亡き君に告ぐ
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#133 [不発花火]
一体いつから夢を見続けていたのかさえも、曖昧で。
―殺人犯の憂鬱―
:11/01/08 16:10
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#134 [不発花火]
夢の中で少女が泣いている。
まだ幼く、親がいなくては右も左もわからない様な少女が蹲りながら泣いている。
「どうしたの…?」
少女に歩み寄ると、ピタリと泣き声が止む。
:11/01/08 16:11
:SH04B
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#135 [不発花火]
「ママに会いたいの」
ゆっくりと少女の顔が上がる。
「ママに会わせて…」
少女の、顔は。
「―はぁッ…!」
少女の顔を確認する前に夢から現実に引き戻される。
:11/01/08 16:11
:SH04B
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#136 [不発花火]
毎度の如く、同じ夢。
自分が殺した少女の夢。
「くそッ…」
眠りについて直ぐに見る夢は、自分が3年前に殺した少女の夢ばかりだった。
毎日のように夢に現れる少女の顔を見る前に、必ずと言っていい程に目が覚める。
:11/01/08 16:12
:SH04B
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#137 [不発花火]
だが、3年前より明らかに長く夢を見るようになった。
殺した翌日は真っ暗な闇だった。
半年してから泣き声が聞こえるようになった。
1年が経過すると少女の姿が僅かに見えるようになった。
2年が経つと、少女の姿ははっきりと見えるようになった。
:11/01/08 16:13
:SH04B
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#138 [不発花火]
そして3年が経過した今、少女が語りかけてくるようになった。
少しずつ少女が自分に近付いているのを感じた。
だが、3年の長い年月の中で自分は今だに警察に身元が割れていない。
警察は最初の捜査で躓いたのだ。
:11/01/08 16:14
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#139 [不発花火]
自分ではない全く関係のない人間に容疑をかけ、2年に渡り裁判を続けた。
しかし、結局無実だと発覚した訳だが後の祭。
長い月日は自分が犯人だという真実を消すには充分過ぎる時間だった。
一番最初の捜査で躓くと、解決は極めて困難になるというのは本当だったのだ。
:11/01/08 16:14
:SH04B
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#140 [不発花火]
時効がない今、無実になることは未来永劫ないが、恐らく自分は永遠に捕まることはないだろう。
完璧な殺人だった。
目撃者すらない完璧な殺人。
加えて、無差別の快楽殺人。
溜まっていた鬱憤を晴らす為に幼い少女の命を奪った。
:11/01/08 16:15
:SH04B
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#141 [不発花火]
自分と少女や少女の家族とは何の接点もない。
そして証拠も残っていない今、自分が捕まることは皆無だった。
無抵抗の少女を殺すのはとても心地が好いものだった。
恐怖に怯えた大きな瞳に自分が写った瞬間、どんな残忍な方法で殺してやろうか悩んだ。
:11/01/08 16:16
:SH04B
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#142 [不発花火]
細い少女の首に手をかけ、力を込めると意図も安易く鈍い音を立てて折れてしまった。
少女が事切れた刹那、抑えようのない快楽が体を支配し、セックスよりも酷く興奮した。
自分でも異常だと思ったが、罪悪感すら湧かなかった。
だが、少女が夢に現れてからまともに眠れない日々を過ごしているうちに段々、恐怖と僅かながらの罪悪感を感じるようになった。
:11/01/08 16:16
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#143 [不発花火]
自分は、あの夢に恐怖していた。
「何なんだ…言いたいことがあるなら言え!クソっ…」
死人に口ナシとは本当によく言ったものだ。
「ちくしょう…今日もまともに寝れやしねぇ」
:11/01/08 16:16
:SH04B
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#144 [不発花火]
布団から起き上がり立ち上がると、少女を殺した後も変わらず住み続けているボロアパートの床はギシギシと悲鳴を上げた。
「…酒でも呑むか…」
それと、一人言が増えた。
一人暮らしは高校を卒業してから田舎を離れてからしているし、もう長い時間が経つが元から余り喋るのが好きじゃなかった為慣れてはいるが、少女を殺したあの日から一人が格段に増えた。
やはり自分は恐怖しているのか。
:11/01/08 16:17
:SH04B
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#145 [不発花火]
幼い少女を殺し、未来を奪ったことに。
裁かれることに。
冷蔵庫を開けると、暗い部屋がぼんやりと明かりに照らされる。
冷蔵庫に敷き詰められたビールや焼酎、酎ハイの缶から厳選していると、後ろから夢と同じ泣き声が聞こえた。
「―…ッ!?」
:11/01/08 16:17
:SH04B
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#146 [不発花火]
勢いよく振り返ると、布団の横で少女が蹲り泣いていた。
「…ママ…」
幽霊、だろうか。
途端に足がガクガクと奮え始め、立っていられなくなる程の恐怖を感じた。
「…ママに会いたいよ…」
少女はまだ顔を上げないままシクシクと泣いている。
「―クソッ」
:11/01/08 19:18
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#147 [不発花火]
笑う足を叱咤し、少女に近づく。
が、いよいよ少女に手を伸ばせば触れられる程の距離まで近付いた時、少女が顔をゆっくりと上げ始めた。
心臓が煩い程に孤独を刻んでいる。
自分は恐怖している。
だが少女の顔が自分に向けられる前に、強い力で意識が引き戻された。
:11/01/08 19:19
:SH04B
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#148 [不発花火]
「―…はぁッ…!」
気付けば自分は布団の中にいた。
体を起こし、辺りを見回しても少女はいない。
まさか、夢…
「何なんだよ…!」
起きて、罪悪感を感じたことすら夢なのか。
:11/01/08 19:19
:SH04B
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#149 [不発花火]
気を取り直して、テレビをつける為リモコンに手を伸ばすが、今度は真横で少女の泣き声が聞こえた。
「…ママ…」
泣き声が聞こえる方を見ると、冷蔵庫の前でまたしても少女がシクシクと泣いていた。
「ママは、どこ…?」
「うるせぇ!とっとと土に還れ!クソガキが!!」
勢いよく布団から立ち上がり少女に近付くと、またしても強い力で意識が引き戻された。
:11/01/08 19:20
:SH04B
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#150 [不発花火]
「―…何なんだよ!」
また、自分は布団の中にいた。
今のも夢だと言うのか。
現実と変わりないではないか。
「…気が狂っちまう…」
これも夢だと言うのだろうか。
試しに自分の頬を強く叩いてみると、確かな痛みがあった。
「…はは」
:11/01/08 19:20
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#151 [不発花火]
ヒリヒリとした痛み。
どうやら自分は相当寝不足に参っていたようだ。
まともに眠れない日が続いた3年の間、無意識のうちに気にしないようにしていたことを思い知る。
やはり自分は恐怖していた。
少女を殺した罪悪感に。
:11/01/08 19:20
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#152 [不発花火]
自嘲気味に笑っていると、今度は自分の真横で少女の泣き声が聞こえた。
「―ママ」
咄嗟に起き上がり隣を見ると、少女がすぐ真横で蹲り泣いていた。
「ママに会いたいよ…」
:11/01/08 19:21
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#153 [不発花火]
少女に手を伸ばした瞬間、いい加減慣れてしまった強い力でまたしても意識を引っ張られた。
「―くそっ!!」
痛みを感じたはずなのに、また自分は布団の中にいた。
いい加減、気が狂ってしまう。
どうせこれも夢なのだろう。
:11/01/08 19:21
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#154 [不発花火]
「何なんだ…!今更出て来て、何がしたいんだ!いい加減にしろ!!」
布団から飛び出し、台所の棚から包丁を取り出す。
「はぁっ…はぁっ…」
すると、また背後から少女の泣き声が聞こえた。
ほら、夢だ。
:11/01/08 19:21
:SH04B
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#155 [不発花火]
「ちくしょう…!いい加減にしやがれ!!クソガキ!」
少女に包丁を向けながら走り出すと、少女が勢いよく顔を上げた。
「ママ」
少女の顔は可愛らしい笑みを浮かべていた。
:11/01/08 19:22
:SH04B
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#156 [不発花火]
「マ"マ"…」
ごぼごぼと少女の口から血の泡が吹き出された。
「―――ッ!」
少女に向かって勢いよく包丁を振りかざすと、また意識が浮上するのを感じた。
気付けば自分はまた布団の中にいた。
「はは―…」
:11/01/08 19:22
:SH04B
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#157 [不発花火]
終わらない夢。
どうせこれもまた夢なのだろう。
今度は目の前から泣き声が聞こえた。
起き上がると、布団の前で少女が蹲り泣いていた。
「…ママ」
いつまで自分は夢を見ているのだろうか。
:11/01/08 19:23
:SH04B
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#158 [不発花火]
自分の手に握られた包丁を自分の喉元に突き刺した。
また、意識が浮上するのを感じた。
END
:11/01/08 19:23
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