*トワイライト・ゾーン*
最新 最初 全 
#201 [スピーディー]
「食べてない」
「じゃあ、ちょっと待ってなさい。
ママのお化粧がすんで美人になりしだい、何か食べさせてあげるわ。」
「うん」
とユ―タ
:11/02/24 16:20
:SH07B
:☆☆☆
#202 [スピーディー]
「1人じゃ、つまんないんだもの」
「きっと、あなたがつまんないのは…」
前に身をのりだして、鏡の中の顔をつくづくと眺める。
「リビングで待っててくれる、ユ―タ?
お化粧は独りでしたいの。 これは家伝の秘密なんだから」
:11/02/24 16:22
:SH07B
:☆☆☆
#203 [スピーディー]
ユ―タは無言で背を向けると、リビングにもどった。
そのとき、電話のベルが鳴り、ユ―タはびくっと跳びあがった。
:11/02/24 16:24
:SH07B
:☆☆☆
#204 [スピーディー]
「ぼくが取ろうか?」
彼は声をかけてみた。
「お願いするわ」
母の熱のない声がかえってきた
:11/02/24 16:25
:SH07B
:☆☆☆
#205 [スピーディー]
ユ―タは受話器をとって、「もしもし」 と言った。
「やあ、坊主、やっと捉えたぞ」
ナオト叔父さんの声だった。
:11/02/24 16:27
:SH07B
:☆☆☆
#206 [スピーディー]
「おまえの母さんは、いったい何を考えてるんだ?
母さんは、そこにいるんだろう?
私が話をしたい、と伝えなさい―大切な話なんだから。
四の五の言ってる場合じゃないんだ。
言うとおりにしなさい」
:11/02/24 16:30
:SH07B
:☆☆☆
#207 [スピーディー]
ユ―タはそのまま受話器受けにもどしてしまおうかと思った。
そしてまた、母と二人で車に乗り込んで、よその州のよそのホテルへ移る。 そのくりかえしだ。
:11/02/24 16:31
:SH07B
:☆☆☆
#208 [スピーディー]
だが、彼は電話を切らなかった。
「ママ、ナオト叔父さんから電話だよ。
大切な話があるんだって」
しばらく返事がなかった。
ようやく母の声がした。
「こっちで取るわ」
:11/02/24 16:33
:SH07B
:☆☆☆
#209 [スピーディー]
ユ―タはとっさにどうするか肚をきめた。
母がそっと境のドアを閉めた。
母がむこうの寝室の電話を取って、
「いいわよ、ユ―タ」
と、ドア越しに言った。
:11/02/24 16:35
:SH07B
:☆☆☆
#210 [スピーディー]
「わかった」
と、ユ―タも言い返す。
それから、受話器を耳に押し当て、こちらの息遣いを聞かれないように、片手で送話口をふさいだ。
:11/02/24 16:37
:SH07B
:☆☆☆
#211 [スピーディー]
「やるもんだな、妹よ」
ナオト叔父さんが言っている。
「あざやかなお手並みだ。
おまえがまだいまだに映画に出てるころなら、こいつを利用して 《スタ―女優はなぜ失踪したか?》 なんて、ちょっとした宣伝に使えたろうにな。
しかし、もういいかげんに分別のある人間らしく振る舞ったらどうだ?」
:11/02/24 16:40
:SH07B
:☆☆☆
#212 [スピーディー]
「どうしてここがわかったの?」
「見つからないとでも思ってたのか?
頼むから、ナオコ、東京へ戻ってくれないか。
逃げまわるのは止めにしなさい。」
:11/02/24 16:42
:SH07B
:☆☆☆
#213 [スピーディー]
「兄さん、あたし、逃げまわってるの?」
「おまえにはもうそんな時間はないはずだ。
私だって暇じゃない。
おい、ちょっと待て。 坊主のほうの電話はまだ切れてないぞ。」
:11/02/24 16:44
:SH07B
:☆☆☆
#214 [スピーディー]
「もちろん切ったわよ」
ユ―タは心臓が止まるかと思った。
「受話器を置くんだ、坊主」
ナオトの声がユ―タに言った。
:11/02/24 16:46
:SH07B
:☆☆☆
#215 [スピーディー]
「バカげたこと言わないで」
と、母が言った。
「バカげたことというのはな、ナオコ、おまえが入院していなければならんときに、そんなチンケな避暑地なんぞに隠れていることだよ。
子供の教育のことだってそうだ。」
:11/02/24 16:49
:SH07B
:☆☆☆
#216 [スピーディー]
「兄さんとは話し合いたくないのよ」
「おまえが嫌でも、話し合わなければならんのだ。
そっちまで出向いていって、必要なら力ずくでも入院させるぞ。」
:11/02/24 16:51
:SH07B
:☆☆☆
#217 [スピーディー]
「おまえは会社の半分を所有してるんだ
―そいつはあんたが死ねば、ユ―タのものになる。
だからユ―タの面倒を、私がちゃんと見ようというんだ。」
:11/02/24 16:53
:SH07B
:☆☆☆
#218 [スピーディー]
「何がお望みなの」
母はうんざりしたような声で言った。
「わかってるだろう
みんなによかれと思ってるだけさ。
ユ―タの面倒は私が見るよ、よい大学にも行かせるさ。
おまえはユ―タを学校にも行かせてないじゃないか」
:11/02/24 16:56
:SH07B
:☆☆☆
#219 [スピーディー]
「ごりっぱなことね」
「それが返事か。 ナオコ、おまえにはいま助けてくれる人が必要なんだ。
それができるのは兄である私しかいない」
:11/02/24 16:58
:SH07B
:☆☆☆
#220 [スピーディー]
「それで、要求は?」
「よく知ってるじゃないか、私は公正な取り分しか要求しない。
海堂社のために、私は身を粉にして働いてきたんだ、社長だったおまえの旦那が死んだいま、当然私のものになってしかりべきなんだ。」
:11/02/24 17:07
:SH07B
:☆☆☆
#221 [スピーディー]
「兄さんと、亡くなったジュンノスケとは、成功しすぎちゃったんじゃないかと、ときどき思うことがあるわ」
「なにを偉そうに…!
自分の身の振り方さえちゃんとできない女が何を言うか!!!!」
ナオト叔父さんが声を荒げた。
:11/02/24 17:11
:SH07B
:☆☆☆
#222 [スピーディー]
「もう切るわよ、兄さん。
ここには近寄らないで。 それとユ―タにもよ」
「病院に行くんだ、ナオコ、いつまでも逃げまわってばかりいたら、いまに―」
:11/02/24 17:13
:SH07B
:☆☆☆
#223 [スピーディー]
ナオト叔父さんのセリフの途中で、母は電話を切った。
ユ―タもそっと、受話器を受け台に置いた。
:11/02/24 17:14
:SH07B
:☆☆☆
#224 [スピーディー]
ドアの閉まっている寝室からは、何の物音も聞こえてこない。
「ママ? 」
呼んでみた。
「なあに、ユ―タ」
なんとなくふらついているような声
:11/02/24 17:16
:SH07B
:☆☆☆
#225 [スピーディー]
「大丈夫? なんともない?」
「わたしが? もちろんよ」
母の静かな足音が聞こえて、ドアが少し開いた。
:11/02/24 17:17
:SH07B
:☆☆☆
#226 [スピーディー]
2人の目が合う。
母はドアをいっぱいに開いた。
またもや2人はみつめ合った。
ぎこちない一瞬。
:11/02/24 17:18
:SH07B
:☆☆☆
#227 [スピーディー]
「もちろん大丈夫よ。 どうして?」
からみ合っていた視線が離れた。
2人の間に暗黙の了解のようなものが流れた。
:11/02/24 17:20
:SH07B
:☆☆☆
#228 [スピーディー]
ユ―タはさっきの会話を盗み聞きしていたのを、母に悟られたのかな、とも思った。
だが、思い直し、2人の間の暗黙の了解というのが、母の病気、という事実であることに気がついた。
:11/02/24 17:22
:SH07B
:☆☆☆
#229 [スピーディー]
「つまり」
ユ―タは口ごもった。
「よくはわからないけど、なんだかナオト叔父さんの調子が…」
:11/02/24 17:24
:SH07B
:☆☆☆
#230 [スピーディー]
母は煙草を口にくわえて、ライターの蓋をぱちりと開いた。
その目がふたたびユ―タを刺すように見る。
:11/02/24 17:25
:SH07B
:☆☆☆
#231 [スピーディー]
「あの悪党のことなんか気にしちゃだめよ、ユ―タ。
ママはただ、あの男からうまく逃げられなくて、苛々してるだけなの。
ナオト叔父さんはママをいじめて面白がってるのよ」
:11/02/24 17:27
:SH07B
:☆☆☆
#232 [スピーディー]
「朝ごはんを食べる気分じゃなくなったわ。
あなた、下のロビーのレストランに行って、こんどは本当にお食事しなさい」
:11/02/24 17:29
:SH07B
:☆☆☆
#233 [スピーディー]
「いっしょに来てよ」
「しばらく独りでいたいの。 わかってちょうだい」
あなたが戻ってくるころには、ママも気分がよくなっているから」
母は言った。
「お約束するわ」
:11/02/24 17:31
:SH07B
:☆☆☆
#234 [スピーディー]
「何かか買ってきてあげようか?」
母はかぶりを振って、無理に笑顔をつくった。
ユ―タはしかたなく部屋を出たが、彼自信ももはや食欲を失っていた。
:11/02/24 17:33
:SH07B
:☆☆☆
#235 [スピーディー]
廊下をぶらぶら歩いてエレベーターへ向かう。
行く場所はまたもや1ヶ所しかない。
フロントに死人のような顔の意地悪なボ―イの前を通りすぎ、陰気なロビーを走りながら、すでにユ―タの心は決まっていた。
:11/02/24 17:38
:SH07B
:☆☆☆
#236 [スピーディー]
トニ―・パ―カ―は赤い小屋にはいなかった。
長い桟橋にも、姿が見えない。
ロ―ラ―・コ―スタ―の下の埃っぽい場所にも、トニ―はいなかった。
:11/02/24 17:40
:SH07B
:☆☆☆
#237 [スピーディー]
ひとけのない遊園地を、途方にくれて見まわしていた。
不安がしだいに募ってくる
もしかして、トニ―の身に何かが起こったのでは?
:11/02/24 17:41
:SH07B
:☆☆☆
#238 [スピーディー]
そんなはずはないと思うが、もしもナオト叔父さんがトニ―のことを知ったのだとしたら…
ユ―タは走りだした。
:11/02/24 17:43
:SH07B
:☆☆☆
#239 [スピーディー]
すると、前方に妙な形の白塗りの円形に似た建物の内部から、カン、カンカン、とリズミカルな音が聞こえてくる。
:11/02/24 17:45
:SH07B
:☆☆☆
#240 [スピーディー]
それは鉄パイプをレンチで叩いているような、だれかが作業をしている音だ―
ユ―タはその音に向かって走った。
:11/02/24 17:48
:SH07B
:☆☆☆
#241 [スピーディー]
白い板のまんなかに、ドアの取手がついていた。
ユ―タはその取手をつかんで、ドアを引き開けた。
:11/02/24 17:50
:SH07B
:☆☆☆
#242 [スピーディー]
「やあ、風来ユ―タ」
トニ―が一部分解体されたメリ―ゴ―ラウンドのそばの地面に、座っていた。
:11/02/24 17:51
:SH07B
:☆☆☆
#243 [スピーディー]
トニ―はレンチを地面に置いて、ユ―タに言った。
「こんどは話を聴く気になったかい? 」
:11/02/24 17:53
:SH07B
:☆☆☆
#244 [スピーディー]
「ええ、なりました」
ユ―タはまったく冷静な声音で言ってから、そのあとでわっと泣きだした。
:11/02/24 17:54
:SH07B
:☆☆☆
#245 [スピーディー]
「そら、そら」
トニ―は立って、ユ―タのそばにやってきた。
「なんでもないさ。 気をしっかり持ちな」
:11/02/24 17:56
:SH07B
:☆☆☆
#246 [スピーディー]
だがユ―タは、とてもその気になれなかった。
急になにもかもが耐え難く、どうにもならないように思えたのだった。
:11/02/24 17:57
:SH07B
:☆☆☆
#247 [スピーディー]
涙を見せるのは恥ずかしかったが、ここで泣かなかったら、ぎりぎりに張りつめた恐怖のために、死んでしまうような気がした。
:11/02/24 17:58
:SH07B
:☆☆☆
#248 [スピーディー]
「泣くがいいさ、風来ユ―タ」
トニ―の両腕がユ―タを抱いた。
:11/02/24 17:59
:SH07B
:☆☆☆
#249 [スピーディー]
ユ―タは熱くほてった顔を、大人の匂いのするトニ―の薄いシャツに押しつけた。
ユ―タは両腕をトニ―の体にまわした。
掌にトニ―の背中の、ほとんど肉のついていない、皮と骨が感じられた。
:11/02/24 18:05
:SH07B
:☆☆☆
#250 [スピーディー]
「それで気が治まるんなら、泣けばいい」
トニ―はあやすようにユ―タの体をゆすった。
:11/02/24 18:06
:SH07B
:☆☆☆
#251 [スピーディー]
「そういう時もあるさ。
そうさ。
トニ―にはわかってる、
ユ―タがどんな目に遭い、どんな辛い想いをしたか。
だから、気がすむまで泣くがいい」
:11/02/24 18:07
:SH07B
:☆☆☆
#252 [スピーディー]
言葉の意味などどうでもよかった―
―ただその響きとリズムが、ユ―タの心を和ませ落ち着かせた。
:11/02/24 18:08
:SH07B
:☆☆☆
#253 [スピーディー]
「ぼくの母は病気なんです」
トニ―の胸に顔を押し当てたまま、ユ―タは言った。
:11/02/24 18:09
:SH07B
:☆☆☆
#254 [スピーディー]
「父といっしょに会社をやっていた井上 ナオトという人から逃げるために、母はここに来たらしいんです。」
:11/02/24 18:12
:SH07B
:☆☆☆
#255 [スピーディー]
大きくすすりあげて、トニ―の体を離すと、後ろに退り、掌で腫れあがった目をこすった。
:11/02/24 18:14
:SH07B
:☆☆☆
#256 [スピーディー]
「だけど、お袋さんがこの町に来た理由は、それだけじゃないんだろ?」
「ええ」
ユ―タは低い声で答えた。
「たぶん…死ぬために来たんです」
:11/02/24 18:16
:SH07B
:☆☆☆
#257 [スピーディー]
「たぶんな」
トニ―はユ―タの顔をみつめた。
「そしてたぶん、そのお袋さんを救うために、お前さんがここにいるのさ。
お袋さんと…彼女に似たもう1人の女の人とをな」
:11/02/24 18:18
:SH07B
:☆☆☆
#258 [スピーディー]
「それはだれですか?」
ユ―タが麻痺したように訊いた。
それが誰かはわかっていた。
彼女の名前は知らないが、どんな女の人かはわかっていた。
:11/02/24 18:20
:SH07B
:☆☆☆
#259 [スピーディー]
「女王だ」
と、トニ―は言った。
「彼女の名前はロ―ラ・デラシアン。
彼女はテリトリーの女王だよ」
:11/02/24 18:21
:SH07B
:☆☆☆
#260 [スピーディー]
「お袋さんの命を救うためなら、なんでもやる覚悟はあるかい?」
ユ―タは慎重に、深くうなずいた。
:11/02/24 18:45
:SH07B
:☆☆☆
#261 [スピーディー]
「よし」
そう言ってトニ―は尻ポケットに手をやって、ダ―クグリーンの壜をひっぱり出した。
キャップを取って、一口飲む―瞬間、ユ―タはギョッとした。
:11/02/24 18:47
:SH07B
:☆☆☆
#262 [スピーディー]
トニ―の体が透けて見えるような気がしたのだ。
気がしただけでなく、トニ―は幽霊のようにたしかに透明になりかけていた。
:11/02/24 18:49
:SH07B
:☆☆☆
#263 [スピーディー]
(トニ―が消えてゆく。
それともどこかへ行ってしまうのだろうか)
でも、そんなバカなことがあるはずがない。
そんなのナンセンスだ。
:11/02/24 19:21
:SH07B
:☆☆☆
#264 [スピーディー]
やがて、トニ―の体はもとどおりになった。
いまのはたぶん、目の錯覚かなにかで、一瞬だけ―
:11/02/24 19:22
:SH07B
:☆☆☆
#265 [スピーディー]
(いや、そうじゃない。 ほんの一瞬だが、彼はここにいなかったんだ!)
―幻覚を起こしたのだろう。
トニ―の目がじっとこちらに注がれている。
:11/02/24 19:25
:SH07B
:☆☆☆
#266 [スピーディー]
彼は壜をユ―タのほうに差しだしかけてから、かぶりを振った。
思いなおしてキャップを閉めると、壜を尻ポケットにもどした。
そして、トニ―の顔に微笑がもどる。
:11/02/24 19:28
:SH07B
:☆☆☆
#267 [スピーディー]
「ただ…」
…ぼくにはどうしたらいいのかわからない、と言つもりだったが、内部からの声、というより記憶が遮った。
:11/02/24 19:30
:SH07B
:☆☆☆
#268 [スピーディー]
『いや、わかっている!
初めはトニ―の力を借りなければならんだろうが、おまえにはよくわかっているはずだ、ユ―タ』
それは聞き覚えのある声 父の声だった。
:11/02/24 19:32
:SH07B
:☆☆☆
#269 [スピーディー]
「どうやればいいのか教えてくれたら、なんでもやります」
ユ―タの声は高くなったり低くなったりした。
:11/02/24 19:33
:SH07B
:☆☆☆
#270 [スピーディー]
「話してもいいことだけを話してやるよ…全部じゃないぜ。
全部知ることは、許されないことだからな」
:11/02/24 19:35
:SH07B
:☆☆☆
#271 [スピーディー]
トニ―は静かな口調で話はじめた。
やわらかくて優しい声だった。
ユ―タはときに眉をひそめ、ときには息を呑んで、聴き入った。
:11/02/24 19:36
:SH07B
:☆☆☆
#272 [スピーディー]
「おまえさんは白昼夢というやつをよく知ってるな?」
トニ―はうなずいた。
「あれは夢じゃないんだよ、ユ―タ。
白昼夢でも、夜の夢でもない。
あの場所はほんとうにあるんだ。
現実なのさ。
この世界とはまるで違うけど、やっぱり現実なんだ。」
:11/02/24 19:41
:SH07B
:☆☆☆
#273 [スピーディー]
「ぼくの母がよく言うんだけど―」
「お袋さんはテリトリーのことを知らないのさ…だけど、ある意味では、知っているとも言えるんだ。
おまえさんのおやじさんが知ってたからな。
それと、そのもう1人の男―」
:11/02/24 19:44
:SH07B
:☆☆☆
#274 [スピーディー]
「ナオト叔父さん?」
「たぶんそいつだ。
奴も知ってる。」
:11/02/24 19:46
:SH07B
:☆☆☆
#275 [スピーディー]
それから、トニ―は妙なことを言った。
「むこうでのあいつがだれか、それをわしは知ってる。」
:11/02/24 19:48
:SH07B
:☆☆☆
#276 [スピーディー]
「あのオフィスにあった写真…あれはアフリカじゃないんですね」
「アフリカじゃないさ」
「トリック写真でも?」
「トリックでもない」
:11/02/24 19:49
:SH07B
:☆☆☆
#277 [スピーディー]
「それで、ぼくの父はそこへ行ってたんですか?」
そう訊いたが、心の奥底ではその質問にたいする答えはわかっていた。
わかってはいたが、それを信じるかどうかは、また別の問題だった。
:11/02/24 19:51
:SH07B
:☆☆☆
#278 [スピーディー]
魔術の国とか、病気の女王とか、考えただけで、なんだか不安になってくる。
:11/02/24 19:52
:SH07B
:☆☆☆
#279 [スピーディー]
ユ―タが小さいときから、母はくりかえしくりかえし、白昼夢とほんとうの現実とを取り違えてはいけないと、彼に言い聞かせてきた。
その言い方がとても厳しくて、ユ―タはそんな母を怖がったほどだった。
:11/02/24 19:54
:SH07B
:☆☆☆
#280 [スピーディー]
だがいまから考えると、母自身が怖がっていたのだろう。
父と永いこと暮らしていて、しかも何一つ知らずにすごせたとは思えない。
:11/02/24 19:57
:SH07B
:☆☆☆
#281 [スピーディー]
(そんなにたくさんのことは知らなかったかもしれない…だけど、すこしばかり知っていて、それでママは怖がっていたんだ)
と、ユ―タは思った。
:11/02/24 19:58
:SH07B
:☆☆☆
#282 [スピーディー]
「そう、おやじさんはよくむこうの世界へ行ってたよ。
それと、そのもう1人の、え―と…」
「ナオト叔父さんです」
:11/02/24 20:00
:SH07B
:☆☆☆
#283 [スピーディー]
「それそれ!
そいつも行ってた。
だけどおやじさんは、むこうのことをよく知るために行ってたんだけど、そいつのほうは、金儲けを狙ってたのさ」
:11/02/24 20:01
:SH07B
:☆☆☆
#284 [スピーディー]
「ナオト叔父さんがお爺ちゃんを殺したのですか?」
ユ―タは訊いてみた。
「そんなことはわしは知らん。
それよりわしの言うことをよく聴くんだ、ユ―タ。
時間がないんだからな。
そのナオトってのはここにやってくると思うかい?」
:11/02/24 20:04
:SH07B
:☆☆☆
#285 [スピーディー]
「ひどく頭にきてるみたいだったから」
とユ―タは言った。
ナオト叔父さんがこの避暑地に現れるかもしれないと考えると、ユ―タは急に心配になってきた。
:11/02/24 20:05
:SH07B
:☆☆☆
#286 [スピーディー]
「―だとすると、もっと時間がないぜ。
そいつはお袋さんが死ぬことなんざ、たいして気にしないだろうからな。
そしてやつの" ツイナ― "も、女王ロ―ラが死ぬことを望んでいるんだから。」
:11/02/24 20:08
:SH07B
:☆☆☆
#287 [スピーディー]
「ツイナ―って?」
「こちらの世界には、テリトリーに ツイナ―(分身者) を有ってる人たちがいるのさ」
と、トニ―は言った。
:11/02/24 20:10
:SH07B
:☆☆☆
#288 [スピーディー]
「テリトリーには自分がもう1人いるってこと…?」
とユ―タが訊いた。
「おまえさんは頭が利口だな」
:11/02/24 20:11
:SH07B
:☆☆☆
#289 [スピーディー]
トニ―は話を進めた。
「大勢じゃないけどな。
なにせむこうは人口がずっと少ない―
こっちの10万人にたいしてむこうは1人、ぐらいの割合かな。
だけど ツイナ―どうしは、むこうとこっちを簡単に行ったり来たりできるのさ」
:11/02/24 20:14
:SH07B
:☆☆☆
#290 [スピーディー]
「女王って…その人がぼくの母の…ツイナ―なんですか?」
「そう、そうらしいな」
「だけど、母はいちどもむこうには―」
:11/02/24 20:15
:SH07B
:☆☆☆
#291 [スピーディー]
「そう、行ったことはない。
べつに理由はないさ」
「父には…ツイナ―はいたんですか?」
「もちろんいたさ。
いい人だった。」
:11/02/24 20:16
:SH07B
:☆☆☆
#292 [スピーディー]
ユ―タは唇をしめらした。
なんておかしな話なんだろう、ツイナ―とかテリトリーとか…。
:11/02/24 20:17
:SH07B
:☆☆☆
#293 [スピーディー]
「こっちの世界で父が死んだとき、むこうのツイナ―も死んだんですか?」
「そうだよ。
同時じゃないけど、だいたい同じ頃にな。」
:11/02/24 20:20
:SH07B
:☆☆☆
#294 [スピーディー]
「あの…?」
「なんだい?」
「ぼくにも ツイナ―が…テリトリーにいるんですか?」
トニ―がひどく真剣な目で見たので、ユ―タは背筋がゾクゾクとした。
:11/02/24 20:21
:SH07B
:☆☆☆
#295 [スピーディー]
「いや、いない。
おまえさんは1人きりなのさ。
おまえさんは特別なんだよ。
それで、そのマサトの奴―」
:11/02/24 20:23
:SH07B
:☆☆☆
#296 [スピーディー]
「ナオトです」
ユ―タは笑いそうになった。
「―なんでもいいや、とにかくあいつは、そのことを知ってるんだ。
それが奴がここへくる理由のひとつでもあり、おまえさんがここを出なけりゃならん理由でもあるのさ」
:11/02/24 20:25
:SH07B
:☆☆☆
#297 [スピーディー]
「どうして?」
ユ―タは突然声をはりあげた。
「ママが癌だとしたら、ぼくに何ができるっていうの?
癌なのに入院しないで、ここにきたのは、それは、ほかにしかたがないからで、つまり、それは―」
また涙が出そうになったが、ユ―タは懸命に堪えた。
:11/02/24 21:15
:SH07B
:☆☆☆
#298 [スピーディー]
「それはもう助からないってことでしょう?」
もう助からない。
そうなのだ。
ユ―タは心の奥底でそのことを知っていた。
母が急激に痩せるいっぽうで、目の下にいつもクマをつくっていることの真の理由を。
:11/02/24 21:17
:SH07B
:☆☆☆
#299 [スピーディー]
「それなのに」
ユ―タは涙声で言った。
「そんな夢の国なんかへ行って、なんの役に立つんですか?」
「少し喋りすぎたみたいだな」
と、トニ―は言う。
:11/02/24 21:18
:SH07B
:☆☆☆
#300 [スピーディー]
「ただ、これだけは信じてくれ、風来ユ―タ、なんの役にも立たないんだったら、わしがおまえさんに行けなんていうはずがないってことをな」
「だけど―」
:11/02/24 21:19
:SH07B
:☆☆☆
#301 [スピーディー]
「いいから。
これ以上のことは、見せるものを見せないと、話すわけにはいかないのさ。
悪いこたいわない。
さあ、おいで」
:11/02/24 21:20
:SH07B
:☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194