2年A組
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#117 [我輩は匿名である]
「……さ…刺されたって…」

彩は自分の耳を疑った。

「刺された…?」

その言葉だけを繰り返す。

ショックも大きいが、彩の中で、恐怖が一気に膨らんだ。

この高校の生徒も、とうとう狙われ始めた。そう思うと、体が小刻みに震えだす。

「…幸い、たまたま通った人がすぐに通報してくれたみたいだから、けがで済んだそうよ」

電話を終え、母親が彩に言う。

⏰:11/11/05 21:49 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#118 [我輩は匿名である]
「…犯人は…?」

彩は俯いたまま尋ねる。

「まだ…捕まってないそうよ」

「…そんな…」

彩はふらつき、壁にもたれかかる。そのまま、よろよろと歩きながら自分の部屋に入り、ドアにもたれて座り込んだ。

なぜ、今回は凛だったのか。犯人はいったい何がしたいのか。彩の頭の中で、いろんな疑問が浮かんで巡る。

ふとベッドに目をやると、無防備にぽんとおかれた携帯電話が見えた。

⏰:11/11/05 21:50 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#119 [我輩は匿名である]
彩は素早くそれに駆け寄り、南里に電話を掛ける。

1分ほど粘ると、呼び出し音が止まった。

「はい」

「あの…この間警察署でお話しした、塩見彩です」

「…あぁ、この間はありがとうございました」

南里はご丁寧に礼を言う。

「いえ…。そんな事より、凛ちゃんが刺されたって、本当ですか?」

彩の問いに対し、南里のため息が聞こえてくる。

⏰:11/11/05 21:51 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#120 [我輩は匿名である]
「えぇ。誰に聞いたんです?」

「連絡網で回ってきました」

「そうですか…」

「いつですか?いつ、どこで?」

彩は畳み掛けるように問い詰める。

「今日の昼過ぎです。15時前じゃないかと。場所は中央公園です」

南里は淡々と答えた。ここで隠しても、どうせ報道でばれると思ったのだろう。

⏰:11/11/05 21:51 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#121 [我輩は匿名である]
彼女の答えに、彩はある事を思い出した。

「15時頃…」

春香と電話し終わった時、彩の携帯電話が示していた時間は、確か14時53分。その時間にどこかへ出て行った誠。

ありえない。彩は、なぜその考えに至ったのか、自分でも理解できなかった。

「…塩見さん?」

急に黙り込んだ彩を心配して、南里が声をかける。

「え?あ、すみません。…何でも…ありません」

「…あなた、何か知ってるの?」

⏰:11/11/05 21:52 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#122 [我輩は匿名である]
南里の口調が変わる。彩はドキッとし、体を硬直させる。

「…何も知りません」

「…そう。もし何かあったら、どんな小さなことでもいいから必ず教えてください。…必ず、ね」

南里はそう念を押す。

「…わかりました」

「ありがとうございます。…それでは失礼します」

南里は忙しいのか、すぐに電話を切った。

彩は思った。“今ので、今後きっとマークされる”、と。

⏰:11/11/05 21:53 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#123 [我輩は匿名である]
それは…?

彩は思い切って、『発信』のキーに指を置いた。

自分で確かめれば済むことだ。彩は心に決め、電話を耳にあてる。

「もしもし」

いつもと変わらない誠の声がする。

「…あのさ…」

彩は深呼吸しながら口を開く。

「凛ちゃんの事…聞いた?」

⏰:11/11/05 21:54 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#124 [我輩は匿名である]
「あぁ…さっき連絡網で回ってきた」

「…そっか。でも、何で中央公園なんかで…」

「…中央公園?」

「うん。さっきあの女の刑事さんに聞いた」

「…ふうん…」

誠は、まるで何かを考え込むように低い声で返事を返す。

「…それでさ」

彩はまだドキドキしながら本題に入る。

「今日のお昼、…どこ行ってたの?」

⏰:11/11/05 21:55 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#125 [我輩は匿名である]
「…あぁ、お前が電話かけてきた時か。……散歩」

「絶対嘘だよね」

「…まぁ…。…今は言えない」

予想するよりも意味深な答えが返って来て、彩はさらにショックを受ける。

「…どういう事?何で?」

「だから、言えないって言ってるだろ」

「じゃあいつ言ってくれるの!?」

なかなか言わない誠にしびれを切らし、彩はつい怒鳴るように声を上げた。

電話の向こうから、声が聞こえなくなってしまった。

⏰:11/11/05 21:55 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


#126 [我輩は匿名である]
ちょっとムキになりすぎた。彩も困り、黙る。

「…明日」

「え?」

「明日言うよ。…これで満足?」

「…うん…」

「…じゃあな」

怒らせてしまっただろうか。電話を手に持ったまま、彩はうなだれる。

どうして自分たちがこんな思いをしなければならないのか。いつまで続くのか。

彩はため息をつき、しばらくそのまま動けなかった。

⏰:11/11/05 22:00 📱:PC/0 🆔:lu/Ru1I.


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