その日が来る前に、3
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#101 [愛華]
お父さんは知らないけど(笑)


でもあたしの恩人ってことも
あって感謝はしてるみたい。



「じゃあ、那佑。帰るわね。
隆則くん那佑をよろしくね」

「はい」

「まったねー」


お母さんが帰ってふたりきりに
なると、さっきまで賑やかだった病室が急に静かになる。

⏰:11/01/12 15:54 📱:840SH 🆔:grMj3a42


#102 [愛華]
誰かがいる時はいいけど、
ふたりになると………

離れていた時間があると
こうなっちゃうのかな。



「………那佑?どうした?」

「ん?なんでもないよ」



そんなことを考えてると、
隆則が心配そうにあたしの顔を
覗きこんだ。

⏰:11/01/12 15:58 📱:840SH 🆔:grMj3a42


#103 [愛華]
「まーた変なこと考えてんの?」

「…………へ?」


隆則はあたしの隣にボスッと
腰を下ろした。



「……もうどこにも行かない」



もう、どこにも。


「ほんと?」

⏰:11/01/12 16:00 📱:840SH 🆔:grMj3a42


#104 [愛華]
「ほんとだっつの」

「なら頭なでて」

「ん。いくらでも」



隆則はこうやってあたしの
不安をいつも壊してくれる。



いとも、簡単に。

⏰:11/01/12 16:13 📱:840SH 🆔:grMj3a42


#105 [愛華]
「那ー佑ー!!」


バンッ!!とドアを開けて
入ってきたのは梓だった。


「あず………」

「大丈夫!?あたし話きいて
心臓止まりそうになったよ!」

「うん、わかったから……」


梓はあたしをぎゅーっと
抱きしめた。

⏰:11/01/12 16:24 📱:840SH 🆔:grMj3a42


#106 [愛華]
梓には入院してから会って
いなかったけど隆則とのことは電話で話していた。


梓は「そっか」とだけ
言ってくれた。



多分、同じこと考えてたんだ。




直純くんのこと…………。

⏰:11/01/12 19:00 📱:840SH 🆔:grMj3a42


#107 [愛華]
「あ、タカ久しぶり!!」

「あ、うん」

「結局あんたはいっつも、いい
とこ持ってっちゃうんだね〜
憎いなぁ!!この!!」


そういって首をしめる梓。


「ちょ、苦しいから!やめろ!」

「あはははは!今度こそ、那佑を傷つけたら容赦しないから!」

⏰:11/01/13 18:45 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#108 [愛華]
梓、嬉しそうだな。


心配かけて、ごめんね。





「あ、タカ」

「ん?」






「…………直純、外にいるから」

⏰:11/01/13 18:50 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#109 [愛華]
「…………ん、わかった」




………え?なに………?
直純くんが……来てるの?




隆則はそういって病室から
出ていってしまった。


「梓………どういうこと?
直純くん、来てるの?」

⏰:11/01/13 20:59 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#110 [愛華]
「うん。一緒に来たよ」

「じゃああたしも話さなきゃ。あたし、直純くんに言わなきゃ
ならないことがあるの」

「それは那佑の心配すること
じゃないから大丈夫だよ」


梓はにこっと笑った。


意味がわかんないよ。
あたし直純くんにまだ謝ってない
ひどいこといっぱいしたのに。

怖くて、連絡もしてなかった。

⏰:11/01/13 21:03 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#111 [愛華]
「……………梓、あたしね…
あの日直純くんに言うつもり
だったんだよ」

「………何を?言ってごらん」




「………つきあおう って」




そのほうが幸せになれるかもって
信じたかったから。

⏰:11/01/13 21:07 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#112 [愛華]
「でもあたし………隆則が好きで
やっぱりダメで……それで…」


「だーいじょうぶ!!
那佑はなんも気にしないで。
あとはタカと直純の問題だから」


隆則と……直純くんの?
そこにあたしはいないの?



「タカだって男だもん。
けじめくらいちゃんとするよ
もちろん、直純もね」

⏰:11/01/13 21:22 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#113 [愛華]
梓はなにもかもわかってる
みたいだけど、あたしはなにも
わからない。



…………隆則と直純くんは
何を話してるんだろ………



「ほら、そんな顔しないの。
大丈夫だよ。またみんなで
笑えるから。ねっ」


梓がそういうと、本当にそう
なる気がした。

⏰:11/01/13 21:39 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#114 [愛華]
悩んで悩んで出した答え。


後悔はしてないけれど……
できるなら誰も傷つかない
ほうがいい。


そんなの無理だって知ってても
やっぱり思ってしまうんだ。



どうかまた、みんなで
笑えますように。


涙を流さないですみますように。

⏰:11/01/13 22:17 📱:840SH 🆔:1CBM2/bQ


#115 [愛華]
-隆則side-

⏰:11/01/14 20:36 📱:840SH 🆔:7yGY5lfg


#116 [愛華]
ジリジリと蝉が鳴いてた。



もう夏なんだ。




「…………あ、直純いた」

「ん、きたきた!おせーよ!」


病院の中庭のベンチに直純は
座っていた。
だるそうに振り向く。

⏰:11/01/14 20:39 📱:840SH 🆔:7yGY5lfg


#117 [愛華]
長い時間ここにいたのか、
汗でびっしょりだ。



「あっちーなー……」

「どっか移動すっか?」

「いや。ここでいい。隆兄は?」

「俺もここでいいよ」


焼き付くような陽射しが、
今日は心地好く感じた。

⏰:11/01/14 20:43 📱:840SH 🆔:7yGY5lfg


#118 [愛華]
那佑の側にいる。


もう一度そう決心したときに
直純の顔が浮かんだ。


直純、ごめんな。

俺から那佑を手放したのに。



話さなくちゃ、と思った。
直純ともう一度。

直純も同じ気持ちだったんだな。

⏰:11/01/14 20:53 📱:840SH 🆔:7yGY5lfg


#119 [愛華]
「………梓から、聞いたよ。
白石と戻ったんだろ?」

「…………ああ」


決めていたとはいえ、
何を言えばいいんだろう。


でも………『ごめん』は
言うべきじゃない。

そう思った。




「………………よかったじゃん」

⏰:11/01/14 21:39 📱:840SH 🆔:7yGY5lfg


#120 [愛華]
コーラを飲み干しながら、
直純が小さな声で言った。


「…………悔しいけどさ。まぁ、しゃーないわな。オメデトウ」



「…………え」


「なに?罵られると思った?
漫画みたいに殴るとか?」

「いや……でもそれくらい
されるかも…………みたいな」

⏰:11/01/15 01:23 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#121 [愛華]
文句のひとつでも言えば
いいのに………。


なんで、何も言わないんだ?


俺は直純から那佑を奪った
のも同然なのに。



「なんで……なんも言わない?」

「なんだよ、言ってほしいの?」

⏰:11/01/15 01:27 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#122 [愛華]
そう言って笑った直純は
6年振りに再会した時とは全く
違う、真っ直ぐな目をしていた。


昔のころの、直純だった。




「…………あの日もさ、俺は
白石に告白だけして隆兄のとこ
行かせるつもりだったの!!」

「え…………えぇ!?」

⏰:11/01/15 01:30 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#123 [愛華]
「まぁ白石がまだ隆兄のこと
好きなのは知ってたし。

敵わねぇなーって思ったから。

まさかこんなふうになるとは
思ってなかったけど、結果は
同じだったんだよ。


よって、予想もしてたわけで。


そんなに傷ついてないっす。」


………嘘ついてんじゃねーよ…

⏰:11/01/15 01:33 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#124 [愛華]
でもそれは。


直純の俺のための強がりだって
わかってたから。


苦しくなった。


だから何も言わなかった。

言葉にはしないけど思う。


直純、 ありがとう。

⏰:11/01/15 01:34 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#125 [愛華]
「今度こそ!白石よろしく!」

「おぅ!まかせとけよ!」


そういって笑いあった。



こんな日が来るなんて、
思いもしてなかったな。


『隆則も直純くんも大切なんだ』



那佑の…………おかげだ。

⏰:11/01/15 01:37 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#126 [愛華]
「………それから、隆兄」

「なに?」




「…………白石に手術を決心
させられるのも…………


隆兄しかいないよ」




……………え?

那佑の………手術………?

⏰:11/01/15 01:39 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#127 [愛華]
一瞬なにを言われたのか
全く理解できなかった。


あんなに暑かったのに、今は
空気がひんやりする。





那佑の、手術?


なんだよそれ、聞いてねぇよ。

⏰:11/01/15 14:34 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#128 [愛華]
俺の表情で、直純は俺がなにも
知らないことを悟ったらしい。


「……そっか。隆兄まだ……」

「どーいうことだ?」

「いや、あの………」

「言えよ」


直純は しまった という顔を
している。

………直純が知ってて
俺は知らなかった那佑のこと。

⏰:11/01/15 14:42 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#129 [愛華]
「………多分、白石も言うのに
決心がいることだと思う。

ごめん。てっきりもう知ってる
と思ってたんだ。

俺からは………言えない」

「なんだよ、それ………」

「白石から隆兄が直接聞いてよ」



那佑から直接?

なんだよ……そんな、重要な
ことなのかよ………

⏰:11/01/15 15:43 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#130 [愛華]
心がモヤモヤとしたまま、直純と病室に戻った。





「…………直純くん!!」

「おー元気そうじゃん」

「うん!………日曜日、行け
なくってごめんね」


直純と那佑が笑って話してる。
嬉しいはずなのに………

俺の頭は別のことでいっぱいで。

⏰:11/01/15 15:47 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#131 [愛華]
「直純くん、それと………」

「隆兄とまたつきあいはじめ
たんだろ?よかったじゃん」


「…………うん。ありがとう」




「………ね、タカどしたの?」

直純と那佑の会話をぼーっと
しながら聞いていると、梓に
不思議そうに話し掛けられた。

⏰:11/01/15 15:51 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#132 [愛華]
「直純とちゃんと話したみたい
だね。一件落着だねー……」

梓は嬉しそうにつぶやいた。


一難去ってまた一難、が
正しい気がするんだけど……




「………さて、俺らは用事
あるからもう帰るわ」

「え、二人とももう帰るの?」

⏰:11/01/15 15:56 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#133 [愛華]
「直純?あたしもぉ?」

「いーから梓!帰んぞ!
白石また来るからな」

「う、うん…………」



どうやら直純が気をきかせた
らしいな。


2人で話せってことか……



「んじゃな!隆兄!白石!」

⏰:11/01/15 16:02 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#134 [愛華]
パタン…………



さっきまで騒がしかった病室が
一気に静かになる。



「隆則、座れば?」

「え、あぁうん………」


俺はいつも座る椅子に座った。

⏰:11/01/15 16:17 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#135 [愛華]
「直純くん、よかったねって
言ってくれた。嬉しい」

「そっか…………」


夏は日が長い。
チリチリ肌が焼けるような暑さ。



「………なぁ、那佑」

「んー?」


「………手術、受けるの?」

⏰:11/01/15 17:13 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#136 [愛華]
「…………え」


那佑の動きが止まった。



「……直純から少し話聞いた。
詳しいことは那佑から聞けって。な、手術ってなに?」


「……………」


那佑は下をむいたまま。
何か考えてるみたいだ。

⏰:11/01/15 17:18 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#137 [愛華]
「…………隆則、あのね……」


「うん?」








「……あたし、今のままだと20歳まで心臓もたないんだって。
手術受けないと………あと2年
しか生きられないんだって……」

⏰:11/01/15 17:23 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#138 [愛華]
那佑はなんでもないように、
でも少し悲しそうに言った。


どうしようもないんだから。

そう言っているようだった。




お前は諦めていたのかもしれない

諦めたくなくっても


頑張ることが怖かったんだな。

⏰:11/01/15 17:26 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#139 [愛華]
どうしたらその苦しみから
お前を救えるのか。


あの時の俺はわからなかった。





暑い暑い日だった。


俺達の最後の闘い。




長い夏が始まろうとしていた。

⏰:11/01/15 17:32 📱:840SH 🆔:4SniUugs


#140 [愛華]
-那佑side-

⏰:11/01/16 18:17 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#141 [愛華]
暑い暑い夏。


去年の夏も確かベッドの上。

来年は海へいきたい

とか思っていたっけ。



真っ青な空を見ながら、
そんなことを思い出していた。


来年は………あたしは
どこにいて、何をして、

誰といるんだろうか。

⏰:11/01/16 18:21 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#142 [愛華]
「…………あついなぁ……」


思わず口をついた。


壁にある鏡をなんとなく見ると
点滴されている自分の姿が映る。




………なんか、やだな。




病状は確実に悪化していた。

⏰:11/01/16 18:25 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#143 [愛華]
医者もお母さんもお父さんも。


何もいわない。


でも自分のことだよ。

自分が1番よくわかる。








多分、あたしはもう長くない。

⏰:11/01/16 18:27 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#144 [愛華]
何度も言われた。


『全力をつくす。必ず治して
みせるから、手術を受けてくれ』


お母さんお父さんにも
何度も説得された。




…………でも、無理なんだよ。
あたしには、無理だよ………。

⏰:11/01/16 18:29 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#145 [愛華]
死ぬことは怖い。

みんなに会えなくなるのは嫌。
でも。


手術に失敗してひとりで死ぬなら

みんなに見守られて死ぬ
ほうがいい。


あたしの笑顔がみんなの心に
残るように。


決して消えないように。

⏰:11/01/16 18:35 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#146 [しずく]
この話大好き!!
がんばって!!

⏰:11/01/16 19:14 📱:PC 🆔:C.gezF26


#147 [愛華]
>>146 しずく様

ありがとうございます!
更新がんばります(^O^)/

⏰:11/01/16 19:29 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#148 [愛華]
>>145




ガラッ



「おぃーっす。起きろー」

「…………寝てないし」

「そう言うなって。ほら、
プリンあるからさー」

「やったー。隆則も食べよ」

「え、1つしか買ってねーよ」

⏰:11/01/16 20:53 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#149 [愛華]
いつもと同じように隆則が
来てくれた。


………あの日から。
隆則は前よりも頻繁に会いに
来てくれるようになった。





『あたし今のままだと、あと
2年しか生きられないんだ…』

『手術すれば…よくなるのか?』

⏰:11/01/16 20:56 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#150 [愛華]
『多分ね。でも成功する確率が
かなり低いんだって。だから
あたしは受けないよ』

『受けないって………』

『手術を受けなくたって、
他の方法があるはずだよ。
あたしは諦めない。

でも手術は………受けない』






隆則はなにも言わなかった。

⏰:11/01/16 21:00 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#151 [愛華]
何も変わらない。
前と同じ毎日。


でもあたしたちの頭から
病気のことが離れることはなく。





苦しみは心をむしばんでいく。

あたしはそれを隠すので
精一杯だったんだ。

⏰:11/01/16 21:23 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#152 [愛華]
「那佑?聞いてんの?」

「え、あぁ………何?」

「最近お前ぼーっとしすぎ」

「自覚ないけど……そう?」

「うん。体調どうだよ?」

「悪くないよ」


でも良くもない。
それが本音。
言えないけどね。

⏰:11/01/16 22:28 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#153 [愛華]
もう普通の生活はできないのかな
また誰かのために動くことは
できないんだろうか。



「………那佑、何考えてる?」

「ん?なんも」

「お前が1人で抱え込む問題
じゃないんだ。なんでも話せよ」


ありがたいのに………苦しい。

⏰:11/01/16 22:31 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#154 [愛華]
「……なーんでもなーいよ!!」


あたしはニヒッと笑った。


「あ、隆則!明日はさー売店の
イチゴチョコミルクバナナプリン買ってきて!!二つね!!」

「甘そうな名前だなおい……
つか俺はいらないっつの」

「違うよーあたしが二つとも
食べちゃうんだもーん」

⏰:11/01/17 14:38 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#155 [愛華]
『なんでもない』

が口癖になった気がする。


不安を口にすることすらも不安。


強がることが上手くなった。



最近よく思う。



明日もあたしは…………
ここに在られるんだろうか。

⏰:11/01/17 14:43 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#156 [愛華]
あたしが笑っている。
そこに隆則がいる。


そんな未来が上手く想像できない








「…………マジでヤバいかも」


あたしは本当に………
『諦めてない』の?

⏰:11/01/17 14:45 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#157 [愛華]
庭にある桜の木を見ると、
今までの隆則との想い出が
よみがえってくる。



……これって、余命が短い人間
にありがちなことのような……

ドラマとかでよく見るよなぁ。




なんて1人の病室で思って
笑ってたりする。

⏰:11/01/17 14:50 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#158 [愛華]
隆則といると安心する。

でもそれはあたしだけ。



隆則は不安なんだよね。


あたしはいなくなっちゃえば
それでおしまい。



でも隆則は………苦しみ続ける。

⏰:11/01/17 14:53 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#159 [愛華]
あ…………まただ。



涙が頬を静かにつたう。


隆則といる時は絶対に流さない
のに。1人の時に出るんだ。





………どうすればいい。

⏰:11/01/17 15:02 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#160 [愛華]
もし、あたしが死んだとして。


そのあとのあたしの記憶が
隆則を苦しめるのだとしても。




あたしは隆則の中に残りたい。


時々思い出してくれればいい。



そして笑ってくれればいい。

⏰:11/01/17 15:05 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#161 [愛華]
ぎゅうっと胸に手をあてる。


そして1つのことを決める。






やっぱり少し怖いけど。





あたしが隆則の記憶に残る。
1つの方法。

⏰:11/01/17 15:09 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#162 [愛華]
'








「…………え…外出許可…?」

「うん!!一泊二日だけどね」

「よく出たなー許可なんて…」

「最近調子そこまで悪くないし。贅沢言えないけどねー」

⏰:11/01/17 19:18 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#163 [愛華]
今、じゃなくてもいいのかも
しれない。

でもこれが最後になったり
したら……きっと後悔する。


あたしが上手に笑えるうちに。






「そっかーよかったな!!
家族で過ごすのか?」

⏰:11/01/17 19:20 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#164 [愛華]
嬉しそうに隆則が言う。


いつも通り、 なんだけど。






「………ううん、違うの」


「ん?なんだって?」



あたしは隆則のほうに向き直る。

⏰:11/01/17 19:22 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#165 [愛華]
「……………この日は。



隆則とずっと一緒にいたい」


「……………?」





「2日間…………隆則といる。
ずっといる。どこでもいいから」


だから。

⏰:11/01/17 19:25 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#166 [愛華]
「『なんとなく』じゃなくて…」




ずっと前の、隆則の言葉。




『こんななんとなくで那佑と
するのは嫌なんだよ』




なんとなく、じゃなくて…

⏰:11/01/17 19:28 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#167 [愛華]
「……………那佑?」





上手く言葉にできない。


なんか………顔あつい……




「……えと……あの、その……」


顔が熱くなるのがわかる。
あたし………何言ってんの…

⏰:11/01/17 19:32 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#168 [愛華]
頭が真っ白だ。
なんも考えられない。






「…………えっとね、つまり…」


「…………無理しなくていーよ」


隆則が静かに言った。

⏰:11/01/17 19:35 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#169 [愛華]
……………無理……?



隆則はあたしの言いたいことが
わかったのか、微笑んだ。



「………那佑のことだろーから
多分色々考えて、その答えに
なったんだろーけどさ。

そりゃ俺は嬉しいけど。


無理してる那佑と無理矢理
やるのはなんか違うだろ……?」

⏰:11/01/17 19:39 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#170 [愛華]
優しい隆則の声。あたしを
気遣ってくれてるのがわかる。



でも、あたしは………。





ゆっくり隆則に抱き着いた。
隆則の体温を確かめるように
腕に力をこめる。



「………無理なんかしてないよ」

⏰:11/01/17 19:51 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#171 [愛華]
「……………」


隆則は黙ったまま。



「無理なんかじゃない……!
無理なんかしてない……」



ぽろぽろ涙が流れる。


悲しいわけでもないのに。

⏰:11/01/17 19:53 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#172 [愛華]
隆則の呼吸が聞こえる。


無理なんかじゃ、ないよ……








「…………………いいの?」

「いい。隆則がいい。」


初めては隆則がいい。
隆則じゃなきゃやだ。

⏰:11/01/17 19:57 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#173 [愛華]
あたしはもう、いついなくなる
のかわからないから。

いつまで笑顔でいられるのか
自分でもわからないから。



だから、その前に…………





隆則と、結ばれたいの。

⏰:11/01/17 20:30 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#174 [愛華]
「………………うん」


隆則は優しくうなずいた。





時間が止まればいいって。
そう本気で願った。


でもそんなの叶うわけなくて。
まるであたしを嘲笑うかのように

時間は、過ぎていった。

⏰:11/01/17 21:01 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#175 [愛華]
今日の更新分

>>154-174

感想まってます。

⏰:11/01/17 21:51 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#176 [愛華]
「えぇ………!?」

「もう決めたの」


1泊2日の仮退院前日。
梓が久しぶりに病院に来た。
直純くんは補習だそうで……



「………タカの家で過ごすって……2日間?」

「だからそうだってば」

「へ…………へぇ……」

⏰:11/01/19 15:34 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#177 [愛華]
「へぇ………ってなによ」

「ま、まぁさ。タカも入院中の
彼女をその……どうもしないと
思うけど。でも一応男だし…?
てゆーか……………我慢?」

「我慢しなくてもいーの、もう」

「あ、そう。そりゃタカ喜ぶわ。




…………ってえぇ!?」

⏰:11/01/19 15:46 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#178 [愛華]
漫画みたいに飛びあがる梓。
なんて古典的な………


「それって……そういう意味?」

「そういう意味」

「タカはなんていったの?」

「うん、ってだけ言った」

「マジすか…………」

梓はぐったりうなだれた。

⏰:11/01/19 15:50 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#179 [愛華]
まぁ予想通りの反応だけど……


「…………でもなんで……今?」

梓は不思議そうに聞いた。


なんで今かって…………


今しかないからだよ。



「ちゃんと正式に退院してから
じゃダメなの?」

⏰:11/01/19 15:55 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#180 [愛華]
「………退院できるか……
わかんないもの」

「…………は?」

「これが最後の外出になるかも
しれないし………だから」



「なに…………それ?」


梓の声色が変わる。


「ごめん、なんでもない」

⏰:11/01/19 15:59 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#181 [愛華]
「なんでもなくないよ。
最後の外出ってどういう意味?」

「そのまんまだよ」

「なにそれ。退院できないって
あんた自分で認めてんの?」


梓の口調がきつくなる。


「そんな、ことない………」

「嘘。あんた今言ったじゃん。
諦めてんの?治らないって」

⏰:11/01/19 16:14 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#182 [愛華]
諦める。

治るわけないから、諦める。


「……諦めてなんか………」


その先が出なかった。


あたしは、闘うことに疲れた。

毎日たくさんの薬を飲んで

それでも良くなんかならなくて。

⏰:11/01/19 16:21 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#183 [愛華]
苦しくて、悲しくて。
あと2年もない。
そう思うと、ぷっつりと


なにかがきれた気がした。



あたしは……諦めてた。

だから焦ってた。


何かを残さなきゃって。


あたしはもう長くないんだから……………って。

⏰:11/01/19 16:26 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#184 [愛華]
「あたしもタカも直純も!!
那佑が治るって信じてるのに
あんたは諦めてんの?

それはあたしたちを裏切ってることになるんだってわかんない?」


「だってわかっちゃうんだ。
もう無理なんだって。
疲れたんだよ、もう……」



梓は泣いてた。

あたしの、せい。

⏰:11/01/19 16:31 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#185 [愛華]
こんなこと話すつもりなかった。
でも溜め込みすぎた不安は
無意識にもれてしまう。


「………………那佑」



「信じたいよ。治るって。
でも、あたしが死んだあとに
苦しむのは隆則なんだよ?

『もしあたしが死んだら』って
やっぱり考えちゃうよ……」


現実と理想。
理想を夢みて現実に苦しむ。

⏰:11/01/19 16:39 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#186 [愛華]
「…………タカに言えない
不安はあたしに出して。だから



もうそんなこと言わないで」

「梓…………」


梓の気持ちは痛いほどわかる。

でも不安とか、そんなものだけ
じゃないんだよ。


だからあたしは…安心が欲しい。

⏰:11/01/19 20:24 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#187 [愛華]
「さて、この話は終わり!!那佑わかった?わかったら返事!」

「あ………はい」


「うん!」


こんなに側にいるのにあたしは
梓にさえ全てを吐き出せない。

心配かけたくないから?


そんなのきれいごとだ。

⏰:11/01/19 20:38 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#188 [愛華]
不安を口に出すと自分が弱い
人間になった気がして。

自己嫌悪しちゃう。


それはまた周りの人たちに
迷惑をかけてることになるの?




強くなりたい。



強くなりたいよ……

⏰:11/01/20 01:11 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#189 [愛華]
拳をぎゅっと握りしめる。
梓の顔が見れない。


申し訳ない気持ちでいっぱいで
また苦しくなった。



「梓……………ごめんね」

「………それは何に対して?」



「話終わりって言って戻っちゃうんだけどさ……あたし諦め
てるなんて自覚なかったんだよ」

⏰:11/01/20 01:16 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#190 [愛華]
「うん」

「でもどうやったらここから
抜け出せるのかわかんなかった。
受け入れちゃってたのかも。
しょうがないのかなって」



梓はゆっくりしゃがんで
ベッドに座ってるあたしに
目線を合わせた。



「……あたし那佑が大好き。
だからいなくなったら困るの」

⏰:11/01/20 01:22 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#191 [愛華]
「いなくなったら……?」

「困るの!でもあたしがどんなに
祈ったって那佑が諦めたら
そこで終わっちゃうよ。



闘ってるのは那佑だけじゃ
ないんだからね。わかってる?」


梓の言葉が心を潤す。
あたしと同じくらい、梓も
苦しいんだ……。

⏰:11/01/20 01:28 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#192 [愛華]
不謹慎かもしれないけど、
嬉しかった。温かかった。



明日はあたしにとって特別な日
になる。きっと。


その記憶があたしにとっての
光になるのなら


あたしはまた闘えるかな。


「絶対治すから」って自信を
持って言えるようになるかな。

⏰:11/01/20 01:33 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#193 [愛華]
今日の更新分です。
多めに更新したのですが
文章おかしいところあったら
すいません………
感想待ってます。

>>176-193

⏰:11/01/20 01:36 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#194 [愛華]
あるひとはいいました。



幸せとは願うことであり、

その行為の核に

他者が存在することである。






隆則。

あたしの願いの中には
いつだって隆則がいたよ。

⏰:11/01/21 00:06 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#195 [愛華]
他者が存在する願い。
それは絶望の中で
強制されないにもかかわらず
誰もが持つものだ。


ゆえに、人間特有の行為である。


他者が干渉する人生を歩めば
願うことは当然のことなのだ。


たとえ叶わなかったとしても
それが消えることはない。

⏰:11/01/21 00:24 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#196 [愛華]
叶わなかった願いは記憶として
必ず残るからだ。

叶った願いは自分の一部として
やがて忘れてゆく。


量でいえば圧倒的に前者が
多いかもしれないが

量より質である。






あたしは本を閉じた。

⏰:11/01/21 00:29 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#197 [愛華]
『愛の蜘蛛の巣』
と表紙に書かれた本。


以前、送別祭の準備のときに
衣装部屋で見つけた台本の
小説バージョンらしい。



………こんな内容だったんだ…




気まぐれに病院内にある図書室
から借りた本。

⏰:11/01/21 00:36 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#198 [愛華]
あたしは冒頭部分で読む気が
失せてしまった。


流れからすると、この続きは
叶わなかった願いの質について
書かれてるみたいだ。



そんなの読みたくないっつの。




時刻は午前1時。

眠れない。

⏰:11/01/21 00:39 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#199 [愛華]
叶わない願いのほうが圧倒的に
多い。そんなの当たり前。



叶わないようなことだから、
願ってんじゃんか。



努力でなんとかなるようなこと
なら神様任せなんかにしない。


いるかいないかもわかんない
信用できない架空の人物に
頼るなんて馬鹿なことしない。

⏰:11/01/21 00:45 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#200 [愛華]
叶わない願いを神様に。






叶わない確率のほうが高くても



もし、叶ったら。



そんな奇跡を信じて願う。

⏰:11/01/21 02:00 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


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