2年A組
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#34 [我輩は匿名である]
「ねぇねぇ、キャッチボールしよ!」
部員が休憩している間、彩は美穂と皐に声をかける。
「やるー!」
「あたし汗かきたくないからパスー」
ベンチに座ったままの皐とは正反対に、美穂が嬉しそうに立ち上がる。
「うっちー!グローブ貸して」
「えー?お前の手にはぶかぶかだと思うけど」
「いいの!」
:11/10/23 14:00
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#35 [我輩は匿名である]
「じゃあ私は…」
「あっ、俺の使う?」
誰のグローブを借りようか悩んでいた美穂に、龍也が真っ先に名乗りを上げた。
「いいの?」
「いいよ。はい」
龍也は笑顔で、美穂に自分の青いグローブを手渡した。
「ありがとう!」
「うっちーとは違って、菊池君は爽やかだねぇ」
「ほっとけ」
彩にからかわれて、誠はフンとそっぽを向く。
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#36 [我輩は匿名である]
「彩ちゃん、行こ♪」
「うん!」
2人はそれぞれ、それほど大きくない手に大きなグローブをはめて走りだす。
休憩中はよく、こうやってマネージャー同士でキャッチボールをする。部員たちが野球をしているのを見ると、やはり自分たちもやりたくなってしまう。
キャーキャー言いながら下手なキャッチボールを始める2人を、部員たちが笑って見るのもいつもの事だ。
「ほぼ毎日やってるのに、ホント下手だな。あいつら」
「そりゃ女子だもん」
「女子でもプロ野球リーグとかあるじゃん」
:11/10/23 14:01
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#37 [我輩は匿名である]
「まぁ…」
龍也にもっともな事を言われてしまい、皐は口をつぐむ。
「青春だねぇ〜」
龍也はキャッチボールをする2人を見ながらそう漏らした。
どことなくデレデレしている龍也を、誠と皐が黙って見つめる。
「なぁ、こいつ、どっちかの事が好きなのかな?」
「…そんな感じだな」
「どっちだと思う?」
こそこそ話しながら、誠も皐も一緒に、彩と美穂に目をやる。
:11/10/23 14:01
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#38 [我輩は匿名である]
「彩ちゃん、今日調子いいねー!」
「そうー?」
「内村君のグローブだからー?」
「はぁっ!?何それ!?そんな事あるわけないじゃん!!」
こっちはこっちで、同じような話で盛り上がっている。
焦っているのか、顔を少し赤くして言い返す彩を見て、美穂が笑っている。
「変な事言わないでよー!!」
彩が叫びながらボールを投げると、勢い余って地面にたたきつけられ、そのまま何度かバウンドして変な方向にボールが飛んで行ってしまった。
:11/10/23 14:02
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#39 [我輩は匿名である]
「…どっち…?」
「…意外と、不器用な彩の方かもしれないよ」
誠と皐は話しながら、再び龍也に目を向ける。
「そんな事言う美穂はどうなのよー?好きな人とかいるんじゃないのー?」
「いないよー」
彩の質問に即答する美穂に、彩はがくっと肩を落とす。こんなにバッサリ切り捨てるという事は、本当にいないのだろう。
:11/10/23 14:02
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#40 [我輩は匿名である]
「私も彩ちゃんみたいに、恋したいなー♪」
「だから!違うってば!」
「なんでー?絶対好きなんだと思ってたのに」
美穂に意外そうに問いかけられ、彩は自分でも首をかしげる。
「んー…なんか…好きっていうか、幼馴染だし、どっちかというとお兄ちゃんみたいな感じしか…」
「えー?聞こえないよー」
聞こえていないのか、聞こえていない振りなのかわからないが、美穂は大げさに耳に手を当てて体を前傾させる。
「もういい!!」
本気で答えようとした自分が恥ずかしくなり、彩は声を荒げながら力いっぱいボールを投げた。
:11/10/23 14:03
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#41 [我輩は匿名である]
少しずつ、あの事件の事など忘れかけていた。
3日後の夜。
ある男子高校生3人が部活を終え、家路についていた。
背後から忍び寄る男の影にも気づかずに。
周りに人の気配はない。その上3人が大いに騒いでいるのを良い事に、男はニヤニヤした顔で、足音を立てずに男子高校生に近づいていく。
トントン。
誰かに後ろから肩をたたかれ、男子高校生の1人が振り返った。
:11/10/23 14:03
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#42 [我輩は匿名である]
次の日の早朝。
その場所には、朝早いにもかかわらず、多くの警察と野次馬とマスコミが集まっていた。
胸部を刃物で1突きされた、3人の男子高校生の遺体が発見されたのだ。
土谷もその中に埋もれ、いかにも「面倒だ」と言わんばかりの顔で頭をかく。
またもや高校生。前の女子高生と関係があるのかはまだ不明だが、土谷にはなぜか、関係しているようにしか思えなかった。
「…何が起こってんだ…?」
:11/10/23 14:25
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#43 [我輩は匿名である]
彩たちの高校では、この事件の報告を受け、全校集会が開かれた。内容は思った通り、登下校時や外出時には不審者に注意するとか、夜は人通りの多い道を歩けとか、そんな話だ。
「そんな事言うんなら学校閉鎖とかしてくれたらいいのに」
「俺たちの学校で起きたんじゃねぇしなぁ」
クラスが隣同士で、たまたま列も隣になった皐と龍也が小声で愚痴りあう。
その傍では彩と美穂が浮かない顔で黙り込んでいる。
今回殺された3人もまた、中学2年の時の同級生だった。
明らかに自分たちが…中学時代の2年A組が標的にされている。彩はそう確信した。
徐々にうつむいてきた顔を上げ、少し前で誰とも話さずにじっと話を聞いている誠の背中を見つめる。
ただの単発事件だと思っていたようだった誠は、今はどう考えるのだろう。これでもまだ、「考えすぎだ」というのだろうか。
どうしてかわからないが、それが気になった。
:11/10/23 14:26
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