大量生産の屑みたいな短編集
最新 最初 全 
#66 [青汁(9)]
彼はその宗教の素晴らしさを語り終えると入会を勧めた。彼は最初からそれが目的だったのだ。バーで僕を見かけた時から宗教の勧誘を考えていたんだ。
:11/02/01 23:40
:biblio
:R.sy3Skc
#67 [青汁(10)]
なんだか僕は悲しくなった。友達として、知り合いとして僕と接してくれる人はいないのか? いない。どうせ僕によって来る連中は金を貸してくれだの、保証人になってくれだの、そういった用事絡みの人ばっかりなのだ。嫌になるな、本当に。
彼は年間費だとかの説明をしていた。僕はたまに頷き、耳を傾けるフリをしながら考え事をした。だって宗教なんて興味ないんだ。興味のない話を淡々と聞いていられるかい? まあ彼の手口はなかなか優秀だよ。こうやってうまく家に誘い込み、逃げづらい環境を作り上げてから勧誘する。うん、よく考え込まれてる。
:11/02/01 23:42
:biblio
:R.sy3Skc
#68 [青汁(11)]
「聞いてる?」と彼は言った。「悪い。本当に悪いんだけどさ、宗教には興味が無いんだ」と僕は今更告白をした。しかし彼は気を悪くせず、そして引き下がらなかった。
「俺も初めは無宗教だったんだよ。君とまるっきり同じさ。でもね、ここは凄いんだ。何と言っても――」
それからまた一時間、話は続いた。とんでもない日だった。素晴らしい時間は頭から消え去り、退屈でイライラする時間が頭の中に残った。それは後味の悪い青汁を飲んでるような感じだ。
:11/02/01 23:42
:biblio
:R.sy3Skc
#69 [青汁(12)]
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。その宗教が使っている呪文らしい。印象的だったため覚えてしまった。
:11/02/01 23:42
:biblio
:R.sy3Skc
#70 [青汁(13)]
それから僕は話のタイミングを見計らって「わかった。家に帰ってよく考えてみる」と言ってなんとかアパートから抜け出した。
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。
僕は宗教を悪い物だとは思わない。しかしこう言った勧誘が悪い影響を与えているのは確かだ。
タクシーで家に帰ると僕はパンフレットをゴミ箱に捨てた。そして彼の連絡先を拒否リストに加えた。
:11/02/01 23:43
:biblio
:R.sy3Skc
#71 [青汁(14)]
困った一日だった。ワインと思い出話を目当てにして遊びに行ったというのにワインの味なんて忘れてしまったよ。思い出話も何を言ったか聞いたか覚えてない。頭に残ってるのはデ・ポーラ、アスタッタ・オーレという呪文だ。
僕は風呂に入って気持ちをすっきりさせた。そしてビールを一缶呑んで寝ることにした。参ったな、ビールの味しか残ってないや。
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。
:11/02/01 23:43
:biblio
:R.sy3Skc
#72 [香川人の野望(1)]
◆香川人の野望
僕は香川県出身で上京して寮制の大学に通っている。大学には色んな人がいる。クールで顔の整った人。寝起きのような冴えない顔をした人。個性的なファッションをした人。人混みに紛れ込まれたら一生見つけられないような至って普通の人。
そんな中に「あいつ」は居た。「あいつ」はずば抜けておかしい奴だ。なにが狂ってるかというと、「あいつ」は自炊制の寮にいるのだが、……いや、べつに自炊制の寮がおかしいってわけじゃない。まともな奴もいる。おかしいのは、「あいつ」は一日三食そして毎日うどんを作って食ってるということだ。
:11/02/01 23:46
:biblio
:R.sy3Skc
#73 [香川人の野望(2)]
「あいつはうどん依存症だよ。うどん中毒だね」
「きっと香川人だ。それもよりすぐりの香川人だ。真の香川人。香川人が太古の頃に宿していた一日三食うどんの習慣を忘れず、そしてそれを現代人に伝えるために上京した真の香川人……」
友人は言った。そんな具合から「あいつ」のあだ名は「香川人」となった。香川人も自分のあだ名に納得し、それを受け入れた。
「ありがたいことだよ。僕はずっと前から香川人になりたかったんだ」と香川人は言った。
:11/02/01 23:46
:biblio
:R.sy3Skc
#74 [香川人の野望(3)]
香川人は新潟生まれだった。その事実を知るとみんな軽いショックを受けた。ウーパールーパーの生物名がウーパールーパーではないような、そんなショックだった。
「じゃあなんで香川人はうどんを食べ続けているんだ?」
学校の真上にクエスチョンマークの雲が浮かんだ。謎だ。
みんな恐れて香川人に事の真相を訊ねなかった。そこには触れてはいけない何かがある気がしたのだ。
「お前香川出身なんだって? 同類のよしみだ。聞いてこいよ」
「お前が香川出身だと聞いたら香川人は喜ぶよ。そんで教えてくれるかもしない。あっさりと」
:11/02/01 23:46
:biblio
:R.sy3Skc
#75 [香川人の野望(4)]
こうして僕は場の雰囲気に押され、香川人の部屋を訪ねることになった。
コンコンとノックをする。
「香川人、居るかい?」
「居るよ。何の用だい?」
「ちょっと話があるんだ。入っていいかな?」
「いいよ」
僕はドアノブを回し部屋に入った。香川人はベッドに寝転び本を読んでいた。文学本でないのは確かだ。生物図鑑だとか、そんな感じの大きな本だった。
:11/02/01 23:47
:biblio
:R.sy3Skc
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194