亡き君に告ぐ
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#1 [不発花火]
初めまして。
不発花火と申します。
オムニバス形式で色々な話を書いていきたいと思います。
グロ、ホラー等混ざりますので苦手な方は注意してください。
:10/12/17 22:06
:SH04B
:f3tn8iq6
#2 [不発花火]
ギィギィ、と錆びた音が廃れた公園に響き渡る。
僕の横でブランコを漕ぐのは、あの時と何一つ変わらない君。
亡き君に告ぐ
:10/12/17 22:07
:SH04B
:f3tn8iq6
#3 [不発花火]
僕がまだこの公園で遊んでいた時は、周りは古びた団地で、道路を渡ってすぐに優しいおばあちゃんがいる駄菓子屋があって、その少し離れた所に友達の家が経営している本屋があったはずだった。
でも今は見渡しても駄菓子屋も本屋も古びた団地もなく、コンクリートのビルや綺麗な高層マンションがそびえ立っていた。
その中でこの廃れた公園だけは昔と何一つ変わらずに、まるでここだけ世界が違うように佇んでいた。
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:SH04B
:f3tn8iq6
#4 [不発花火]
でも、昔はたくさんの子供達やその母親で賑わっていた公園も、今ではしんと静まり返っている。
ただ、ブランコの音がギィギィと鳴り響いている。
「君は変わらないな」
ブランコを囲む鉄柵に座る僕の横で無言のまま小さくブランコを漕ぎ続ける君に僕は話し掛けた。
十何年という長い時間は、僕を大人にするのは充分すぎる程だった。
:10/12/17 22:08
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#5 [不発花火]
大人になった僕は、小さい頃の面影なんてない程に成長していた。
顎髭なんか生やしているし、似合わないスーツだって毎日のように着ている。
昔のようにTシャツと短パンで駆け回ることもなくなった。
でも君は何一つ変わらず幼いままだ。
どれ程の時間が経ったのだろうか。
僕は君が亡くなってから、一体何年この公園に足を運ばなくなったのだろうか。
「おじさん、誰?」
まだ声変わりをしていない、高らかな少年の声。
何も知らない、君の声。
「僕は君の友達だよ」
懐かしさから涙が零れそうになるのを必死で耐えながら、言葉を紡ぐ。
君は気付いてくれるだろうか。
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#6 [不発花火]
「でも、僕はおじさんを知らないよ?」
「僕は君をずっと昔から知ってるよ」
ブランコを漕ぐのを止め、僕の目を見透かえながら君はきょとん、とした顔をしている。
「僕の、友達…?」
そう、人見知りで泣き虫な君の、たった一人の友達だったんだ。
笑って頷くと君は嬉しそうに、けれど恥ずかしそうに再びブランコを漕ぎ出した。
「じゃあ…ブランコを押してくれる?」
「…もちろんだよ」
僕は鉄柵から立ち上がり、緩くブランコを漕ぐ君の細い背中を優しく押していく。
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#7 [不発花火]
「しっかり掴まってるんだよ?」
手放さないように。
「うん!もっと、もっと高く―」
あの時のように、手放さないように。
僕は少し強めに背中を押すが、君はまだ満足出来ないのか『もっと、もっと』と楽しそうに笑っている。
ふと、雨が降り出した。
ポツポツと雨粒が乾いた地面に小さな染みを作り、地面の色を変えていく。
「さあ、雨が降って来たよ。お家に帰ろうか」
また天気が良い日に、君に会いに行くよ。
そしたら君に謝りたいことがあるんだ。
:10/12/17 22:10
:SH04B
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#8 [不発花火]
「―どうして?」
君は許してくれるだろうか。
「どうして、って雨が降ってるからだよ。風邪を引いてしまうだろ?」
僕からは君の顔は見えない。
僕の心臓は急激に早く鼓動を刻み始めた。
声は震えていなかっただろうか。
「あの時は雨が振ってても、もっと強く背中を押してくれたのにね?」
ぐるり、と180度君の顔が僕の方を向く。
人間では、有り得ない向きで君は僕の顔を見ている。
「ひっ」
つい嗚咽が漏れてしまい、慌てて手で口を塞ぐ。
心臓の音が煩い程に鳴っている。
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#9 [不発花火]
「どうして僕を置いてったの?」
「僕はまだ生きていたのに」
「どうして?」
君は僕を許してくれるだろうか。
「ごめ、ごめん…本当にごめん…怖かったんだ…責められるのが」
『君を殺した』と責められるのが。
あの日たまたま雨が振っていて、僕はブランコを漕ぐ君の背中をいつものように押していたんだ。
ほんの少しの雨だったから、構わず親友である君と遊んでたんだ。
君を喜ばせたくて、雨粒がキラキラと宝石のように綺麗だったから、いつもより強く背中を押していたんだ。
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#10 [不発花火]
『立ったら、きっともっと楽しいよ』
その言葉で立ち上がった君の背中を僕が強く押した瞬間、雨で濡れた鉄で出来た手摺りから君は手を離してしまい、君の小さな体は宙を舞った。
高く飛んだ君の体は地面に強く叩き付けられ、しばらくビクビクと痙攣し、血を吐き出した後ピクリとも動かなくなった。
僕は怖くなってしまい、逃げ出してしまった。
「違、違う…助けたかったんだ…本当だよ…ごめん、ごめんよ…」
「嘘だ」
無表情な君からは、何も感じられなかった。
怒りも悲しみも何も感じられない、君。
僕はただそれに恐怖を感じるしかなかった。
:10/12/17 22:11
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