大量生産の屑みたいな短編集
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#61 [青汁(4)]
「なあ、今度俺の家で呑まないか? 上等なワインがあるんだ」

特に断る理由がなかった。上等なワインも呑みたいし、また思い出話もしたかった。僕は「オーケー、行くよ」と言った。そして連絡先を交換した。アドレス帳には「懐かしい人」という名前で登録した。結局誰だかわからなかったのだ。

それから数日後、僕はタクシーに乗って彼のアパートを訪れた。小さなアパートだった。

⏰:11/02/01 23:38 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#62 [青汁(5)]
インターホンを鳴らす。少しして「いらっしゃい」と彼はドアを開けて言った。僕は「チーズを持ってきた」と言ってチーズの入ったビニール袋を持ち上げた。「良いね」と彼は言った。

彼の部屋にはやたらと壺が置かれていた。大小色とりどりの壺が壁に沿って並べられていて、小さな部屋は余計に狭くなっている。

「壺が趣味なんだ?」と僕は青い壺を近くで眺めながら訊く。「ああ。珍しいかな? 結構するんだよ」と彼は青い壺を撫でながら言った。

⏰:11/02/01 23:39 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#63 [青汁(6)]
「いくら?」と僕は質問してみた。「これは十万したな」と彼は青い壺を指して言った。「驚いたな。一番高い物は?」と僕が訊くと、彼は真ん中の赤い波の装飾が施された壺を指した。

「いくらだと思う?」
「三十万くらい?」
「その二倍。六十五万」

驚いた。僕はその壺をまじまじと見つめた。しかし良さがわからなかった。きっと僕が素人だからその良さがわからないんだろう。

⏰:11/02/01 23:39 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#64 [青汁(7)]
壺の鑑賞を終えると僕たちは上等な赤ワインを呑んだ。良いワインだ。上等と言うだけある。チーズを食べ、話しをして、ワインを呑む。期待した通りなかなか素晴らしい時間だった。

しかし時間はそのまま過ぎ去りはしなかった。結論を言うと僕は裏切られた。彼は思い出話がしたくて僕を家に招いたわけじゃなかったのだ。

彼はとあるパンフレットをテーブルの上に置いた。

「なんだいこれ?」

⏰:11/02/01 23:40 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#65 [青汁(8)]
僕はパンフレットを手に取った。「信じる者こそ救われる。信じる力が幸運を呼ぶのです」というキャッチフレーズが真ん中に大きな字で堂々と書かれていた。そのキャッチフレーズの下には、肉の付いた中年男が笑顔を振りまいていた。一目見て気持ちが悪いパンフレットだ。

「最近できた宗教なんだ。これがまた良くてねえ」

それから彼はその宗教について熱心に語り始めた。参ったな……。僕は宗教には興味無いんだ。

話が終わったのはそれから一時間半経過しようとした時だった。僕はちらちらと時計に目を遣っていたからわかる。一時間半だ。

⏰:11/02/01 23:40 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#66 [青汁(9)]
彼はその宗教の素晴らしさを語り終えると入会を勧めた。彼は最初からそれが目的だったのだ。バーで僕を見かけた時から宗教の勧誘を考えていたんだ。

⏰:11/02/01 23:40 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#67 [青汁(10)]
なんだか僕は悲しくなった。友達として、知り合いとして僕と接してくれる人はいないのか? いない。どうせ僕によって来る連中は金を貸してくれだの、保証人になってくれだの、そういった用事絡みの人ばっかりなのだ。嫌になるな、本当に。

彼は年間費だとかの説明をしていた。僕はたまに頷き、耳を傾けるフリをしながら考え事をした。だって宗教なんて興味ないんだ。興味のない話を淡々と聞いていられるかい? まあ彼の手口はなかなか優秀だよ。こうやってうまく家に誘い込み、逃げづらい環境を作り上げてから勧誘する。うん、よく考え込まれてる。

⏰:11/02/01 23:42 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#68 [青汁(11)]
「聞いてる?」と彼は言った。「悪い。本当に悪いんだけどさ、宗教には興味が無いんだ」と僕は今更告白をした。しかし彼は気を悪くせず、そして引き下がらなかった。

「俺も初めは無宗教だったんだよ。君とまるっきり同じさ。でもね、ここは凄いんだ。何と言っても――」

それからまた一時間、話は続いた。とんでもない日だった。素晴らしい時間は頭から消え去り、退屈でイライラする時間が頭の中に残った。それは後味の悪い青汁を飲んでるような感じだ。

⏰:11/02/01 23:42 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#69 [青汁(12)]
デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。その宗教が使っている呪文らしい。印象的だったため覚えてしまった。

⏰:11/02/01 23:42 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


#70 [青汁(13)]
それから僕は話のタイミングを見計らって「わかった。家に帰ってよく考えてみる」と言ってなんとかアパートから抜け出した。

デ・ポーラ、アスタッタ・オーレ。

僕は宗教を悪い物だとは思わない。しかしこう言った勧誘が悪い影響を与えているのは確かだ。

タクシーで家に帰ると僕はパンフレットをゴミ箱に捨てた。そして彼の連絡先を拒否リストに加えた。

⏰:11/02/01 23:43 📱:biblio 🆔:R.sy3Skc


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