漆黒の夜に君と。V[BL]
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#430 [ちか]
結局はみんなそうなんだ。

特に俺を知りもしないで、そんな状態で俺を好きだの言ってくる。
簡単に。
俺が冥に言えない言葉を簡単に。

しかし、それは決して叶うこともない。
そこに自分を重ねて、同情という名のもとに優しい口調で断り続ける自分。


そんな時の優しさなんて
本当の優しさでもなんでもないのに。

それをまた勘違いするんだから、つくづく可哀想になる。自分共々。


そんなことを悶々と考えながらも、こんな状況にももう慣れたのか自動的に適当な言葉が口から滑るように出た。
最後にお決まりの言葉を添えて。

「…だから、部活以外今興味ないんだ。ごめ…」

それでいつもみたいに終わると思っていた。

「嘘はダメだよ、蓮見くん。」


のに。

⏰:11/11/13 19:11 📱:Android 🆔:08ju6xVE


#431 [ちか]
「え?」

思わず自分の耳を疑った。
嘘?
こいつ、何言って…

「なんで俺が嘘なんかつかなきゃいけないんだよー?瀬野さんなんか勘違いしてない?」

動揺を悟られてはいけないと、さらに笑顔を作り誤魔化す。
が、瀬野はトドメの一言をさらりと言ってのけた。




「あたし、知ってるよ。蓮見くんが日下くんのこと好きなの。だから、みんなの告白断ってるんでしょ?」

⏰:11/11/13 19:30 📱:Android 🆔:08ju6xVE


#432 [ちか]
ドクン、

と心臓が跳ねた。

なんだ、こいつ…
なにを根拠にそんなことを…

俺はそんな素振り一度だって…


「なんで?って顔してるね。教えてあげよっか?」

そんな俺に瀬野は悪戯っ子のような笑顔を向ける。
咄嗟に俺は自分の顔にてを当てた。

顔に出るほど、動揺してるなんて。
動揺がさらなる動揺を呼び、暑さからなのかさえ分からない汗がだらりと額から落ちてきた。


「目、見たら分かるの。日下くんのこと見てるときの蓮見くんの目、恋する女の子みたいなんだもん。」


暑さのせいで耳までおかしくなったのだろうか。

俺が恋する女の子?

「意味分かんねぇ。勝手に推測だけで話進めんのやめてよ、瀬野サン。」


冗談じゃない。

⏰:11/11/13 22:21 📱:Android 🆔:08ju6xVE


#433 [ちか]
「そうそう、その顔!日下くん以外の子には今みたいな冷めた目してるのにさ、日下くんにはなんかあったかい目で見てるの。自覚ないでしょ?あたしね、人間観察、得意なんだ。」


そう言ってパンと嬉しそうに叩く瀬野。
なんなんだ、この底抜けな明るさとなんでも見透かしているかのような目は。


どう話をそらしても、軌道修正されてしまうその苛立ちに俺は痺れを切らしため息をついた。


「…で、だったらなに?」


別にバレたらバレたでどうにでもなる。
今はコイツから離れたい。

その一心で、俺は敵意むき出しの顔で結んでいた口を開いた。

⏰:11/11/13 22:29 📱:Android 🆔:08ju6xVE


#434 [ちか]
そんな俺に、瀬野もため息をつく。

「だーかーらー、あたしは蓮見くんが好きなの。付き合って?」

やれやれ、と言った顔でそんなことを言ってのける瀬野に俺は唖然とした。


そうか、これは脅しか。

俺が冥のことが好きなのを黙っておく変わりに自分と付き合え、と。

なんて打算的な女だ。
だけど、俺はその手には乗らない。

俺はフン、と鼻をならし牙を向くようにその提案をはね除けた。


「なに、脅迫のつもり?勝手にすればいいじゃん。そんなの誰も信じないよ。」


目立ちもしない女子一人の噂事なんて、人望のあつい俺からすればどうってこと無い。

好きにしろよ、そう言って蒸し暑い屋上の出入り口に手をかけた、その時。



「違うよ、これは立派な交換条件。」


それは相変わらずのニッとした猫みたいな笑顔が背中越しでも分かるような声だった。

⏰:11/11/13 22:38 📱:Android 🆔:08ju6xVE


#435 [ちか]
ドアノブを掴みかけた手が固まる。

「なに、どういう意味。」

そう言って、顔だけ瀬野の方に振り向くと案の定猫みたいな笑顔が目に映った。
その笑顔さえ少し鬱陶しさを覚える。


「蓮見くんだっていつまでも片想いじゃ苦しいでしょ?」


そんな俺の内心などお構い無しに瀬野は痛いところを突いてきた。
『苦しい』…確かにそれは否めない。

出来ることならこの感情を忘れたいとさえ思ったほどだ。

瀬野は俺の心を見透かしたように目を細め続ける。

「だからあたしで試したら良いと思うの」


「は?試すってなにを…」

「あたしと付き合って忘れられるか試してみるってどうかな?」


無意識か、思わずため息がこぼれた。
ワケが分からず、俺は乱雑に頭を掻き瀬野を睨み付ける。


「そんなこと、出来たらとっくにやってるよ。」

そう、とっくに。
出来ないのは、やっぱり俺の中の一番が冥だからで。
隣に居る女がさも自分が一番だなんて顔で自分に引っ付いてくると思うと、どうしてもダメなのだ。


そんな俺の頭の中を知ってか知らずか、瀬野はとっておきの作戦と言っても過言じゃないような大袈裟な口調で最後の一言を言ってのけた。

⏰:11/11/15 21:27 📱:Android 🆔:3nDUr.S6


#436 [ちか]
「もちろん、蓮見くんの最優先は日下くんのままでいいよ。
今まで通り日下くんだけ見てればいい。
あたしはね、女の子の中で蓮見くんの一番になりたいだけだから。」

なんの迷いもなくそう言う瀬野に、思わず俺が戸惑った。


瀬野がそこまで言う意味が分からない。


だけど、なぜだろうか。

俺の心の中をすべて読んでいるような不思議さに少し興味を引かれたのもたしかだった。

「なんであたしがそこまでするのかって思ってるでしょ?」

「…………。」

ほら。
また見透かされる。
今までこんなこと無かったのに。

⏰:11/11/15 21:57 📱:Android 🆔:3nDUr.S6


#437 [ちか]
なんなんだ、こいつ。

不思議と瀬野のペースに引き込まれていくのが自分でも分かった。



「あたしの蓮見くんに対する“好き”は、興味の対象って意味だから。
日下くんを愛しそうに見てる蓮見くんがあたしは好きなの。それをもっと傍で見れたら素敵だと思って!」


そこに押しの一言。



「蓮見くんの一番は日下くんのままでいいんだよ、そしたら蓮見くん的にはすごい特だと思わない?無駄に女の子に言い寄られることもないし、ね?」




気がつけば俺は小さく頷いていた。

「…わかった。でも、瀬野さん今言ったこと忘れんなよ?」



それが
俺と瀬野の付き合いの始まりだった。

⏰:11/11/15 21:58 📱:Android 🆔:3nDUr.S6


#438 [ちか]
「彼女が出来たああぁあぁ?!」

屋上で瀬野と別れ、教室に戻ると残わずかとなった昼休みのうちに冥にそのことを報告してみた。

その途端、椅子から立ち上がり、それと共に勢い良く両手を机に突っ立てる冥。


「そんなびっくりしなくても…」

「さっきまで部活しか興味ないって言ってたくせに!!そりゃびっくりするって!」


あまりのリアクションにおれ自身も驚いたが、それもそうか、と妙に納得しつつ、予想外の反応に少し面白くなってくる。

顔がにやけないようにポーカーフェイスを保つのに必死になっていると、冥が目の前であからさまなため息をついた。



「……なんか、でも寂しいなぁ。」


へ?

⏰:11/11/16 07:25 📱:Android 🆔:GxhrNHKU


#439 [ちか]
気づけば目の前のそいつの顔は驚きの表情からすっかり悲しげな表情に変わっていた。

「え、…なんで?」


訳も分からず、条件反射的にそう聞き返すと、冥はさっき勢い良く立ち上がったのとは正反対にふにゃふにゃとしゃがみこむように再び椅子に腰を落とし、チラリとこちらを上目使いで覗きこむ。



大きくて茶色い瞳、長い睫毛、
可愛いくないわけがない。


生唾を飲んで俺は自身の冷静さを取り戻そうと努めた。



こいつのこんな表情(カオ)を独り占めできたらなあ

なんて、叶いもしない願望を抱きながら。

⏰:11/11/18 06:49 📱:Android 🆔:4yjWSxQE


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