悪魔と天使の暇潰し
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#101 [匿名]
ただ浮気男が精神的に追い詰められるだけ。

奥さんは浮気男に、浮気を問いたてる事はしない。だってその事実を知らないんだから。

きっと浮気男から、謝罪をする事もない。浮気がバレたとしても、持ち前の口の上手さで乗り切るだろう。

俺達がついた嘘に気付くまで、ビクビク過ごせばいい。

⏰:11/05/23 11:42 📱:F06B 🆔:3LX4MsVg


#102 [匿名]
.


そんな作戦だった。


「とても素敵なお二人ね?」

奥さんが浮気男に笑顔を向けている。

「あなたに感謝しているって言ってたわ。あなたはやっぱり慕われているのね。」

奥さんの無邪気な発言にも、浮気男は顔をひきつらせる。

素直にその言葉を、喜んで聞けばいいのに。馬鹿な男だ。やましい事はしてはいけないんだな。

⏰:11/05/23 11:43 📱:F06B 🆔:3LX4MsVg


#103 [匿名]
「そういえば、最後に奥さんに何て耳打ちしたんだ?」

あいつが俺に質問をしてきた。

「ああ。旦那さんは奥さんに感謝してますよーって。旅行とか、プレゼントをあげたいって呟いていたので、奥さんからさりげなく何が欲しいかヒントをあげてください!」


「なるほど。それはいい。」

あいつが笑う。天使のくせに悪い笑顔で。

⏰:11/05/23 11:45 📱:F06B 🆔:3LX4MsVg


#104 [匿名]
1つ目の暇潰し終わり。

⏰:11/05/23 11:45 📱:F06B 🆔:3LX4MsVg


#105 [匿名]


一日目



「良いターゲット候補を見つけた。」

珍しく、あいつから暇潰しをしようと声をかけてきた。

いつになくご機嫌な様子だ。きっととんでもなく、ターゲットに相応しい人間が見付かったのだろう。

期待しながら下の世界を覗いた。

⏰:11/05/30 15:24 📱:F06B 🆔:41UHEYEQ


#106 [匿名]
黒い細身のスーツを着た若い男だ。

スラッした体型に、柔らかそうな髪の毛。太陽の光で少し茶色く見えるが、黒髪だ。

顔は整っている。誰がどう見たって、綺麗な顔立ちだと認めるだろう。

それなのに、暗い影が見えた。普通の若者のはずなのに、普通ではない空気が、その男の周りには漂っている。

⏰:11/05/30 15:40 📱:F06B 🆔:41UHEYEQ


#107 [匿名]
「あの男、君に似ていると思わないか?」

「俺に?」

あいつにそんな事を言われ、改めて男を見た。

「あの人間悪魔みたいだ。そう思わないか?」

確かに。
俺と似ている。だけど、

「俺の方がかっこいいだろ!」

⏰:11/05/30 15:49 📱:F06B 🆔:41UHEYEQ


#108 [匿名]
「まあ、あの人でいいよね?次のターゲット。」

俺の主張は軽く流され、そしてターゲットが決まった。

人間の歳で言ったら、俺達とターゲットは同じくらいの年代。楽しみだ。

「じゃあ早速!」

誰に言った訳でもない。ただの自分の気持ちと行動の確認だ。

⏰:11/05/30 21:13 📱:F06B 🆔:41UHEYEQ


#109 [匿名]
下に降りると、そこは人混み。

ここは渋谷という所らしい。派手な格好をした若者がうようよといる。

「人混みは嫌いだ。」

俺の隣から聞き慣れた声。あいつもついてきていた。

「何で一緒なんだよ。」

「今回は一緒の方がいいと思ってね。」

表情を変えずに、人を上手く避けながら歩くあいつが、何だかむかつく。

⏰:11/06/01 14:51 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#110 [匿名]
こいつに構っていたら、ターゲットを見失ってしまう。それほどの人混みだったから、すぐに目線を前方に戻した。

人間5人分程先を歩くターゲットは、この人混みに慣れている様だ。


事件は突然だった。
きっと周りの人間は驚いただろう。

俺達の前にいた小太りなサラリーマンが倒れた。

⏰:11/06/01 14:53 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#111 [匿名]
落ちているゴミにつまずいたのではない。脂肪のついた腹が邪魔で、脚が絡まったわけでもない。


刺されたのだ。


綺麗に心臓を刺されている。もう死んだだろう。

ターゲットは人が刺されたというのに興味も示さず、さっきと変わらないペースで歩いて行く。

⏰:11/06/01 14:54 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#112 [匿名]
「あいつ何者だ?」

「さぁ?とりあえず追い掛けよう。」


ターゲットは駅に向かっていた。

さっき倒れた男の周りには、人が円を作って見ていた。交差点内だっていうのに、人はそこから退こうとしない。

何が起こっているのか分からない車の運転手は、何度もクラクションを鳴らしている。

騒がしい。

⏰:11/06/01 14:56 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#113 [匿名]
犬の像の前あたりで、ターゲットに追い付いた。

ターゲットの右には俺。左にはあいつ。自然な流れで隣を歩いた。


「何か用?」

最初に口を開いたのはターゲットだった。俺達二人の動きを把握していた。

「なんだ。わかっていたのか。」

あいつは微笑みを絶やさない。いや、そういう真顔なのかもしれない。

⏰:11/06/01 14:58 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#114 [匿名]
「なかなかやるじゃん。」

俺もターゲットに微笑みかける。頑張って。

「はい?二人が知り合いなのは分かってる。話声がさっきから聞こえていたからな。」

ああ。人混みでも俺達の言い合いは筒抜けだったらしい。

「そうじゃないよ。」

すかさずあいつが言う。

⏰:11/06/01 14:59 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#115 [匿名]
「お前だろ?あのオッサン刺したの。」

あいつが言う前に、そう言ってやった。

ターゲットは驚いた顔をした。まさかバレるとは思わなかったのだろう。

「何のこと?」

しらを切るのは当たり前だ。

「お前さ、初めてじゃないだろ?ああやって、人を殺すの。」

⏰:11/06/01 15:02 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#116 [匿名]
そう俺が言うと、

「でも誰かにバレたのは、今回が初めてでしょ?」

と、あいつもすかさず口をはさんだ。


「言ってる意味が良く分からないんだけど?」

鼻で笑うターゲットは、演技が上手い。

「大丈夫。少なくとも、こいつはお前の味方だ!」

言いながら、あいつの肩を後ろからポンと叩いた。隣にターゲットがいるから叩きづらい。

⏰:11/06/01 15:05 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#117 [匿名]
「そうだね。僕は君を守る資格がある。」

嫌な顔で俺を見た。

「何から?」

守ってもらわなくても、俺は一人で平気だ。と考えているのだろう。興味のない顔だ。

「悪魔から。」

あいつはそう言うと、ターゲットの顔の前に手を出して、その向こう側にいる俺を指差した。

⏰:11/06/01 15:06 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#118 [匿名]
指差した先を見るターゲットと、目が合う。

「そうそう、俺から。」

ひらひらと手をふってみせるが、ターゲットはすぐに俺から視線を外した。


「あんたら仲間同士じゃないの?」

「まさか!」
「ありえねぇ!」

俺達は同時に否定した。

⏰:11/06/01 15:08 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#119 [匿名]
「お二人は何者なの?」

「お前と同じようなもん。」

「僕は違うよ?」


ターゲットは俺達の顔を交互に見た。


「まあ、いい。俺の仕事の邪魔だけはするな。」

いつの間にか、ターゲットは殺人を認めたみたいだ。多分、俺達が無害だと感じたのかもしれない。

こんなに怪しいのに。

⏰:11/06/01 15:09 📱:F06B 🆔:FrXz0ia2


#120 [匿名]
「人を殺す仕事?」

「ああ。」


「じゃあ俺も依頼していいか?」

このターゲットは、殺し屋のような感じだろう。

誰かがターゲットに、こいつを殺してくれ!と依頼する。高額の代金と引き換えに、ターゲットはその人物を殺す。

プロの人殺しだ。

⏰:11/06/03 18:43 📱:F06B 🆔:yR80tUxE


#121 [匿名]
「俺は、全ての依頼を受ける訳じゃない。依頼がきてから、ターゲットを徹底的に調べる。」

殺す相手をターゲットと呼んでいるなんて、俺達とそっくりじゃないか。

「それで本当に殺す必要があると思えば殺す。その必要がないと思えば殺さない。依頼は受けない。」


「君と同じだ。」

俺にだけ聞こえる声で、あいつがボソッとつぶやいた。

⏰:11/06/03 18:44 📱:F06B 🆔:yR80tUxE


#122 [匿名]
認めたくないが、俺と同じだと思った。

「でも一応聞いてやるよ。誰を殺して欲しい?あ、金が払えなきゃ、論外だけど。」

俺はあいつの真似をして、ターゲットを指差した。

「お前だ。」

ターゲットは俺を睨んだ。

その目線に答えるべく、俺も睨もうとしたが、笑いが込み上げてきて上手く出来なかった。

人間の余裕が無くなる瞬間が、堪らなく好きだから。

⏰:11/06/03 18:45 📱:F06B 🆔:yR80tUxE


#123 [匿名]
「五日間。ターゲットを徹底的に調べる。答えが出るのは今日を入れて五日後だ。」

面白い。
これは偶然かな?暇潰しと似すぎている。


俺達のターゲットは、自分自身を調べる。調べると言うか、自問自答だ。自分が死ぬべき人間か、自分に問いかける。きっと。


それからすぐターゲットと俺達は別れた。

久しぶりに楽しい五日間が送れそうだ。

⏰:11/06/03 18:47 📱:F06B 🆔:yR80tUxE


#124 [匿名]
二日目



夜の10時。ターゲットがマンションから出てきた。殺し屋らしくない、綺麗で高いマンションだ。

今日のターゲットも、スーツを着ていた。昨日と違うのは黒縁眼鏡をかけていること。


「これから仕事か?」

マンションの入り口の前で待ち伏せしていた俺は、ターゲットの姿が見えるとすぐに声をかけた。


「やっぱ仕事をするのは夜なんだね。」

当たり前のようにあいつもいる。

⏰:11/06/06 17:15 📱:F06B 🆔:jgpAfPWE


#125 [匿名]
俺達の声を聞き、俺達の姿を確認して、ターゲットは深いため息をついた。

「何で家が分かった?」

頭を抱えている。


「俺達を誰だと思ってんだ。何でもわかんだよ!」

悪魔と天使なんだから。上から何でも見えるんだ。


もう一度ターゲットはため息をついた。

「で、何の用?今から大事な仕事が待ってんだ。」

⏰:11/06/06 17:16 📱:F06B 🆔:jgpAfPWE


#126 [匿名]
「ああ、だから来た。」

「はあ?」

「仕事見学かな。」

あからさまにターゲットは嫌な顔をした。

「だからさ、仕事の邪魔はすんなって言ったよな?」

「誰が邪魔してやるっつったよ。ただ見てるだけだ。なんなら手伝ってやってもいいんだぜ?」

俺の親切な言葉を無視してターゲットは歩きだした。

⏰:11/06/06 17:18 📱:F06B 🆔:jgpAfPWE


#127 [匿名]
「やっぱスーツを着てきて良かったよ。」

少し歩いた所で、あいつが呟いた。


仕事をするならスーツの方がいいだろう。どこに居ても大抵馴染む。

ターゲットに接触する前に、あいつがそう言うので俺はそれに仕方なく従った。

⏰:11/06/09 11:59 📱:F06B 🆔:VrVyQRkE


#128 [匿名]
「俺の仕事に付き合うからか?」

「ああ。まずかったか?」

「いや、俺も、仕事の時は必ずスーツだ。スーツだと、こんな仕事でも正当化されちゃう気がすんだよな。」

ターゲットは自分のしている事が、犯罪だと分かっているみたいだ。

「されるわけないけど。」

自傷ぎみに笑うターゲットは、隠しきれない闇を抱えている様に見えた。

⏰:11/06/09 12:07 📱:F06B 🆔:VrVyQRkE


#129 [匿名]
「で、お前の今日のターゲットはどんな奴なんだ?」

ターゲットは俺の問いに、答えるべきが秘密にするべきか悩んだ。

だけど結局は喋った。

「裏の世界の奴だ。犬や猫を無差別に殺して、マニアに売り飛ばすんだ。」

どんなマニアだよ。考えるだけで気分が悪くなる。


「依頼人はそのターゲットに何をされたの?」

あいつが問いかける。

⏰:11/06/13 17:59 📱:F06B 🆔:VWDbyeCI


#130 [匿名]
「飼っていたペットを殺されたんだ。」

そう言ったターゲットは、怒りに満ちていた。歯を食いしばっている様にも見える。

でもすぐに元に戻る。その怒りを隠す様に、いつもの無表情になった。

「そうか。他にはどんな事してんだ?そのペット殺しは。」

俺は深い意味もなく発した言葉だったが、ターゲットは俺を睨んだ。

⏰:11/06/13 18:02 📱:F06B 🆔:VWDbyeCI


#131 [匿名]
何故怒られなきゃならない?

「他にも沢山だ。"犯罪"と呼べる物はほとんどやっていた。」


「殺されて当然だ。」

ターゲットに同意するようにあいつが言うと、鋭い目付きが和らいだ。


「で、どうやって殺るんだ?」

「突き落とす。」

「どこで?」

⏰:11/06/13 18:04 📱:F06B 🆔:VWDbyeCI


#132 [匿名]
「電車のホームだ。」

「お前刺すだけじゃなくて、突き落とす事も出来んのか!」

「ああ。一通りの殺し方は身に付いているし、バレる心配もない。」


自信に満ちた顔だ。



最寄り駅から電車に乗って、一度だけ乗り換え地下鉄のホームについた。

ここにターゲットは現れるらしい。しっかりと調査済みみたいだ。

⏰:11/06/13 18:06 📱:F06B 🆔:VWDbyeCI


#133 [匿名]
パラパラと人が階段から降り、ホームに溜まってきた。

溜まるといっても、俺達の他に3人いたサラリーマンに、5、6人増えただけだった。

終電よりも早く、帰宅ラッシュを過ぎた時間なので、いつもこの電車のホームはこのくらいの人しかいないらしい。


その中で一人、他のサラリーマンとは雰囲気の違う男が現れた。

⏰:11/06/17 14:40 📱:F06B 🆔:i5j7jaOw


#134 [匿名]
「あれが殺すターゲットだ。」

そいつは小太りで、身長も小さい。チンピラですが?という出で立ちで、ふらふらしながら立っていた。


「あれ酔っぱらってんな?」

「ああ。絶好のチャンスだ。お前らはここで待ってろ。」

そう言うと、ターゲットはすたすたと歩き出した。


「まもなくー3番線にー電車が参ります。」

白線の――とアナウンスが流れ出し、奥の方から、ゴーっという電車の近付く音がした。

⏰:11/06/17 14:43 📱:F06B 🆔:i5j7jaOw


#135 [匿名]
電車はまだ止まるために、速度を落としていないように感じる。電車の走る音が大きくなってきた。

殺されるチンピラターゲットは、ふらふらと電車が来る方を覗いたり、ゴルフのスイングをしていた。

全く、緊張感のないやつだ。自分が殺されるなんて1ミリも考えていないのだろう。

俺達のターゲットは、自然にチンピラターゲットに近付いていた。

⏰:11/06/17 15:02 📱:F06B 🆔:i5j7jaOw


#136 [匿名]
足音が聞こえない。確かに歩いているのに、浮いているみたいだった。

チンピラターゲットは、男が自分に近付いて来ている事に、全く気付いていない。


電車がホームに入ろうとした、まさにその時。

ターゲットは殺す相手の真後ろまで近付いていた。

⏰:11/06/17 15:14 📱:F06B 🆔:i5j7jaOw


#137 [匿名]
そしてターゲットがチンピラターゲットの後ろを通り過ぎると同時に、男の体がふわっと宙を舞った。

そして線路に落ちた。落ちたとほぼ同時に電車が通り、轢かれた。


ドンッという音と、電車の急ブレーキの音で、回りは騒然とした。

だが誰一人、状況を把握出来ていない。

何が起こったか分かっているのは、俺達二人だけらしい。

⏰:11/06/17 15:20 📱:F06B 🆔:i5j7jaOw


#138 [匿名]
さすがだ。そう言う他に、何も言葉が出なかった。

「完了!」


周りがザワザワとしだした時、遠回りをし、清々しい顔をしてターゲットが俺達の元へ戻ってきた。

ちらほらいた他のサラリーマンと駅員を残して、俺達はその場を離れた。

見事、誰にもばれずに、ターゲットは人殺しをやってのけた。

⏰:11/06/17 15:25 📱:F06B 🆔:i5j7jaOw


#139 [匿名]
「人身事故だってよ。」

「また飛び降り?迷惑だよなー。死にたいなら一人で首でも吊って死ねよな!」

すれ違うサラリーマンがそんな話をしていた。

この殺人は、自殺という事で片付くんだな、とふと考えた。

「誰も俺が殺ったとは思ってないみたいだな。」

そう言うターゲットは、自信満々で、自慢気な顔をしていた。

⏰:11/06/22 12:20 📱:F06B 🆔:geuAFvbY


#140 [匿名]
「俺の仕事は終わりだ。」

駅を出ると、ターゲットは煙草に火をつけ、すたすたと歩き出した。

「どこに行くんだ?」

「何処だっていいだろ。」

「家には帰らないのか?」

「ああ。」

「何処に行くんだ?俺達にはまだ時間があんだよ。」

「何の時間だよ。」

暇潰しは1日2時間だからだ!なんて言えない。

⏰:11/06/23 20:18 📱:F06B 🆔:cUgMVL8s


#141 [匿名]
「少し話をしないか?」

あいつがふわっとした笑顔をターゲットに向けた。

「何を話すって言うんだよ。何もないだろ。」

「お前になくても俺にはある。いや、お前にもあるんじゃねーのか?俺達が何者か気にならねーのかよ。」

挑発するように、俺は真っ直ぐターゲットを見て言ってやった。

ターゲットの眉間に皺が寄る。俺の表情を見て、何が隠されているのか探っているみたいだ。

⏰:11/06/23 20:19 📱:F06B 🆔:cUgMVL8s


#142 [匿名]
そして眉間の皺がなくなったかと思うと、口角を少しだけ上げた。

「そうだな。俺の質問には全部答えてくれんのか?」

「お前が俺の質問にも答えてくれんならな。」

ターゲットは二回頷いて、何も言わずに歩き出した。

俺はあいつの顔を見た。


「着いてこいって事かな。」

あいつも俺と同じ様に感じていたみたいだ。ターゲットのすぐ後ろを、俺達二人は並んで歩いた。

少しだけ歩いて、俺達は薄暗い雰囲気のバーに入った。

⏰:11/06/23 20:21 📱:F06B 🆔:cUgMVL8s


#143 [( ̄ω ̄)]
まってます(^O^)

⏰:11/06/26 13:00 📱:SH02A 🆔:.v0otlbo


#144 [にゃんき]
続きが楽しみです

⏰:11/06/26 23:06 📱:N03A 🆔:rlKMCcrY


#145 [匿名]
>>143
>>144

どうもありがとうございます!読んでくださって嬉しい!

今日落ち着いたら書きたいと思います(^^*)

⏰:11/06/27 08:58 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#146 [匿名]
中も薄暗い。
正面にカウンターがあり、椅子が6個並んでいる。一番右に男が一人と、真ん中の2席に男女が一組座っていた。

テーブル席は全部で3席しかなく、どこもゆったりとしていた。

ターゲットは迷わず、一番カウンターから遠い場所にあるテーブル席に座った。

俺達はターゲットの向かいに並んで座った。ソファーの柔らかさが気持ちい。


カウンターの中には、長髪で髭の生えた男が一人。30代前半だろう。そしてもう一人若い女がいた。長い黒髪を後ろで結わいている。とても綺麗だった。

⏰:11/06/27 17:59 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#147 [匿名]
そんな美人が俺達に近寄ってきた。笑顔は向けてくれていないが、だるそうには感じない。

「今日は一人じゃないんだ。お友達?」

美人がターゲットに言った。

「ああ。そんなとこだ。」

ターゲットが否定しない事に驚いた。

「珍しい。」

そう言うと美人はうっすらと笑った。

「うるせぇな!早く酒持って来いよ。」

⏰:11/06/27 18:00 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#148 [匿名]
「全く。いつから私に命令出来るくらい偉くなったわけ?」

美人は全く怯まない。

「うるせぇ。」

心なしか、ターゲットの口調は弱くなっていく。

「いつものでいいの?」

「ああ。」

「お友達は何にする?」


美人が俺達の方を向いた。笑顔は向けてくれない。

「彼と同じもので。」

あいつが言うので、俺も頷いた。

⏰:11/06/27 18:01 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#149 [匿名]
美人は三人の注文を聞くと、バーカウンターの中に入って行った。


「仲良さそうだったけど、あの女性とは友達なの?それとも常連だから?」

あいつが聞いた。


「姉貴だよ。」

姉貴と聞いて、何故か少し驚いた。だけど驚く事でもない。

「確かに、よーく見りゃあ似てんのかもな。」

くっきりした目鼻立ちが、言われてみれば似ているような気がした。

⏰:11/06/27 19:22 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#150 [匿名]
「それにしても美人だね。」

あいつは興味なさそうに言った。

「そうか?あ、ちなみに隣にいる髭の男が姉ちゃんの旦那だから。」

「へぇ。お似合いだな。」

「おう。」

「そんな事より、二人は知ってんのか?お前の仕事について。」

無駄な話をするつもりはなかった。ターゲットについて、出来るだけ情報を集めたかった。

「ああ。」

ターゲットはためらいもなく答えた。

⏰:11/06/27 21:46 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#151 [匿名]
「二人は協力してくれんだ。俺だけじゃ集めきれないターゲットの情報も、調べてくれる。」

「へぇ、仲間がいたんだな。」

そんな話をしていると、美人が酒を持って現れた。

緑と透明の二種類のグラデーションのカクテルが三つ並んだ。

「ジンベースのカクテルなの。いつも濃いめに作ってるけど、二人は大丈夫?」

美人は、さっきと同じツンとした表情で聞いてきた。駄目なんです。なんて言ったら、目の前のカクテルをぶっかけられそうな迫力がある。

⏰:11/06/27 23:20 📱:F06B 🆔:DzZSXfcA


#152 [匿名]
俺達は酒を飲んでも酔わない。だからどんなに強い酒でも、どんなに大量に飲んでも何も変わらない。

「大丈夫です。」

あいつが返事をすると、美人は眉毛を少し上げただけで、去っていった。


「早速だけど、お前は何で俺に死んで欲しいわけ?」

カクテルをカラカラと軽く混ぜ、一口飲むと、ターゲットは俺にそう言った。


「俺のターゲットがお前だからだ。」

「誰かに俺を殺せって頼まれたのか?」

「さあ?どうだろうな。」

「誰だよ!」

「そんな事誰が言うかよ。」

⏰:11/06/29 00:14 📱:F06B 🆔:A75d7Lp6


#153 [匿名]
本当はそんな奴いない。
ただターゲットを自殺させるには、誰かに恨まれていると思わせていたほうが、効果がある気がした。

「まあ、言う訳ねーよな。」

ターゲットは笑った。


「こんな仕事をしてんだから、恨みは相当かってるよ。誰かに狙われる事は、想定してる。」

ターゲットはもう一口飲みながらそう言った。


「お前らも俺と同じような事をしてんだろ?詳しく聞かせてくれよ。」

そうだなあー、と隣に座っているあいつが考え出した。天使と悪魔です。なんて言えないから、何て嘘をつこうか悩んでいるのだろう。

「俺は悪魔で、こいつが天使だ。」

目の前のカクテルを飲みながら、あいつよりも先に俺が答えてやった。

口の中に、アルコールと柑橘類の香りが広がった。

⏰:11/06/29 00:18 📱:F06B 🆔:A75d7Lp6


#154 [匿名]
想像通り、ターゲットは笑った。

はあ?と馬鹿にした後、腹を抱えて笑った。

こいつもこんな風に笑っていると、普通の若者なのになと思った。


「お前は変な奴だとは思ってたけど、こんな事言うほど頭が可笑しいとはな!」

「うるせぇなー」

本当の事を言うと、いつもこうなる。人間は俺達の名を知っているくせに、存在しないと勝手に決めつけている。

⏰:11/06/30 17:22 📱:F06B 🆔:AjWxtfLw


#155 [匿名]
「悪魔だったらさ、自殺なんて強要しなくても、俺の事なんて簡単に殺せんだろ?」

そう、俺はターゲットが殺し屋だと知り、ターゲット自身を殺してくれと、依頼した。

「そうだな。だけど俺は人を自分の手で殺すんじゃなくて…」

そう言ってから、それを想像して笑みが溢れるのが自分で分かった。不気味だ。

「自分の目の前で、人間が自ら命を絶つ瞬間を見るのが、たまらなく好きなんだ。…悪魔みたいだろ?」

⏰:11/06/30 17:25 📱:F06B 🆔:AjWxtfLw


#156 [匿名]
「悪趣味だな。」

ターゲットも俺と同じように、不気味に笑った。

「お互い様だろ?」

「俺はそんな趣味ねーよ。」

「だけどお前笑ってたぞ。さっきのチンピラターゲットを殺った時。」

「そりゃあ人を殺すだけで、大金が手に入るんだからな。笑いたくもなる。」


それは本心にも感じたし、偽りの言葉にも聞こえた。

⏰:11/07/02 11:46 📱:F06B 🆔:n90j9dzo


#157 [匿名]
「君は依頼を全て受けるわけじゃないと言ったよね?例えばどんな人は殺さないの?」

あいつがいきなり核心的な質問をした。

「…何も悪い事をしてないやつだ。」

ターゲットは少し考えてから答えた。

「でも依頼人に恨まれてるんだから、何かしら悪い事はしてんじゃないのかな?」

あいつは続けて、また核心をついた。

「…俺の中の物差しがあんだよ。」

ターゲットは一瞬、考えるように目を反らした。

⏰:11/07/05 12:18 📱:F06B 🆔:UHeZx4Ck


#158 [匿名]
「そうか。」

あいつがいつも通りの笑顔を向けた。

「今までどれくらいの人間を殺ったんだ?」

俺は聞いた。

「いちいち数えてねーからなぁ。」

そう言いながらも指を折って数えながら、

「50人以上かな〜。」

と、ターゲットは答えた。
それは多いのか少ないのか、俺には分からない。

「いつからこの仕事を?」

次はあいつが聞いた。

⏰:11/07/05 12:19 📱:F06B 🆔:UHeZx4Ck


#159 [匿名]
「高2の時からだ。」

それは早いのか遅いのか、またしても俺は判断出来なかった。

「どうしてこの仕事をしようと思ったの?」

「金が欲しかったんだよ。」

「お金のためだけに、こんな危険な仕事を?」

「…ああ」

「よくやるねー!」

あいつは心から感心しているみたいだった。

「手っ取り早いし、俺には向いてる」

ターゲットは投げやりにそう言った。

⏰:11/07/05 12:21 📱:F06B 🆔:UHeZx4Ck


#160 [匿名]
それからターゲットの酒を飲むペースが早くなってきた。

俺らもターゲットにつられて、何杯も飲んでしまった。

陽気になったターゲットは仕事の話は一切せず、俺達の事も深く追求しなくなった。そして無駄な話が続いた。


そうなると時間が過ぎるのは早くなり、気が付くと二時間が過ぎようとしていた。

どうでもいい話を人間とするのは、もう何十年ぶりだろう。病気の女をターゲットにした時の事を思い出した。

その時も俺はターゲットを追い込むどころか、毎日無駄な会話をしてしまった。

⏰:11/07/05 12:25 📱:F06B 🆔:UHeZx4Ck


#161 [匿名]
そのせいで俺は人間に、しかもその時のターゲットに不思議な思いを抱いてしまった。

無邪気にくだらない話をするターゲットが、最後の最後で「生きたい」と泣いた。

俺は悪魔のくせに、その時のターゲットを死なせたくないと思ってしまった。



汚点だ。

汚点でしかないのに、嫌な思い出ではない。

不思議だ。

⏰:11/07/05 12:37 📱:F06B 🆔:UHeZx4Ck


#162 [匿名]
それからすぐに俺とあいつは、ほろ酔いのターゲットを残して上に帰る事にした。

「ターゲット、何か隠してるよ。」

あいつが言った。

「何をだよ?」

「何を隠しているのかまだ分からないけど、金だけの為にこの仕事をしているとは思えない。」

確かに言われてみれば、そうなのかな?と思う。


「隠さなきゃいけない程、やばい事なのか?」

「さあ?…でもそうじゃなきゃ隠さないでしょう?」

⏰:11/07/06 09:03 📱:F06B 🆔:H3vNfYmE


#163 [匿名]
「でも、悪い事をしてない奴は殺らないって言ってたから、悪い奴を懲らしめたいから、とかは?」

思い付いた事を言ってみた。

「うん。そこも引っ掛かるんだ。ターゲットの言ってる事は少し矛盾してる。」

矛盾?してたか?

「…まあ、いいや!面倒くせぇ事はお前に任せた!どーせいろいろ調べようとしてたんだろ?」

「ああ。明日は君一人で行ってくれ」

その方が自由に行動出来るな。どんな風にターゲットを追い込んで行こうか、考えるだけで楽しくなってくる。

⏰:11/07/06 09:05 📱:F06B 🆔:H3vNfYmE


#164 [匿名]
三日目



今日、俺とあいつは別行動を取った。

あいつは俺達の世界と、人間のいる下の世界を行ったり来たりしながらターゲットの情報を収集する。


俺には、どんな理由でターゲットがこの仕事をしていようが、関係ない。俺はターゲットを自殺させる。それ以外に興味はなかった。

⏰:11/07/10 20:41 📱:F06B 🆔:WIAx/Gv6


#165 [匿名]
ターゲットは今日も昼間は外に出て来なかった。

そして19時。辺りが薄暗くなってきた頃、ふらっと部屋着のまま外に出てきた。

寝癖がついたままだ。


早速俺は下に向かい、ターゲットの後を追ってみる事にした。

ターゲットは5分ほど歩き、そのままコンビニに入った。どうやら今日は仕事はないらしい。

⏰:11/07/10 20:43 📱:F06B 🆔:WIAx/Gv6


#166 [匿名]
ターゲットはカップラーメンを大量にかごの中に入れている所。

「お前こんなんばっか食ってんのかよ?」

隣に立ち、色々な種類のカップラーメンを眺めながら話し掛けた。

「またお前かよ」

ため息をつき移動していった。俺に背を向けだるそうに歩いていたが、急に振り返り、

「あれ?今日相方いねーの?」

とキョロキョロしながら言った。あいつがいなく、俺一人だけな事に驚いた様子だった。

⏰:11/07/10 20:46 📱:F06B 🆔:WIAx/Gv6


#167 [匿名]
「ああ。…いや相方じゃねーから!敵だ!敵!」

仲間と思われるとついむきになってしまう。あいつと俺は対極な存在なのに。

俺が必死に否定すると、ターゲットはうっすら笑った。

「ああ。分かった、分かったー」


なだめる様に言われ、カチンときた。が、抑えた。
これ以上怒鳴ったらターゲットはもっと俺を馬鹿にする。

「今日は仕事ねぇのか?」

怒りを抑えるのは、意外と難しい。

⏰:11/07/10 20:48 📱:F06B 🆔:WIAx/Gv6


#168 [匿名]
「今日は休みだ」

ターゲットは俺を見ずに答える。

「ふーん」

「つまんねぇだろ?」

「そうだな。なんもねーのはつまらねぇ」

「じゃあ、今日は帰れ」

「そういうわけにはいかねぇんだよなー」

「うぜぇな」

ターゲットが舌打ちをする。

「俺の依頼はどうなってる?明後日には結論が出るんだよな?」

これから追い込むぞ。

⏰:11/07/10 20:52 📱:F06B 🆔:WIAx/Gv6


#169 [りお]
あげていいのかな
これ本気で書籍化してほしい!!

⏰:11/07/12 04:45 📱:P03C 🆔:10msleKI


#170 [匿名]
>>169りおさん

なんだか凄い嬉しい事を言ってくださってありがとうございます(*´д`*)感激です!

⏰:11/07/12 16:59 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#171 [匿名]
「俺のものさしからすれば、お前のターゲットは何も悪くない」

ターゲットはプリンを手に取る。

「そうか?俺のターゲットはよ、人を殺して金を稼ぐんだよ。ただ金のためだけに。殺された奴らも悪い事をしてきてる人間ばっかりだ。だけどそいつらにも、大切なものはある」

俺もプリンを手に取り、ターゲットのかごの中に入れながら言った。


「昨日のチンピラターゲットにも、奥さんがいてなー」

これは今日ここに来る前にあいつから聞いた。

⏰:11/07/12 18:34 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#172 [匿名]
「旦那はあんな糞野郎だったけど、奥さんからしたら唯一の家族だったらしくて、旦那が自殺したって通報があってから、すぐに奥さんも自殺したんだ」

ターゲットは俺の入れたプリンを元の棚に戻す。表情は変わらない。

「最後に丁寧に日記まで書いてさ。何て書いてあったと思う?」

今度はプリンを二つ手に持ち、ターゲットに質問をぶつけた。

「さぁな。興味ねぇ」

ターゲットの表情は変わらず、つまらなそうにしている。

⏰:11/07/12 18:38 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#173 [匿名]
「"私は弱いです。一人では生きていけません。"だとよ。」

持っていたプリンを二つ、またターゲットのかごに入れてみた。

「お前は遠回しに、何も悪くない女も殺したんだ。ズタズタに苦しめてからな」

冷たい口調を心掛けた。ターゲットの目が揺れる。

「…勝手に死んだんだろ!俺には関係ねぇよ」

「本当にそう思ってんのか?本心は違うだろ?本当は罪悪感でいっぱいなはずだ。」

本当は罪悪感でいっぱい。そう思い込ませたい。

⏰:11/07/12 18:43 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#174 [匿名]
「そんなわけねぇだろ!」

ターゲットはキッと俺を睨んだ。

「いや、どうだろうなー?罪悪感はない!と思い込んでるだけじゃねぇのか?いや、思い込もうとしてる段階だったりしてな?」

人間の頭は都合よく出来ていて、自分の思い込みが、事実だと勘違いして記憶してしまうらしい。

あいつが言っていた。


ターゲットもこれに似て、本当は罪悪感で押し潰されそうなのに、罪悪感はないと思い込んでいるだけなのかもしれない。

いや、そうであってほしい。

⏰:11/07/12 18:53 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#175 [匿名]
「…勝手に言ってろ」

ターゲットは俺から逃げるようにレジに並んだ。


帰り道、ターゲットは嫌な顔をしたが、俺は気付かぬふりで隣を歩いた。

ターゲットは何も喋らない。さっきの俺の言葉が、効いていればいいけど。


…ん?
そもそも罪悪感なんてこの男にあるのか?

今日も人を殺しちゃったなー。可哀想だったなー。もし子供がいたら子供は非行に走ってしまうだろうなー。あー本当申し訳ない。

なんて考えがある奴が50人も殺せるのか?

もしかしたら俺は、的外れな事を言っていたのではないか?

⏰:11/07/12 18:57 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#176 [匿名]
そういえば、あいつも断定はしていなかった気がする。

「自分が強く思い込みをすればするほど、それが事実とは異なっていても、事実であると勘違いしてしまう、事がある時もあるらしい。」

あいつはそう言っていた。なんともあやふやじゃないか!

俺はあいつに騙されたのか?良く考えてみれば、敵の悪魔が有利になる情報を、易々と提供する馬鹿な天使がいるか?


今日上へ帰ったら文句を言ってやる。怒鳴り散らして喚いてやる。

⏰:11/07/12 22:54 📱:F06B 🆔:Y9s0yC6I


#177 [葵]
>>1-176

また読ませていただきます(^ω^)

⏰:11/07/13 04:01 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#178 [匿名]
>>177葵さん
ありがとうございます!めっちゃ嬉しいです(^^*)

⏰:11/07/13 20:52 📱:F06B 🆔:XVRIBGCs


#179 [匿名]
「なあ。」

そんな事を考えていたら、ターゲットがいきなり声を出した。俺に言ったらしい。

「お前、喧嘩強いんだよな?」

「当たり前だろ」

悪魔が人間に負けるわけがない。力も速さも運動神経も人間なんかより上回っている。

そして何よりも殴られたって刺されたって、たいした痛みは感じない。

傷は触れればすぐに治る。

そんな俺が人間相手にやられるわけがないのだ。

⏰:11/07/14 12:27 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#180 [匿名]
「だよなー悪魔だもんなー」

「お前馬鹿にしてんだろ?」

「し、て、な、い、よ!」

「片言じゃねーか!」

「そ、ん、な、こ、と、な、い、よー!」

「やめろ!面倒くせぇ」

「あはは、笑わせんなよ」

「それはお前だろーが!」



無駄な会話だ。
こんな会話をしている場合じゃない。

⏰:11/07/14 12:29 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#181 [匿名]
「で?お前の知り合いか?」

コンビニを出た時から、視線は感じていた。

「さあ?よくわかんねぇ」


俺の知り合いなわけがないし、完全にターゲットの知り合いな事は間違いないはずだが、後ろにいて顔が見えないせいか、ターゲットも誰だか分からずにいる。



つけられた。

最初は2、3人だったが、コンビニから遠くなるにつれ人数は増えている様子だ。

多分後ろに10人はいる。

⏰:11/07/14 12:33 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#182 [匿名]
「お前を恨んでる奴なんて死ぬ程いるんだろうなー」

冗談を言ってみた。でも実際に狙われると、冗談が冗談じゃなくなってしまうみたいだ。


「うるせぇな。ダッシュで逃げるか戦うか」

現に張本人は笑っていない。

俺達が歩いている場所はコンビニのある大通りを一本奥に入った人通りの少ない道だ。

ターゲットの家までは走って一分でつける距離。


この道の始まりと終わりに、立入禁止の標識があるのか?と疑えるほど、一般人がいなかった。

⏰:11/07/14 12:36 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#183 [匿名]
「逃げるのも大変そうだ」

前から仲間らしい大群が俺達の方へ向かって来るのが見えた。

10人はいるように見える。って事は後ろも合わせて20人?

「お前って疫病神だな」

と、ターゲットが言う。

「まぁ悪魔だからな、否定できねぇ。だけど俺の悪運は強い!」

「なら隙を見て逃げろよ。どうせこいつらの標的は俺だろ?」

ターゲットが首を鳴らす。喧嘩の前の威嚇なのか、逃げる前の準備運動なのか、どちらにも見えた。

⏰:11/07/14 12:38 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#184 [匿名]
「いや、俺は逃げねぇよ?」

カッコつけんなよ!とターゲットが俺を睨んだ。

「今ここでお前に死なれちゃ困んだよ。…明後日自殺してもらうんだからなー」

冗談に聞こえないように、真顔でターゲットを見た。

「どっちみち俺は死ぬしかねーのか?」

「ああ。そういう事になる」

「だったら今殺されても俺からしたら変わんねぇな?自分で命を捨てるより、誰かに殺られる方が、意外にマシかも」

ターゲットが鼻で笑う。

⏰:11/07/14 12:43 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#185 [匿名]
「うるせぇ!ごちゃごちゃ言ってねぇで生きやがれ!」

ターゲットの意外な言葉に上手く返せなかった俺は、生きやがれ!と悪魔らしからぬ事を叫んでいた。

「お前意味わかんねぇな」

ターゲットは我慢できずに噴き出した。


「とにかくお前は死なせねぇ!借りもあるしな!」

「借り?俺は何もしてねぇぞ?」


「プリン二つ」

⏰:11/07/14 12:44 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#186 [匿名]
「プリン?」

「さっき買ってくれただろ?」

「は?」

ターゲットの持つビニール袋を指差してやると、ターゲットは中を覗いた。

カップラーメンの山の一番上に、仲良く並んだプリンが二つ、ターゲットを見上げている。

「いつの間に!」

やっぱりターゲットは気付いていなかった。となると、俺がさっき言った事は強ち的外れでもなかったのかもしれない。

⏰:11/07/14 12:48 📱:F06B 🆔:mPWudR..


#187 [匿名]
「おい!お前だな!」

ターゲットが俺とプリンを睨み、俺が笑っていると、後ろから図太い声が聞こえた。

二人同時に振り返り、つけてきていた連中を見ると、黒いスーツを着た見事に柄の悪い男達だった。

一番前にいるのは30代前半くらいのスーツ男。その後ろに20代であろうスーツ男達が10人ほど立っている。

どう見ても健全なサラリーマンには見えない。


「お前だよな?俺の女に手出した奴はよ!」

ターゲットはそう言ったスーツ男を、目を細めながら見た。

⏰:11/07/16 00:10 📱:F06B 🆔:k3oDghFM


#188 [匿名]
「何の事だか全然わからねーな。人違いじゃねーのか?」

嘘をついている様には見えない。

「とぼけんじゃねーぞ!」

後ろにいる男が言った。

「防犯カメラにもお前がしっかり写ってんだ!」

一人の男が俺達に近づき、ポケットから紙を取り出した。

なんだか警察みたいだな。


見てみると、今言っていた防犯カメラの映像のコピーだった。

その防犯カメラがある店の中に入ろうとしている男女がいて、よーく見ると男の方がターゲットそっくりだった。

⏰:11/07/16 00:13 📱:F06B 🆔:k3oDghFM


#189 [匿名]
「お前にそっくりだなー」

俺が紙の中の男を指差す。

「ああ。これは俺だな」

ターゲットは頷いた。

「あ!思い出した!あの時の子だ!いやー!まさかあんたみたいなおっかない彼氏がいたとはなー。分かってたら誘ってなかったよ」


ターゲットはこんな状況なのに、ヘラヘラと笑った。

「この女を誘ってどこに行ったんだ?」

素朴な疑問を口にしただけなのに、スーツの男達から殺気を感じた。


「どこって、女を誘う理由なんて一つしかねぇだろ?ホテルだよ、ホテル」

⏰:11/07/16 19:37 📱:F06B 🆔:k3oDghFM


#190 [匿名]
ターゲットが答えると、スーツ男達の殺気は強くなった。怖い怖い。


「お前最低だな」

「しょーがなかったんだって。一仕事終えた後だったんだけど、ちょっとしたミスがあって、そこに泊まらなきゃいけなくなったんだよ」

「一人で泊まれば良かったんじゃねーのか?」

「男一人で泊まるなんて怪しすぎるだろ!ただでさえ治安の悪い場所だったんだ」

「でもやる事やったんだろ」

「やらねーよ」


「嘘つけ!」

俺達の会話にスーツ男が入ってきた。かなり興奮している。

⏰:11/07/16 19:39 📱:F06B 🆔:k3oDghFM


#191 [匿名]
「俺の女は、気が付いたら寝ちゃってたみたいで、起きたら裸だったの。って泣きながら言ってきたんだぞ!!」

スーツ男は今にも殴りかかってきそうな勢いだ。


「は?お前の女が勝手に服脱いだんだぞ?裸で俺にまとわりついてきて、うぜぇから眠らせたんだ。何で俺が無理矢理〜みたいになってんだよ!」


「本当かー?」

腕を組み、探るようにターゲットを見た。

「当たり前だろ!誰があんなブスと!…あ、やべ」

口が滑った。とターゲットが下を出す。

⏰:11/07/16 19:41 📱:F06B 🆔:k3oDghFM


#192 [匿名]
失言を誤魔化す様に、ターゲットは手を振りながらヘラヘラと笑っている。

そんなターゲットを見て、スーツ男は真っ赤な顔をして怒った。目は血走っている。

「殺せ!」


スーツ男が命令をすると、前から、そして後ろから、男達が足早に近寄ってきた。

「こんな所で俺達を殺したら、すぐに捕まるぞ?ここは住宅街だ」

ターゲットの言う通りだ。物音がすれば、住人が窓から外の様子を窺うだろう。

物騒な雰囲気を察したら、被害が及ばないように警察を呼ぶに違いない。

⏰:11/07/19 19:46 📱:F06B 🆔:hKY5.7Lg


#193 [匿名]
「連れてけ!」

スーツ男は叫んだ。

そんなに大声で叫ぶなんて自ら警察を呼んでくれ!と言ってる様なものだ。

この集団はきっと、馬鹿の集まりだ。


同情すら感じた俺は、素直にこのスーツ男達の言う事を聞いて車に乗り込んだ。

ターゲットも呆れた顔で、周りのスーツ男達を眺めている。


「拷問かなー?俺痛いの嫌いなんだよな」

ターゲットはずっとこの調子だ。

⏰:11/07/19 19:48 📱:F06B 🆔:hKY5.7Lg


#194 [匿名]
しばらくして車が止まった。外を見ると古いビルが建っている。

ガラスは所々割れて、看板のような物がいくつか落ちていた。

もう何年も使われず、取り壊す事もされなかったビルだ。

周りは工場がいくつかあるくらいで、人の気配は感じなかった。


スーツ男達と雰囲気がぴったりで、何故か笑えた。きっとあからさますぎて現実ではなく、ドラマでも見ているような気分になったからだろう。

これで綺麗な部屋に連れて来られても、それもそれだが。

⏰:11/07/19 19:51 📱:F06B 🆔:hKY5.7Lg


#195 [匿名]
俺達は前後左右囲まれながら無理矢理ビルの中に入れられた。

中はそこらじゅうが土や砂で汚れている。

机や棚などは何もなく、ただ広いだけの空間だった。


「ここで俺達は殺されるのか。周りには何もないし、ちょっと叫んでも誰も助けには来てくれなさそうだな」

殺される気なんて無いくせに、ターゲットはわざとらしくそう言った。


「ああ、そうだ。若いのに残念だったなー」

ターゲットの演技にも気が付かず、スーツ男は意気揚々と笑っている。

⏰:11/07/20 14:54 📱:F06B 🆔:Vta.hKMw


#196 [匿名]
スーツ男を筆頭に、こいつらは正真正銘の馬鹿だ。ただ強面なだけで、頭の悪い連中だ。

こんな奴に殺されるなんて屈辱を味わったら、死んでも死にきれない。


「さあ、殺せ!好きなだけ痛め付けていいぞ!」

スーツ男は両手を広げ、高らかに笑った。

それが合図だったかのように、スーツ男達がナイフやバットを持ち、俺達にゆっくり歩み寄って来る。

拳銃を持っている様子がないのが、唯一の救いかもしれない。

⏰:11/07/20 14:58 📱:F06B 🆔:Vta.hKMw


#197 [匿名]
「どうする?」

俺があいつに聞いた。

「どうするもなにも、今から作戦会議する時間なんてねーぞ。こういう時は殺られる前に、殺るだけだ!」

そうターゲットが言うと同時に、どこから出したのか、ナイフを構え出した。


「お前いつの間に!?」

身体検査をする事もなく、手足を縛る事もなく、俺達が自由に動ける状態にしたままだったのだから、ターゲットの反抗は安易に想像出来たはずだ。

それなのに、スーツ男達の反応は想定外の事が起きた!という反応だった。

⏰:11/07/20 15:00 📱:F06B 🆔:Vta.hKMw


#198 [匿名]
「おい、俺にも何か武器くれよ!」

いくらなんでも死ぬまで人間を殴ったりはしたくない。そんな悪趣味は俺にはない。

「しょーがねーな。」

ほらっとターゲットがナイフを放り投げた。仕事がないのに二本も隠し持っているとは、殺し屋は大変だ。

「やるぞ!」

スーツ男達が武器を見て立ち止まり戸惑っている今、こっちから仕掛けた方が有利になる。

とりあえず刺されないようにしよう。俺は刺されても死なないんだから、こんな所でターゲットに、その点を怪しまれたくはない。

⏰:11/07/20 15:08 📱:F06B 🆔:Vta.hKMw


#199 [匿名]
俺がそんな心配をしていると、ターゲットは地面を蹴り、スーツ男達目掛けて走った。

まずは一人目。
一番ターゲットの近くに居た男。いきなり自分に向かって勢いよく走り寄ってきたターゲットの速さに、ついていけていない。

あっという間に首を切られ倒れた。

血が噴き出し、周りのスーツ男達に飛び散る。


その後ろに立っていた男が二人目。前の男が呆気なく倒れ、ターゲットと目が合う。
咄嗟に鉄パイプを大きく振り上げターゲットの頭を狙った。

それがいけなかった。ターゲットはまた地面を蹴り、一歩でその男の懐に入り、左胸を刺した。

そして引く抜く。男は後ろに倒れた。

⏰:11/07/21 15:51 📱:F06B 🆔:7xgv.6LI


#200 [匿名]
ターゲットが、ただのナンパ野郎だと思っていたスーツ男達は怯んだ。

そりゃそうだ。
ターゲットは普通の若者にしか見えない。ちょっと顔がいいからって女を弄ぶ男そのものだ。


それが蓋を開けてみたら、この有り様だ。

一般人を殺すと脅し、痛め付けるだけ痛め付けて、もう俺の女に近づくな!とでも言いたかったのだろう。


やっぱり同情してしまう。可哀想なスーツ男達。

⏰:11/07/21 15:52 📱:F06B 🆔:7xgv.6LI


#201 [匿名]
ターゲットの様子を見ていた俺を、スーツ男達が十人程囲んでいた。

「よそ見してていいのか?」

「こうなったら殺すしかない!」

などと口々に話している。やっぱり殺すつもりは元々なかったみたいだ。


ナイフを持っている者がたったの三人で、他は鉄パイプやバットを持っている。

先にその危ない三人を殺そう。ちょうどナイフを持った三人は俺の目の前に並んでいた。これは一気に殺すのに最適だ。

今ターゲットが一人目を殺したやり方をマネしてみた。

⏰:11/07/22 22:33 📱:F06B 🆔:f4Qhwrxk


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