天使と悪魔の暇潰し
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#146 [匿名]
「あ!さっきの質問だけど、どーせ私はもうすぐ死ぬんだし、死ぬなら楽に死にたいな!このままだと私絶対苦しみながら死んじゃうと思うんだよねぇ。だから、死ぬほど苦しくなる前に…」
ターゲットは真っ直ぐ彼を見た。笑顔はなく、表情は無に等しい。
「死にたい。」
…死にたい。その言葉に彼はニコッと笑った。優しい笑顔ではなく、悪魔という名前にぴったりの笑顔だ。
:10/11/16 00:56 :F06B :☆☆☆
#147 [匿名]
彼はターゲットの、死にたい、という言葉を聞くと、その日はそれで帰った。
僕は彼に一歩リードされ、少しだけ焦りを感じた。
彼が僕の隣に戻ってきてからしばらくすると、ターゲットの母親らしき人が来た。
「ここにいたの?体調は大丈夫?」
母親はターゲットの後ろから声をかけた。出来るだけ明るい声で、明るい顔で言葉を発したつもりだろうが、裏目に出ている。
顔は疲れきっていて、やつれている。ターゲットの言っていた通り、目は腫れていた。
:10/11/17 19:26 :F06B :☆☆☆
#148 [匿名]
母親が来たというのに、ターゲットは空を見たまま黙っていた。
「さや!聞いてるの?」
「…ああ!お母さんいたの?」
「いたの?じゃないわよ!ぼけーっとして、何かあったの?」
ターゲットはさやという名前らしい。
「別に。」
そう言い、また空を眺め始めた娘に、可笑しな子ね、と笑いながら言う母親。
どこにでもいる親子だ。どちらかといったら、仲の良い方かもしれない。
:10/11/17 19:38 :F06B :☆☆☆
#149 [匿名]
僕は母親が一人になった時を見計らい、下に降りる事にした。
時間がかかるかな、と思ったが、チャンスはすぐに訪れた。
「ちょっと洗濯物取ってくるわね。」
そう言い、母親は病院の地下まで降りて行った。
:10/11/17 19:49 :F06B :☆☆☆
#150 [匿名]
「あの、さやちゃんのお母さんですよね?」
僕は洗濯物を取り込んでいるお母さんの後ろ姿に声をかけた。
「えぇ、あなたは?さやのお友達かしら?」
「はい!高校が一緒で。加藤と申します。」
僕は日本人にはよくある名前を言った。
「あら、お見舞い?どうもありがとう。さやなら今屋上にいるわよ。」
優しい顔で微笑んでくれたが、近くで見ると先程よりくまが目立つ。
:10/11/20 14:22 :F06B :☆☆☆
#151 [匿名]
「あ、多分お母さんが来る前にもう会ってきました。」
僕はまたサラッと嘘をつく。
「そうなの!どうもありがとうね。」
それから僕は、高校の話、勉強や部活やグラスの事などを適当に話した。
さやの友達のみかちゃん達は元気?と質問されたので、それもまた適当に答えた。
:10/11/20 14:33 :F06B :☆☆☆
#152 [匿名]
「あの…さやちゃんはどれくらい悪いんですか?」
一通りの会話をした後、僕は一番聞きたかった事を言ってみた。案の定、先程までの頑張って作り上げた笑顔はひきつり、お母さんは下を向いてしまった。
「やっぱり、そうとう悪いんですね。」
「…でも大丈夫よ!必ず治るから。さやは強い子だもの。病気なんかに負けないわ。」
:10/11/21 14:13 :F06B :☆☆☆
#153 [匿名]
その言葉は、僕の心配を晴らしてくれるための物ではなく、自分自身に言い聞かせてる物だと感じた。
「手術とかって?」
僕はまた質問をした。
「うん…今の技術だと手術出来ないんですって。ただ進行するのを緩める事しかないみたいなのよ。」
:10/11/21 14:24 :F06B :☆☆☆
#154 [匿名]
「そうなんですか。」
いかにも深刻そうな相づちに聞こえるように演技した。
「新しい技術が開発されて、手術が出来るようになるまで、さやの体がもつかわからないのよ。」
お母さんは必死に涙を堪えている。
それにしても、初めて会った、娘の友達と名乗る男に、よく話してくれたものだ。追い詰められて、一人では抱え込めないのかもしれない。
「大丈夫ですよ!」
何の根拠もないのに、僕は励ました。
:10/11/21 21:03 :F06B :☆☆☆
#155 [匿名]
三日目
彼は今日も同じ時間に、ターゲットの所へ足を運んだ。相変わらずくだらない事ばかり話している。
ターゲットは声を出して笑っていた。
その姿を見ると、もうすぐ死んでしまうとは、とても思えない。
若い人は進行が早く、急に死んでしまう事もあるらしい。昨日ターゲットのお母さんが話してくれたのだが、難しい話で、あまり頭に入ってこなかった。
:10/11/24 11:33 :F06B :☆☆☆
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