†horror†
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#351 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その小学生の集団からなるべく離れた所に行き、写真を取り出す。


マッチをこすって火をつけると、二枚の写真に着火させる。


火がついた写真はみるみる内に姿形を変え、灰だけがボロボロと落ち、やがて消えた。


これでデスカメラによる呪いの連鎖は終わる…。


響歌は地面に残った灰を見下ろして、そう確信した―

⏰:11/07/21 00:32 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#352 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから5日経った今、響歌はあの確信を撤回せざるを得なくなる―


それは日曜日の夜、買い物帰りに信号待ちをしていた時に起こった。


信号が青に切り替わり渡ろうとした瞬間…まさに一瞬の出来事だった。


響歌『……!!』

猛スピードでやってきた一台の軽自動車が響歌の身体をはねた。

ボンネットの上にはね上げられた響歌は声をあげる間もなく、その場に倒れ、やがて意識を失った―

⏰:11/07/21 00:42 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#353 [輪廻◆j6ceQ96kak]
目を覚ますと、響歌は病院で天井を見上げていた。


意識がハッキリした瞬間、下半身に今まで経験した事もない激痛が走った。


響歌『痛っ!!』

耐えながらも首だけを動かして自分の下半身を見る。


右脚には何重にも巻かれた包帯、そしてコルセットでガッシリと固められていた。


この時、自分の置かれた状況を把握する。

⏰:11/07/21 00:47 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#354 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『私…骨折しちゃったんだ…』

時間が経過するにつれ、今までの記憶もハッキリしてくる。


買い物帰りに車にはねられた事も思い出した。


自分がしっかりと生きている事を実感し、そっと目を閉じ再び眠りについた―

⏰:11/07/21 00:50 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#355 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は夢を見た。


一人、暗闇にいる。

周りからは音が何もしない。

ただ、自分の呼吸の音と心臓の動く音だけが響く。


体が動かなかった。

まるで、両手両足を誰かに掴まれているような感覚。


次第に息苦しくなってくる。

誰かに口元を押さえられているような感覚。


響歌『くっ!』

やがて呼吸が困難になり意識が薄れてゆく。

⏰:11/07/21 00:55 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#356 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…歌! 響歌!』


響歌『誰かが…呼んでる?』

ここでハッと目を覚ました。


ふと横を見ると、泣いている母親の姿があった。


母『響歌! 気がついた?』


響歌『お母さん…』

母親は両手で響歌の左手をぎゅっと握っていた。

⏰:11/07/21 01:01 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#357 [輪廻◆j6ceQ96kak]
母『桐谷君から響歌が事故にあったって電話があったの』


響歌『……蓮が?』


母『桐谷君、ちょうど現場の近くにいたらしいの』


響歌『…そうなんだ…』


母『倒れてるのがすぐに響歌だとわかって、近くの公衆電話から救急車を呼んでくれたのよ』


響歌『……ありがとう……蓮』

母親が泣く隣で、響歌も涙を流した―

⏰:11/07/21 01:09 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#358 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それからの響歌はリハビリを受けながらの入院生活が続いた。


蓮や七瀬、その他のクラスメイトも定期的にお見舞いに来てくれていた。



時期はあっという間に過ぎ―


無事退院した響歌はいつも通りの学校生活へと戻って行く―


久しぶりの学校、そして教室。


周りは普段通りワイワイと騒いでいる。

⏰:11/07/21 01:16 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#359 [輪廻◆j6ceQ96kak]
生徒A『ねえ! 出会い系殺人ネットって知ってる?』


生徒B『聞いた聞いた。出会った女の人を次々にリンチして殺してく集団なんだよね〜。怖くない?』


周りはすでに違う話題で盛り上がり、次第にデスカメラの事は忘れ去られていった。


しかし響歌だけは、忘れたくても忘れられないものとなった。


響歌には恐怖のフィルムが嫌な思い出として心の中に焼き付いたままだ―

⏰:11/07/21 01:27 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#360 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中学三年生。

早くも卒業の春を迎えた。


卒業式を終えた翌日、桐谷蓮とその家族は父親の運転する車で遠くへと越していった。


響歌と七瀬はその車が見えなくなるまで見送る。


七瀬『行っちゃった…かぁ』


響歌『やっぱ寂しいんでしょ? ナナ』


七瀬『べ、別に!』


響歌『…顔赤いよ』

こうして呪いの連鎖は終わった…と響歌は今度こそ信じた。

⏰:11/07/21 01:35 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#361 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自分自身の身に起きた事故はただの偶然。


そう思う事にし、新しい出会いと希望が待っている高校へと進んだ。


七瀬とは学校は離れ離れにはなったが、二人は今も親友として交友を深めている―


新しい高校生活のスタート。


しかしそれは同時に現在の彼女にもおける“魔のスタート”でもあった―



第3話 消失なる射影【完】

⏰:11/07/21 01:49 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#362 [輪廻◆j6ceQ96kak]
またあの夢だ。


暗闇の中で手足の自由がきかず、次第に息苦しくなり意識が薄れる。


そこで目を覚ます。


中学生の時に事故を起こした時から稀に見る夢。


夢から覚めた後も、まるで現実のようにハッキリと覚えている。


あの感覚を…。


思えばあの時から全ては始まっていたのかもしれない―

⏰:11/07/21 01:54 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#363 [輪廻◆j6ceQ96kak]
第4話【共鳴なる戦慄】


響歌『はっ!』

意識が途切れる瞬間に目を覚ます。

いつものアパートの部屋。


鳥の囀りが朝を伝える。

中学生の時のあの頃を思い出していた時に、またあの夢を見るようになっていた。


身体が重かった。

無理もない。


アルバイト先の仲間であり友達だった松下雪乃を亡くし、同じくアルバイト先の先輩だった吉田優斗が行方不明で響歌には精神的にショックが大きかった。

⏰:11/07/21 02:03 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#364 [輪廻◆j6ceQ96kak]
夜も二人の事やあの旅館での出来事などを考えると、寝られずにいる事も多々ある。


おかげでアルバイトには遅れる事もあり、店長にも幾度となく怒られる毎日が続く。


大学へは事情を話して休学届けを出している。


朝7時30分―


なんとか重い身体を起こして、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。

⏰:11/07/21 02:10 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#365 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『そりゃ何もないよね』

ここ最近はアルバイトから帰って来てもすぐに布団に入る事が多く、食べ物は買い溜めしておいたカップラーメンしかない状態だった。


仕方なくコンビニ袋に入った大量のカップラーメンの中から一つを出し、携帯電話を手に取る。


いつもはここらへんで雪乃からのおはようメールが送られてくる。


しかし、もう来る事はない。


そんな事はわかりきっているのに、ついつい携帯電話を開いてみる。


響歌『………』

⏰:11/07/21 02:16 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#366 [輪廻◆j6ceQ96kak]
電話帳を開いて、松下雪乃と吉田優斗のデータを消去し、携帯電話をベッドの上に乱暴に投げつけた。


途端に食欲が無くなり、カップラーメンのフタを中途半端に開けたままアルバイトの準備に入った。


午前8時を過ぎ、溜まったゴミ袋を持って早めに部屋を出る。


ゴミ捨て場にはいつも通り、掃除をしている隣人の武田の姿があった。


武田『あら村井さん、もう出掛けるの?』

⏰:11/07/21 02:30 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#367 [輪廻◆j6ceQ96kak]
精神的にも不安定でイライラしていた響歌は、武田の言葉を無視してゴミ袋をこれまた乱暴に投げ入れ、早歩きでその場を立ち去った。


武田『…………』

武田は首を傾げながら響歌の後ろ姿を黙って見ていた。


いつものバスに乗ってアルバイト先へと向かう。


店の店長や従業員は、雪乃や優斗の事を知らずにいる。


二人とは旅館に行ったという事で響歌に色々聞いてきたが、響歌は言っても信じてもらえないと思い、わからないと言い張った。

⏰:11/07/21 02:38 📱:T004 🆔:XtjzSh4A


#368 [でりーと]
でりーと

⏰:11/07/22 13:20 📱: 🆔:・・・


#369 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今日も聞かれるのかと思うと、鬱になってくる。


二人の事を考えながらバスに揺られて外を眺めていると、窓の外に見覚えのある人物が目に入った。


響歌『…!!』

茶髪で長い髪をしたスラっとした体型の女性。


間違いなく、あの山の中で彼氏と思われる男性と一緒にいた女性だ。


響歌の命の恩人でもある人物だった。

⏰:11/07/22 13:32 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#370 [輪廻◆j6ceQ96kak]
早めにアパートを出た為、出勤にはまだ時間あると踏んだ響歌は、次の停留所でバスを降りて女性の元へ向かった。


響歌『あ、あの…』

女性は最初はキョロキョロしていたが、やがて振り返る。


『…はい?』

その特徴的なハスキー声にも聞き覚えがあった。


響歌『私の事、覚えてませんか?』

女性は首を傾げながら響歌の顔をジッと見つめる。

⏰:11/07/22 13:38 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#371 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…あっ! もしかして響歌ちゃん?』


響歌『はい! あの時はありがとうございました!』

数週間ぶりの再会。

二人はすぐに意気投合した。


女性の名前は杉本麗奈、26歳という事だ。


麗奈に誘われ近くの喫茶店に入り、色々と話をする事にした。

⏰:11/07/22 13:46 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#372 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『それでどうなの? 行方不明の友達の事はまだわかってないの?』


響歌『…はい。手かがりが何もないそうで』


麗奈『そう…』

そう言って店員の運んできた珈琲を一口飲む。


麗奈『ウチはね…まだ許してないよ、あの男の事。…というか一生許さないと思う』


響歌『剛史さん…でしたっけ? あの、彼氏さんだったんですか?』

⏰:11/07/22 13:52 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#373 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『まあね。剛史はウチがまだ高校の時にウチの学校に転校してきた後輩で…そこで出会ったんだよ』


響歌『…なんか運命の出会いって感じですね』

それからは、俗に言うガールズトークで少しづつ盛り上がっていった。


時間も忘れて―

⏰:11/07/22 13:59 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#374 [輪廻◆j6ceQ96kak]
現実に戻されたのは一本の電話。


ディスプレイを見ると


『店長』の文字。


響歌『あっ、やばい! バイト!』


麗奈『え? そうだったの!? ごめん…ウチのせいだね』

あたふたしながら、電話に出ると店長の怒鳴り声。


そして最後に言い渡された。


『明日からもう来なくていい』

絶望的だった。

⏰:11/07/22 14:04 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#375 [輪廻◆j6ceQ96kak]
暗い表情で携帯電話を閉じる。


麗奈『…響歌ちゃん? 大丈夫?』

心、ここにあらず。

響歌は遠い目をしていた。


少し落ち着いた響歌は麗奈に話す。


麗奈『ほんとごめん!』


響歌『いえ…時間を忘れてた私が悪いんです』


麗奈『ウチにも責任あるよ。何かお詫びさせて? ね?』

二人は店を出ると、麗奈がどこかに電話をし始めた。

⏰:11/07/22 14:10 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#376 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数分して電話を終えた麗奈が戻ってきた。


麗奈『よかったらこれから私の家に来ない? ちょっと紹介したい人もいるんだ』


響歌『誰ですか…?』

少し不安になりながら聞いた。


麗奈『剛史の弟だよ。響歌ちゃんって彼氏はいるの?』


響歌『……私、やっぱり帰ってもいいですか?』


麗奈『待って! というかね、剛史の弟が響歌ちゃんに会いたがってるの』

⏰:11/07/22 14:17 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#377 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『…どういう事ですか?』

なぜか胸騒ぎがした。


麗奈『あの後ね、みんなに話したの。全部。そして響歌ちゃんの話をしたら剛史の弟の目の色が変わってさ…』


響歌『そんな事言われても…』


麗奈『とにかくこれから行こ。近くの駐車場に車止めてあるから』

言われるがまま、響歌は麗奈について行った。

⏰:11/07/22 14:22 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#378 [輪廻◆j6ceQ96kak]
30分くらいして、車は一軒家の前で停止した。


麗奈『じゃ、入って入って』


響歌は車から降りて何気なく見た表札に驚愕した。


『桐谷』


響歌『ま、まさか…』

心の中でそう思いながらも胸騒ぎは大きくなる。


麗奈『どうしたの?』


響歌『い、いえ。それより麗奈さんの苗字って…』

⏰:11/07/22 14:30 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#379 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『ああ…。ウチ一人でアパートに住んでるのもなんだからって剛史の両親が一緒に住もうって言ってくれたの』


響歌『はあ…なるほど』


麗奈『ちょっと先にいってもらってていい? 車、車庫に閉まってくるから』

麗奈は車の中に入り、響歌は門の前に立ち尽くす。


震えた手でチャイムを鳴らすと、しばらくしてドアから男性が一人出てきた。

⏰:11/07/22 14:35 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#380 [輪廻◆j6ceQ96kak]
背が高く、髪は茶色。

服装などもどこか今風の容姿だ。


『どちらさんすか?』

男性が響歌の顔を見るなり聞く。


名乗るのを一瞬ためらうも、口が勝手に動いた。


響歌『村井…響歌です』

そう名前を言うと、男性はピンときたように目を大きく見開いた。

⏰:11/07/22 15:48 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#381 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『やっぱり村井か!』


響歌『え…?』

男性が近づいてくると、響歌は後ずさりしていく。


そこにやってきた麗奈の身体にぶつかった。


麗奈『わっ! 響歌ちゃんどうしたの?』


響歌『あっ、すみません…』

響歌はあからさまに動揺した。

当然である。

⏰:11/07/22 15:52 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#382 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『蓮ちゃん、響歌ちゃんに何かしたの?』

麗奈のその言葉でハッキリした。


響歌『……蓮……なの?』


蓮『よっ、久しぶり』

二人のこの異様な雰囲気に麗奈はニヤけた。


麗奈『やっぱり蓮ちゃん、響歌ちゃんと知り合いだったんだ?』


蓮『中学ん時の同級生だよ。な? 村井』


響歌『え? あ、うん…』

⏰:11/07/22 15:56 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#383 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『とにかく、話は中でしよ。さ、響歌ちゃんも入って』


中に入り、リビングのソファに響歌を座らせた。


向かいに蓮が座り、麗奈はキッチンで何かをしている。


蓮『村井、お前かなり変わったな…』


響歌『それはこっちのセリフだよ。何そのチャラチャラした格好。全然似合ってないし』


蓮『お前こそなんだよその長い髪。中学ん時は短くて男っぽかったのに』


響歌『…男っぽいは余計だし』

響歌にはこういうやりとりの感覚がとても懐かしく思えた。

⏰:11/07/22 16:06 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#384 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『はい、こんなのしかないけど』

そう言って紅茶とお菓子を持ってきた。


響歌『あ。ありがとうございます…』

麗奈は響歌の隣に座るなり、話を始めた。


麗奈『響歌ちゃん…。デスカメラって知ってる?』


響歌『…ぶっ!!』

麗奈の言葉に思わず口にした紅茶を少し吐き出す。


その名前を聞くのは数年ぶりだったからだ。

⏰:11/07/22 16:14 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#385 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『村井、驚きすぎ…』

蓮がティッシュを数枚取って響歌に渡す。


麗奈『驚かせちゃったのかな…?』

響歌は申し訳なさそうな麗奈を気づかって、何度も気にしないでくださいと言った。


麗奈『蓮ちゃんから聞いたの。響歌ちゃん達が中学生の時に流行ってたんだよね? デスカメラ』


響歌『はい…まあ』

なぜか嫌な予感が遮る。

⏰:11/07/22 16:21 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#386 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もう一度その名前を聞く事になるとは思っていなかった。


いや、むしろ聞きたくはなかった。


響歌にとっては苦い思い出ばかりだからだ。


その思いを堪えて、麗奈の話を黙って聞く。


麗奈『それ、剛史が以前使った事があるんだって。それで自分を撮った数日後に事故に遭ったって』


蓮『…………』

蓮も黙って下を向いている。

⏰:11/07/22 16:25 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#387 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『剛史…蓮ちゃんも撮ってたみたいで、蓮ちゃんも原因不明の風邪ひいたでしょ』


響歌『……』


麗奈『ウチ、それ聞いて偶然とは思えなくなって、色々と調べてみたの』

と、ソファを離れて棚から一冊のノートを取り出してきた。


麗奈『まず、デスカメラは購入金額がなんで無料なのかを調べたのね。それは、お金の変わりに買った人の個人情報を取ってどこかに売ったりしてるみたいなんだよね』

それを聞いた響歌の背筋が凍った。

⏰:11/07/22 16:31 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#388 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『響歌ちゃん? 大丈夫? 顔色悪いけど…』


響歌『い、いえ…なんでもないんです…』

そう言って見せる余裕の表情とは裏腹に心の中はひどく動揺していた。


数年前、なぜか響歌の家に届いたデスカメラ。


理由は、当時の響歌の親友による個人情報の悪用により響歌の家に届いた。

⏰:11/07/22 16:35 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#389 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当時は、その個人情報が裏で取り引きされているなんて想像さえしていなかった。


今の麗奈の言葉を聞くまでは…。


麗奈『その後…剛史は個人情報を悪用されたみたい。出会い系殺人ネットっていう会員制のサイトに登録されて…』


蓮『もうやめてくれよ…その話!』

そこで麗奈の話を遮った蓮。

その表情は苦しそうだった。

⏰:11/07/22 16:44 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#390 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『蓮…?』

今まで見た事がない蓮の表情に、戸惑う響歌。


麗奈『蓮ちゃん…ウチはその連鎖を止めたいだけなの。あの山で剛史を殺したあの男ももしかしたら…』

そこまで言うと、蓮はその場から立ち上がって二階へと上がっていった。


麗奈『なんかごめんね、響歌ちゃん…』


響歌『お兄さんが死んで一番苦しんでるのは蓮だと思うんです…私も何かしてあげられたら…』

⏰:11/07/22 16:49 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#391 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『……復讐……』

彼女は遠い目をしながらそう一言呟いた。


響歌『えっ?』


麗奈『そうだよ…あの男に復讐しなきゃ、剛史が浮かばれないんだよ…』

自分で自分に言い聞かせるように言った。


その麗奈の表情は静かだが、どこか暗かった。


麗奈の心の奥底に眠っているもう一人の自分が目覚めたように―

⏰:11/07/22 16:54 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#392 [輪廻◆j6ceQ96kak]
静まり返ったリビングには時計の針の音だけが響く。


響歌『あ、あの…』

異様な雰囲気の中、麗奈に声をかける響歌。


麗奈『…なあに?』

彼女はそう笑顔で答えたが、その表情に違和感を感じた。


何かに取り憑かれたような、何か不自然な笑顔に。


響歌『わ、私…そろそろ帰りますね』

座っていたソファから立ち上がると、麗奈の手が響歌の腕を掴んだ。

⏰:11/07/22 18:47 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#393 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして腕を掴んだまま、下に引っ張って再び響歌をソファに座らせる。


響歌『な、なんですか?』

少し恐怖を覚え、麗奈の手を逆の手で振り払おうとするがガッシリ掴んで離れない。


麗奈はゆっくりと響歌の方に視線を向けた。


その顔は不自然な笑顔のままだ。

⏰:11/07/22 18:53 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#394 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『響歌ちゃん…前に言ったよね。何かお礼させてくださいって…』


響歌『…た、確かに言いましたけど、あれはちゃんと車の鍵を持ってきましたし…』


麗奈『でもウチらがあの場所を通らなかったら響歌ちゃん、今頃どうなってたかわからないよね…?』

まるで脅すような物言いだ。


今までの彼女とは別人のような豹変ぶりだった。

⏰:11/07/22 19:01 📱:T004 🆔:7DA9vZNk


#395 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして単刀直入に言った。


麗奈『あの男に復讐しようよ…』


響歌『…復讐…?』


麗奈『響歌ちゃんも親友の女の子をあの男に殺されたんでしょ? だったら…』

麗奈の手が少し緩んだのを見計らって、思い切り手から腕を放した。


響歌『麗奈さん…どうかしちゃったんですか…? そんな事しても同じ繰り返しになっちゃいますよ!』


麗奈『……』

彼女はしばらく下を向いて黙っていたが、やがて顔を上げる。

その目からは涙が溢れ出ていた。

⏰:11/07/23 00:04 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#396 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『だって…剛史はもう帰って来ないんだよ…。ウチはこれからどうやって生きてけばいいの…?』

かける言葉が見つからなかった。


彼女の泣き顔をただ黙って見ていると、階段から蓮が下りてきた。


蓮『…どうかしたの?』


響歌『麗奈さんが…』

蓮が麗奈の元へ歩み寄る。

⏰:11/07/23 00:10 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#397 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『元気出せよ…。俺も悲しいけど、復讐なんてくだらないよ。警察に任せようぜ』

蓮が優しい言葉をかけると、麗奈は声を出して泣き始めた。


蓮『村井、悪いけど今日は帰ってくんない?』


響歌『う、うん…』

蓮の威圧感を放つ表情を見た響歌は、一言だけうなずいて家を出た。

⏰:11/07/23 00:18 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#398 [輪廻◆j6ceQ96kak]
外へ出たのはいいものの、帰り道がわからなかった為にタクシーを呼んで自分のアパートへ帰る事にした。


部屋に帰るなり、服も着替えずにベッドに身を投げる。


響歌『バイトどうしよ…』

本日付でアルバイトを辞めさせられてしまった響歌。


これからの生活の事を考えると、まさに一寸先は闇というべき事態だ。

⏰:11/07/23 00:23 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#399 [輪廻◆j6ceQ96kak]
翌日―


響歌は昨日の状態のままベッドで寝ていた。


気がつくと朝になっていた。


重い身体を起こして、洗面所で冷たい水で顔を洗う。


響歌『……』

鏡に映った自分の顔をジッと見つめる。


響歌『なんつー顔してんだろ私…』

目の回りの化粧を洗い残したまま洗面所を出て座椅子に座った。

⏰:11/07/23 00:30 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#400 [輪廻◆j6ceQ96kak]
携帯電話を開く。


新着の電話もメールもない。


ふと昨日、喫茶店で話の流れから麗奈と電話番号とメールアドレスを交換したのを思い出した。


昨日あれからどうなったのか気になった響歌はメール画面を開く。


『大丈夫ですか?』

と、宛先を麗奈に設定して送信した。

⏰:11/07/23 00:34 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


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