*トワイライト・ゾーン*
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#401 [スピーディ]
「ねえ、そこにいるんでしょう?」

そう言って、だれもいない寝室に入って行くと、バスルームのドアをノックした。

⏰:11/04/07 13:18 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#402 [スピーディ]
返事はなかった。

ドアを開けると、洗面台の上にヘアブラシが放りだされているのが目についた。

⏰:11/04/07 13:20 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#403 [スピーディ]
「どこへ行っちゃったんだろう?」

しかし内心では、よくわかっているような気がしていた。

⏰:11/04/07 13:21 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#404 [スピーディ]
自分の寝室のほうへ行き、ドアを開けた。

乱れたベッド。 ドレッサーの上にまるめられた靴下。 タオルや着替えが乱雑に投げだされている。

⏰:11/04/07 13:23 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#405 [スピーディ]
そうしているあいだもずっと、ユ―タはある場面を心にえがいていた…。

ナオト叔父さんがドアをとび込んでくると、母の腕をつかんで、階下へ引きずっていく…

⏰:11/04/07 13:24 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#406 [スピーディ]
ユ―タはリビングへもどって、こんどはソファーのうしろをのぞいた。

…引きずっていって、横のドアから外へ出ると、母を車に押しこみ、そのナオト叔父さんの目が黄色に変って…

⏰:11/04/07 13:26 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#407 [スピーディ]
すると、玄関から母があらわれた。

手には煙草をもっていた。

「あら、帰ってたの ちょっと煙草切らしたから買いに行ってたの」

⏰:11/04/07 13:30 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#408 [スピーディ]
なんだよ…もう…

ユ―タはこれまでにないほどの安堵感を覚えた。
「放浪のユ―タ、ずいぶん背が高くなったわよね 時々パパとかぶって見えるわ」

と、母は言った。

⏰:11/04/07 13:32 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#409 [スピーディ]
「いま、"放浪のユ―タ"って、ぼくのことを言ったね」

ユ―タは椅子を引っぱりだして、腰をおろした。

⏰:11/04/07 13:33 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#410 [スピーディ]
母はひどく顔色が悪く、目の下のクマはまるで傷痕のように見えた

「パパがそう呼んでなかった? 朝からどこかへ行ったきり帰ってこないから、そっとそのことを思い出したのよ」

⏰:11/04/07 13:35 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#411 [スピーディ]
「パパがぼくのことを" 放浪のユ―タ"って言ったの?」

「たしかそんな言い方よ。 あなたがまだ小さかったときだけど。 風来ユ―タ」

と、はっきり言いなおした。

⏰:11/04/07 13:36 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#412 [スピーディ]
「そうだわ。 風来ユ―タって呼んでたのよ ―あなたがハイハイしてたときからね。 なんでか知らないけど。」

ユ―タは椅子の背にもたれかかった。

何から話を切りだしたらいいのか…?

⏰:11/04/07 13:40 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#413 [スピーディ]
母が怪訝そうにこちらを見たのをきっかけに、彼は切りだした。

「ママ、もしぼくがしばらくいなくなったとしても、ママは大丈夫?」

⏰:11/04/07 13:41 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#414 [スピーディ]
「大丈夫って、どういう意味?
それに、しばらくいなくなるって、どういうことなの?」

「つまり、その ―ナオト叔父さんがうるさく言ってくるんじゃないかと思って」

⏰:11/04/07 13:48 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#415 [スピーディ]
「…そのことならなんとかできるわ」

硬ばった笑いをうかべた。
「当分の間は大丈夫よ。 いったいこれはなんの話なの、ユ―タ? あなたはどこにも行かないのよ」

⏰:11/04/07 13:50 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#416 [スピーディ]
「行かなければならないんだ」

と、ユ―タは言った。

「お願い、行かせて」

まるで小さい子が玩具をねだっているみたいな口調になった。

⏰:11/04/07 13:51 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#417 [スピーディ]
「行かなければならないんだよ」

ユ―タはまた言った。

母の顔には感情の動きがあったが、彼女はなにも言わなかった。

⏰:11/04/07 13:52 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#418 [スピーディ]
「しばらくの間は逢えなくなるよ」

ユ―タは言った。

「ぼくはママを助けたいんだ。 だから行くんだよ」

⏰:11/04/07 13:53 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#419 [スピーディ]
「わたしを助けたい?」

母の信じられないような表情の、たぶん7割ぐらいは本物だとユ―タは思った。

⏰:11/04/07 13:54 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#420 [スピーディ]
「ママの命を助けたいんだよ」

「それだけ?」

「ぼくにはできるんだ」

⏰:11/04/07 13:55 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#421 [スピーディ]
「ママがだめだといっても、ぼくはやるよ。

どうせ同じことだから、いいっていってよ」

「たいへんな掛け引き、なにしろこちらは、あなたがなんの話をしているのか、まるでわからないんだから」

⏰:11/04/07 13:57 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#422 [スピーディ]
「わかってるでしょう―想像はついてるはずだよ。
ぼくがなんの話をしてるのか、パパだったらよくわかったはずなんだから」
母の頬が赤らんだ。 口をきゅっと結ぶ。

⏰:11/04/07 13:58 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#423 [スピーディ]
「その手は卑怯だわよ、ユ―タ。 パパならわかっただろうなんてことを口実に持ち出すのは」

「わかっただろう、じゃなくて、パパはほんとうに知ってたんだよ」

⏰:11/04/07 13:59 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#424 [スピーディ]
「よくいうわね」

ユ―タはくりかえした。
「ママの命を助けたいんだ。 そのために遠くまで行って、ある物を取ってこなけりゃならないんだよ」

⏰:11/04/07 14:01 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#425 [スピーディ]
「わたしの言うこと聞いてるの?」

母がいまにも怒鳴りだしそうな気配になってくる。

(パパもぼくのことをトニ―と同じ呼び方で風来ユ―タと呼んでたんだ)

と、あらためて考える。

⏰:11/04/07 14:03 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#426 [スピーディ]
「ユ―タ ―」

「ママ、どきどきパパは、たしかに町にいたはずなのに、なんだか遠いところから帰ってきたみたいな感じがしたことなかった?」

母は眉をつりあげた。

⏰:11/04/07 14:04 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#427 [スピーディ]
「それとか、パパがいるはずの部屋に入っていってみたら、そこにはいなかった、なんてことは」

「ないわ」

と、彼女は言ったが、なんとなく語調に力がなかった。

「ないと思うわ」

⏰:11/04/07 14:06 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#428 [スピーディ]
「ぼくだって、そんな経験をしたことあったんだよ」
「そんなとき、パパはちゃんと説明してくれたわよ」

⏰:11/04/07 14:07 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#429 [スピーディ]
「パパは、ママも知ってるように、なんでも説明するのがうまかった。

だからエ―ジェントの仕事もうまく行ってたんじゃないの」

こんどは母のほうが黙りこんだ。

⏰:11/04/07 14:09 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#430 [スピーディ]
「パパがどこへ行ってたのか、ぼくは知ってるんだよ」

ユ―タは言った。

「ぼくも行ってきたんだ。 今朝、むこうへ行ったんだよ。

そしてもう1回行けば、ママの命を助けることができるんだよ」

⏰:11/04/07 14:10 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#431 [スピーディ]
「わたしの命はあなたに助けてもらう必要なんかないわ。

だれにも助けてもらう必要はないわよ」

ユ―タはなにごとか呟いた。

⏰:11/04/07 14:12 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#432 [スピーディ]
「なんて言ったの?」

「そんなことはないよ、って言ったんだ」

そして、母の目を見返した。

⏰:11/04/07 14:12 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#433 [スピーディ]
「だったら、どんなふうにわたしの命を助けてくれるのか訊きたいわね」

「答えられないよ。 いまはまだよくわからないんだ。

ママ、ぼくはいまのところ学校に行ってないんだから…だから、いいでしょう?

1週間かそこらだと思うよ」

⏰:11/04/07 14:14 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#434 [スピーディ]
またも母の眉が上がった。

「もうすこし長いかもしれないけど」

と、ユ―タは認めた。

⏰:11/04/07 14:15 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#435 [スピーディ]
「あなた、頭がおかしくなってるんだわ、きっと」

そうは言ったものの、そこには彼を信じたいという気持の動きがあらわれていた。

⏰:11/04/07 14:16 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#436 [スピーディ]
そしてつぎの言葉がそのことを証明した。

「もしも ―もしも、わたしまで頭がおかしくなってあなたを行かせる気になったとしても、危険なことはぜったいにないという保証がなければだめよ」

⏰:11/04/07 14:18 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#437 [スピーディ]
「パパはいつも帰ってきたじゃないか」

「あなたを危険な目に遭わせるくらいなら、わたしが死んだほうがましだわ」

その言葉には真実がこめられていた。

⏰:11/04/07 14:19 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#438 [スピーディ]
「できるだけ連絡するよ。
でも、しばらく連絡がなくても心配しないで。

パパと同じようにかならず帰ってくるんだから」

「まるで正気じゃないわね」

と、母は言った。

⏰:11/04/07 14:21 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#439 [スピーディ]
「このわたしも含めてね。
そこへいったいどうやって行くの?

それはどこにあるの?

あなた、お金は充分持ってるの?」

「必要なものは何でも持ってるよ」

⏰:11/04/07 14:22 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#440 [スピーディ]
「ほとんど歩いて行くことになると思うんだ。

いまはまだあまり話せないんだよ、ママ」

「風来ユ―タ」

と、母は言った。

⏰:11/04/07 14:23 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#441 [スピーディ]
「なんだかわたしまでが本気みたいにさせられて…」

「そうだよ、それでいいんだ」

ユ―タはうなずいた。

⏰:11/04/07 14:24 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#442 [スピーディ]
(きっとむこうの女王が知ってることが、いきらかママにも伝わるんだ。

だからこんなに簡単に、承知する気持になれたんだよ)

「ぼくだってそうなんだよ。
それでいいんだ」

⏰:11/04/07 14:26 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#443 [スピーディ]
「だって…わたしが何を言っても、あなたは行くというんだから…」

「そうだよ」

「…だったら、何を言ってもしかたがないわね」

⏰:11/04/07 14:28 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#444 [スピーディ]
母はきっとユ―タの顔を見据えた。

「でも、できるだけ早く帰ってきてね。

いますぐ出かけるわけじゃないんでしょう?」

⏰:11/04/07 14:29 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#445 [スピーディ]
「いや」

ユ―タは深く息を吸いこんだ。

「いますぐ行くんだよ。 できるかぎり早く」

⏰:11/04/07 14:30 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#446 [スピーディ]
「しかたがないわね、あなたは 海堂ジュンノスケの息子なんだから。

べつに女の子ができたわけじゃないわね…?」

と、つくづくユ―タの顔を見て、

⏰:11/04/07 14:32 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#447 [スピーディ]
「女の子じゃないわ。 そうよね。

わたしの命を救ってくれるのよね。

じゃあ行きなさい」

かぶりを振った。

その目にキラリと光るものがあった。

⏰:11/04/07 14:34 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#448 [スピーディ]
「行くのなら、行っていいわ。

明日、連絡ちょうだい」

「できたらね」

ユ―タは立ちあがった。

⏰:11/04/07 14:35 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#449 [スピーディ]
「できたら。

そう、もちろんだわ。ごめんなさいね」

母は目を伏せたが、その目は焦点がさだまらず、何も見ていなかった。

⏰:11/04/07 14:36 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#450 [スピーディ]
ユ―タは母の肩をそっと抱き寄せた。

母のほうはそれにたいして、できるだけ明るい表情をつくってみせた。

⏰:11/04/07 14:38 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#451 [スピーディ]
そっと離れ、母の目がユ―タの顔にもどって焦点を結んだ。

「気をつけてね」

「だいすきだよ」

「そんなセリフはなしよ」
ちょっと顔をほころばせた。

⏰:11/04/07 14:40 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#452 [スピーディ]
「行きなさい、ユ―タ、わたしの気が変わらないうちに」

「それじゃ」

くるりと背を向け、玄関の取っ手に手をかけた。
頭をきゅっと締め付けられているような気がした。

⏰:11/04/07 14:42 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#453 [スピーディ]
ユ―タはふと荷物を忘れるところだと思いだし、自分の部屋に戻りナップサックを肩にかけた。

「忘れもの?」

リビングから母のあきれた笑い声が聞こえた。

「うん」

ユ―タはそう言いながら、メモ用紙に、ホテル備えつけのエンピツで、母に言いたい言葉を3つ書きつけた。

⏰:11/04/07 14:49 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#454 [スピーディ]
<Font Color=Pink>ありがとう 愛してるよ かならず帰るからね </Font>

⏰:11/04/07 14:51 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#455 [スピーディ]
ユ―タはウォーク通りを歩いて行きながら、どこで "フリップ(跳躍)" したらいいのだろうかと考えていた。

"フリップ(跳躍)" という言葉がぴったりだという気がした。

⏰:11/04/07 14:57 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#456 [スピーディ]
いずれにしろテリトリーにフリップする前に、もういちどトニ―に会いたいと思った。

もういっぺんトニ―と話してみなければ、いったいどこへ行って、だれと会って、何を探すのか、まるで漠然としすぎているのだ。

⏰:11/04/07 14:59 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#457 [スピーディ]
『…水晶体のようなもの』

と、トニ―は言ったが、トワイライト・ゾーンについてのヒントはたったそれだけなのだろうか。

⏰:11/04/07 15:00 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#458 [スピーディ]
ゾーンというくらいだから何か空間のようなものだと思ったが、どうやら物のようだった。

それと 『取り落としたらオジャンだ』

ということも言っていたが。

⏰:11/04/07 15:01 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#459 [スピーディ]
あまりにわからないことだらけで、ユ―タは不安でしかたがない心境だった。

それと同時に、この場ですぐにでも 魔法のジュースでフリップできるのだと思うと、やりたくてしかたがなかった。

⏰:11/04/07 15:04 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#460 [スピーディ]
もういちどあのテリトリーを見たい、というやむにやまれぬ憧れのようなものが衝きあげてくる。

あの澄んだ空気をもういちど呼吸したい、と思った。

⏰:11/04/07 15:06 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#461 [スピーディ]
そしてポケットから壜を取りだし、おぞましい魔法のジュースを飲みそうになったとき、すぐそばの木の根方に、トニ―が座っているのに気がついた。

その横には、茶色の紙袋が置いてあり、紙袋の上にレバーソ―セ―ジとサンドイッチがのっていた。

⏰:11/04/07 15:13 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#462 [スピーディ]
「いよいよ行くんだな」

トニ―はユ―タを見上げて、にっこりした。

「支度もできてるようだな。 お別れはいってきたかい?

おまえさんが当分帰ってこないことを、お袋さんは知ってるんだな?」

⏰:11/04/07 15:14 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#463 [スピーディ]
ユ―タがうなずくと、トニ―はサンドイッチを差し出した。

「お腹はすいてないかい? わしには多すぎるんでね」

なにも食べずに出てきたユ―タはありがたくほおばった。

⏰:11/04/07 15:16 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#464 [スピーディ]
「あなたに会って、さよならをいいたかったんです」

「ユ―タが出かける、旅に出る」

トニ―は長い顔を傾けて、歌うように言った。

⏰:11/04/07 15:17 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#465 [スピーディ]
「さあ、少年の旅立ちだ」

「トニ―?」

「おまえさんに渡すものを持ってきたんだよ。

この紙袋に入ってるけど、見てみるかい?」

「トニ―?」

⏰:11/04/07 15:19 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#466 [スピーディ]
トニ―はユ―タを見あげた。

「父がぼくのことを "風来ユ―タ" と呼んでいたことを、知ったんですか?」

⏰:11/04/07 15:20 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#467 [スピーディ]
「たぶん、どこかで聞いたかな」

トニ―はニヤリとした。
「さあ、わしが持ってきたものを見てみな。

それから、まずどこへ行ったらいいのか、それも話しておかんとな」

⏰:11/04/07 15:52 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#468 [スピーディ]
ユ―タはほっとして、トニ―が座っている木のそばへ近寄っていった。

老黒人は、紙袋をそばに引き寄せた。

「そら、クリスマスのプレゼントだ」

⏰:11/04/07 15:54 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#469 [スピーディ]
そう言って、なかから古くて擦りきれたペーパーバックの本を取りだした。

それは昔の道路地図だった。

「ありがとう」

ユ―タはトニ―の手から本かを受けとった。

⏰:11/04/07 15:57 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#470 [スピーディ]
「むこうには地図というやつがないからな。 こいつでできるかぎり確かめながら行くといい」

「オ―ケイ」

ユ―タはナップサックを肩からおろして、大判のペーパーバック本をつっこんだ。

⏰:11/04/07 15:58 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#471 [スピーディ]
「それからこいつは、この荷物袋んなかに入れちゃいかんぜ」

せう言うと、作業シャツの左ポケットに指をつっこんで、三角形の白い物をつまみだした。

⏰:11/04/07 16:00 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#472 [スピーディ]
「こいつはポケットに入れとくんだ」

ユ―タは差しだされた物がギター・ピックだということに、気づいた。

⏰:11/04/07 16:01 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#473 [スピーディ]
「こいつを大事にしろよ。 こいつをある男に見せれば、そいつがおまえさんを助けてくれる」

ユ―タはギター・ピックを指でつまんで引っくり返してみた。

こんなギター・ピックを見たのははじめてだった。

⏰:11/04/07 16:03 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#474 [スピーディ]
それは象牙で作られていて、精巧な模様が彫り込まれ、そのまわりには地球上のものではないような不思議な文字が刻まれている。

通常のギター・ピックにしては重すぎるようだった。

⏰:11/04/07 16:05 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#475 [スピーディ]
「その男って?」

ユ―タはそれをズボンのポケットにしまいながら訊いた。

「顔に大きな傷がある―」

⏰:11/04/07 16:06 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#476 [スピーディ]
テリトリーに行ったらすぐに会えるさ。

そいつは親衛隊の隊長で、おまえさんが会わなければならん女の人のところへ連れてってくれる」

⏰:11/04/07 16:08 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#477 [スピーディ]
「その女の人に会えば、おまえさんがこれをやらなければならん理由もわかるはずだ。

むこうのわしの友だちは、おまえさんが何をしようとしているのか、すぐに察して、その女の人に会えるように手筈してくれるのさ」

⏰:11/04/07 16:10 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#478 [スピーディ]
「その女の人が…」

「そう」

と、トニ―。

「もうわかってるだろ」

「女王なんですね」

⏰:11/04/07 16:11 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#479 [スピーディ]
「その人をよく見るんだぞ、ユ―タ。 彼女をしっかりと見るんだ、わかったか?」

それから最後に、

「トワイライト・ゾーンを取ってくるんだぞ」

と、言った。

⏰:11/04/07 16:15 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#480 [スピーディ]
「大切にして運んでくるんだ。 生易しい仕事じゃないけど、やり遂げなくちゃならん」

ユ―タはトニ―のシワだらけの顔に見入りながら、彼が言ったことを懸命に反芻していた。

⏰:11/04/07 16:17 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#481 [スピーディ]
顔に傷がある男。 親衛隊の隊長。 女王。 生易しい仕事じゃない。

「わかりました」

そう言ったものの、ユ―タは急に母のそばへ逃げて帰りたくなった。

⏰:11/04/07 16:19 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#482 [スピーディ]
トニ―が温か味のある微笑をうかべた。

「ようし。 風ユ―タの用意ができた。

さあて、あのスペシャルジュースを飲む時がきたようだぜ」

「そうですね」

⏰:11/04/07 16:20 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#483 [スピーディ]
ユ―タは尻のポケットからダ―クグリーンの壜を出して、キャップを取った。

じっとこちらを見ているトニ―の色の薄い目を見返した。

⏰:11/04/07 16:22 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#484 [スピーディ]
「できるときにはトニ―が助けに行くからな」

ユ―タはうなずくと、目をつむって、壜を口にもっていった。

⏰:11/04/07 16:23 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#485 [スピーディ]
甘ったるい腐ったような匂いが鼻をついて、ほとんど反射的に喉が閉塞してしまいそうになった。

壜の尻をぐいと持ちあげる。

⏰:11/04/07 16:25 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#486 [スピーディ]
腐臭が口の中に流れこんでくる。

胃がきゅっと引きつった。

思いきって、ぐっと呑みこんだ。

焼けつくような感覚が喉を降っていった。

⏰:11/04/07 23:12 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#487 [スピーディ]
ユ―タはまだ目を開けないうちに、あたりに漂う豊潤で強烈な匂いを感じて、すでにテリトリーにフリップしたことを知った。

それは、馬や、草や、生肉の匂いであり、澄んだ大気そのものの匂いだった。

⏰:11/04/07 23:14 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#488 [スピーディ]
第2部 試煉の道

⏰:11/04/07 23:17 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#489 [スピーディ]
ユ―タのすぐ目の前の草の葉は、丈が高く、硬そうで、サ―ベルのようだった。

風を切りはしても、なびきはしない。

⏰:11/04/07 23:30 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#490 [スピーディ]
ユ―タはうめきながら頭を上げた。

胃には液体がよどんでいるような不快感があり、額と目がひりひりした。

⏰:11/04/07 23:31 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#491 [スピーディ]
どうにか膝をつき、やっとの思いで立ち上がる。

荷馬車が一台、ガラガラと音を立てながら、ほこりっぽい道をこちらに向ってやってきた。

⏰:11/04/07 23:32 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#492 [スピーディ]
その御者がじろじろと彼のほうを見ている。

顎ひげを生やし、体形も大きな男だった。

ユ―タはかるく会釈しながら、相手をできるだけよく観察しようとした。

⏰:11/04/07 23:34 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#493 [スピーディ]
まっすぐ体を伸ばすと、もう気分は悪くなかった。

それどころか、東京を離れて以来、こんなにいい気分になったのははじめてだった。

⏰:11/04/07 23:36 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#494 [スピーディ]
心も不思議なくらい体と調和して、バランスがとれている感じがした。

テリトリーの暖かいそよ風が、やさしく頬をなでる。

⏰:11/04/07 23:37 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#495 [スピーディ]
ユ―タは両手で顔をおおって、初めて目にするテリトリーの住人を指の間からのぞいて見た。

御者が話しかけてきたら、なんと答えればよいのだろう。

⏰:11/04/07 23:39 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#496 [スピーディ]
御者はユ―タから目を離し、馬に鞭をいれ、ユ―タの目の前を通りすぎていった。

荷台には生の肉塊やチ―ズの山が積まれていた。
それらが混じった強烈な臭気がユ―タの鼻を襲った。

⏰:11/04/07 23:44 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#497 [スピーディ]
そして、荷馬車が通り過ぎていった道のまんなかに立って、ユ―タは荷馬車が坂を登ってゆくのを見送った。

それからそのあとを追って、北へと歩きだした。

⏰:11/04/07 23:46 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#498 [スピーディ]
坂道を途中まで行ったころ、大きなテントのてっぺんがそびえているのが見えてきた。

あれがめざす場所なのだろう、と思った。

⏰:11/04/07 23:51 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#499 [スピーディ]
この前の時に足を止めたクロイチゴの茂みを通すぎた。

さらに先へ進むと、テントの全体が見えてきた。

⏰:11/04/07 23:53 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#500 [スピーディ]
それは四方に広がった、まさに巨大な天幕で、左右に長い翼が伸び、門と中庭まであった。

まるでちょっとした小さな宮殿だと思った。

⏰:11/04/07 23:55 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


#501 [スピーディ]
その巨大な天幕の宮殿のあたりを行き来する人びとは、なかには金持らし、きらびやかな服装をしている者もいるが、多くはユ―タと似たり寄ったりの身なりだった。

⏰:11/04/08 00:00 📱:SH07B 🆔:☆☆☆


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