた。

「いや、もういいんだ。」

「ありがとうございます!」

もういい、という言葉にターゲットはまた頭を下げた。また頑張ればいいと、心に決めたような顔をしている。

⏰:10/11/10 19:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#114 [匿名]
「いや、違うんだ。もう君は今日限りでここには来なくていい。」

え?とターゲットは頭を上げる。

「いや、今は不況だろ?こっちは人経費を払うのもやっとなんだ。君には悪いけど、君が一番成果のない人間なんだ。すまないが、そういう事だ。」


ターゲットは首になった。

ターゲットとしては突然の話だったのかもしれない。

⏰:10/11/10 19:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#115 [匿名]
それからターゲットは、社内に戻らず、屋上に向かっていた。

ただただ、空を眺めている。

神様でも見えるのか?もし見えたとしたら、忙しく死人に質問をしているだろう。生きてる人間の事は見ていない。

神様は人間の為にいるんじゃないのかよ?と思われたら困るだろうな。そんなのは人間が勝手に決めつけただけで、神様は一言もそんな事は言っていない。

⏰:10/11/10 19:52 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#116 [匿名]
神様なんていない。という人間もいる。

神様はいる。

ただ人間の為に何かをする事はない。

そして、神様お願い!と願う人間も自由だか、そんな願い、神様は聞いていない。

そんな暇があるなら、自分で努力したり、他の事を考えた方が、時間の無駄にならなくていいよ、と教えてあげたくなる。

⏰:10/11/10 19:55 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#117 [みか]
続きが楽しみ

更新頑張って下さい

⏰:10/11/12 23:04 📱:SH904i 🆔:s8LPXFGY


#118 [匿名]
>>117みかさん
ありがとうございます!
凄く嬉しいです!!

⏰:10/11/13 12:43 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#119 [匿名]
「なんだよアイツ!自殺してぇならとっとと飛び降りりゃいーのによぉ」

屋上に行き、ただただ空を眺めてるターゲットに嫌気がさしたのか、舌打ちをしながら彼は下に降りて行く。

僕もターゲットの所へ行きたかったが、先を越されてしまった。


彼が何をするかは分からなかったが、彼がターゲットに接触する事で、死が早まるような気がして仕方がなかった。

⏰:10/11/13 14:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#120 [匿名]
「おい、お前!こんな所で何してんだよ!!」

彼はターゲットの後ろから話しかける。話しかけるというよりは、怒鳴るが近いかもしれない。


「…君は?」

ターゲットは驚く事もなく、振り向いた。もう、何もかも諦めているような顔だ。


「てめぇには関係ねぇだろ。」

なんて無愛想なんだろう。

⏰:10/11/13 14:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#121 [匿名]
「あぁ、関係ないね。なら僕がここで何しようと、君にも関係ないよね。」

「お前死ぬ気か?」

「…君には関係ない。」

ターゲットは冷静だった。

「ああ、そうだな。俺には関係ねぇことだな。」

「分かってくれたら、どこかへ行ってくれないか。人が目の前で死ぬなんて嫌だろう。」

「答えてんじゃねーかよ。」

⏰:10/11/13 14:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#122 [匿名]
「だから…」

「うるせぇ!」

ターゲットが話そうとしたとき、また彼は怒鳴った。

「悪いけど、人が死ぬ事には慣れてる。てめぇが目の前で飛び降りた所で俺は笑うだけだ!」

「僕を止めようとしても無駄だよ?」


「は?笑わせんな。俺はてめぇみてーな奴が大嫌いなんだよ!早く死んでほしくてわざわざ此処まで来てやったんだ!」

ターゲットはふふっと下を向き笑った。

「そっか。よかった。僕は意志が弱いから、君みたいに後押しをしてくれる人がいると心強いよ。」

⏰:10/11/13 15:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#123 [匿名]
するとターゲットは手すりに手をかけ、ゆっくりとまたぐ。そして柵の向こう側へと出た。

今までのターゲットの性格が嘘のように、落ち着き払っている。

ターゲットは死ぬ気だ。死ぬ事すら出来ない人間だったのに、もうここまで成長してしまった。

まずい、と思ったとほぼ同時に、その気持ちはなくなった。

「待って!!」

ターゲットの自殺を止める事が出来る、唯一の女性。

⏰:10/11/14 12:04 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#124 [匿名]
間に合った。

昨日女性には、ターゲットの会社の場所を教えていた。

行くのも行かないのも、あなたの自由です、とだけ伝えて。

よく屋上にいるとわかったもんだ。僕はほっと一安心した。

「待って!!死ぬなんてやめてください!!」

女性は今にも泣き出しそうな形相で、必死に言葉を出している。

⏰:10/11/14 12:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#125 [匿名]
「…あ、あなたは!どうしてここに?」

ターゲットは驚いた顔をしている。

「私、あなたに謝らなければならない。ごめんなさい!あんなに酷い事を言ってしまって。ずっと後悔してたんです。あなたを信じてあげなかった自分を恨みました。」

とうとう女性は泣き出してしまった。

「あなたは悪くありません!泣かないでください。」
ターゲットは柵に手をかけ、女性を心配している。

⏰:10/11/14 12:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#126 [匿名]
「もう一度私とデートしていただけませんか?」

「え?」

聞き取れなかった訳ではないだろう。

「もう一度私とデートをしてください。」

女性は必死だった。
ターゲットも泣き出しそうだ。目は真っ赤で涙が溜まっている。

「こんな僕とですか?…僕、たった今首になっちゃったんです。いらない人間なんです。誰からも必要とされない、邪魔な人間なんです!こんな僕があなたとデートだなんて…」

⏰:10/11/14 12:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#127 [匿名]
「邪魔なんかじゃない!」
女性は叫んだ。

「邪魔なんかじゃないです。必要なんです。私には、あなたが必要なんです!あなたに合わない会社なんて辞めればいい!私が支えますから、一緒に頑張りましょう?そして私を支えてください。」

ターゲットは泣いた。子供のように声をあげて。

足が震えている。やっと死ぬ事への恐怖が、戻ってきたみたいだ。

⏰:10/11/14 12:28 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#128 [匿名]
「また俺の負けかよ。」

彼はいつの間にか、僕の隣に戻って来ていた。

「でも今回は、今まで以上に手こずったよ。彼女が来なかったら僕は負けてた。」

「来るって分かってたんだろ?」

ああ、わかっていた。必ず来ると思っていた。だけど僕は、いや、と否定しておいた。

⏰:10/11/14 12:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#129 [匿名]
その後、ターゲットはあの女性と結婚をした。

不景気らしいが会社も決まり、以前とは見違えるように働いている。

お腹の肉は一回り余計についたようだ。きっと女性の料理が美味しいのだろう。

幸せそうに笑っているターゲットを見ると、少しだけ嬉しくなった。


いつまでも続いて欲しいものだ。

⏰:10/11/14 12:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#130 [匿名]



僕は、かれこれ何百人ものターゲットを決めて暇潰しをしてきた。

初めての彼との暇潰しは、僕の圧勝だった。彼は自分が悪魔である事を忘れてしまっていたから。

⏰:10/11/14 12:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#131 [匿名]
一日目


「暇潰しって知ってるか?」

企んだ顔をして、彼は近寄ってきた。

暇潰し、僕も早くやりたいと思っていた。子供の天使と悪魔は、暇潰しの遊びはやってはいけない事になっている。

産まれてから何千年とたった。もう子供ではないので、暇潰しをしても何も言われなくなる。

⏰:10/11/15 10:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#132 [匿名]
「知ってるよ。ずっとやりたいと思ってた。君もだろ?」

「おう!やろうぜ。どーせ暇だしよっ。」

暇じゃなくても、彼は無理矢理暇を作って、遊ぼうとしてきただろう。


ターゲットは彼が決めた。大きな病院に入院している高校生の女の子。

髪の毛は黒く、大きな目、小さめな鼻に、薄い唇。華奢なので、どこかか弱そうに見える。

⏰:10/11/15 10:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#133 [匿名]
「まぁ、とりあえず行ってくるわ!」

彼は何の作戦も考えていないのに、下に降りて行った。僕には真似出来ないな、と少し感心した。

ターゲットは屋上で空を眺めていた。

「なんか見えんのか?」

何の躊躇いもなく、彼はターゲットの隣に立つと、声をかけた。

「ずっと空を見てたら、天使が見えたりしないかなーって。」

ターゲットは警戒もせず答える。

⏰:10/11/15 12:24 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#134 [匿名]
「天使じゃなくて、悪魔じゃダメなのか?」

その言葉に、ターゲットは一瞬戸惑うような顔付きになったが、すぐに緩んだ。

「悪魔は何かしてくれるの?」

「うーん、自殺を促す。」

彼は少し考えたが、あまりいい答えが出来ていないようだ。だがターゲットは笑った。

⏰:10/11/15 12:30 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#135 [匿名]
「じゃあ、悪魔に会いたいかも!天使を待つのはもう意味ないから。」

「意味ない?」

「うん、意味ないの。」

「なんで?」

「天使っているの?」

「いるよ。悪魔もいる。」

「悪魔に会いたい。」


ターゲットは僕には会いたくないらしい。隣に悪魔がいるからなのか。

⏰:10/11/15 12:39 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#136 [匿名]
それから二人は近くにあったベンチに座って、話をしていた。

天使がどーとか、悪魔は凄いとか。病院の怖い話だったり、今流行っているアイドルグループの話。

彼は何がしたいのか。ターゲットを追い詰めるなりして自殺させないと、負けてしまうというのに、楽しく話している。

⏰:10/11/15 12:51 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#137 [匿名]
「あ!やっべ、もう行かなきゃ。」

そう、彼が下に降りてから、もうすぐ二時間が経つのだ。

「あ、そっか。」

「おう、じゃあな。」

彼は立ち上がり、歩き出す。

「次はいつくるの?」

ターゲットは彼を呼び止めた。

「明日かな。」

「わかった。この時間に、私明日もここにいるから、気が向いたら来てよ!」
「おう、気が向いたらな。」

ターゲットは笑顔で手を振った。

⏰:10/11/15 19:16 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#138 [匿名]
「何で仲良くなってるの?」

二時間たっぷりと使い、彼が今日した事は、会話。時には笑い、時には真剣に、会話。

「いや…これからだよ!ったくお前はいつもせっかちなんだよ!」

彼にだけは言われたくない台詞だ。だけど僕は我慢して、作戦?とだけ聞いた。

「お、おう!当たり前だろぉが!仲良くしといて、いろいろ情報を集めてから、突き落とす!」

絶対に今考えた。僕は断言出来る。

⏰:10/11/16 00:00 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#139 [匿名]
「てかお前は俺の心配してる場合かよ!いーのかよ、行かなくて。」

彼は下を眺めながら言う。

正直僕は、初めての暇潰しだから、しっかりと作戦を考えてから行動したかった。

何も考えずむやみにターゲットに近付くのは、危険な気がしたのだ。特にこのターゲットは何らかの病気なはずで、慎重にいく必要がある人間だと思っていた。

⏰:10/11/16 00:07 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#140 [匿名]
仲良くなるのも一つの手だとは思ったが、彼に先を越されてしまった。

しかもターゲットはあんなに楽しそうに笑っていたので、僕はそれ以上にターゲットを楽しませる自信がなかったのだ。


女は難しい。
人間も、天使も、悪魔も。

⏰:10/11/16 00:11 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#141 [匿名]
二日目



結局僕は、考えても考えても、良い作戦は思い浮かばなかった。

人間は何が起きた時、死にたくないと思うのだろうか。死なない僕には検討も付かなかった。

「そろそろ時間だ。」
と彼は独り言を呟き、下に向かった。昨日と同じ時間。同じ場所。

⏰:10/11/16 00:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#142 [匿名]
「よお。来てやったぞ。」

彼の上から目線にも、ターゲットは苛立つ事はないようだ。

「昨日と同じ!ぴったしじゃん!」

ターゲットは嬉しそうにニコッと笑った。その笑顔を見て、心なしか彼が照れているように感じた。

ベンチに座り、昨日と同様、二人は話し出す。たいした話ではなさそうだったが、一時間位経って、彼がターゲットに質問した。

「お前、死にたいか?」

⏰:10/11/16 00:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#143 [匿名]
ターゲットは一瞬、何を聞かれたのか理解に苦しむ表情を見せたが、すぐに笑った。

「そんな質問、初めてされた!」

アハハと今度は声を出して笑う。

「何が可笑しいんだよ!」
彼は不機嫌になる。


「違うの。皆はさ、生きようね!って、頑張ろうね!って言うの。死、なんて口に出さないんだよ。」

「なんで?」

「リアルなんだよ、死ぬ事が。だから誰も口にしないの。皆の反応見てたらさ、嫌でも分かっちゃうんだよね。」

ターゲットの笑顔は少しずつ消えて行った。

⏰:10/11/16 00:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#144 [匿名]
「最初はさ、一週間ほど入院しましょう。って言われてたんだけど、気がついたらもう半年入院してるんだ。毎日のようにお母さんはお見舞いに来てくれるけど、毎日のように目を腫らしながら来るんだよー。」

ターゲットの言葉に、彼は無言で頷くだけだった。

「最近特に優しくてさ、我が儘何でも聞いてくれる。それに…」

言葉がつまった。

「私、どんどん痩せていってるんだ。最近は歩くのも辛くて、すぐに疲れちゃうの。熱も頻繁に出るし、身体中が痛くて寝れない時もある。徐々に悪くなってるのが自分でも分かるの。」

⏰:10/11/16 00:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#145 [匿名]
「でもさ、手術したら治るんだろ?」

彼はやっと口を開いた。悪魔である事を疑いたくなる、励ましの言葉。

ターゲットは彼の言葉に無言で首を振った。

「多分手術出来ないんだよ。先生とか、ナースさんとかを見てたらわかっちゃった。」

ターゲットは無理矢理笑顔を作ってみせた。

⏰:10/11/16 00:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#146 [匿名]
「あ!さっきの質問だけど、どーせ私はもうすぐ死ぬんだし、死ぬなら楽に死にたいな!このままだと私絶対苦しみながら死んじゃうと思うんだよねぇ。だから、死ぬほど苦しくなる前に…」

ターゲットは真っ直ぐ彼を見た。笑顔はなく、表情は無に等しい。

「死にたい。」


…死にたい。その言葉に彼はニコッと笑った。優しい笑顔ではなく、悪魔という名前にぴったりの笑顔だ。

⏰:10/11/16 00:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#147 [匿名]
彼はターゲットの、死にたい、という言葉を聞くと、その日はそれで帰った。

僕は彼に一歩リードされ、少しだけ焦りを感じた。


彼が僕の隣に戻ってきてからしばらくすると、ターゲットの母親らしき人が来た。

「ここにいたの?体調は大丈夫?」

母親はターゲットの後ろから声をかけた。出来るだけ明るい声で、明るい顔で言葉を発したつもりだろうが、裏目に出ている。

顔は疲れきっていて、やつれている。ターゲットの言っていた通り、目は腫れていた。

⏰:10/11/17 19:26 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#148 [匿名]
母親が来たというのに、ターゲットは空を見たまま黙っていた。

「さや!聞いてるの?」

「…ああ!お母さんいたの?」

「いたの?じゃないわよ!ぼけーっとして、何かあったの?」

ターゲットはさやという名前らしい。

「別に。」

そう言い、また空を眺め始めた娘に、可笑しな子ね、と笑いながら言う母親。

どこにでもいる親子だ。どちらかといったら、仲の良い方かもしれない。

⏰:10/11/17 19:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#149 [匿名]
僕は母親が一人になった時を見計らい、下に降りる事にした。

時間がかかるかな、と思ったが、チャンスはすぐに訪れた。

「ちょっと洗濯物取ってくるわね。」

そう言い、母親は病院の地下まで降りて行った。

⏰:10/11/17 19:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#150 [匿名]
「あの、さやちゃんのお母さんですよね?」

僕は洗濯物を取り込んでいるお母さんの後ろ姿に声をかけた。

「えぇ、あなたは?さやのお友達かしら?」

「はい!高校が一緒で。加藤と申します。」

僕は日本人にはよくある名前を言った。

「あら、お見舞い?どうもありがとう。さやなら今屋上にいるわよ。」

優しい顔で微笑んでくれたが、近くで見ると先程よりくまが目立つ。

⏰:10/11/20 14:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#151 [匿名]
「あ、多分お母さんが来る前にもう会ってきました。」

僕はまたサラッと嘘をつく。

「そうなの!どうもありがとうね。」

それから僕は、高校の話、勉強や部活やグラスの事などを適当に話した。
さやの友達のみかちゃん達は元気?と質問されたので、それもまた適当に答えた。

⏰:10/11/20 14:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#152 [匿名]
「あの…さやちゃんはどれくらい悪いんですか?」

一通りの会話をした後、僕は一番聞きたかった事を言ってみた。案の定、先程までの頑張って作り上げた笑顔はひきつり、お母さんは下を向いてしまった。

「やっぱり、そうとう悪いんですね。」

「…でも大丈夫よ!必ず治るから。さやは強い子だもの。病気なんかに負けないわ。」

⏰:10/11/21 14:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#153 [匿名]
その言葉は、僕の心配を晴らしてくれるための物ではなく、自分自身に言い聞かせてる物だと感じた。

「手術とかって?」

僕はまた質問をした。


「うん…今の技術だと手術出来ないんですって。ただ進行するのを緩める事しかないみたいなのよ。」

⏰:10/11/21 14:24 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#154 [匿名]
「そうなんですか。」

いかにも深刻そうな相づちに聞こえるように演技した。

「新しい技術が開発されて、手術が出来るようになるまで、さやの体がもつかわからないのよ。」

お母さんは必死に涙を堪えている。

それにしても、初めて会った、娘の友達と名乗る男に、よく話してくれたものだ。追い詰められて、一人では抱え込めないのかもしれない。

「大丈夫ですよ!」

何の根拠もないのに、僕は励ました。

⏰:10/11/21 21:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#155 [匿名]
三日目



彼は今日も同じ時間に、ターゲットの所へ足を運んだ。相変わらずくだらない事ばかり話している。

ターゲットは声を出して笑っていた。

その姿を見ると、もうすぐ死んでしまうとは、とても思えない。

若い人は進行が早く、急に死んでしまう事もあるらしい。昨日ターゲットのお母さんが話してくれたのだが、難しい話で、あまり頭に入ってこなかった。

⏰:10/11/24 11:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#156 [匿名]
とにかく、いつ死んでもおかしくない病気なのだ。明日朝になっても、目を覚まさないかもしれない。

この暇潰し五日間の間に体調が急変して、死んでしまった場合は、僕達の勝負は引き分けとなる。

負ける事よりもモヤモヤする引き分けだけには、絶対になりたくなかったので、急変だけはやめてくれ!と神様に祈った。

神様は聞いてないけど。

⏰:10/11/24 11:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#157 [匿名]
「お前が死ぬのは明後日だ。」

彼の低い声が聞こえた。

「何で明後日なの?私今すぐにでも死にたいのに。」

ターゲットは頬っぺたをぷくっと膨らませた。まるで、彼氏に我が儘を言う彼女のようだ。

なんで今日会えないの?早く会いたいのに。…うん、こんなかんじだ。

⏰:10/11/24 11:46 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#158 [匿名]
「お前はやり残した事とかないのか?」

普段の彼は、人間にそのような事は聞かない。
やり残した事があると主張してきた人間には、知るかと冷たい一言を発するのが、彼の流れだ。

「やり残した事か。…そんなのいっぱいあるよ。大学だって行きたかったし、結婚もしたい!独り暮らしとか海外に行くとか…やり残した事だらけだよ。」

ターゲットは寂しそうな顔をした。今まで考えないようにしていたのかもしれない。

⏰:10/11/24 11:54 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#159 [匿名]
「明日、一つだけ叶えてやる。だから今日のうちにやり残した事を一つに絞っとけ!」

「え?そんな事できるの?」

「誰だと思ってんだよ。」

「神様?」

「あんな自分の事で精一杯で、人間の願いの一つも聞けねぇようなやつと一緒にすんなよ!」

「え?」

「神様なんかより、俺の方がもっとすげぇよ!」

⏰:10/11/24 11:58 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#160 [くぽ]
あげ(´・ω・`)

⏰:10/11/29 23:47 📱:S001 🆔:GpLvkPFQ


#161 [匿名]
>>160くぽさん
ありがとうございます!

⏰:10/11/30 09:41 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#162 [匿名]
彼はそう言い残して帰って来た。

「暇潰しになると、君は人間に優しくなるの?」

僕は嫌味っぽく聞いてみた。

「別に優しくしてねーよ!俺は突き落とすのが好きなんだ!」

必死に怒鳴る彼は、子供っぽく感じる。

⏰:10/11/30 12:31 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#163 [匿名]
僕は今日もお母さんと接触する事にした。

病院に入る入り口で、偶然を装い声をかけた。

「あら!今日も来てくれたの?ありがとう。」

相変わらずやつれた表情は変わりなく、ターゲットよりも先にお母さんが倒れてしまいそうだ。

⏰:10/11/30 12:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#164 [匿名]
「あの、昨日は黙っていたんですけど…」

僕は深刻そうな暗い顔を作った。お母さんは首を少し傾げ、なにかしら?と目で伝えるように僕を覗き込んだ。

「さやちゃんなんですけど…昨日僕が会った時、死にたいって言ってたんです。私はもうすぐ死んじゃうと思うから、苦しくなる前に死にたいって。」

彼が昨日、ターゲットと話していた内容を思い出しながら言った。

え?と短く声にならない声を発したまま、お母さんは黙ってしまった。

⏰:10/12/04 20:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#165 [匿名]
「さやには、病気の事何も言ってないのに…。あの子、分かってたの?」

やっと話始めたお母さんの目には、やはり涙が溜まっている。

「悟ってるみたいでした。自分の体の事は、本人が一番分かっているのかもしれないです。」

何と言えばいいのか分からなかった。この人は、どれだけ泣くのだろう。涙が出なくなる魔法が使えるなら、僕はこの人に掛けてあげたい。

⏰:10/12/04 20:47 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#166 [匿名]
「支えてあげて下さい。」

何かもっと、人を勇気付けられる言葉を知っておきたかった。

「私がこんなんじゃ駄目よね。今日は先生に呼ばれててね。…でも覚悟が出来ないのよ。」

自分の子供が死んでしまう。どういう気持ちなのだろう。どれだけ苦しいだろう。

「良い話ですよ。覚悟だなんて…。決めつけちゃ駄目ですよ!さやちゃんは強いんですよね?」

他に何が言えただろうか。

⏰:10/12/04 21:02 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#167 [匿名]
「…ありがとう。じゃあ、さやの所に行ってあげてくれる?あの子、暇してると思うから。」

最後に笑みを見せると、慣れた足取りで歩いていく。

僕はターゲットの元へは行かずに、上へ戻って来た。医者とお母さんの話を聞こうと思ったからだ。

彼はいない。

⏰:10/12/04 21:09 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#168 [匿名]
四日目


今日は彼が、ターゲットのやり残した事一つ、叶えてあげる日。

これまでと同じ時間、同じ場所に、彼は向かう。
そこにはやっぱり、もうターゲットはいて、笑顔で彼を迎える。

「決まったか?」
彼はターゲットの座るベンチに腰を下ろすと、一言目にそう聞いた。

「うん。でも、まずはおはよう!って挨拶してよ!」

頬を膨らませて、ターゲットは彼に言った。

「はぁ?どうでもいいだろ!」

「どうでもよくないよ!」

「…おはよ。」

彼は面倒くさそうに呟いたが、ターゲットはそれで満足みたいだ。

「で、決まったのかよ。」

彼はもう一度聞く。

⏰:10/12/04 21:21 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#169 [匿名]
「キス。」

「ん?」

「キスがしたい。」



「誰と?」

「…誰でもいい。」



「じゃああそこにいる…」

「おじさんは嫌!」

「じゃああの…」

「子供も嫌!」

⏰:10/12/04 21:26 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#170 [匿名]
「誰でもよくねぇじゃねぇかよ!」

多分、ターゲットは決まっている。キスは、好きになった人としたいものだ。人間はそういうものだ。

「何で分かんないの!」

ターゲットはまた頬を膨らます。

「わからないの?って何だよ!分からねぇよ。」

⏰:10/12/04 21:35 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#171 [匿名]
彼がターゲットの方に顔を向けた。

一瞬だった。



ターゲットが彼にキスをした。

「本当は私からしたくなかったのに。」

ターゲットは前に向き直った。下を向いて、赤くなった顔を隠している。

⏰:10/12/04 21:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#172 [匿名]
彼は立ち上がり、ターゲットの前に立ち、

「立て!」
と命令をした。


「え?なんで?」

ターゲットの疑問は、彼によってかきけされた。彼はターゲットの腕を掴むと、無理矢理立たせる。

⏰:10/12/04 21:51 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#173 [匿名]
一瞬だった。

一瞬だけ、彼はターゲットの肩を抱きながら、キスをした。


「お前のやり残した事は、叶ったか?」

「…うん。」

下を向いたのは二人ともで、目を合わせようとしなかったのも二人ともだった。

⏰:10/12/04 21:57 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#174 [匿名]
人間の恋人同士を見ているようで、心が温かくなる。でも実際は違う。

人間と悪魔。
一緒に過ごす事は出来ない。

彼は、ターゲットのやりの残した事を、叶えてあげただけだ!と言い張るが、本心には聞こえなかった。

その日は1日中、彼の様子がおかしかった。

⏰:10/12/06 15:04 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#175 [匿名]
五日目 最終日


あれから、彼はターゲットの様子を見る事なく、ボーッとしたり、あたふたしたりの繰り返しで、忙しそうに過ごしていた。

僕は下に降りるタイミングを計っていたが、なかなか掴めず、見舞いに来たお母さんが、ターゲットのいる病室に着いてしまった。

今日も目が腫れている。

⏰:10/12/06 15:10 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#176 [匿名]
大切な話がある、とお母さんはターゲットをどこかへ連れて行った。

そして結局、下に降りる事なく、四日目が終わってしまった。

そして今日、最終日。
僕は下に行く必要はなかった。もうターゲットの気持ちは固まっているに違いない。

僕が何をしても、きっと何も変わらない。変える必要もない。

彼には何も言わず、二人を上から眺める事にした。

⏰:10/12/06 15:15 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#177 [我輩は匿名である]
あげ”(ノ><)ノ

⏰:10/12/09 07:35 📱:S001 🆔:w3hWK2fI


#178 [もも◆DwVzW5MnkQ]
続ききになります

⏰:10/12/09 13:59 📱:SH02A 🆔:3xmwpjNA


#179 [匿名]
>>177さん

>>178さん

どうもありがとうございます!

⏰:10/12/10 01:12 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#180 [匿名]
「これ。」

彼が手に持っているのは小さなビンで、中に薬のようなものが入っている。それをターゲットに手渡した。

「盗んできた。これ飲めば、楽に死ねる。あとはお前のタイミングで飲め。俺が居たら嫌なら帰る。見届けて欲しいなら此処に居る。」

「…うん。」

ターゲットは、手に持っているビンを見つめながら呟いた。

⏰:10/12/10 01:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#181 [匿名]
「私さ、絶対に治らないから、早く死にたいって思ったんだ。」

「おう、聞いた。」

「これ以上苦しむのが怖くて…これ以上、私が私じゃなくなるのが怖かった。」

彼は黙ってターゲットの話を聞いている。

⏰:10/12/10 01:32 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#182 [匿名]
「これ以上、お母さんに泣いて欲しくない。私のせいで誰かが苦しんでると思ったら、なんか…なんか痛くて。」

ターゲットは苦しそうな顔をしている。

「こんな状態で生きているのが、辛かった。」

今まで溜まっていた物が、言葉と一緒に流れ出た。

辛いに決まっている。
痛いに決まっている。

⏰:10/12/10 01:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#183 [匿名]
「もし、1%でも助かる可能性があるなら…」

「え?」

黙ってターゲットを見ていた彼が口を開いた。


「1%でも助かる可能性があるなら、それに賭けたいと思うのは、間違った事かな?」

ターゲットは彼を見る。

⏰:10/12/10 01:47 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#184 [匿名]
昨日お母さんが言った話は、寿命だとか延命治療だとか、そういう話ではなかった。

治る可能性がある。

外国へ行けば、新たな技術が進歩しており、手術が出来る。

ただ成功する可能性は低い。手術を始めてみなければ何も分からない、というような話だった。

何もせず死を待つか、少しでも可能性があるなら、それに託してみるか。

⏰:10/12/10 01:53 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#185 [匿名]
「生きれるかもしれないと思ったら、急に生きたい!っていう気持ちに変わったの。」

ターゲットはまっすぐ彼を見つめている。

「…私…死にたくない。死にたくないよ。…生きていたい。死にたくない!」

「……………」

彼は何も話さない。ただ強くターゲットを抱き締めていた。

「怖いよ。死ぬのが怖い。」

ターゲットは泣いている。

⏰:10/12/10 02:00 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#186 [匿名]
「お前は死なねぇよ!俺が保証してやる。」

彼が悪魔である事を忘れた時だった。忘れたというよりも、悪魔である事を放棄した瞬間だ。


ひたすら泣くターゲットを、ひたすら強く抱き締めていた。


時間というのは残酷で、いつも規則正しく動いている。なのにこんなにも、この二時間が早いとは思わなかった。

呆気なく、僕は勝利した。

⏰:10/12/10 02:06 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#187 [匿名]
あれから一週間ほど経ったある日、ターゲットは外国へ飛び立った。

アメリカの病院に入院し、2週間ほど経ち、状態が安定した頃に手術を受けた。

手術は十数時間にも及ぶ、大変な手術だった。

何がどうなっているのか、僕には全く分からない事が行われていて、ターゲットは眠っていたけど、とても胸が痛かった。

⏰:10/12/11 12:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#188 [匿名]
お母さんはずっと両手を合わせて、祈っている。神様!って聞こえてきそうだった。神様は聞いていないよって教えてあげたかったけど、僕にはできない。神様は聞いてるよって嘘をつきたくなる。


手術は終わった。
ターゲットはまだ生きている。だけど、大変な状況に代わりはないらしい。


それから五日間、ターゲットは寝たきりで、意識は戻らないでいた。

⏰:10/12/11 12:40 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#189 [匿名]
そしてとうとう、意識が戻らないまま、亡くなった。

ターゲットの体力では、耐えられなかったらしい。

泣き声が聞こえて、耳から離れなかった。


僕の隣で見ていた彼も、泣きそうだったに違いない。何も言わず去って行った。

⏰:10/12/11 12:43 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#190 [匿名]
ターゲットに再会するのはあれから二日後。神様への行列に並んでいた。

「よぉ。また会ったな!」

彼は以前と変わらない態度でターゲットに話しかけた。

ターゲットは驚いている。それはそうだ。死後の世界で、この間まで会話をしていた知人に会ったのだから。

「え?何でいるの?あなたも死んじゃったの?」

「死んでねぇよ!元から生きてねぇからな。」

「幽霊だったの?」

ターゲットは青ざめた。自分も死んでしまったというのに、同じ幽霊が怖いらしい。

⏰:10/12/11 12:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#191 [匿名]
「ちげぇよ!悪魔だよ、悪魔!」

「あくま?あくまってあの悪魔?じゃあ私、あなたのせいで死んだんだ。」

怒っているような、悲しんでいるような複雑な顔をしている。

「悪魔に会いたがってたじゃねーかよ!それに俺はお前から手をひいてやったんだ!じゃなかったらもっと早くお前は死んでたんだそ!」

「意味わかんない!」

ターゲットは笑っていた。

⏰:10/12/11 13:03 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#192 [匿名]
「ねぇ、あなたモテないでしょ?」

その言葉から始まった。

「女心教えてあげるよ。」

長い長い講義。

彼はちゃんと、ターゲットの話を聞く訳もなく、何度も怒られていた。

⏰:10/12/11 13:06 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#193 [匿名]
一応、二つの話が完結しました!次、どんなターゲットにしようか悩んでます(/_;)

⏰:10/12/11 13:08 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#194 []
楽しみです

⏰:10/12/11 21:11 📱:SH02A 🆔:FA1aBuIs


#195 [匿名]
>>194さん
嬉しいです!
ありがとうございます。

⏰:10/12/11 23:27 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#196 [みか]
ニートがいいです(^O^)

⏰:10/12/12 10:57 📱:SH904i 🆔:lav45Ib6


#197 [匿名]
>>196みかさん
ご意見ありがとうございます!
ニートかあ。どっちに勝たせようかなあ。

⏰:10/12/12 18:37 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#198 [まな]
その後の2人とか
見てみたいなァ

⏰:10/12/13 23:04 📱:P02B 🆔:☆☆☆


#199 [匿名]
>>198まなさん
その後の二人ですね! 一番最後に書こうと思います(^^)

ご意見ありがとうございます!

⏰:10/12/14 13:47 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#200 [ゆとり丸]
>>100-200

⏰:10/12/16 02:47 📱:PLY 🆔:3xKqJE3w


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194