亡き君に告ぐ
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#52 [不発花火]
群れることを好まず、たった一匹で暗く深い深海を泳ぐ美しい虹色の魚。
私はそれが酷く羨ましかった。
たった一匹で気高く、美しく深海を泳ぐ魚。
わたしは生まれ変わったら、その魚になりたかった。
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:SH04B
:vGZkDNeY
#53 [不発花火]
「それなら一人でも平気なのに」
私の独り言は、放課後の誰もいない教室に響き渡った。
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:SH04B
:vGZkDNeY
#54 [不発花火]
翌日は、椅子がなかった。
教室を見渡せば、掃除用具入れの前にポツンと置かれていた。
私が取りに行けば、後ろでクスクスと笑い声が聞こえた。
涙が零れそうになるのを必死で堪え椅子に手をかけた瞬間、背中に軽い衝撃を感じた。
振り返れば、ゴロゴロと転がるジュースの缶。
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:SH04B
:vGZkDNeY
#55 [不発花火]
誰かに意図的に当てられたことは考えなくてもわかった。
「お前生きてる価値ないよ」
私は、私の中で限界を感じた。
ずっと堪えてきた。
靴がなくなっても、無視されても、お弁当をひっくり返されても、ずっと我慢してきた。
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:SH04B
:vGZkDNeY
#56 [不発花火]
教室中に響く笑い声を背に、溢れる涙を耐え切れず、走って教室を後にする。
一人には慣れていたはずだった。
学校を卒業するまで耐え切ってみせると、そう思ってた。
でも、寂しかった。
ずっと寂しかった。
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:vGZkDNeY
#57 [不発花火]
一人でも平気な、魚になりたかった。
そうすれば一人でも気高く、美しく生きていけるのに。
私の足が向かった先は、青い綺麗な海だった。
テトラポッドに足を掛け、海に沈む。
着ていた制服が水を吸い込み、私の体は深く深く海の底に沈んだ。
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:SH04B
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#58 [不発花火]
自然と、苦しくなかった。
ふと、目の前に一匹の魚が現れた。
私がずっと憧れていた、美しく気高い竜宮城の使い。
でも虹色に輝いているはずの体は白く変色していて、それが腐敗した死体だと気付いた瞬間、私の中で恐怖を感じた。
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:SH04B
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#59 [不発花火]
「ひっ」
声にならない悲鳴が口から漏れ、酸素が口からゴボ、と溢れ出すのを感じた。
途端に強烈に息苦しくなり海面に出ようともがくが、長く大きい竜のような死体が体にのしかかり、私を海の底へと沈めていった。
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#60 [不発花火]
あれ程までに焦がれた魚。
海底ではそれが私の体に重くのしかかり、身動きが取れなくなった。
死体からは小さな虫のような魚がうごめいている。
死にたくない、と思ってしまった。
:10/12/23 02:06
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#61 [不発花火]
私が憧れ、焦がれた魚。
頭の中で響く、笑い声。
意識は沈んでいく。
深い、深い暗い海の底に。
END
:10/12/23 02:06
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