亡き君に告ぐ
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#113 [不発花火]
僕はただ呆然と立ち尽くし、横に転がるそれに目をやった。

口を塞がれているのか、声を上げることもなく、ガムテープと包装紙でグルグル巻きになっている体を逃げようと必死になっている塊。

性別すらわからない人間。

顔すら覆われてるのが救いか。

⏰:10/12/29 21:41 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#114 [不発花火]
僕は銃を手に取り、横になるそれを蹴飛ばして仰向けにして心臓に向ける。


「―神様」

目を閉じて、刹那。

乾いた銃声が倉庫に鳴り響く。


目を開けると、ピクリとも動かないそれの胸元辺りの包装紙が血に濡れていくのが見えた。

⏰:10/12/29 21:42 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#115 [不発花火]
ジワジワと染み込み、床に血溜まりを作っていく。

僕はあまり見ないように、黒いビニール袋を手に取り颯爽と倉庫を後にしようと扉に足を向ける。

不思議と先程まで感じていた恐怖も何も感じなかった。

なぜか清々しささえ感じていた僕は異常なのだろうか。

それともずっと感じていた恐怖と緊張感から逃れられた安堵感なのだろうか。

⏰:10/12/29 21:42 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#116 [不発花火]
薄暗い倉庫から出ると、陽は高く登り、眩しさに目を凝らした。


「やぁやぁ、君は見事任務を成し遂げることに成功したね」

「!?」

突如背後から聞き慣れない声が聞こえ、勢いよく振り返ると、扉の横にもたれ掛かるように老人が立っていた。

「…社長…?」

⏰:10/12/29 21:43 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#117 [不発花火]
老人はよく見慣れた人物だった。

忘れもしない、自分がつい先日まで勤めていた会社の経営者。

人物に解雇を告げた張本人。

まさか、社長が。

社長が僕に人を殺させたというのか。

「君は見事大金を手に入れることが出来た訳だが、代わりにとても大切なものを失った」

⏰:10/12/29 21:43 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#118 [不発花火]
社長はニコニコと人当たりの良い笑顔を向けている。

「どういうこと、ですか」

心臓が再び大きな音を立てて鼓動を刻み始めた。

「君が殺した人間を確認してくれば、全てわかるよ」

社長の顔から笑みが消え、声のトーンを落とした。

その声は、電話越しの男の声と同じだった。

⏰:10/12/29 21:43 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#119 [不発花火]
「さぁ、確認しておいで」

トン、と肩を叩かれる。

僕は弾かれたように再び倉庫の扉を開け、事切れたそれに近づき包装紙とガムテープを解く。

おかしなくらいに手が震え、うまく開けることが出来ない。

乱暴に包装紙を剥ぎ取ると、そこには変わり果てた愛しい妻の顔があった。

「―…ッ!」

⏰:10/12/29 21:44 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#120 [不発花火]
突如込み上げる嘔吐感を堪えることが出来ず、吐き出す。

まさか、まさか、自分の手で妻を。愛する妻を。

「君は自分の手で最愛の妻を殺してしまった。見事だよ」

パチパチと社長が拍手をする。

なぜ、妻なのだ。

「お前…!殺してやる!!」

⏰:10/12/29 21:44 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#121 [不発花火]
社長に掴みかかろうとした瞬間、目の前に銃口を突き付けられた。


「教えてやろう。なぜ、君の妻を君が殺さなくてはならなかったのかを」


僕は眉間に当てられた銃口に動くことが出来ないでいる。

心臓の音がやけにうるさい。

⏰:10/12/29 21:44 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


#122 [不発花火]
「7年前の話だ。当時、君の妻は18歳で車の免許を取ったばかりだった」

「嬉しかったのだろうね。君の妻は深夜に車を飛ばしていた。
そこで、君の妻が乗った車が人身事故を起こした」

「轢いたのは私の娘だよ。
即死だった。だが君の妻は恐怖からか逃走した」

体が冷えていくのがわかった。

妻が人を殺している。

⏰:10/12/29 21:47 📱:SH04B 🆔:2c2Jat.Y


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