天使と悪魔の暇潰し
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#292 [匿名]
ターゲットと駅で待ち合わせをして、家へと向かう。歩いて10分程の距離だったが、ターゲットがひたすら喋っていたので、とても長く感じた。
お父さんは普通のサラリーマンで、お母さんは専業主婦。という事だけは覚えているが、他は覚えていない。興味がない事や、自分の為にならない事は覚えない事にしている。
「ただいま!」とターゲットが元気よく玄関のドアを開けると、中から両親が出迎えてくれた。
:11/02/20 14:18 :F06B :W7R7DE9.
#293 [匿名]
ぷくっとお腹の出た父親は眼鏡をかけていて、白髪頭を後ろに流している。たれ目がとても優しそうに見えた。母親は肩まである髪の毛、上品なワンピース、品のある笑顔で、理想の母親像だな、と思った。
どこかで見た覚えのある二人だと感じたが、それもそのはずだ。どこにでもいる幸せそうな家族だからだ。暇潰しをする時に地上に降りると、1日5組くらいは、このような夫婦とすれ違う。見覚えがあると勘違いしても無理はないだろう。
:11/02/20 14:26 :F06B :W7R7DE9.
#294 [匿名]
「やあ!よく来てくれたね。さあ!上がって上がって!」
父親が笑顔で僕に言うと、隣にいる母親もうんうんと頷いた。
「お邪魔します」
僕も笑顔で答える。頭の中は、どんな理由をつけて早く帰ろうかと、必死に考えていた。
:11/02/20 14:30 :F06B :W7R7DE9.
#295 [匿名]
「いやー本当に君には感謝しているよ!娘の命の恩人だからなー。さあ!沢山食べて下さい!お口には合いますか?」
お酒が進んでいる父親は赤い顔をしながら、ご機嫌な様子で笑っている。
その隣で品よく笑う母親は、父親の言葉にうんうんと頷く。
「はい、ありがとうございます。」
何故僕がここにいるのだろう、と疑問に思いながらも、精一杯笑顔を作る。
それにしても、料理は美味しい!
:11/03/02 14:22 :F06B :Xakx.NxM
#296 [匿名]
「そうだ!お父さん、昔のアルバム見ましょうよ!」
そう言い出したのはターゲット。そういう家族の思い出話は、赤の他人の僕が帰った後にしてほしい。
「持ってくるわ!」
そんなにアルバムが見たいのか、母親はターゲットが言い終わるとほぼ同時に立ち上がり、アルバムを探しに隣の部屋へ行ってしまった。
面倒だ。
僕が興味のない家族の昔の写真を見て、どんなリアクションをとればいいのだろうか。
:11/03/02 14:23 :F06B :Xakx.NxM
#297 [匿名]
「皆さん若いですねー!」でいいのだろうか。
「もしかしたらこれは海ですか?」そうだ、背景が海だったらこう言おう。
「可愛いですね!」ターゲットが産まれたばかりの頃の写真だったらこうだな。
「沢山ありすぎて、とりあえず5冊だけ持ってきたわよ!」
僕が言葉を必死に考えていると、母親が重たそうにアルバムを抱えて戻ってきた。
僕以外の3人はそれぞれ違うアルバムを見始めた。
:11/03/02 14:25 :F06B :Xakx.NxM
#298 [匿名]
僕の向かいに座っている父親と母親は、お互いのアルバムを見合いながら、これがあの時だーだとか、この後転んで大泣きだったなーだとか、その頃の記憶を蘇らせている。
隣に座っているターゲットは、他のアルバムよりも少し小さめの薄いアルバムを見ていた。
「お父さんもお母さんも若ーい!」
そのアルバムを見ながら楽しそうに笑っている。どうやらターゲットが産まれる前の、父親と母親だけの写真らしい。
:11/03/02 14:27 :F06B :Xakx.NxM
#299 [匿名]
「ねぇ、見てください!お母さんって昔は綺麗だったでしょー!お父さんは変わらないけどね!」
ターゲットが僕にも見えるように、アルバムを広げてくれた。別に見たかった訳ではないが、見ない訳にもいかずに覗き込む。
「昔はね〜お母さんも綺麗にしてたから。」
いえいえ、今も十分綺麗ですよ!と言おうとしたが、お世辞に聞こえると思ったので辞めた。
「お母さんは昔からずっと変わってない。」
ボソッと父親が言う。
そして照れ隠しのように、アルバムを直視する。
:11/03/02 14:29 :F06B :Xakx.NxM
#300 [匿名]
やっぱり最初に、この両親に会った時に感じた違和感は、ただの思い過ごしではなかった。
父親の恥ずかしがる時の顔、そしてアルバムの写真。
何十年経っても覚えているものだ。
僕は昔この父親をターゲットにして、彼と暇潰しをした。
父親は飛び降り自殺をしようとしたが、今の母親に助けられた。
:11/03/08 18:13 :F06B :fwOrpEHk
#301 [匿名]
親子に渡ってターゲットにしてしまうとは、偶然なのか必然なのか、人生は面白いと思ってしまう。
それから僕は適当に理由をつけて上へと帰る事に成功した。
ふてくされた彼が僕を待っていて、僕の顔を見るなり舌打ちをした。
「つまんねー。早く次のターゲット決めようぜ!」
そうだね、と適当に相槌をうって考えた。あの父親はあの時死なないでよかったと思っているに違いない。
:11/03/08 18:19 :F06B :fwOrpEHk
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