悪魔と天使の暇潰し
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#234 [匿名]
「俺の生き方に、あんたがつべこべ口出すな!」

「あら、怖いわ」

女はわざとらしく体を震わせ、玄関へと向かった。意外と簡単に諦めたらしい。

「もし、私の会社が潰れたら依頼を受けなかったあなたのせいって事になるから、その時は逃げないでくださる?一緒に遊びましょう?」

そう言い残し女は出て行った。
きっとその遊びで楽しめるのはターゲットではなく女側だけだろう。

全く、怖いのはどっちだよ。

⏰:11/08/13 20:53 📱:F06B 🆔:Td4DB/mo


#235 [匿名]
「何で依頼受けねぇんだ?」

三人きりになった部屋で、俺はさっそく話題を切り出した。

「…別に」

ターゲットは素っ気なく応え、先程まで女が座っていたソファーに座った。

「単刀直入に言うけど、昨日一日中君の事を調べさせてもらったよ」

あいつが語りだした。昨日聞いた内容をもう一度黙って聞いた。

⏰:11/08/13 20:56 📱:F06B 🆔:Td4DB/mo


#236 [匿名]
ターゲットに依頼をして来た人数は104人。
依頼を遂行した数は54件。

半数は断っている。まず最初にあいつが疑問に思った事、なぜ断るのか?

この断った半数の依頼人に、共通点は何もなかった。


そして殺す方法もまちまち。刺す、押す、締める、自殺に見せかける、毒、溺死。ターゲットは何でも器用にこなしてしまう。

誰かにばれた事は一度もなく、警察の調査の対象になった事もない。

殺す相手を冷静に観察し、最高のタイミングを見計らう。勢いや感情に任せて行動する事はまず無い。

⏰:11/08/14 17:55 📱:F06B 🆔:slI3DMwQ


#237 [匿名]
そして、ターゲットが依頼を受ける人と受けない人の区別をする物が何なのか。

この間、ターゲットは悪い事をした奴を殺すと言っていたが、あれは多分嘘だ。

お金の為というのも嘘。
殺しを成功させたら一千万という大仕事を、ターゲットは蹴っていた。

でもその理由は、依頼を受けた人を調べる事で、すぐに分かった。

それは依頼人の殺して欲しい理由にあるからだ。

⏰:11/08/14 18:05 📱:F06B 🆔:slI3DMwQ


#238 [匿名]
依頼を受けた人に共通している事は、恨みがある事。

ただの恨みではない。動物、子供が傷付けられた事による恨み限定だ。

会社を倒産させられた。恋人を奪われた。母親を殺された。騙された。大金を奪われた。情報を盗まれた。

そういう理由の場合は、どんなに金回りが良くても断っている。

普通の殺し屋なら断るはずがないのに。

⏰:11/08/14 18:11 📱:F06B 🆔:slI3DMwQ


#239 [匿名]
しかし、ペットや子供、動物などが傷つけられたり、殺されたりした場合は依頼を受けている。

今思い返すと、あのチンピラ野郎を殺した理由も、動物関連だった。

その時のターゲットの態度を考えると、殺された動物の為に!という思いが強かったんだなと理解出来る。

まるで弱い者を守るヒーローの様だ。



「僕の勝手な解釈だけど、合っているよね?」

全てを話した後、天使のあいつはそう問い掛けた。

⏰:11/08/14 18:18 📱:F06B 🆔:slI3DMwQ


#240 [匿名]
あいつが話している間、ずっと黙って聞いていたターゲットは、最後の自分に対する問いを聞いて、自傷ぎみに笑った。

「殺った本人すら覚えていない依頼人数も調べられたなんて、あんた何者?」

「え?うん、まあね」

あいつが言葉を濁す。
なんだかわざとらしい。

「確信を得る為に、全ての依頼人を調べたから時間がかかったけどね。でも君が根っからの悪者ではないと知れたから」

あいつの見透かすような笑顔を、ターゲットは苦々しい顔で見た。

⏰:11/08/15 15:52 📱:F06B 🆔:HH5XgpYM


#241 [匿名]
「…俺は」

ターゲットは下を向いた。

「…ただ」

下を向きながらターゲットは呟いている。

「ヒーローにでもなりたかったのか?」

ターゲットが俺を見上げるので気が付いた。いつの間にか俺は、ターゲットの目の前に立ち、見下ろしながらそう言っていた。

その後も勢い。

「この世にな、人殺して金稼いでるヒーローなんかいねーんだよ!それはな、どんな理由があろうとただの犯罪者だ!」

⏰:11/08/15 15:56 📱:F06B 🆔:HH5XgpYM


#242 [匿名]
ターゲットは何も応えない。ただ下から真っ直ぐ俺を睨んでいる。

「お前じゃ誰も救えない。何も変えられねーよ!間違ってんだよ。お前が今までやってきた事は全部!何を夢見てんだか知らねーが、正当化はされねぇぞ!」


勢いのまま怒鳴った。俺はこんな事を考えていたのかと、言葉に出して初めて知った。

「そんなんじゃねぇ」

ターゲットが言う。

「そんなガキみたいに、ヒーローになりたいなんて、思ってねーよ!」

ターゲットも怒鳴った。

立ち上がり、奥の部屋に行ってしまった。

行動が幼稚で、言葉とのギャップのせいで妙な気持ちになる。

⏰:11/08/15 16:00 📱:F06B 🆔:HH5XgpYM


#243 [匿名]
バタン!と大きな音をたてて閉まったドアの向こう側には歯を食い縛るターゲットがいた。

必死に涙を我慢しているのだろう。

俺に全てを否定されたターゲットは、母親に裏切られた子供同然。

あの態度を見ると、俺の言った事を真に受けている。誰かの言葉に左右され、嘘だ!と思いたいが思えない子供だ。

全てが悪い方へと向かっていく様な不安にかられて、死にたくなる。はず。

⏰:11/08/15 16:02 📱:F06B 🆔:HH5XgpYM


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