漆黒の夜に君と。V[BL]
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#121 [ちか]
「え…」
結婚…――
頭の中でグルグルとその単語が回る。
「そういうことだから、面白半分でからかっちゃだめよ。」
捨て台詞のようにそう釘を刺して、看護婦は去っていった。
「結婚…」
口に出してみると、余計に胸が痛んだ。
―――……………
――…………
―………
:11/10/15 13:58
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#122 [ちか]
― 陽平side. ―
「ご結婚されてるのに研究のためにカナダへ、なんて奥様は反対されなかったんですか?」
どこから漏れたのか、
交流がてら一緒に昼食をとっていた医者らにふいにそんなことを聞かれた。
「……ええ、まぁ。」
俺は曖昧な相槌を打つ。
反対どころかむしろ離婚届まで押し付けられた、なんてなかなか言えたもんじゃない。
:11/10/15 14:16
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#123 [ちか]
「いい奥さんですねー!僕もそんな相手と結婚したいなぁ。」
「あは…ははは…」
「やっぱり先生みたいに優秀で外見もカッコいいと、奥さんも素敵なんですね!」
「いや、そんな……、あはは…」
勝手に盛り上がるのは結構だが、
残念ながら俺はそんな円満な結婚生活を送った覚えがない。
まぁ、
すべて俺が悪いんだが。
:11/10/15 14:52
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#124 [ちか]
離婚届を渡されたのは、日本を発つ前日の夜だった。
…………―――――
………――――
……―――
「離婚?」
それはまさに不意討ち、という言葉が丁度合うようなタイミングだった。
「…そう、別れてほしいの。」
荷造りも終えてソファで一息ついていた矢先の申し出に俺は驚いた。
吸いかけの煙草を灰皿に押し付ける。
「向こう(カナダ)に行くのが原因か?」
頭の中は酷く混乱しているはずなのに、そのトーンは至って冷静な自分に少し驚く。
:11/10/15 15:12
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#125 [ちか]
もともと妻は、旦那に頼るようなタイプではなく、自立心の高い性格だったから、
「そんなんじゃないわ。」
この質問が的外れだと言うことは分かっていた。
“なんで”
その言葉が出てこなかった代わりに、そんな質問を投げてしまったのだ。
妻は、呆れたように笑った。
色目無しにそんな妻は美しいと思う。
「…そんなんじゃないのよ。もう、私達潮時だと思ったの。」
潮時…―――
たしかにそうかも知れない
なんて納得してしまったのは、やっぱり俺が妻を愛していなかったからだろうか。
:11/10/15 15:26
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#126 [ちか]
「それにね、私好きな人が出来たの。……あなたと違って、私のことをちゃんと見てくれる人よ。」
そこまで聞いてやっと、妻の言いたいことが分かった。
一瞬目を見開いて驚いたが、徐々にその事実が体に溶け込んでくる。
ああ、そうか。
お前は気づいてたんだな。
もう遅いかも知れないが、俺は、お前のそういうハッキリしたところ、好きだったよ。
内心でそう呟きながら、潰れた吸殻に目を向ける。
:11/10/15 23:01
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#127 [ちか]
「でもね、」
顔は見えないが、その声は涙を堪えているように震えていた。
見上げることが出来ない。
いや、今思えば、どんな顔で妻を見たら良いのか分からなかった、と言った方が正しかったかも知れない。
「あたし、あなたのこと好きだったのよ。父が院長、そしてあなたの上司で、こうやって結婚したけど、そんなことが無くてもあたしは…、」
ごめん。
「本当に愛してた。」
ごめん。
「あなたは、あたしのこと一度でも愛してくれたことあった…?」
そんなことをわざわざお前の口から言わせて、
本当に……ごめん。
:11/10/15 23:12
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#128 [ちか]
結局それ以上俺は何も言えなかった。
すまない、と言えばそれはさらに妻を傷つけると思ったから。
それ以上、何も言えなかったんだ。
自業自得だ。
俺が、
向き合わなかったから、
これはきっと当然の報いだったんだ。
だけど俺は、
:11/10/15 23:24
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#129 [ちか]
カナダ(こっち)に来た今も、
俺は離婚届(コレ)に自分の名前を書けずにいる。
あの約束が
どうしてもひっかかって。
目を閉じれば、
今でも色褪せることなく頭の中で甦る。
『先生はちゃんと素敵な人と幸せになって。』
その言葉と精一杯の笑顔が。
:11/10/15 23:29
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#130 [ちか]
そういう経緯で、
今俺は妻と別居状態にある。
もともと妻の父がうちの病院の院長で、俺はそのお気に入り。
紹介したのが院長本人なだけあって、院長は、形式上男を作って出ていった娘が後ろめたいのか、執拗に俺を優遇してくれた。
おかげさまで、
カナダでの研究費用もタダ。
ありがたいっちゃ、ありがたいが、
それはそれで荷が重い。
:11/10/15 23:37
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