その日が来る前に、3
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#150 [愛華]
『多分ね。でも成功する確率が
かなり低いんだって。だから
あたしは受けないよ』

『受けないって………』

『手術を受けなくたって、
他の方法があるはずだよ。
あたしは諦めない。

でも手術は………受けない』






隆則はなにも言わなかった。

⏰:11/01/16 21:00 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#151 [愛華]
何も変わらない。
前と同じ毎日。


でもあたしたちの頭から
病気のことが離れることはなく。





苦しみは心をむしばんでいく。

あたしはそれを隠すので
精一杯だったんだ。

⏰:11/01/16 21:23 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#152 [愛華]
「那佑?聞いてんの?」

「え、あぁ………何?」

「最近お前ぼーっとしすぎ」

「自覚ないけど……そう?」

「うん。体調どうだよ?」

「悪くないよ」


でも良くもない。
それが本音。
言えないけどね。

⏰:11/01/16 22:28 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#153 [愛華]
もう普通の生活はできないのかな
また誰かのために動くことは
できないんだろうか。



「………那佑、何考えてる?」

「ん?なんも」

「お前が1人で抱え込む問題
じゃないんだ。なんでも話せよ」


ありがたいのに………苦しい。

⏰:11/01/16 22:31 📱:840SH 🆔:82k1wrAk


#154 [愛華]
「……なーんでもなーいよ!!」


あたしはニヒッと笑った。


「あ、隆則!明日はさー売店の
イチゴチョコミルクバナナプリン買ってきて!!二つね!!」

「甘そうな名前だなおい……
つか俺はいらないっつの」

「違うよーあたしが二つとも
食べちゃうんだもーん」

⏰:11/01/17 14:38 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#155 [愛華]
『なんでもない』

が口癖になった気がする。


不安を口にすることすらも不安。


強がることが上手くなった。



最近よく思う。



明日もあたしは…………
ここに在られるんだろうか。

⏰:11/01/17 14:43 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#156 [愛華]
あたしが笑っている。
そこに隆則がいる。


そんな未来が上手く想像できない








「…………マジでヤバいかも」


あたしは本当に………
『諦めてない』の?

⏰:11/01/17 14:45 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#157 [愛華]
庭にある桜の木を見ると、
今までの隆則との想い出が
よみがえってくる。



……これって、余命が短い人間
にありがちなことのような……

ドラマとかでよく見るよなぁ。




なんて1人の病室で思って
笑ってたりする。

⏰:11/01/17 14:50 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#158 [愛華]
隆則といると安心する。

でもそれはあたしだけ。



隆則は不安なんだよね。


あたしはいなくなっちゃえば
それでおしまい。



でも隆則は………苦しみ続ける。

⏰:11/01/17 14:53 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#159 [愛華]
あ…………まただ。



涙が頬を静かにつたう。


隆則といる時は絶対に流さない
のに。1人の時に出るんだ。





………どうすればいい。

⏰:11/01/17 15:02 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#160 [愛華]
もし、あたしが死んだとして。


そのあとのあたしの記憶が
隆則を苦しめるのだとしても。




あたしは隆則の中に残りたい。


時々思い出してくれればいい。



そして笑ってくれればいい。

⏰:11/01/17 15:05 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#161 [愛華]
ぎゅうっと胸に手をあてる。


そして1つのことを決める。






やっぱり少し怖いけど。





あたしが隆則の記憶に残る。
1つの方法。

⏰:11/01/17 15:09 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#162 [愛華]
'








「…………え…外出許可…?」

「うん!!一泊二日だけどね」

「よく出たなー許可なんて…」

「最近調子そこまで悪くないし。贅沢言えないけどねー」

⏰:11/01/17 19:18 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#163 [愛華]
今、じゃなくてもいいのかも
しれない。

でもこれが最後になったり
したら……きっと後悔する。


あたしが上手に笑えるうちに。






「そっかーよかったな!!
家族で過ごすのか?」

⏰:11/01/17 19:20 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#164 [愛華]
嬉しそうに隆則が言う。


いつも通り、 なんだけど。






「………ううん、違うの」


「ん?なんだって?」



あたしは隆則のほうに向き直る。

⏰:11/01/17 19:22 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#165 [愛華]
「……………この日は。



隆則とずっと一緒にいたい」


「……………?」





「2日間…………隆則といる。
ずっといる。どこでもいいから」


だから。

⏰:11/01/17 19:25 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#166 [愛華]
「『なんとなく』じゃなくて…」




ずっと前の、隆則の言葉。




『こんななんとなくで那佑と
するのは嫌なんだよ』




なんとなく、じゃなくて…

⏰:11/01/17 19:28 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#167 [愛華]
「……………那佑?」





上手く言葉にできない。


なんか………顔あつい……




「……えと……あの、その……」


顔が熱くなるのがわかる。
あたし………何言ってんの…

⏰:11/01/17 19:32 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#168 [愛華]
頭が真っ白だ。
なんも考えられない。






「…………えっとね、つまり…」


「…………無理しなくていーよ」


隆則が静かに言った。

⏰:11/01/17 19:35 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#169 [愛華]
……………無理……?



隆則はあたしの言いたいことが
わかったのか、微笑んだ。



「………那佑のことだろーから
多分色々考えて、その答えに
なったんだろーけどさ。

そりゃ俺は嬉しいけど。


無理してる那佑と無理矢理
やるのはなんか違うだろ……?」

⏰:11/01/17 19:39 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#170 [愛華]
優しい隆則の声。あたしを
気遣ってくれてるのがわかる。



でも、あたしは………。





ゆっくり隆則に抱き着いた。
隆則の体温を確かめるように
腕に力をこめる。



「………無理なんかしてないよ」

⏰:11/01/17 19:51 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#171 [愛華]
「……………」


隆則は黙ったまま。



「無理なんかじゃない……!
無理なんかしてない……」



ぽろぽろ涙が流れる。


悲しいわけでもないのに。

⏰:11/01/17 19:53 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#172 [愛華]
隆則の呼吸が聞こえる。


無理なんかじゃ、ないよ……








「…………………いいの?」

「いい。隆則がいい。」


初めては隆則がいい。
隆則じゃなきゃやだ。

⏰:11/01/17 19:57 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#173 [愛華]
あたしはもう、いついなくなる
のかわからないから。

いつまで笑顔でいられるのか
自分でもわからないから。



だから、その前に…………





隆則と、結ばれたいの。

⏰:11/01/17 20:30 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#174 [愛華]
「………………うん」


隆則は優しくうなずいた。





時間が止まればいいって。
そう本気で願った。


でもそんなの叶うわけなくて。
まるであたしを嘲笑うかのように

時間は、過ぎていった。

⏰:11/01/17 21:01 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#175 [愛華]
今日の更新分

>>154-174

感想まってます。

⏰:11/01/17 21:51 📱:840SH 🆔:ZDXgRsOI


#176 [愛華]
「えぇ………!?」

「もう決めたの」


1泊2日の仮退院前日。
梓が久しぶりに病院に来た。
直純くんは補習だそうで……



「………タカの家で過ごすって……2日間?」

「だからそうだってば」

「へ…………へぇ……」

⏰:11/01/19 15:34 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#177 [愛華]
「へぇ………ってなによ」

「ま、まぁさ。タカも入院中の
彼女をその……どうもしないと
思うけど。でも一応男だし…?
てゆーか……………我慢?」

「我慢しなくてもいーの、もう」

「あ、そう。そりゃタカ喜ぶわ。




…………ってえぇ!?」

⏰:11/01/19 15:46 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#178 [愛華]
漫画みたいに飛びあがる梓。
なんて古典的な………


「それって……そういう意味?」

「そういう意味」

「タカはなんていったの?」

「うん、ってだけ言った」

「マジすか…………」

梓はぐったりうなだれた。

⏰:11/01/19 15:50 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#179 [愛華]
まぁ予想通りの反応だけど……


「…………でもなんで……今?」

梓は不思議そうに聞いた。


なんで今かって…………


今しかないからだよ。



「ちゃんと正式に退院してから
じゃダメなの?」

⏰:11/01/19 15:55 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#180 [愛華]
「………退院できるか……
わかんないもの」

「…………は?」

「これが最後の外出になるかも
しれないし………だから」



「なに…………それ?」


梓の声色が変わる。


「ごめん、なんでもない」

⏰:11/01/19 15:59 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#181 [愛華]
「なんでもなくないよ。
最後の外出ってどういう意味?」

「そのまんまだよ」

「なにそれ。退院できないって
あんた自分で認めてんの?」


梓の口調がきつくなる。


「そんな、ことない………」

「嘘。あんた今言ったじゃん。
諦めてんの?治らないって」

⏰:11/01/19 16:14 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#182 [愛華]
諦める。

治るわけないから、諦める。


「……諦めてなんか………」


その先が出なかった。


あたしは、闘うことに疲れた。

毎日たくさんの薬を飲んで

それでも良くなんかならなくて。

⏰:11/01/19 16:21 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#183 [愛華]
苦しくて、悲しくて。
あと2年もない。
そう思うと、ぷっつりと


なにかがきれた気がした。



あたしは……諦めてた。

だから焦ってた。


何かを残さなきゃって。


あたしはもう長くないんだから……………って。

⏰:11/01/19 16:26 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#184 [愛華]
「あたしもタカも直純も!!
那佑が治るって信じてるのに
あんたは諦めてんの?

それはあたしたちを裏切ってることになるんだってわかんない?」


「だってわかっちゃうんだ。
もう無理なんだって。
疲れたんだよ、もう……」



梓は泣いてた。

あたしの、せい。

⏰:11/01/19 16:31 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#185 [愛華]
こんなこと話すつもりなかった。
でも溜め込みすぎた不安は
無意識にもれてしまう。


「………………那佑」



「信じたいよ。治るって。
でも、あたしが死んだあとに
苦しむのは隆則なんだよ?

『もしあたしが死んだら』って
やっぱり考えちゃうよ……」


現実と理想。
理想を夢みて現実に苦しむ。

⏰:11/01/19 16:39 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#186 [愛華]
「…………タカに言えない
不安はあたしに出して。だから



もうそんなこと言わないで」

「梓…………」


梓の気持ちは痛いほどわかる。

でも不安とか、そんなものだけ
じゃないんだよ。


だからあたしは…安心が欲しい。

⏰:11/01/19 20:24 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#187 [愛華]
「さて、この話は終わり!!那佑わかった?わかったら返事!」

「あ………はい」


「うん!」


こんなに側にいるのにあたしは
梓にさえ全てを吐き出せない。

心配かけたくないから?


そんなのきれいごとだ。

⏰:11/01/19 20:38 📱:840SH 🆔:dBmqpBCQ


#188 [愛華]
不安を口に出すと自分が弱い
人間になった気がして。

自己嫌悪しちゃう。


それはまた周りの人たちに
迷惑をかけてることになるの?




強くなりたい。



強くなりたいよ……

⏰:11/01/20 01:11 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#189 [愛華]
拳をぎゅっと握りしめる。
梓の顔が見れない。


申し訳ない気持ちでいっぱいで
また苦しくなった。



「梓……………ごめんね」

「………それは何に対して?」



「話終わりって言って戻っちゃうんだけどさ……あたし諦め
てるなんて自覚なかったんだよ」

⏰:11/01/20 01:16 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#190 [愛華]
「うん」

「でもどうやったらここから
抜け出せるのかわかんなかった。
受け入れちゃってたのかも。
しょうがないのかなって」



梓はゆっくりしゃがんで
ベッドに座ってるあたしに
目線を合わせた。



「……あたし那佑が大好き。
だからいなくなったら困るの」

⏰:11/01/20 01:22 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#191 [愛華]
「いなくなったら……?」

「困るの!でもあたしがどんなに
祈ったって那佑が諦めたら
そこで終わっちゃうよ。



闘ってるのは那佑だけじゃ
ないんだからね。わかってる?」


梓の言葉が心を潤す。
あたしと同じくらい、梓も
苦しいんだ……。

⏰:11/01/20 01:28 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#192 [愛華]
不謹慎かもしれないけど、
嬉しかった。温かかった。



明日はあたしにとって特別な日
になる。きっと。


その記憶があたしにとっての
光になるのなら


あたしはまた闘えるかな。


「絶対治すから」って自信を
持って言えるようになるかな。

⏰:11/01/20 01:33 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#193 [愛華]
今日の更新分です。
多めに更新したのですが
文章おかしいところあったら
すいません………
感想待ってます。

>>176-193

⏰:11/01/20 01:36 📱:840SH 🆔:LqmMWU32


#194 [愛華]
あるひとはいいました。



幸せとは願うことであり、

その行為の核に

他者が存在することである。






隆則。

あたしの願いの中には
いつだって隆則がいたよ。

⏰:11/01/21 00:06 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#195 [愛華]
他者が存在する願い。
それは絶望の中で
強制されないにもかかわらず
誰もが持つものだ。


ゆえに、人間特有の行為である。


他者が干渉する人生を歩めば
願うことは当然のことなのだ。


たとえ叶わなかったとしても
それが消えることはない。

⏰:11/01/21 00:24 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#196 [愛華]
叶わなかった願いは記憶として
必ず残るからだ。

叶った願いは自分の一部として
やがて忘れてゆく。


量でいえば圧倒的に前者が
多いかもしれないが

量より質である。






あたしは本を閉じた。

⏰:11/01/21 00:29 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#197 [愛華]
『愛の蜘蛛の巣』
と表紙に書かれた本。


以前、送別祭の準備のときに
衣装部屋で見つけた台本の
小説バージョンらしい。



………こんな内容だったんだ…




気まぐれに病院内にある図書室
から借りた本。

⏰:11/01/21 00:36 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#198 [愛華]
あたしは冒頭部分で読む気が
失せてしまった。


流れからすると、この続きは
叶わなかった願いの質について
書かれてるみたいだ。



そんなの読みたくないっつの。




時刻は午前1時。

眠れない。

⏰:11/01/21 00:39 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#199 [愛華]
叶わない願いのほうが圧倒的に
多い。そんなの当たり前。



叶わないようなことだから、
願ってんじゃんか。



努力でなんとかなるようなこと
なら神様任せなんかにしない。


いるかいないかもわかんない
信用できない架空の人物に
頼るなんて馬鹿なことしない。

⏰:11/01/21 00:45 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


#200 [愛華]
叶わない願いを神様に。






叶わない確率のほうが高くても



もし、叶ったら。



そんな奇跡を信じて願う。

⏰:11/01/21 02:00 📱:840SH 🆔:FLDDbvz.


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