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#262 [輪廻◆j6ceQ96kak]
第3話【消失なる射影】
このカメラで撮影された者は1週間以内に必ず死ぬ。
その名も
『デスカメラ』
これは数年前、村井響歌が中学生の時の話である―
:11/07/06 11:42 :T004 :poCJnCg.
#263 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中学2年生の夏、響歌の中学校ではよからぬ噂が広まっていた。
生徒A『ねえ、デスカメラって知ってる?』
生徒B『もち! そのカメラで写された人は1週間以内に死ぬんだよね』
生徒C『そのカメラ、普通じゃ手に入れられないんだって。闇市場っていう携帯サイトで頼めるらしいよ』
響歌『くだらない』
そんな噂で持ちきりの中、響歌は興味なさそうな顔で教室の椅子に座っていた。
:11/07/06 11:48 :T004 :poCJnCg.
#264 [輪廻◆j6ceQ96kak]
くだらない話ほど、みんな真面目に聞きたがる。
授業ではいつもふざけて先生の話を聞かないくせに、といつも心の声を発していた。
響歌の親友、井本七瀬もその話の虜であった。
七瀬『ねえ響歌! 響歌!』
気づくと机の前に七瀬の顔。
響歌『なに?』
どうせ例のカメラの話だろうと、そっけない表情で返事をした。
:11/07/06 11:58 :T004 :poCJnCg.
#265 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『デスカメラ…』
七瀬がここまで言うと
響歌『はいはい、私そういうの興味ないから』
七瀬『なにさー! まだ何も言ってないじゃん!』
言ってなくても、周りが話しているのを散々聞いている響歌には、今から七瀬が言う事を全て把握していた。
響歌『そういうの馬鹿らしくない?』
容赦ない響歌の言葉に、七瀬の顔は不機嫌な表情に一瞬にして変わった。
:11/07/06 12:07 :T004 :poCJnCg.
#266 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『とかいって…響歌、ホントは怖いんじゃないの?』
響歌『…は? なんでそうなるの?』
ここで二人の険悪ムードに割って入ってきたのは…
蓮『お前ら怖い顔してるけど、どうかしたの?』
クラス一の明るい男、桐谷蓮だった。
七瀬『あ、キリ。聞いて聞いて! 響歌ね、デスカメラが怖いんだって』
:11/07/07 20:45 :T004 :sszp4/nU
#267 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『デスカメラ…ああ! 今流行ってる都市伝説だろ?』
七瀬『都市伝説じゃないよ! 実際そのカメラ売ってるらしいし』
蓮『へー。どこに売ってんの?』
七瀬『闇市場っていうサイト。あたし携帯もパソコンもないから、そのサイト見た事ないんだよねー』
すっかり二人の世界になってしまった。
響歌は勢いよく席を立って、教室を出た。
:11/07/07 20:49 :T004 :sszp4/nU
#268 [輪廻◆j6ceQ96kak]
向かったのは屋上。
休み時間などに一人になりたい時は必ずここへ来る。
響歌にとっては最高の息抜き場所だった。
響歌『デスカメラかぁ…』
雲を見上げてポツリとつぶやく。
写された者は死ぬ―
この言葉が頭を駆け巡る。
響歌『やっぱ馬鹿らし…』
再び雲に向かって言った。
:11/07/07 20:54 :T004 :sszp4/nU
#269 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校が終わり、いつも一緒に帰っている七瀬に声をかけた。
響歌『ああ終わったー! 今日も眠かったよね』
七瀬『……』
響歌『ナナ? 聞いてる?』
七瀬『もう話しかけないでくれない?』
響歌『…え?』
衝撃的な発言に、一瞬聞き間違えたのかと思った。
:11/07/07 21:02 :T004 :sszp4/nU
#270 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『そういう事だから。悪いけど今日から一人で帰って』
七瀬の裏を返したような態度に、響歌はそれ以上何も言えなかった。
帰り道、響歌はずっと七瀬の事を考えていた。
出会ったのは小学校5年の時。
それから3年間、かけがえのない親友としてやってきた七瀬の突然の絶交宣言。
:11/07/07 21:09 :T004 :sszp4/nU
#271 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ナナ…私が悪いの? 私が、あの噂を否定したから?』
自分のあの時の発言に後悔した。
それからしばらくの間、学校はデスカメラに関する噂で持ちきりだった。
もちろん七瀬とはそれから全く口を聞いていない。
ちょくちょく話しかけたりもしたが、向こうは完全無視を続けた。
:11/07/07 21:14 :T004 :sszp4/nU
#272 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休日は部屋に閉じこもるようになった響歌。
七瀬が携帯電話を持つようになったが、連絡先は教えてくれず、謝罪のメールを送ろうにも送れない状態が続く。
ある日、学校の休み時間にて七瀬達の話を偶然耳にした。
七瀬『ねえ! 闇市場ってサイト発見しちゃったさー!』
生徒A『マジで? 見して見して!』
:11/07/07 21:25 :T004 :sszp4/nU
#273 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『もう見つけるのに苦労したよ! おかげで寝不足〜』
生徒B『でさ…デスカメラはあったの?』
七瀬『あったんだけどさ…なんか注文が殺到してるみたいで品切れだったの…まじショック!』
生徒B『あらら…残念。でもさ、注文殺到してるって事はウチの学校でも頼んでる人多いのかな?』
:11/07/07 21:29 :T004 :sszp4/nU
#274 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『だとしたら危ないよね! 盗撮とかされたら洒落にならないよ〜』
生徒B『写されないように気をつけないとね!』
…と、冗談混じりの笑い声で話す七瀬達を見た響歌は、一瞬だけ悪魔のような発想をした。
響歌『写された人が死ぬ…』
響歌の視線の先には七瀬。
響歌『…って何考えてんだろ私…』
:11/07/07 21:35 :T004 :sszp4/nU
#275 [輪廻◆j6ceQ96kak]
絶交しているとはいえ、少し前までは親友だった七瀬。
さすがに死までくると洒落にならないと思った響歌は、デスカメラの事を忘れる事にした。
しかし、学校では毎日のようにデスカメラの話題があがる為、忘れようにも忘れられないでいた。
休み時間、桐谷蓮が響歌に話しかけてきた。
:11/07/07 21:39 :T004 :sszp4/nU
#276 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『お前、最近井本とつるまないのな。喧嘩でもしたの?』
響歌『…別に』
蓮『女同士って色々あって怖ェよな』
響歌『何か用?』
蓮『昨日オレの兄ちゃんがさ、デスカメラだっけ…それを注文したんだってよ』
響歌『…えっ!!』
思わず大きい声を出して席を立った瞬間、周りの視線が一斉に響歌に集中する。
:11/07/07 21:45 :T004 :sszp4/nU
#277 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『おい、どした?』
響歌『…ちょっと来て!』
そう言って顔を赤くしながら教室を出た。
蓮『おいどこまで行くんだよ?』
屋上へと蓮を呼んだ。
響歌『さっきの話…ホントなの?』
蓮『さっきの話って?』
響歌『だから…デスカメラ』
蓮『ああ。兄ちゃんの学校でも有名になってんだってさ』
:11/07/07 21:48 :T004 :sszp4/nU
#278 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『それ、もう届いたの? ていうかそもそもお金ってかかるの?』
蓮『なんでお前がそんな事気にすんだよ? お前、ただの噂だって興味なさそうに言ってたじゃん』
響歌『そ、そうだけど…』
先ほどの七瀬達の話を聞いた限り、噂では片付けられないだろうと内心感じつつあった。
:11/07/07 21:53 :T004 :sszp4/nU
#279 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『えーと…確か金はかからなかったって言ってたな』
響歌『もしかして、そんな殺人カメラがタダで売ってるって事…?』
蓮『悪いな。そこらへんの事オレもよくわからねえんだ。自分で調べてくれ。な?』
蓮は小さく手を振って屋上を後にした。
その時、好奇心が響歌の心をくすぐった。
:11/07/07 21:59 :T004 :sszp4/nU
#280 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その夜、家で携帯電話を片手に机に向かった響歌は普段はあまり見ないネットを繋いだ。
『闇市場』
で検索。
何件もの検索結果が見つかった。
しかし次々にクリックするも、どれも閉鎖しているらしくページが見つからない状態が続いた。
1時間…
諦めかけた時、一つのページが突如現れた。
:11/07/07 22:06 :T004 :sszp4/nU
#281 [輪廻◆j6ceQ96kak]
闇市場
あなたにとってお得な物、売ります―
入会費用、商品購入における金利などは一切頂きません―
ただし、注文いただきましたお客様の個人情報は当サイトの方でお預かりさせていただきます―
また、当サイトの事は内密にお願いします―
お約束が守れない場合は購入履歴から個人情報を特定し第三者に提供させていただきます―
購入はあくまで自己責任でお願いします―
:11/07/09 02:53 :T004 :C7bXKdJM
#282 [輪廻◆j6ceQ96kak]
注意
商品のキャンセル、商品に対するクレームなどは一切承りません。
購入された商品で万が一、何かトラブルが起こった場合も当サイトは一切の責任を負いません。
…と書かれていた。
響歌はその場で引き返そうとしたが好奇心が抑えられず、気がつくと商品リストのページを開いていた。
:11/07/09 02:57 :T004 :C7bXKdJM
#283 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その中で今、学校中で話題になっているデスカメラの名前を発見する。
しかし
『品切れ中。入荷日未定』
との表示。
他の商品もほとんどが品切れ状態。
響歌『ふう…』
小さなため息をつき、電源ボタンを押して携帯電話を閉じた。
:11/07/09 03:06 :T004 :C7bXKdJM
#284 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数日後の休日―
『ピンポーン』
家に鳴ったインターホンが全ての始まりとなる―
:11/07/09 03:09 :T004 :C7bXKdJM
#285 [輪廻◆j6ceQ96kak]
母『…響歌、アンタに何か届いてるよ』
響歌の母親が小さな箱を抱えて部屋に入ってきた。
響歌『…なにそれ』
母『知らないよ。アンタが頼んだんでしょ?』
母親はそう言うが、響歌には全く見に覚えがなかった。
首をかしげながらも手渡されたダンボールを開ける。
響歌『…え? これって…』
それは黒い奇抜なデザインのインスタントカメラだった。
:11/07/09 03:18 :T004 :C7bXKdJM
#286 [輪廻◆j6ceQ96kak]
箱の中の隅には、予備と思われるフィルムも1つ同梱されていた。
響歌『なんで…? 私、こんなの頼んでなんか…』
ふと箱の底に、二つ折りにされた紙が目に入った。
ゆっくり開くと…
:11/07/09 03:25 :T004 :C7bXKdJM
#287 [輪廻◆j6ceQ96kak]
村井響歌 様
今回は当サイトをご利用、商品をご注文いただきまして誠にありがとうございます。
ご注文いただいた内容は以下の通りです。
商品名:デスカメラ
注文日:8月22日(月)
商品No:42219
尚、商品のキャンセルは承っておりませんのでご了承ください。
詳しくは当サイトの注意事項をご覧ください。
闇市場.com
:11/07/09 03:36 :T004 :C7bXKdJM
#288 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『は…? 嘘…』
注文したはずがないのに注文した事になっている。
そして実際に商品が届いた。
響歌『なんで、なんで、なんで…!?』
頭の中でパニックを起こしかけていた。
電話で問い合わせしようにも、電話番号が書かれていない。
サイトへ繋ごうにも、ページをブックマークしていなかった為、再び探すのには時間がかかる。
そもそもまた見つかるという保証もない。
:11/07/09 03:45 :T004 :C7bXKdJM
#289 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『そ、そうだよ…捨てちゃえばいいんだよね…』
このカメラで写された者は死ぬ―
この言葉が頭から離れない。
好奇心と罪悪感が響歌の心を揺るがす。
響歌『し、死ぬなんて嘘に決まってるよね…』
自分に言い聞かせる。
結局捨てられないまま机の引き出しの中にカメラをしまい、翌日を迎えた。
:11/07/09 03:50 :T004 :C7bXKdJM
#290 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校では、相変わらずデスカメラに関する話題。
休み時間を知らせるチャイムが鳴ってからすぐに桐谷蓮が響歌の席に近づいてきた。
蓮『よっ。そういえばデスカメラ、昨日家に届いたぜ』
響歌『ほ、ホントに!?』
思わず身を乗り出す。
蓮『でさ、兄ちゃんの奴、自分を撮っちゃって…』
:11/07/09 03:54 :T004 :C7bXKdJM
#291 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その時、蓮の言葉を聞いた七瀬とその友達数人がバタバタとこっちに向かってきた。
七瀬『キリ! 今の話、ホント!?』
蓮『…うわびっくりした! ああホントだけど』
七瀬は目の色をとことん輝かせている。
七瀬『やばいんじゃないの〜? キリのお兄さん』
蓮『大丈夫だと思うよ。カメラで写されたくらいで死ぬなら、とっくに事件になってサイトも閉鎖されてるって言ってたし』
:11/07/10 15:58 :T004 :AwgsUca.
#292 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『あ、それなんだけど…サイトっていくつもあったらしいよ。ほとんどが摘発されて運営者も逮捕されたって』
蓮『でもそのカメラで人が死んだってニュース聞いた事ないだろ?』
七瀬『そ、それはそうだけどさ…』
反論できない七瀬を見て響歌は少しだけ、いい気味だなと思った。
:11/07/10 16:12 :T004 :AwgsUca.
#293 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『そんなもんだよ、都市伝説ってさ』
同時にあっけらかんとした蓮の表情を見て安心もした。
七瀬『とにかく! お兄さんに何かあったら教えてね』
そう言って友達を引き連れて教室を出ていった。
:11/07/10 16:16 :T004 :AwgsUca.
#294 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『あいつの目、やばかったな』
響歌『自分を見失わなきゃいいけど』
蓮『明日カメラ持ってこようかな。借りれたらだけどな』
響歌『やめときなよ。また七瀬がうるさいよ』
蓮『…だな!』
顔を見合わせて笑いながら言った。
:11/07/10 16:21 :T004 :AwgsUca.
#295 [輪廻◆j6ceQ96kak]
この流れで響歌の家に届いたカメラの事を言おうとしたが、タイミングが掴めずに結局言えなかった。
下校時間―
帰ろうとした矢先、元親友の七瀬が久しぶりに響歌に話しかけた。
七瀬『響歌、ちょっといい?』
響歌『……もう私とは話さないんじゃなかったの?』
:11/07/10 16:26 :T004 :AwgsUca.
#296 [輪廻◆j6ceQ96kak]
帰り道、しばらくの沈黙が続いた後、七瀬が口を開いた。
七瀬『…カメラ届いた?』
響歌『……は? どういう事?』
七瀬『ごめん! 悪いとは思ったんだけどさ…。あのデスカメラ一つだけあって、配送先に思わず響歌の名前と家の住所使っちゃったんだよね』
響歌『…………え?』
突然の告白に、理解するのにしばらく時間がかかった。
:11/07/10 16:34 :T004 :AwgsUca.
#297 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『な、なんで! 馬鹿じゃないの!?』
やっと理解した響歌は道の真ん中で七瀬に怒鳴る。
しかし七瀬の表情からは反省している様子は感じられない。
七瀬『別にいいじゃん。どっちに届いても同じ事だよ』
響歌『ちょっと! 何、開き直ってんの!?』
七瀬『うるさいなぁ…そんな大きい声出したら、なんか恥ずかしいじゃん』
響歌は七瀬の態度と言葉に、怒りが頂点に達した。
:11/07/10 16:42 :T004 :AwgsUca.
#298 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あり得ない! アンタに縁切ってもらえてせいせいしたわ!』
七瀬『響歌、落ち着きなよ〜。ごめんね?』
響歌『もう話しかけないで! 最低!』
走り去ろうとする響歌の腕を七瀬の手が素早く掴んだ。
七瀬『ちょっと待ってよ。響歌の家にデスカメラ取りに行くからさ』
:11/07/10 16:46 :T004 :AwgsUca.
#299 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『勝手にすれば!』
気まずい雰囲気の中、響歌は七瀬の一歩前を歩いて家に向かった。
七瀬『お邪魔しま〜す』
響歌『取りに行ってくるからそこにいて』
七瀬を玄関で待たせ、響歌は部屋にカメラを取りに行った。
入っていたダンボールに全部戻し、箱の口にガムテープを貼って元通りにし、それを七瀬に渡した。
:11/07/10 16:53 :T004 :AwgsUca.
#300 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『…ありがと。もう話しかけないから安心して。でも本当に悪いと思ってるから』
響歌『……早く帰ってよ』
再び部屋に戻るなり、制服も脱がずにベッドにうつ伏せになって寝転んだ。
響歌『悪いと思ってるなら最初からすんなよ。ばーか』
やがて眠気がやってきて、そのまま眠りについていた―
:11/07/10 16:58 :T004 :AwgsUca.
#301 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それからは、学校などでデスカメラに関する死の話は一切出なかった。
響歌は拍子抜けしたと同時に安心したと思っていたが―
その翌日、朝学校に来てみると、そこに桐谷蓮の姿はなかった。
いつもは誰よりも早く来ている事が多い彼。
やがて朝の号令のチャイムが鳴る。
結局、蓮が登校してくる様子はなかった。
:11/07/12 23:17 :T004 :r0z5wdWM
#302 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そこで心配した蓮の友達の一人が先生に尋ねた。
男子生徒が、桐谷はどうしたのかと聞くと
先生『桐谷はしばらく学校を休む事になった』
先生はそう重い表情で言い、それ以上は口にしなかった。
響歌は直感的に思った。
『蓮に何かあったんだ』
…と。
:11/07/12 23:25 :T004 :r0z5wdWM
#303 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それからも蓮の事が気がかりで授業も集中できないでいた。
休み時間―
いてもたってもいられなくなった響歌は急ぎ足で職員室へと向かった。
胸騒ぎがしてならなかったのだ。
響歌『…真島先生はいますか?』
先生『おお、村井。どした? そんな急いで…』
先生はコーヒーカップにコーヒーを注いでいる所だった。
:11/07/12 23:30 :T004 :r0z5wdWM
#304 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ちょっといいですか?』
先生を廊下に呼び出す。
先生『なんだなんだ? 何か相談事か?』
響歌『蓮…桐谷君に何かあったんですか?』
単刀直入に言うと、途端に先生の表情が曇った。
先生『どうしてそう思うんだ?』
響歌『朝、先生が険しい顔してたから…』
:11/07/12 23:39 :T004 :r0z5wdWM
#305 [輪廻◆j6ceQ96kak]
先生『参ったな…。いやな、言ったら騒ぎになると思って言わなかったんだ』
響歌『やっぱり何かあったんですね!?』
先生『帰りの号令の時に改めて言うよ。だからホラ、教室戻って戻って!』
背中を押されて、仕方なく教室に戻る響歌。
:11/07/12 23:43 :T004 :r0z5wdWM
#306 [輪廻◆j6ceQ96kak]
席に着くと、七瀬とその友達数人が響歌の机の前に集まってきた。
七瀬『ねえ響歌…。キリに何かあったのかなぁ…』
響歌『…さあね。ところで話かけないって言ったのそっちだよね?』
七瀬『ぷっ。ちょっと、そんな怖い顔しないでよ。心配だと思ってさ』
響歌『…心配?』
七瀬はここで思わぬ言葉を発した。
:11/07/12 23:48 :T004 :r0z5wdWM
#307 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『あれ? 響歌ってキリの事が好きなんでしょ?』
響歌『……はっ?』
七瀬『だから心配するかと思ってたんだけど…そうでもなかったね。キリかわいそ〜』
七瀬が笑いながら言うと、他の友達数人も馬鹿にするように笑い出す。
響歌『ちょっと待ってよ、意味不明。誰があんなやつ…』
七瀬『だって二人、最近いつも一緒にいるじゃん』
:11/07/12 23:54 :T004 :r0z5wdWM
#308 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あれは……』
七瀬『ねえ、響歌。写真撮ったげようか?』
そう言って自分のバッグから取り出したのは、響歌にも見覚えのあるデスカメラだった。
響歌『ちょっと、なに考えてんの?』
七瀬『あれ? 響歌ってデスカメラの事、バカバカしいとか言って信じなかったよね? だから問題ないじゃん?』
七瀬のこの言葉に、響歌は思い知らされる。
『口は災いのもと』
という言葉に…。
:11/07/13 00:00 :T004 :zQgRlO2E
#309 [輪廻◆j6ceQ96kak]
先生『ほらほら授業始まるぞー!』
助け舟が出されたのは、七瀬がカメラのレンズを響歌に向けた時だった。
響歌『……』
顔では余裕な表情を見せていた響歌だが、内心では動揺を通り越していた。
七瀬は慌ててカメラを素早くバッグにしまい、席に着いた。
この日を境に、響歌は七瀬に恐怖心を抱くようになる―
:11/07/13 00:11 :T004 :zQgRlO2E
#310 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬の言うことに少しでも反論すると、写真を撮られる―
そんな無言の圧力のような状態が続いた。
そして帰りの号令。
日直の生徒二人が席に戻ると、先生は重い口を開いた。
先生『桐谷の事なんだけどな。あいつのお兄さんが、昨日事故にあったんだ』
先生の言葉に、クラスは一瞬にしてざわめき始めた。
:11/07/13 00:24 :T004 :zQgRlO2E
#311 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『うそー!』
『マジで!?』
『蓮が事故ったのかと思った…』
様々な発言があちこちで飛び交う。
先生『静かに! 話はまだ終わってないぞ!』
そう言うと、今度は教室内が一瞬にして静寂に包まれた。
先生『桐谷の方も昨夜、突然原因不明の高熱で倒れたそうだ』
響歌『…蓮が…』
先生『お見舞いに行ってやってくれな。あと、お兄さんの容態については…命に別状はないとの事だ』
:11/07/13 00:31 :T004 :zQgRlO2E
#312 [輪廻◆j6ceQ96kak]
先生の言葉に響歌は安心したと同時に不安も感じ始めた。
『デスカメラに写された者は1週間以内に死ぬ』
蓮の兄の事故、そして蓮自身の原因不明の高熱。
『デスカメラの呪い』
こんな言葉が脳裏をよぎった。
:11/07/14 22:43 :T004 :W1BRf24k
#313 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌の不安をよそに、七瀬が一人手を挙げた。
先生『ん? …どうした井本?』
七瀬『桐谷君のお見舞いは誰か一人が代表して行けばいいと思います』
先生『…ああ。それもそうだが…ここは桐谷と仲良くしてるやつ皆で行った方が桐谷も喜ぶんじゃないか?』
七瀬の発言。
響歌は少し嫌な予感がした。
そしてそれはすぐに的中する―
:11/07/14 22:49 :T004 :W1BRf24k
#314 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『あたしは代表に村井響歌さんを推薦します』
響歌『…ちょ、ちょっと!?』
止める間もなく、七瀬の友達も揃いに揃って
『賛成!』
と大喝采の渦。
先生『村井、行ってくれるか?』
響歌『な、なんで私が…』
七瀬がニヤリと響歌を見つめる。
:11/07/14 22:59 :T004 :W1BRf24k
#315 [輪廻◆j6ceQ96kak]
先生『じゃあ頼むな…村井』
響歌『ちょっ…!』
結局何も言えず、蓮のお見舞いの代表に選ばれた。
下校時間―
玄関で靴を履く響歌の前に七瀬と、その友達が現れた。
七瀬『じゃあ響歌、キリによろしく言っといてね』
響歌『さっきの…どういうつもりなの?』
七瀬を睨みつけながら問う。
:11/07/14 23:05 :T004 :W1BRf24k
#316 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『だって響歌、キリと二人きりになりたいかな、と思って…』
響歌『勝手な事しないでよ! 誰がそんな事頼んだ? 大体、蓮の事なんか別に好きじゃないし!』
七瀬『そんなムキにならないでよ。あたしは響歌の恋を応援してるだけで…』
響歌『…は? 応援? 縁切られた人に応援なんてされる義理なんてないし!』
どこか、からかっているような七瀬の言葉に腹が立った響歌は、靴箱に上履きを乱暴に入れてその場から走り去った。
:11/07/14 23:13 :T004 :W1BRf24k
#317 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自分の家に向かう途中、蓮の住むアパートの前を横切った。
響歌『……』
その場で足を止め、後ろを振り返る。
響歌『お見舞い…だもんね』
自分にそう言い聞かせ、アパートの階段を上って蓮の住む部屋へ向かった。
インターホンを押してしばらく待っていると、蓮の母親が姿を現した。
『…あら、村井さんの』
笑顔でそう言って部屋に響歌を招き入れた。
:11/07/14 23:20 :T004 :W1BRf24k
#318 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中に入ると、奥の布団で蓮が寝ているのが見えた。
響歌『あの…桐谷君、大丈夫ですか?』
響歌の問いに
『熱がなかなか下がらなくて…』
…と重い表情で母親は答えた。
:11/07/14 23:24 :T004 :W1BRf24k
#319 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あの、お兄さんの方は…?』
深追いをするつもりはなかったが、この時はなぜか口が勝手に動いた。
『剛史も、左足を骨折しちゃってね…』
響歌『そうなんですか…』
これ以上かける言葉が見つからなかった。
しばらくの重い沈黙が続いた後、蓮がゆっくりと布団から起き上がった。
:11/07/14 23:31 :T004 :W1BRf24k
#320 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『蓮、具合はどう?』
母親が心配そうに言う。
蓮『まあまあ…かな』
熱で弱っているせいか、いつもの学校での元気な態度とのギャップを感じた響歌。
蓮『村井…やっぱり村井の声だったか…』
響歌『大丈夫…?』
蓮『まあな…。バカは風邪ひかないって言うけど、あれは嘘なんだな』
響歌『…ばーか』
冗談混じりに笑い合いながら言った。
:11/07/14 23:37 :T004 :W1BRf24k
#321 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『村井さん、来てくれてありがとうね』
母親が優しい目で響歌を見ながら言う。
響歌『あ、いえ…どういたしまして…』
『蓮、よくあなたの話をするのよ』
蓮『おい! 勝手な事ベラベラ喋んなよ!』
顔を赤らめながら言う蓮に、響歌は一瞬だけキュンとした。
:11/07/14 23:43 :T004 :W1BRf24k
#322 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あと少しの間だけど…蓮と仲良くしてあげてね』
母親は、思わず聞き返したくなるような意味ありげな言葉を発した。
響歌『あの…あと少しって…?』
『剛史の脚がだいぶよくなったら、私達引っ越すのよ』
響歌『え…引っ越し…』
響歌にとってはショック以外の何物でもなかった。
:11/07/14 23:51 :T004 :W1BRf24k
#323 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『それまだ隠しとくつもりだったんだけどな…』
響歌『どこに引っ越すんですか?』
『私の知り合いが旅館をやっててね。結構な田舎なんだけど』
響歌『そんな…』
響歌の目から一粒の涙がこぼれ落ちた。
:11/07/14 23:56 :T004 :W1BRf24k
#324 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『でも引っ越すってもさ…今の中学を卒業してからだし、当分の間はいれるぜ』
響歌『…それは…そうなんだろうけど…』
蓮『お、おい村井! 泣くなって…!』
涙が止まらなかった。
必死に腕をこすりつけても溢れ出てくる涙。
それからは目の回りが赤くなるまで泣き続けた。
蓮とその母親はそんな響歌をただ、黙って見ていた―
:11/07/15 00:01 :T004 :YEuL6JbI
#325 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから1週間後―
蓮は元気になって学校に登校してきた。
蓮『よお村井、久しぶり!』
響歌『おはよ…』
蓮『俺の兄ちゃんも脚よくなってきたよ。…やっぱりあのデスカメラってやつ、結局は都市伝説だったんだよな』
響歌『…だね』
時間を忘れて色々な話をしていると、副担任が教室にやって来た。
:11/07/15 00:54 :T004 :YEuL6JbI
#326 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『皆さん、ちょっと座ってください。大事なお話があります!』
小柄な女の副担任がそう言って皆を席に座らせる。
そして皆の視線は副担任に一点に集中した。
『…担任の真島先生が、昨夜亡くなりました…』
その衝撃的な言葉に、クラス内は一斉にざわめいた。
:11/07/15 12:41 :T004 :YEuL6JbI
#327 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お静かに!』
しかし一向におさまる気配はない。
『どういう事ですか!?』
『詳しく聞かせてください!』
一人一人が副担任に問い詰める。
『いいから静かになさい!』
副担任の今までにない大声で、騒ぎはピタリと止んだ。
:11/07/15 12:47 :T004 :YEuL6JbI
#328 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『真島先生は昨夜…車の運転中に事故に遭いました。打ち所が悪かったようで病院に運ばれましたが、数時間後に息を引き取りました』
再びざわめき始める。
響歌『先生……』
響歌は立て続けに起きる不慮の事故に、ただの偶然とは思えなくなった。
『この後、体育館で全校集会を行います。皆さん準備をしてください』
そう言って副担任は教室を出て行った。
:11/07/15 12:54 :T004 :YEuL6JbI
#329 [輪廻◆j6ceQ96kak]
午前9時―
1年生から3年生まで全校生徒が体育館に集合し、集会が始まった。
ステージの上に重苦しい表情をした校長先生が上ってくる。
校長『えー、皆さんもお聞きの事と思いますが…2年A組の担任をしています真島啄也先生が昨夜、事故により落命しました』
所々でガヤガヤとざわめきが起こる。
校長『昨夜車を運転中に、別の軽自動車と衝突し致命傷を受け病院に運ばれましたが、しばらくして病院で息を引き取りました』
:11/07/15 13:12 :T004 :YEuL6JbI
#330 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それだけ言うと、校長先生はステージを降りた。
続いて校長とすれ違いに上がってきたのは教頭先生。
教頭『…教育委員会にはすでに事情をお話ししました。皆さんも、できるだけこの事実を口外しないようお願いします。少し早いですが、これで全校集会を終わります』
教頭の合図で、それぞれの学年のクラスの担任が動く。
:11/07/15 13:23 :T004 :YEuL6JbI
#331 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『1年生から順番に教室に戻ります』
担任の誘導で、ぞろぞろと退場する。
『2年A組、戻ります』
響歌のクラスが、副担任の誘導で教室へと戻った。
教室へ向かう途中、泣いている女子生徒が多かった。
:11/07/15 13:29 :T004 :YEuL6JbI
#332 [輪廻◆j6ceQ96kak]
皆が席につき、副担任が重い口を開く。
『皆、悲しいよね…』
生徒のほとんどが無言でコクリと頷いた。
『実を言うと私も悲しいです。真島先生には研修の時、かなりお世話になりました』
それからしばらくの間、沈黙が続いた―
:11/07/15 13:35 :T004 :YEuL6JbI
#333 [輪廻◆j6ceQ96kak]
この後の授業も、皆おとなしく受けていた。
時間はあっという間に過ぎ、下校時間を迎える―
いつもなら皆が騒いでいる時間帯だが、今日はシーンとしていた。
教室を出て帰ろうとする響歌の元に七瀬がやってきた。
七瀬『響歌、一緒に帰ろ?』
響歌『……』
無視して歩き続ける響歌に、後ろから七瀬が衝撃的な言葉を投げかける。
:11/07/15 22:25 :T004 :YEuL6JbI
#334 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『あたし、あのカメラで真島先生を写したの』
響歌『……えっ?』
思わず七瀬の方を振り返る。
七瀬『でも響歌は信じてないんだよね? あんなカメラの事…』
響歌『……』
何と言えばいいのか、言葉が思いつかなかった。
:11/07/15 22:30 :T004 :YEuL6JbI
#335 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『でも仕方ないじゃん! 真島先生と副担が二人で会ってるのを見たから、あたし…』
響歌『だから…それを撮ったの?』
七瀬『写したらカメラのシャッターの音に二人が気づいて…現像された写真、真島先生に取り上げられた』
響歌『…馬鹿じゃないの…七瀬』
帰り道、二人は下を向きながら歩いた。
:11/07/15 22:38 :T004 :YEuL6JbI
#336 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『響歌…怒ってる?』
響歌の顔色を伺うように言う。
響歌『…当たり前じゃん。今更謝られても許す気ないよ』
七瀬『キリの事は嫌がらせした訳じゃないよ。キリが休みって聞かされた時、あたしも心配になっちゃって…お昼にキリの家に電話してみたの。そしたら熱があるって』
響歌『…だから気をきかしたって訳?』
七瀬『響歌…本当にごめん! あたし、あのカメラの事を響歌に否定されて、ちょっとだけムカッときたの…だからつい』
:11/07/15 22:49 :T004 :YEuL6JbI
#337 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬はそのまま黙り込んでしまった。
響歌も正直戸惑っていた。
響歌『真島先生が死んだのはあのカメラのせい…私も今ならそう思える気がする』
七瀬『……え?』
響歌『蓮のお兄さんがあのカメラを買って自分を写して事故…それに蓮までもが原因不明の熱。蓮が風邪引いて熱出たなんて事、私が知る限り一度もない』
:11/07/15 22:57 :T004 :YEuL6JbI
#338 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『…そう…だね』
響歌『私はあのカメラの事、色々と調べてみる。七瀬は…とにかくあのカメラをもう持ち歩かない事…いい?』
七瀬『…うん、わかったよ。あたしもさすがに怖い。自分のした事に…』
響歌『もう一度言っておくけど…私、まだ七瀬の事許した訳じゃないから』
七瀬『うん…わかってる』
そして二人は別れた。
:11/07/15 23:04 :T004 :YEuL6JbI
#339 [輪廻◆j6ceQ96kak]
家に着いた響歌は、制服を着たままで鞄をベッドに投げ机に向かった。
携帯電話を取り出し、ネット検索を行う。
『デスカメラ 真相』
検索。
検索結果の一番上から順にクリックしていく。
その中で
『デスカメラを使ってみた』
という掲示板のスレッドが表示された。
:11/07/15 23:12 :T004 :YEuL6JbI
#340 [輪廻◆j6ceQ96kak]
――――――――――
1:名無しさん
今話題のデスカメラを闇市で買った。
届いてからとりあえずこっそり妹を撮ってみた。
それから3日後くらいかな
妹が自転車との衝突事故にあった。
結果死ななかったんだが、1週間以内になんらかの事故が起こるっていうのがわかった気がする。
――――――――――
という内容だった。
:11/07/15 23:18 :T004 :YEuL6JbI
#341 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『やっぱりあのカメラの…』
偶然にしては出来過ぎている話に、ついにカメラを疑う他なくなった。
そのスレッドにきたコメントをゆっくりとスクロールして見る。
――――――――――
2:名無しさん
そんなん信じてんの?w
アホくさくて見てられんわ
――――――――――
3:名無しさん
噂では、その写真に写ってる人だけじゃなく、その人の身の回りの人にも不幸がくるらしいとの事。
妹さんの事を他人事みたいに言ってるけど、主さんも気をつけなね。
――――――――――
:11/07/16 00:39 :T004 :d7rYdsw.
#342 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それ以降の書き込みを見たが、スレッドを立てた本人の書き込みはなかった。
掲示板の最後に
――――――――――
500:名無しさん
500なら主は既に死亡
――――――――――
と書き込みされて終了されている。
:11/07/20 23:29 :T004 :NYqv5DJI
#343 [輪廻◆j6ceQ96kak]
結局、真相がわからないまま響歌は携帯電話を閉じた。
翌日―
教室に入るなり、先に来ていた七瀬が友達の元から響歌の方へと走ってきた。
七瀬『響歌…あのカメラについて何かわかった?』
響歌『…わからない。七瀬はあれからカメラ触ったりしてないよね?』
七瀬『うん、大丈夫。箱に入れて机の引き出しの中にしまったよ』
それを聞いてとりあえず安心して席に座った。
:11/07/20 23:36 :T004 :NYqv5DJI
#344 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして登校してきた蓮も鞄を置いて響歌と七瀬の元にやってきた。
蓮『よっ! お、久しぶりに見る光景。お前ら仲直りしたんだな』
響歌『…ばーか』
七瀬『…ははは』
一瞬、なんとも言えない空気が漂う。
蓮『…そうだ。昨日、兄ちゃんの部屋に兄ちゃんの撮った写真あったから持ってきたよ』
さりげなく言った蓮の言葉に、二人の目の色が一瞬にして変わった。
:11/07/20 23:46 :T004 :NYqv5DJI
#345 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ほんと!? 見せて!』
七瀬『キリ! 早く!』
蓮『な、なんだよお前らその変わり様は…』
言われるがまま、蓮は自分の鞄から二枚の写真を取り出した。
響歌は差し出された写真を素早く取り上げて七瀬と恐る恐る見る。
一枚目には蓮の兄が写っている。
そして二枚目を見た二人は、一瞬にして言葉を失った。
:11/07/20 23:52 :T004 :NYqv5DJI
#346 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『これ…キリだよね?』
暗い部屋で寝ている蓮が撮られている。
蓮『俺もそれ見つけた時はびっくりしてさ…』
響歌『これって、いつ撮られたの?』
蓮『俺が風邪にやられる前じゃない? だから多分、兄ちゃんがカメラ買った夜だと思う』
七瀬『これでバカなキリが風邪ひいたのも納得できる…のかな?』
蓮『おい、一言多いぞ井本!』
:11/07/21 00:00 :T004 :XtjzSh4A
#347 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『とにかくこの写真、焼いて捨てようよ』
蓮『…いいのか? こういう場合はまずお祓いしに行くもんじゃないの?』
響歌『お金かかるでしょ。引っ越しだってするんだし…』
七瀬『え? え? どういう事?』
二人の間に七瀬が割って入ってきた。
:11/07/21 00:05 :T004 :XtjzSh4A
#348 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『まあまあ、いいから! じゃあその写真の始末は村井に任せるわ。はいじゃあこの話は終わり! またな!』
そそくさと自分の席に戻っていく蓮を見送った七瀬は、視線を響歌に向けた。
七瀬『響歌…キリ、引っ越すの?』
響歌『…うん。卒業まではいるみたいだけどね』
七瀬『そうなんだ…』
七瀬の切ない表情から、何かを悟った響歌。
:11/07/21 00:11 :T004 :XtjzSh4A
#349 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『七瀬ってさ…』
七瀬『ん? なに?』
響歌『…なんでもない。そろそろチャイム鳴るから席戻りなよ』
そう言って、写真を鞄の中にそっとしまった。
:11/07/21 00:19 :T004 :XtjzSh4A
#350 [輪廻◆j6ceQ96kak]
下校時間―
蓮『村井! 写真の事、頼んだからな』
響歌『うん、わかってる』
七瀬も写真の始末に同行したいと言ってきたが、断った。
一旦家に帰り、マッチを持ち出して近くの河原へ向かう。
夕暮れ時の河原。
周りには小学生数人が野球をしている。
:11/07/21 00:24 :T004 :XtjzSh4A
#351 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その小学生の集団からなるべく離れた所に行き、写真を取り出す。
マッチをこすって火をつけると、二枚の写真に着火させる。
火がついた写真はみるみる内に姿形を変え、灰だけがボロボロと落ち、やがて消えた。
これでデスカメラによる呪いの連鎖は終わる…。
響歌は地面に残った灰を見下ろして、そう確信した―
:11/07/21 00:32 :T004 :XtjzSh4A
#352 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから5日経った今、響歌はあの確信を撤回せざるを得なくなる―
それは日曜日の夜、買い物帰りに信号待ちをしていた時に起こった。
信号が青に切り替わり渡ろうとした瞬間…まさに一瞬の出来事だった。
響歌『……!!』
猛スピードでやってきた一台の軽自動車が響歌の身体をはねた。
ボンネットの上にはね上げられた響歌は声をあげる間もなく、その場に倒れ、やがて意識を失った―
:11/07/21 00:42 :T004 :XtjzSh4A
#353 [輪廻◆j6ceQ96kak]
目を覚ますと、響歌は病院で天井を見上げていた。
意識がハッキリした瞬間、下半身に今まで経験した事もない激痛が走った。
響歌『痛っ!!』
耐えながらも首だけを動かして自分の下半身を見る。
右脚には何重にも巻かれた包帯、そしてコルセットでガッシリと固められていた。
この時、自分の置かれた状況を把握する。
:11/07/21 00:47 :T004 :XtjzSh4A
#354 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『私…骨折しちゃったんだ…』
時間が経過するにつれ、今までの記憶もハッキリしてくる。
買い物帰りに車にはねられた事も思い出した。
自分がしっかりと生きている事を実感し、そっと目を閉じ再び眠りについた―
:11/07/21 00:50 :T004 :XtjzSh4A
#355 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は夢を見た。
一人、暗闇にいる。
周りからは音が何もしない。
ただ、自分の呼吸の音と心臓の動く音だけが響く。
体が動かなかった。
まるで、両手両足を誰かに掴まれているような感覚。
次第に息苦しくなってくる。
誰かに口元を押さえられているような感覚。
響歌『くっ!』
やがて呼吸が困難になり意識が薄れてゆく。
:11/07/21 00:55 :T004 :XtjzSh4A
#356 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…歌! 響歌!』
響歌『誰かが…呼んでる?』
ここでハッと目を覚ました。
ふと横を見ると、泣いている母親の姿があった。
母『響歌! 気がついた?』
響歌『お母さん…』
母親は両手で響歌の左手をぎゅっと握っていた。
:11/07/21 01:01 :T004 :XtjzSh4A
#357 [輪廻◆j6ceQ96kak]
母『桐谷君から響歌が事故にあったって電話があったの』
響歌『……蓮が?』
母『桐谷君、ちょうど現場の近くにいたらしいの』
響歌『…そうなんだ…』
母『倒れてるのがすぐに響歌だとわかって、近くの公衆電話から救急車を呼んでくれたのよ』
響歌『……ありがとう……蓮』
母親が泣く隣で、響歌も涙を流した―
:11/07/21 01:09 :T004 :XtjzSh4A
#358 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それからの響歌はリハビリを受けながらの入院生活が続いた。
蓮や七瀬、その他のクラスメイトも定期的にお見舞いに来てくれていた。
時期はあっという間に過ぎ―
無事退院した響歌はいつも通りの学校生活へと戻って行く―
久しぶりの学校、そして教室。
周りは普段通りワイワイと騒いでいる。
:11/07/21 01:16 :T004 :XtjzSh4A
#359 [輪廻◆j6ceQ96kak]
生徒A『ねえ! 出会い系殺人ネットって知ってる?』
生徒B『聞いた聞いた。出会った女の人を次々にリンチして殺してく集団なんだよね〜。怖くない?』
周りはすでに違う話題で盛り上がり、次第にデスカメラの事は忘れ去られていった。
しかし響歌だけは、忘れたくても忘れられないものとなった。
響歌には恐怖のフィルムが嫌な思い出として心の中に焼き付いたままだ―
:11/07/21 01:27 :T004 :XtjzSh4A
#360 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中学三年生。
早くも卒業の春を迎えた。
卒業式を終えた翌日、桐谷蓮とその家族は父親の運転する車で遠くへと越していった。
響歌と七瀬はその車が見えなくなるまで見送る。
七瀬『行っちゃった…かぁ』
響歌『やっぱ寂しいんでしょ? ナナ』
七瀬『べ、別に!』
響歌『…顔赤いよ』
こうして呪いの連鎖は終わった…と響歌は今度こそ信じた。
:11/07/21 01:35 :T004 :XtjzSh4A
#361 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自分自身の身に起きた事故はただの偶然。
そう思う事にし、新しい出会いと希望が待っている高校へと進んだ。
七瀬とは学校は離れ離れにはなったが、二人は今も親友として交友を深めている―
新しい高校生活のスタート。
しかしそれは同時に現在の彼女にもおける“魔のスタート”でもあった―
第3話 消失なる射影【完】
:11/07/21 01:49 :T004 :XtjzSh4A
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