天使と悪魔の暇潰し
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#290 [匿名]
だから生きる。
意識なんてしてなくても、人間の回りには生きる理由が沢山ある。ない人間なんて、僕は見た事がない。


今回のターゲットも、頭は悪いけど生きる理由なら死ぬ程ある。そして何故か僕は、命の恩人と言われ、ターゲットの実家に招待されてしまった。

それが今日、最終日。


もうターゲットが自殺をする事はないと断言出来る。その為にも僕は行かなくてはならない。ただ、面倒臭い。

⏰:11/02/11 19:42 📱:F06B 🆔:☆☆☆


#291 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>100-200
>>200-300
>>300-400
>>400-500

⏰:11/02/14 01:42 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#292 [匿名]
ターゲットと駅で待ち合わせをして、家へと向かう。歩いて10分程の距離だったが、ターゲットがひたすら喋っていたので、とても長く感じた。

お父さんは普通のサラリーマンで、お母さんは専業主婦。という事だけは覚えているが、他は覚えていない。興味がない事や、自分の為にならない事は覚えない事にしている。

「ただいま!」とターゲットが元気よく玄関のドアを開けると、中から両親が出迎えてくれた。

⏰:11/02/20 14:18 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#293 [匿名]
ぷくっとお腹の出た父親は眼鏡をかけていて、白髪頭を後ろに流している。たれ目がとても優しそうに見えた。母親は肩まである髪の毛、上品なワンピース、品のある笑顔で、理想の母親像だな、と思った。

どこかで見た覚えのある二人だと感じたが、それもそのはずだ。どこにでもいる幸せそうな家族だからだ。暇潰しをする時に地上に降りると、1日5組くらいは、このような夫婦とすれ違う。見覚えがあると勘違いしても無理はないだろう。

⏰:11/02/20 14:26 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#294 [匿名]
「やあ!よく来てくれたね。さあ!上がって上がって!」

父親が笑顔で僕に言うと、隣にいる母親もうんうんと頷いた。

「お邪魔します」

僕も笑顔で答える。頭の中は、どんな理由をつけて早く帰ろうかと、必死に考えていた。

⏰:11/02/20 14:30 📱:F06B 🆔:W7R7DE9.


#295 [匿名]
「いやー本当に君には感謝しているよ!娘の命の恩人だからなー。さあ!沢山食べて下さい!お口には合いますか?」

お酒が進んでいる父親は赤い顔をしながら、ご機嫌な様子で笑っている。
その隣で品よく笑う母親は、父親の言葉にうんうんと頷く。

「はい、ありがとうございます。」

何故僕がここにいるのだろう、と疑問に思いながらも、精一杯笑顔を作る。

それにしても、料理は美味しい!

⏰:11/03/02 14:22 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#296 [匿名]
「そうだ!お父さん、昔のアルバム見ましょうよ!」
そう言い出したのはターゲット。そういう家族の思い出話は、赤の他人の僕が帰った後にしてほしい。

「持ってくるわ!」

そんなにアルバムが見たいのか、母親はターゲットが言い終わるとほぼ同時に立ち上がり、アルバムを探しに隣の部屋へ行ってしまった。

面倒だ。
僕が興味のない家族の昔の写真を見て、どんなリアクションをとればいいのだろうか。

⏰:11/03/02 14:23 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#297 [匿名]
「皆さん若いですねー!」でいいのだろうか。
「もしかしたらこれは海ですか?」そうだ、背景が海だったらこう言おう。
「可愛いですね!」ターゲットが産まれたばかりの頃の写真だったらこうだな。


「沢山ありすぎて、とりあえず5冊だけ持ってきたわよ!」

僕が言葉を必死に考えていると、母親が重たそうにアルバムを抱えて戻ってきた。

僕以外の3人はそれぞれ違うアルバムを見始めた。

⏰:11/03/02 14:25 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#298 [匿名]
僕の向かいに座っている父親と母親は、お互いのアルバムを見合いながら、これがあの時だーだとか、この後転んで大泣きだったなーだとか、その頃の記憶を蘇らせている。

隣に座っているターゲットは、他のアルバムよりも少し小さめの薄いアルバムを見ていた。

「お父さんもお母さんも若ーい!」

そのアルバムを見ながら楽しそうに笑っている。どうやらターゲットが産まれる前の、父親と母親だけの写真らしい。

⏰:11/03/02 14:27 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


#299 [匿名]
「ねぇ、見てください!お母さんって昔は綺麗だったでしょー!お父さんは変わらないけどね!」

ターゲットが僕にも見えるように、アルバムを広げてくれた。別に見たかった訳ではないが、見ない訳にもいかずに覗き込む。

「昔はね〜お母さんも綺麗にしてたから。」
いえいえ、今も十分綺麗ですよ!と言おうとしたが、お世辞に聞こえると思ったので辞めた。

「お母さんは昔からずっと変わってない。」

ボソッと父親が言う。
そして照れ隠しのように、アルバムを直視する。

⏰:11/03/02 14:29 📱:F06B 🆔:Xakx.NxM


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