天使と悪魔の暇潰し
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#143 [匿名]
ターゲットは一瞬、何を聞かれたのか理解に苦しむ表情を見せたが、すぐに笑った。

「そんな質問、初めてされた!」

アハハと今度は声を出して笑う。

「何が可笑しいんだよ!」
彼は不機嫌になる。


「違うの。皆はさ、生きようね!って、頑張ろうね!って言うの。死、なんて口に出さないんだよ。」

「なんで?」

「リアルなんだよ、死ぬ事が。だから誰も口にしないの。皆の反応見てたらさ、嫌でも分かっちゃうんだよね。」

ターゲットの笑顔は少しずつ消えて行った。

⏰:10/11/16 00:34 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#144 [匿名]
「最初はさ、一週間ほど入院しましょう。って言われてたんだけど、気がついたらもう半年入院してるんだ。毎日のようにお母さんはお見舞いに来てくれるけど、毎日のように目を腫らしながら来るんだよー。」

ターゲットの言葉に、彼は無言で頷くだけだった。

「最近特に優しくてさ、我が儘何でも聞いてくれる。それに…」

言葉がつまった。

「私、どんどん痩せていってるんだ。最近は歩くのも辛くて、すぐに疲れちゃうの。熱も頻繁に出るし、身体中が痛くて寝れない時もある。徐々に悪くなってるのが自分でも分かるの。」

⏰:10/11/16 00:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#145 [匿名]
「でもさ、手術したら治るんだろ?」

彼はやっと口を開いた。悪魔である事を疑いたくなる、励ましの言葉。

ターゲットは彼の言葉に無言で首を振った。

「多分手術出来ないんだよ。先生とか、ナースさんとかを見てたらわかっちゃった。」

ターゲットは無理矢理笑顔を作ってみせた。

⏰:10/11/16 00:48 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#146 [匿名]
「あ!さっきの質問だけど、どーせ私はもうすぐ死ぬんだし、死ぬなら楽に死にたいな!このままだと私絶対苦しみながら死んじゃうと思うんだよねぇ。だから、死ぬほど苦しくなる前に…」

ターゲットは真っ直ぐ彼を見た。笑顔はなく、表情は無に等しい。

「死にたい。」


…死にたい。その言葉に彼はニコッと笑った。優しい笑顔ではなく、悪魔という名前にぴったりの笑顔だ。

⏰:10/11/16 00:56 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#147 [匿名]
彼はターゲットの、死にたい、という言葉を聞くと、その日はそれで帰った。

僕は彼に一歩リードされ、少しだけ焦りを感じた。


彼が僕の隣に戻ってきてからしばらくすると、ターゲットの母親らしき人が来た。

「ここにいたの?体調は大丈夫?」

母親はターゲットの後ろから声をかけた。出来るだけ明るい声で、明るい顔で言葉を発したつもりだろうが、裏目に出ている。

顔は疲れきっていて、やつれている。ターゲットの言っていた通り、目は腫れていた。

⏰:10/11/17 19:26 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#148 [匿名]
母親が来たというのに、ターゲットは空を見たまま黙っていた。

「さや!聞いてるの?」

「…ああ!お母さんいたの?」

「いたの?じゃないわよ!ぼけーっとして、何かあったの?」

ターゲットはさやという名前らしい。

「別に。」

そう言い、また空を眺め始めた娘に、可笑しな子ね、と笑いながら言う母親。

どこにでもいる親子だ。どちらかといったら、仲の良い方かもしれない。

⏰:10/11/17 19:38 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#149 [匿名]
僕は母親が一人になった時を見計らい、下に降りる事にした。

時間がかかるかな、と思ったが、チャンスはすぐに訪れた。

「ちょっと洗濯物取ってくるわね。」

そう言い、母親は病院の地下まで降りて行った。

⏰:10/11/17 19:49 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#150 [匿名]
「あの、さやちゃんのお母さんですよね?」

僕は洗濯物を取り込んでいるお母さんの後ろ姿に声をかけた。

「えぇ、あなたは?さやのお友達かしら?」

「はい!高校が一緒で。加藤と申します。」

僕は日本人にはよくある名前を言った。

「あら、お見舞い?どうもありがとう。さやなら今屋上にいるわよ。」

優しい顔で微笑んでくれたが、近くで見ると先程よりくまが目立つ。

⏰:10/11/20 14:22 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#151 [匿名]
「あ、多分お母さんが来る前にもう会ってきました。」

僕はまたサラッと嘘をつく。

「そうなの!どうもありがとうね。」

それから僕は、高校の話、勉強や部活やグラスの事などを適当に話した。
さやの友達のみかちゃん達は元気?と質問されたので、それもまた適当に答えた。

⏰:10/11/20 14:33 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#152 [匿名]
「あの…さやちゃんはどれくらい悪いんですか?」

一通りの会話をした後、僕は一番聞きたかった事を言ってみた。案の定、先程までの頑張って作り上げた笑顔はひきつり、お母さんは下を向いてしまった。

「やっぱり、そうとう悪いんですね。」

「…でも大丈夫よ!必ず治るから。さやは強い子だもの。病気なんかに負けないわ。」

⏰:10/11/21 14:13 📱:F06B 🆔:☆☆☆


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