大量生産の屑みたいな短編集
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#63 [青汁(6)]
「いくら?」と僕は質問してみた。「これは十万したな」と彼は青い壺を指して言った。「驚いたな。一番高い物は?」と僕が訊くと、彼は真ん中の赤い波の装飾が施された壺を指した。
「いくらだと思う?」
「三十万くらい?」
「その二倍。六十五万」
驚いた。僕はその壺をまじまじと見つめた。しかし良さがわからなかった。きっと僕が素人だからその良さがわからないんだろう。
:11/02/01 23:39
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#64 [青汁(7)]
壺の鑑賞を終えると僕たちは上等な赤ワインを呑んだ。良いワインだ。上等と言うだけある。チーズを食べ、話しをして、ワインを呑む。期待した通りなかなか素晴らしい時間だった。
しかし時間はそのまま過ぎ去りはしなかった。結論を言うと僕は裏切られた。彼は思い出話がしたくて僕を家に招いたわけじゃなかったのだ。
彼はとあるパンフレットをテーブルの上に置いた。
「なんだいこれ?」
:11/02/01 23:40
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#65 [青汁(8)]
僕はパンフレットを手に取った。「信じる者こそ救われる。信じる力が幸運を呼ぶのです」というキャッチフレーズが真ん中に大きな字で堂々と書かれていた。そのキャッチフレーズの下には、肉の付いた中年男が笑顔を振りまいていた。一目見て気持ちが悪いパンフレットだ。
「最近できた宗教なんだ。これがまた良くてねえ」
それから彼はその宗教について熱心に語り始めた。参ったな……。僕は宗教には興味無いんだ。
話が終わったのはそれから一時間半経過しようとした時だった。僕はちらちらと時計に目を遣っていたからわかる。一時間半だ。
:11/02/01 23:40
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#66 [青汁(9)]
彼はその宗教の素晴らしさを語り終えると入会を勧めた。彼は最初からそれが目的だったのだ。バーで僕を見かけた時から宗教の勧誘を考えていたんだ。
:11/02/01 23:40
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#67 [青汁(10)]
なんだか僕は悲しくなった。友達として、知り合いとして僕と接してくれる人はいないのか? いない。どうせ僕によって来る連中は金を貸してくれだの、保証人になってくれだの、そういった用事絡みの人ばっかりなのだ。嫌になるな、本当に。
彼は年間費だとかの説明をしていた。僕はたまに頷き、耳を傾けるフリをしながら考え事をした。だって宗教なんて興味ないんだ。興味のない話を淡々と聞いていられるかい? まあ彼の手口はなかなか優秀だよ。こうやってうまく家に誘い込み、逃げづらい環境を作り上げてから勧誘する。うん、よく考え込まれてる。
:11/02/01 23:42
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#68 [青汁(11)]
「聞いてる?」と彼は言った。「悪い。本当に悪いんだけどさ、宗教には興味が無いんだ」と僕は今更告白をした。しかし彼は気を悪くせず、そして引き下がらなかった。
「俺も初めは無宗教だったんだよ。君とまるっきり同じさ。でもね、ここは凄いんだ。何と言っても――」
それからまた一時間、話は続いた。とんでもない日だった。素晴らしい時間は頭から消え去り、退屈でイライラする時間が頭の中に残った。それは後味の悪い青汁を飲んでるような感じだ。
:11/02/01 23:42
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#69 [青汁(12)]
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。その宗教が使っている呪文らしい。印象的だったため覚えてしまった。
:11/02/01 23:42
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#70 [青汁(13)]
それから僕は話のタイミングを見計らって「わかった。家に帰ってよく考えてみる」と言ってなんとかアパートから抜け出した。
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。
僕は宗教を悪い物だとは思わない。しかしこう言った勧誘が悪い影響を与えているのは確かだ。
タクシーで家に帰ると僕はパンフレットをゴミ箱に捨てた。そして彼の連絡先を拒否リストに加えた。
:11/02/01 23:43
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#71 [青汁(14)]
困った一日だった。ワインと思い出話を目当てにして遊びに行ったというのにワインの味なんて忘れてしまったよ。思い出話も何を言ったか聞いたか覚えてない。頭に残ってるのはデ・ポーラ、アスタッタ・オーレという呪文だ。
僕は風呂に入って気持ちをすっきりさせた。そしてビールを一缶呑んで寝ることにした。参ったな、ビールの味しか残ってないや。
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。
:11/02/01 23:43
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#72 [香川人の野望(1)]
◆香川人の野望
僕は香川県出身で上京して寮制の大学に通っている。大学には色んな人がいる。クールで顔の整った人。寝起きのような冴えない顔をした人。個性的なファッションをした人。人混みに紛れ込まれたら一生見つけられないような至って普通の人。
そんな中に「あいつ」は居た。「あいつ」はずば抜けておかしい奴だ。なにが狂ってるかというと、「あいつ」は自炊制の寮にいるのだが、……いや、べつに自炊制の寮がおかしいってわけじゃない。まともな奴もいる。おかしいのは、「あいつ」は一日三食そして毎日うどんを作って食ってるということだ。
:11/02/01 23:46
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