亡き君に告ぐ
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#60 [不発花火]
あれ程までに焦がれた魚。

海底ではそれが私の体に重くのしかかり、身動きが取れなくなった。

死体からは小さな虫のような魚がうごめいている。


死にたくない、と思ってしまった。

⏰:10/12/23 02:06 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#61 [不発花火]
私が憧れ、焦がれた魚。

頭の中で響く、笑い声。


意識は沈んでいく。


深い、深い暗い海の底に。


END

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#62 [不発花火]
「わたし、夢を見たの。
明日、あなたが死ぬ夢を」


―夢を見る少女―

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#63 [不発花火]
少女の名前は夢子(ゆめこ)。

幼い頃から夢を見ては、両親や友人に話していた。

最初の頃は「小さな地震が来る」や「明日は雨」など可愛い夢の話だったが、最近は「明日あなたは怪我をする」や「あなたの飼っている猫が死ぬ」等笑えないものばかりだった。

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#64 [不発花火]
しかも、それが当たるのだ。
所謂、予知夢というものだった。

気味悪がった両親や友人は、夢子の話に耳を貸さなくなった。


「明日、あなた死ぬわ」

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#65 [不発花火]
ある日、クラスメイトである少年に夢子はまるで何でもないかのように言った。

「は、お前…何言ってんだよ」

少年も、少年の周りにいた友人達も夢子の予知夢が当たることをよく知っていた。

ずっと夢子を無視していたが、これだけは気持ち悪くて仕方がなかった。

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#66 [不発花火]
夢子が誰かが死ぬ、なんて言ったのは初めてだったからだ。

「本当よ。わたし、見たの。
あなたが死ぬ夢を」

少年は夢子に掴みかかった。

動揺したのだ。
自分が死ぬという明日に。

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#67 [不発花火]
「明日、あなたは体が残らないまま死んでしまうの。避けられないわ。あなたの未来だもの」

夢子はクスクスと可笑しそうに笑う。

少年は異常だと思った。
同時に、堪え難い程の恐怖を感じた。

少年の周りは「気にするな」と少年に声をかけるが、皆夢子の予知夢が当たることを知っていた。

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#68 [不発花火]
「また、明日」

少年の手を振りほどくと、夢子が笑う。

翌日、少年が死亡したことをクラスメイトが知ることになる。

塾の帰り道に、泥酔した男が運転するダンプカーに引かれ、遺体すら残さず亡くなったと。

遺体はアスファルトに引き延ばされたと。

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#69 [不発花火]
「夢子、お前…!」

「明日、わたしは死ぬわ。
明後日、世界が終わる」

少年の一番の親友が夢子に殴りかかるが、夢子はまた笑っていた。

自分は死ぬと。
その翌日に、世界が終わると。

⏰:10/12/23 02:10 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#70 [不発花火]
「お前、何言ってるんだ!夢話も大概にしろ!」

怒鳴りつけるが、夢子はまだクスクスと笑っている。

「わたしは明日、自殺をする。そして、世界が終わる」

もう、狂気しか感じられなかった。

―たった一日で世界が終わるなんてふざけている。

⏰:10/12/23 02:10 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#71 [不発花火]
「わたしの死はイエス・キリストによって最期の審判をかけられるの。だから、世界が終わるのよ。わたしの死は、世界の死」


夢物語。

「もう、いい。お前と話してるとこっちの頭が可笑しくなりそうだ…」

翌朝、夢子は学校に来なかった。

⏰:10/12/23 02:10 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#72 [不発花火]
担任の教師に、昨夜自室で首吊り自殺をしたとクラスメイトは報告を受けた。

遺体を発見した両親が、夢子の机の上からメモを見つけたらしい。

メモには、こう記されていた。


―明日、世界が終わる夢を見たの。

⏰:10/12/23 02:11 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#73 [不発花火]
クラスメイトは笑った。

夢子の死で、世界が終わる。
夢子の夢物語もここまでだと。


―ねぇ、明日世界が終わる夢を見たのよ


そして、世界が明日を迎えることはなかった。

世界の終結は一瞬だった。

⏰:10/12/23 02:11 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#74 [不発花火]
空は闇に覆われ、大雨が降った。

まず、太陽が死んだ。
後を追う様にして、月が死んだ。

太陽のかけらは人々を焼き払い、月のかけらは世界を壊した。


瞬きをする間もなく、世界は終結を迎えた。

⏰:10/12/23 02:11 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#75 [不発花火]
―ねぇ、明日世界が終わるのよ

クラスメイト達は死ぬ間際、夢子の笑い声を聞いた。



END

⏰:10/12/23 02:12 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#76 [不発花火]
感想
>>12

1 亡き君に告ぐ
>>2
2 指名手配犯
>>13
3 亡者の館
>>17
4 演奏人形
>>32
5 性春ハイスクール
>>39
6 シャム双生児
>>46
7 深海に、沈む
>>47
8 夢を見る少女
>>62

⏰:10/12/23 02:15 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#77 [不発花火]
僕の人生、お先真っ暗だ。


―リストラ、その先は(1)―

⏰:10/12/23 15:50 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#78 [不発花火]
今日僕は会社をクビになった。

まあ、このご時世仕方のないことと言ったら仕方がないんだけどいまいち納得がいかなくもない。

無遅刻無欠席が誇りだったがどうやらそれだけでまんまを喰える程人生は甘くなかったようだ。

⏰:10/12/23 15:50 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#79 [不発花火]
「この先どうすればいいんだ…」


どうする?
家に帰るか?

ちなみに僕には妊娠4ヶ月の妻がいる26歳だ。

なんかもう色々とやばい。

子供はどうする?

妻にはなんて説明する?

よくドラマに出てくるリストラされたサラリーマンのように妻が作る愛妻弁当を鞄につめて公園でハローワークに通いながら時間を潰す生活を送るか?

⏰:10/12/23 15:52 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#80 [不発花火]
いやそれは近所の奥方に見付かり即、妻に密告されるだろう。

あぁ僕の人生お先真っ暗だ。


「ん…?」


『人を殺してみませんか?日払い500万円』


「ちょっと待て」

⏰:10/12/23 15:52 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#81 [不発花火]
何だこの看板は。

僕は突如目の前に現れた(いや別に歩っていたから突如でもないかまぁいいや面倒くさいし)看板を目の前に立ち止まる。


「人を殺して500万円か…」

いや待て。
殺してみませんか?って何だ。

何だこの「キャバ嬢、体験してみませんか?」って書いてあるティッシュペーパーみたいなノリは。

⏰:10/12/23 15:52 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#82 [不発花火]
よく見たら下の方に携帯番号が書いてある。

ここに僕が電話して、人を殺したら500万円が貰えるのか?

馬鹿げている。

でも500万円といえば僕の年収とあまり変わりがない。

「人を殺して、500万円…」

殺してどうする?

見つからない保障なんてあるのか?

⏰:10/12/23 15:53 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#83 [不発花火]
警察にバレたら無職になった今よりもヤバい状況になるのは目に見えている。

でも500万あったら1年は確実に無職のままで持つだろう。

妻だって騙せる。

どうするか。

「えーっと、090…」


頭の中の天使と悪魔の言い合いが始まる前に僕は携帯を手に番号をプッシュする。

どうやら僕の頭の中には悪魔しかいないようだ。

⏰:10/12/23 15:53 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#84 [不発花火]
「あ、でも非通知がいいか…えーっと、いやよ090…」


『ただ今呼び出しております』

内心、携帯から聞こえるお笑い芸人の漫才のメロディーコールを聞きながら僕の心臓はドキドキだ。


早く出て欲しい気持ちとやっぱり出て欲しくない気持ちが入り混じって気持ち悪くなってくる。

心臓の音が、うるさい。

『…はい、もしもし』

⏰:10/12/23 15:53 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#85 [不発花火]
…出た。
低い男の声だ。

どうする。

「あ、あの…看板見て電話したんですけど…」

もはや僕の頭の中には500万円と恐怖しかなかった。

『あぁ、君、人殺せる?』

「はあ…多分…」

多分て何だ。
無理だろ。殺人だぞ。

『多分じゃ困るんだよね。躊躇うと返り打ちに合う可能性もあるし、はっきりしてよ』

「はあ…すみません」

何で謝ってんだ僕。馬鹿か。
むしろ何で説教されてんだ。
見ず知らずの電話越しの男に。

⏰:10/12/23 15:54 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#86 [不発花火]
『で、どうなの?殺せるの?殺せないの?どっち?』

どうする。
このまま妊娠中の妻に「会社クビになった」と報告するか、人生を棒に降って人殺しをするか。

いざとなったら金は妻に渡して「幸せになってくれ」と失踪する手もあるが、人殺しだぞ。

よく考えろ、自分。

「あの、バレない保障は…」

『大丈夫。俺を誰だと思ってるんだ』

いや、知らねーし。誰だよ。

⏰:10/12/23 15:54 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#87 [不発花火]
『殺し方はこちらが指示をする。道具もこちらで用意する。お前はただ決められた人間を殺すだけだ。もしバレたり見られたりしたらお前の変わりに影武者を用意するからお前は何も気にする必要はない』

あ、なんかそれなら大丈夫そうだ。
バレても影武者がいるなら全然問題なくこれから先の人生を過ごせそうだ。

でも、人を殺したという事実を背負ったまま人生を過ごせるか?

⏰:10/12/23 15:54 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#88 [不発花火]
世間は知らなくても自分が死ぬまで一生人殺しのレッテルを貼って生きていかなきゃならないんだぞ。

自分はそれに堪えられるのか?

『ただし、条件がある』

条件。
よし、それで決めよう。

『もし殺すことに躊躇いが出て失敗した時だ』

ゴクリ、と自分が唾を飲み込む音が大きく響いた。

⏰:10/12/23 15:55 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#89 [不発花火]
電話越しの男がクックッと喉を鳴らしながら笑っているのが聞こえる。

『その時はお前を殺す』

―いいな?

「…わかりました」

将来のため。
僕と妻と子供の幸せの未来のため。


『じゃあ、場所とターゲットを今から言う。決して躊躇うな。わかったな』

どうせ職なんか見付からないし、無駄な労力は使いたくない。

僕にはなんの資格も取り柄もないし、大学だって出てない。

⏰:10/12/23 15:55 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


#90 [不発花火]
何より妊娠した妻に心配をかけたくなかった。


前の職場に就けたのは奇跡に近いレベルだ。

見ず知らずの人間を殺して大金がもらえるなら、妻が笑顔でいてくれるなら、自分は闇に墜ちたとしても構わない。

一生人殺しのレッテルを掲げたまま生きてみせる。

愛する妻と、子供のため。

「…わかりました。10日後の、○×倉庫ですね」

僕は、大罪を犯す。



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⏰:10/12/23 15:56 📱:SH04B 🆔:vGZkDNeY


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