漆黒の夜に君と。V[BL]
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#391 [ちか]
その瞬間、優里はひっぱたかれたような顔で俺を見る。
「なんだよ、大事な話ってそれ?!嫌いなら嫌いって言えよ!!」
カッと熱くなる顔に苦笑いした。
やっぱり昔の自分に似てるな、なんて思いながら。
「話の途中だろうが。最後まで聞け。」
宥めるように言うと、大人しくなった優里にため息に近い白い息を吐きながら続ける。
「でも、何度も懲りずに言われるうちになんか胸の奥が揺さぶられるみたいな感覚になった。
最初はそれもただの苛立ちだろうって思ってたんだけど、お前があの金髪の友達と仲良くしてるのを見た時は正直妬いた。」
あの日ベランダから見た二人の影が重なる姿がフラッシュバックした。
あの時のどうしようもない苛立ちは、好きが故のことだったのだと今になって思う。
「妬いたって…、俺ケンとは別に…」
「お前がなんとも思ってなくても、相手がそうとは限らない。」
あの夜、襲われてる場面に遭遇した時がそれを示している。
優里は遮られた言葉を続けることもなく、俯いた。
襲われた夜のことを思い出したのだろう。
:11/11/08 21:35
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#392 [ちか]
そんな優里の頭を乱雑に撫で回した。
まるで、忘れろとでもいうように。
自分も似たようなことをしておきながら。
俺自身も優里を弄んだあの夜に苦い顔をしながら、さらに言葉を紡ぐ。
「でも気づかないように気づかないようにしてた。障害が多すぎんだろって。
これじゃ、約束は果たせねえって。」
どこまでも約束に囚われて
約束に固執する俺。
あいつはそんな俺を望んでいたのだろうか。
そんな俺を繋ぎ止めるための約束だったのだろうか。
いや、
「なのに、手術前日の夜だよ。…どうしようもないくらいお前に惹かれてる自分に気づいたのは。」
きっと、違う。
:11/11/09 01:43
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:/zp5pGog
#393 [ちか]
気づけば細い肩を抱き締めていたあの夜。
泣き顔にさえ、ドキンとしたあの夜。
もう気づいてないフリは出来ないと悟った、あの夜。…───
「俺、お前に実は相当ハマってるみたいだわ。」
そして、ふぅ、と一息ため息をついた。
言い切った安堵とも言える。
いや、正確には、まだ言い終えてはいないのだけれど。
そんな俺とは裏腹に優里は不安げな顔で俺を見つめる。
なんでだよ。
もっと喜ばないか?普通。
そう思ったのも束の間、優里は重苦しい口を開いた。
「でも、…俺とじゃ“約束”は守れないんじゃねーの…?」
その表情がたまらなく愛しい。
:11/11/09 12:44
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:/zp5pGog
#394 [ちか]
「だから、ココに連れてきたんだよ。」
「え…?」
優里の目を真っ直ぐ見据え、そう呟く。
親指で海を指しながら。
「あいつ、この海のどっかで眠ってるから。」
この青くて綺麗な海のどこかに、
白い灰となって。
ますますよく分からないと言った顔をする優里に、俺は付け足した。
「散骨ってやつ。あいつの遺言にそう書いてあったんだよ。もちろん、撒いたのは日本でだけど。でも海はどっかで繋がってると思うから、たぶんあいつはここにも居る。」
だから
俺は最後の挨拶と礼をこめて
ここに来たんだ。
:11/11/09 12:55
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:/zp5pGog
#395 [ちか]
あんなにすがりついていた約束を
あんなに執着し続けていた約束を、
裏切っても言いかもしれないなんて思ってしまったことは奇跡かも知れない。
それなら、
その奇跡に“幸せ”を願ってみても悪くはないだろうか。
もちろんこいつが拒むならそれを優先する心の準備はある。
病気も治った未来ある少年をたぶらかして引きずるようなことはしない。
だけど、
「最後に言っとく。俺はもう30だ。冗談でした、とかなんとか言って逃げるなら今が最後のチャンスだぞ。」
この嵐みたいに何もかもを巻き込んで離さないようなこいつには、
「…っぐ、言わねえ…よッ、グスン、俺はあんたしか…あんたしか見え…てねえんだ…から…────っ」
そんな心配は意味を成さなくて。
俺はそんな優里にどんどん嵌まっていく。
:11/11/09 13:07
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:/zp5pGog
#396 [ちか]
なぁ、
海の中のお前は
そんな俺を許してくれるか?
「グスっ、…神崎こそ、本当に俺で良いのか…?」
いつの間にか涙の膜が決壊した優里が揺れる瞳で問いかける。
そんな優里に俺は微笑んだ。
「お前が良い。」
.
:11/11/09 13:12
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#397 [ちか]
そして
きつく抱き締める。
離さないように。
離れないように。
「くる…し…、神崎っ」
「これくらいで?ああ、お前、華奢だもんな。」
頭の中に浮かぶ約束の言葉。
今さら、都合よく取ってしまいそうだ。
あいつの言う、“素敵な人”ってのは、こいつをさしてるんじゃないか、なんて。
素敵という言葉の不釣り合いさに少し笑いが込み上げる。
ザーッ…と音を立てて、
押しては引いてゆく波の中ににあいつの姿が浮かぶ。
まるで本当にそこに居るかのように、あいつの声が何故だか聞こえた。
“意地張ってないで、あたしの分まで幸せになってね”
:11/11/09 13:20
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:/zp5pGog
#398 [ちか]
そして、抱き締めた体勢から俺の顔が見えないように優里を胸にしまい込むと、自分にしか聞こえないくらいの声で小さく呟いた。
「………ありがとう。」
案の定、
優里は聞こえてないようだ。
その代わり、心臓の鼓動ばかり速くなっていく。
:11/11/09 13:23
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:/zp5pGog
#399 [ちか]
もう
“普通の幸せ”なんて望めないかも知れない。
でも、それでもいい。
「か、神崎…」
だって俺は
「ん?」
“嵐”にのまれることを望んだのだから。
「………大好き」
.
:11/11/09 13:27
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:/zp5pGog
#400 [ちか]
これから先、どんな障害があるか分からない。
でも、コイツとなら
なんとかやっていける気がする。
いや、むしろ面白そうにさえ思えてくるから不思議なもので。
「………知ってる。」
夕陽でキラキラと水面を光らせる海を背に、顔を赤らめ今にも爆発しそうなそいつへ俺はそっと口づけする。
そして耳許で囁いた。
「俺も、好きだ。」
こんなことを言う俺はらしくない。
狂ってるかもしれない。
だけど、どうせもう引き返すことなんて出来ないんだ。
そらなら、いっそ、とことん飲み込まれてやろうじゃないか。
お前という嵐に。…────
― 第十二話 e n d ―
:11/11/09 13:40
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