天使と悪魔の暇潰し
最新 最初 全
#274 [匿名]
もう何を思っても遅いのに。だから僕は出来るだけ人間を生かしておきたい。
後悔するのが目に見えて分かるからだ。
何かに追い込まれて、冷静に物事を考えられなくなると、死ぬ事が最善策だと考えてしまう。何も解決なんてしていないのに、人間は馬鹿だ。
そう考えながら、僕はターゲットの部屋に入った。
ターゲットは自分に向かう包丁を見ていて、僕には気付かない。
彼はチラッと僕を見て、
「遅せぇぞ。もうすぐ死ぬんだから見とけよ!」
と言った。
:11/01/30 14:44 :F06B :☆☆☆
#275 [匿名]
「あなた!」
母親がようやく僕の存在に気が付いた。
「あなた!!助けて!うちの子を止めて!」
この人は何を言っているのだろう?いつもこうして生きてきたのか。
「なぜ僕が?」
僕もターゲットが死んでしまうのは避けたいが、なぜ母親は自分で止めようとしないのだろう。
なぜ必死にならない?
:11/01/30 14:45 :F06B :☆☆☆
#276 [匿名]
「あなたの友達のせいなのよ!責任取りなさいよ!!うちの子が死んだらどーしてくれんのよ!」
「僕の友達は死んだんです。責任取ってもらいたいのは僕の方だ!何でもかんでも人のせい。あなたがそんな人間だから、あなたの息子はこうなったんだ!」
僕は怒鳴った。
母親は唇を噛み締めて、僕をギッと睨み付けている。
「死んでほしくないなら、あなたが説得しろ。僕は赤の他人だ。」
:11/01/30 14:46 :F06B :☆☆☆
#277 [匿名]
母親はターゲットを見た。ターゲットは目を瞑り、震えている。
「死ぬ…死ぬ…死ぬ…」
ターゲットが包丁を振りかざした。勢いをつける。
さっきまでの震えはない。
彼はその様子を見ながら、笑っている。悪魔の笑顔はいつ見ても、不気味だ。
僕の負けか。
やっぱり母親はどうしようもない人間だった。
これもまたありかもしれない。
:11/01/30 14:48 :F06B :☆☆☆
#278 [匿名]
僕の目の前から母親がいなくなるのが分かった。勝利を諦めて、ふと視線を下に落とした瞬間だ。
「っんだよ!」
彼の声が聞こえた。
予想外の事が起き驚いているような、悔しがっているような、苛立ちを抑えられない声だった。
何となく、何が起きたか理解できた。視線をターゲットに向ける。
:11/02/01 15:12 :F06B :☆☆☆
#279 [匿名]
ターゲットは包丁を刺した。自分に向かって振りかざした包丁を真っ直ぐ胸辺り目掛けてふった。
うっという声が漏れる。
その声に気付き、ターゲットは目を開けた。ターゲットの目の前には抱きつくように、ターゲットと包丁の間に立つ母親がいる。そして、自分に向けたはずの包丁が、自分自身に刺さっていない事に気付いた。
:11/02/01 15:20 :F06B :☆☆☆
#280 [匿名]
目の前の母親の背中には、ターゲットに刺さるはずだった包丁が刺さっている。ターゲットは震え出した。
膝から崩れる様に母親が倒れた瞬間、ターゲットは悲痛な表情を浮かべ後退りした。
「うわあああ!」
彼を殺しても、あの男を殺しても動じなかったターゲットが、母親を刺したらこの有り様だ。
:11/02/06 13:53 :F06B :☆☆☆
#281 [匿名]
「…ごめんね」
倒れた母親が声を絞り出す。
「あなたは…生きてなきゃ駄目よ。何度でもやり直せるんだから…」
母親は目に涙を浮かべ、ターゲットを諭した。初めて見た、まともな母親の顔だ。
ターゲットはガタガタと震え、泣いている。
「何で…どうして…僕は…」
:11/02/07 00:22 :F06B :☆☆☆
#282 [匿名]
「悪いのは全部、お母さんなのよ。…大丈夫。…ごめんね、間違えてたみたい。お母さんがした事は、全部あなたの為にはなってなかったみたいね。」
ターゲットが膝をつき、母親の手を握る。こんなにも親子という関係は素晴らしいのに、どうして今まで上手く行かなかったのだろう。
この歪みがなくなった今、母親は死んだ。
:11/02/07 00:29 :F06B :☆☆☆
#283 [匿名]
ターゲットは暫く方針状態で、僕が声をかけても反応しなかった。一言も話さないまま僕たちの二時間は過ぎてしまい、その場を離れなければならなくなった。
この二時間が過ぎたので、これからどうなろうと僕の勝ちが決まった。
「またおめぇの勝ちかよ。気に食わねぇな!」
彼は僕より先に上に戻っていて、僕が戻るとすぐにこう言った。
:11/02/07 00:35 :F06B :☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194