2年A組
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#112 [我輩は匿名である]
言ってから、しばらく春香から返事の言葉は発せられなかった。
「…ごめん、嫌な事言ったね。忘れて」
彩はいつものように明るい声でそう訂正する。
「なんか、暗い話しちゃったね。今度はちゃんとした話しよ!…じゃあ、またね」
春香からの返事が怖くて、彩は一方的にそう言って電話を切った。
しばらく、胸に残るもやもやを感じながらベッドに座り込む。
静かになった携帯電話を見つめる。何気なくそれを見る彩の目に、携帯電話が表示する『14:53』の文字が映る。
しばらくして、今度は違う人物に電話を掛けた。
:11/11/04 16:27
:PC/0
:EdsrP/zo
#113 [我輩は匿名である]
「もしもし」
5回ほど呼び出し音が鳴って、誠が電話に出た。
「…うっちー?」
「俺にかけてきてるんだから、わざわざ聞くなよ」
いつも通りの誠の声を聴いて、何だか肩の力が抜けた気がする。
「何だよ」
「さっき、出かけるのが見えたからさ。…どこ行くのかなぁと思って」
「……別に」
誠は短く答える。
:11/11/04 16:28
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:EdsrP/zo
#114 [我輩は匿名である]
彩はムッと頬を膨らます。
「せっかく心配して電話かけてあげたのに、冷たいなぁ」
「電話かけてほしいなんか言ってないぞ」
「きーっ!むかつく!」
「はぁ?何なんだよ…。用がないなら切るぞ」
「あっ待って!」
本当に切られる気がして、彩は声を上げる。誠のため息が、スピーカーから漏れてくる。
「…あの…」
「何」
:11/11/04 16:28
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:EdsrP/zo
#115 [我輩は匿名である]
「…気を付けてね。ちゃんと帰って来てよ」
彩は少し下を向いていった。受話器から、今度は鼻で笑うのが聞こえてきた。
「お前、俺がそんなすぐ死ぬと思ってんのか?」
「わからないじゃん。誰が狙われてるのかわからないのに」
「心配しなくても、俺は死なねぇよ。…じゃあな」
あ。彩が声を出す前に、電話が切れてしまった。
その自信はどこからくるんだ。一瞬呆れたが、むしろそれを聞いて少し安心した。
彩はちょっとだけホッとして、携帯電話を机に置いた。
:11/11/04 16:29
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:EdsrP/zo
#116 [我輩は匿名である]
その日の夜21時頃。家族とともにテレビを見ていると、家の固定電話がけたたましくなり始めた。
母親が立ち上がって受話器を手にする。
彩がなんとなくその様子を見ていると、少しして、母親の顔から血の気が引いていくのがわかった。
驚いて、彩も電話の親機のもとに歩いていく。
「…彩」
「…何?」
「同じクラスに、小山凛ちゃんっていたわよね…?」
「いるけど…どうかしたの?」
:11/11/05 21:49
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:lu/Ru1I.
#117 [我輩は匿名である]
「……さ…刺されたって…」
彩は自分の耳を疑った。
「刺された…?」
その言葉だけを繰り返す。
ショックも大きいが、彩の中で、恐怖が一気に膨らんだ。
この高校の生徒も、とうとう狙われ始めた。そう思うと、体が小刻みに震えだす。
「…幸い、たまたま通った人がすぐに通報してくれたみたいだから、けがで済んだそうよ」
電話を終え、母親が彩に言う。
:11/11/05 21:49
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#118 [我輩は匿名である]
「…犯人は…?」
彩は俯いたまま尋ねる。
「まだ…捕まってないそうよ」
「…そんな…」
彩はふらつき、壁にもたれかかる。そのまま、よろよろと歩きながら自分の部屋に入り、ドアにもたれて座り込んだ。
なぜ、今回は凛だったのか。犯人はいったい何がしたいのか。彩の頭の中で、いろんな疑問が浮かんで巡る。
ふとベッドに目をやると、無防備にぽんとおかれた携帯電話が見えた。
:11/11/05 21:50
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#119 [我輩は匿名である]
彩は素早くそれに駆け寄り、南里に電話を掛ける。
1分ほど粘ると、呼び出し音が止まった。
「はい」
「あの…この間警察署でお話しした、塩見彩です」
「…あぁ、この間はありがとうございました」
南里はご丁寧に礼を言う。
「いえ…。そんな事より、凛ちゃんが刺されたって、本当ですか?」
彩の問いに対し、南里のため息が聞こえてくる。
:11/11/05 21:51
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#120 [我輩は匿名である]
「えぇ。誰に聞いたんです?」
「連絡網で回ってきました」
「そうですか…」
「いつですか?いつ、どこで?」
彩は畳み掛けるように問い詰める。
「今日の昼過ぎです。15時前じゃないかと。場所は中央公園です」
南里は淡々と答えた。ここで隠しても、どうせ報道でばれると思ったのだろう。
:11/11/05 21:51
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#121 [我輩は匿名である]
彼女の答えに、彩はある事を思い出した。
「15時頃…」
春香と電話し終わった時、彩の携帯電話が示していた時間は、確か14時53分。その時間にどこかへ出て行った誠。
ありえない。彩は、なぜその考えに至ったのか、自分でも理解できなかった。
「…塩見さん?」
急に黙り込んだ彩を心配して、南里が声をかける。
「え?あ、すみません。…何でも…ありません」
「…あなた、何か知ってるの?」
:11/11/05 21:52
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