悪魔と天使の暇潰し
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#344 [匿名]
味噌汁の味も玉子焼きの味も、いつも通りの母の味だ。
「美味しい?」
母が頬杖をつきながら言う。
「うん、美味しい」
「そう!……良かった」
母はいつもの笑顔に戻っていた。暖かい、優しさの溢れる笑顔で、私を包んでくれる。
私のさっきまでの不安が一気に無くなった。
:11/09/17 00:30 :F06B :gmmz71IM
#345 [匿名]
「今日はどっか行くの?」
母が訪ねてくる。そういえば何も決めていなかった。
「うん、ちょっと出掛けようかな」
「そう?気を付けて行くのよ?車とか、いろいろね」
「もう子供じゃないんだから」
親にとって、子供はいくつになっても子供だと言うが、母は子供扱いしすぎる。
「あ、そうだ!ちょっと買ってきて貰いたいものがあるんだけどいい?」
「うん」
「あのねぇ…あの、今便利な奴!」
お母さん、それじゃ何も分からないよ。と心の中で言いながら私は真顔を作った。
:11/09/17 00:32 :F06B :gmmz71IM
#346 [匿名]
「分かるでしょ!」
「あれ?私超能力者じゃないよ?」
「あの、あれよ!ほら!便利な…」
「伝える気ある?」
「…まあいいわ。何かお土産買って来て」
何故そうなる。
「…あ!あれあれ!駅前に出来たケーキ屋のロールケーキが美味しいのよ!」
初耳だった。
「十六時に焼き上がるから、お土産はそれでいいわ!」
:11/09/17 00:38 :F06B :gmmz71IM
#347 [匿名]
それでいいと言う割には、母は嬉しそうに笑っていた。食べたかったのよねーと一人言を言っている。
さっきは私の顔を見てあんなに気まずい顔をしたのに、もうニコニコしている母を見て、頼もしく感じた。
母は何事も引きずらない。
悩みがあっても一晩寝れば忘れる人がいるが、母は一時間もあればケロッとしている。
そんな母の長所、私には受け継がれなかったみたいだ。
:11/09/17 00:41 :F06B :gmmz71IM
#348 [匿名]
朝食を食べ終え、私は自分の部屋に戻った。時間は十三時になっていた。
朝食だという気持ちで食べていたが、世間一般からすれば昼食だ。とどうでもいい事を考えながら、着替えを始めた。
三十分程で支度を終わらせ、私は家を出た。
行く場所は何となくしか決めていない。帰る前に駅前のロールケーキを買えば、それでいい。
空は晴天。
朝はくっきりと空に浮かんでいた雲が、いつの間にかうっすらとした雲に変わっていた。
守があそこにいたら落ちちゃうな、とくだらない事を考えながらゆっくりと歩いた。
:11/09/19 18:08 :F06B :ErJ50EgY
#349 [匿名]
何故か私の心は今までに無いくらい落ち着いていた。
母の言った、とりあえず、の意味も実際分からないままだったが、どうせ家に帰ったら分かる事だろうと、思考を一旦停止した。
ゆっくりと商店街を歩いていく。
駅で電車に乗り、二駅先で降りた。たったの二駅で時間も五分ちょっとしかかからないが、電車を降りるとガラリと雰囲気の違う町がある。
:11/09/19 18:09 :F06B :ErJ50EgY
#350 [隆平]
いつも楽しみにずっとまってます!
:11/09/20 17:35 :F09C :☆☆☆
#351 [匿名]
:11/09/20 23:03 :F06B :PRaZYkic
#352 [匿名]
私はその駅の近くにあるカフェが好きで、実家に帰るとよく行く。
近くにある本屋で適当に短めの小説を買い、カフェに入った。
入って一番奥の右端に通され、アイスコーヒーとフルーツが沢山乗ったタルトを頼んでから、本を開いた。
<君はきっと後悔しながら死んでいくんだ>
冒頭からショッキングな言葉を投げ掛けられ、胸が痛くなった。自然と眉間に皺が寄り、少しして目に疲労を感じた。
:11/09/20 23:05 :F06B :PRaZYkic
#353 [匿名]
その一行をずっと見ていたからだろう。
そしてすぐにアイスコーヒーとタルトが運び込まれた。
一口飲んで、一口食べて、を三回繰り返してから、もう一度本に視線を戻した。
続きを読み始める。
主人公は男子高校生で、虐めを苦に自殺を図ろうとした。校舎の屋上に上がり柵をよじ登る。後は身体を投げ出すだけという時に、担任の先生が現れる。
:11/09/20 23:08 :F06B :PRaZYkic
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