大量生産の屑みたいな短編集
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#21 [最低最悪のトンネル(8)]
「君の言いたいことはわかったよ。でも辛いんだ」
「辛いのは君だけじゃない。俺だって影同士、格闘してたんだ。勿論痛みだって感じる。だから君の辛さもわかる。……辛いだろうけど一緒に頑張ろう。きっと出口は近い」
言いたいことを言うと影は元の影に戻った。立体的だった影は地面の中に入り込み、いつもののっぺりした影になった。そこには立体的な影はもういない。言葉を話す影もいない。
「わかったよ。頑張って歩いてみるよ。一緒にトンネルから出よう」
:11/02/01 23:05
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#22 [最低最悪のトンネル(9)]
「そうこなくっちゃな」と影は言った。言ったような気がした。そして笑った。笑ったような気がした。
結局僕は誰かに引き止めて欲しかったんだ。そして痛みや辛さを共有したかったんだ。誰でもよかった。それを影がやってくれたということだ。
自分の一部に救われるというのはなんだか不思議な感覚だ。でもそれはとても当たり前なことなのかもしれない。自分を知ってるのは自分だけ。本当は影に頼らず、自分に語りかけるべきだったんだ。
あれから影を見ると「あの時はありがとう。僕は頑張ってるよ」と心の中で呟くことがある。すると影は笑ってくれる。笑ってくれたような気がする。
「そうこなくっちゃな」
:11/02/01 23:06
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#23 [ランチルームの怪奇(1)]
◆ランチルームの怪奇
「夜の学校って絶対怖いよな」
と、とある友人は言った。俺とその友人は怪談話が大好きだ。顔を合わせればこぞって仕入れた怪談話を披露していた。それだから日常会話もホラーだとかオカルト物ばかりだ。珍しいことじゃない。
「墓地なんか屁だよ。学校は本当にヤバい」と俺は言った。
「今夜学校に忍び込まないか? 夜の学校を体験しないとなんだか真のホラー好きにはなれない気がするんだ」と友人は真剣な顔つきで言った。
なんだよ、真のホラー好きって、と俺は思った。
:11/02/01 23:11
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#24 [ランチルームの怪奇(2)]
「なあ、今夜忍び込もう。な?」
俺は「わかった」と言った。わかったと言わなければ友人の気が収まらないだろう。友人は「よっしゃ! 待ってろ夜の学校!」っとニヤニヤしながら言った。
「なあ、二人じゃ心細い。頼りになりそうな奴呼ぼう」と俺は言った。友人は同意した。
そこで俺たちは体格の良い友人を誘った。そいつはマッチョと呼ばれている。筋肉トレーニングで中学生とは思えないたくましい筋肉を身に付けている。肩、腕、胸、腹、太もも、ふくらはぎ、とにかく全ての筋肉が一回り大きい。こいつがいれば心細いなんてことはない。
:11/02/01 23:11
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#25 [ランチルームの怪奇(3)]
しつこく誘っていると「わかった。参加するよ」とマッチョは嫌がりながらも言った。
これで決まりだ。今夜決行。胸が高鳴る。遠足前日のような高鳴りだ。おかげで授業の内容は全くと言っていいほど耳に入らなかった。
:11/02/01 23:11
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#26 [ランチルームの怪奇(4)]
俺たちは放課後、一階のランチルームと呼ばれている普段人の立ち寄らない部屋に入った。そして沢山の畳んだテーブルによって塞がれてしまった窓の鍵を外しておいた。
そして家に帰り、各自荷物を用意した。塩や酒と言った物を分担して持って来ることにしたのだ。俺たちはそれが幽霊に対して武器になると思っていた。
俺はビニール袋に塩を入れ、それを無理やりポケットに入れた。
十時ぴったりに、俺は学校の玄関前に到着した。誰も居なかった。玄関前の段差に腰をかけ、友人とマッチョを待つことにした。
:11/02/01 23:12
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#27 [ランチルームの怪奇(5)]
闇に包まれた学校は廃棄された建物ような暗い感じを思わせた。昼の明るい学校とは明らかに違う雰囲気を持つ不気味な学校。その玄関前で友人を待っていると経過する時間がとても遅く感じられた。
急に寒くなった。七月だと言うのに身体が冷えてきた。まずいな、と俺は思った。夜の学校が持つ不思議な魔力に飲み込まれつつあるんだ。俺は懐中電灯で腕時計を照らした。長い針は五分を指していた。あと五分経って誰も来なかったら帰ろう。
:11/02/01 23:12
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#28 [ランチルームの怪奇(6)]
何だか嫌な予感がする。夜の学校は俺を不安にさせた。ここから立ち去りたい。早く十分になれ、と思った。十分を待たずに帰ろうとも思った。
バイクがエンジン音を響かせながら学校の前を通り過ぎた。聞き慣れたバイクのエンジン音さえもなんだか不気味な悲鳴に聞こえた。
:11/02/01 23:12
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#29 [ランチルームの怪奇(7)]
八分になった所で校門に人影が見えた。それは校門を越えるとこちらに向かって走ってくる。
友人か? マッチョか?
近付くにつれ、人影がはっきりする。体格は普通。がっしりしていない。友人だ。とにかく俺は安心した。人が来たおかげで気が楽になった。
「遅かったじゃないか」と俺は言う。友人は「悪い。料理酒持ってくるのに手こずった」と大して悪びれる様子もなく言った。
「マッチョは来てないのか?」
「来てないみたい」
「今何時だ?」
俺は腕時計を懐中電灯で照らす。
「十時十分」
「じゃあ十五分まで待とう」
:11/02/01 23:13
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#30 [ランチルームの怪奇(8)]
また待つのか……。なんだか一時間くらい待ってた気がする。これならもっと遅くくればよかった。
結局十五分になってもマッチョは現れなかった。俺たちは仕方なくマッチョ抜きでランチルームまで歩いた。
「あいつビビったんだよ」と友人は言った。「マッチョなくせにビビったんだ」
「意外だよな。幽霊なんて怖くないような面してんのに。しかもマッチョなのに。マッチョが幽霊にビビるってライオンがきりんにやられるくらいショックだよな」と俺は言った。
なんだよ、マッチョのくせに。俺たちはマッチョに失望していた。その筋肉はお飾りかよ。
:11/02/01 23:13
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