大量生産の屑みたいな短編集
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#53 [新聞から始まった再会と別れ(11)]
吐く。懐かしい台詞だ。彼女は高校時代吐き気に苦しめられていた。まあ、昔の話だ。

「歩くにしては結構距離あるぜ?」
「大丈夫」
「じゃあ家まで送る」
「いいの、本当に」

彼女は少し怒っていたので僕は仕方なく引き下がった。店の前の攻防は終わり、彼女は「さよなら」と言って歩き出した。

「さよなら」

彼女はたまにフラつきながら闇に消えた。

⏰:11/02/01 23:32 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#54 [新聞から始まった再会と別れ(12)]
僕は彼女を誘うべきだったのだろうか? 彼女はそれを求めていたんじゃないかと思う。それでも僕は引いてしまった。彼女は結婚しているんだ、と理性を働かせた。その結婚がうまくいってないにしても(彼女の話や態度から想像できた)、僕は彼女と寝るべきじゃない。

僕はタクシーを呼んで家に帰った。

その日、彼女は自殺した。

⏰:11/02/01 23:33 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#55 [新聞から始まった再会と別れ(13)]
彼女は電車にひかれて死んだ。事故だと思った。朝の新聞は地元欄で事故だと伝えていたからだ。

でも僕は考える内に自殺だと思った。彼女はこの街に死にに来たんだ。僕の予想以上に彼女はうまくいってなく、そして傷付いていた。

僕が最後の救いだった。あの日僕らは引きつけられるようにして再会した。そしてあの時、彼女は僕を求めていたんだ。彼女の命は僕の手の中にあった。でも僕はその命を落としてしまった。

深く考え過ぎかもしれない。

⏰:11/02/01 23:33 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#56 [新聞から始まった再会と別れ(14)]
でも彼女は自殺したと考えるとそれは僕の中で風船のように膨らんでいき、やがて他を押しのけ事実のようになった。

彼女は自殺してしまった。僕は自殺させてしまった。

風船が爆発した時、僕は激しく後悔した。そして涙が出た。また昔のように判断を誤ってしまった。僕は二度彼女を失ってしまったんだ。そして彼女はもう手の届かぬ所へ行ってしまった。

僕は新聞に行き所のない想いをぶつけた。新聞を気が済むまで破いた。事故の情報さえ目にしなければ彼女は僕の心の中で生き続けていたのだ。それはいずれ知ることになるかもしれないけど、今よりショックは大きくない筈だ。

⏰:11/02/01 23:34 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#57 [新聞から始まった再会と別れ(15)]
苦し紛れに出たひどい八つ当たりだった。本当にひどい。

それから僕は仕事に行かず、脱け殻のような一日を過ごした。たまに腹を立て、そして悔やんで泣いた。酔っちまえばいい。棚からウィスキーを出してコップに少し注ぎ、喉に通した。アルコールは僕を慰めた。けれど大した効果はなかった。僕は本当にひどく落ち込んでいたんだ。

⏰:11/02/01 23:34 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#58 [青汁(1)]
◆青汁

僕は行き付けのバーで一人、酒を喉に通していた。いつもそうなんだ。一緒に酒を呑んでくれるような友人はいない。でももう慣れてしまった。孤独はある一線を越えると身に馴染む。

「高山?」

僕の名前が呼ばれたため、声がする方向を見た。僕の名前を呼ぶ奴なんて限られてる。しかし、そこには見覚えのない男が立っていた。

「やっぱり高山だ! 久しぶりだなあ!」

彼は笑顔で僕の肩を叩きながら言う。「久しぶりだな」と僕は口を合わせておいた。彼は僕の隣に座りウイスキーを注文した。

⏰:11/02/01 23:37 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#59 [青汁(2)]
「元気でやってるか?」と彼は訊いた。「何とかね。そっちはどうだ?」と僕は訊き返す。

「まあまあだよ」

この男は誰だっけ? どことなく懐かしい感じがする。きっと学生時代の知り合いかなんかだ。名前はえーっと……。よく顔を見れば思い出せるかもしれない。いや、駄目だ。思い出せない。参ったな……。

僕は彼が誰だか思い出せぬまま会話を交わした。共通の話題があった。中学時代の話しだ。やはり彼は学生時代の知り合いなのだ。

⏰:11/02/01 23:38 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#60 [青汁(3)]
話をしていても彼が誰だか思い出せなかった。会話の中にヒントがあるかもしれないと注意深く話に耳を傾けたが、それでも手がかりはなかった。しかしまあ、久しぶりに楽しい時間を過ごした。思い出話というのはいつ誰と話しても面白い。相手が誰だかわからなくても。

こうして僕は名前の知らぬ友人と長話しをした。

⏰:11/02/01 23:38 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#61 [青汁(4)]
「なあ、今度俺の家で呑まないか? 上等なワインがあるんだ」

特に断る理由がなかった。上等なワインも呑みたいし、また思い出話もしたかった。僕は「オーケー、行くよ」と言った。そして連絡先を交換した。アドレス帳には「懐かしい人」という名前で登録した。結局誰だかわからなかったのだ。

それから数日後、僕はタクシーに乗って彼のアパートを訪れた。小さなアパートだった。

⏰:11/02/01 23:38 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#62 [青汁(5)]
インターホンを鳴らす。少しして「いらっしゃい」と彼はドアを開けて言った。僕は「チーズを持ってきた」と言ってチーズの入ったビニール袋を持ち上げた。「良いね」と彼は言った。

彼の部屋にはやたらと壺が置かれていた。大小色とりどりの壺が壁に沿って並べられていて、小さな部屋は余計に狭くなっている。

「壺が趣味なんだ?」と僕は青い壺を近くで眺めながら訊く。「ああ。珍しいかな? 結構するんだよ」と彼は青い壺を撫でながら言った。

⏰:11/02/01 23:39 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


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