漆黒の夜に君と。V[BL]
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#291 [ちか]
一人になった部屋の中で深い溜め息は執拗に響いた。
「これで良かったんだよな…」
そう言い聞かせるものの、
心に残る虚無感と蠢く感情。
この感情の正体も本当はすでに分かり始めている。
ただ気づかないフリをしてるだけ。
おもむろに足下に落ちている皺くちゃの離婚届に目線を落とした。
震えるあの手で、これをどれほど強く握っていたのだろうか。
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:11/10/30 10:27
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:nfDV2Ves
#292 [ちか]
紙を拾い上げまじまじとそれを見つめる。
蠢く感情がじわじわと俺の体を支配していくようだ。
今すぐ追いかけてしまいそうなほど、その感情は昂っていた。
それを無理矢理消し去るように俺は頭を振る。
「…俺は、あの約束を裏切れない。」
────────────────…………
─────────………
─────……
:11/10/30 10:30
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:nfDV2Ves
#293 [ちか]
あの日以来、
再び優里は俺の前に現れなくなった。
しかし、以前現れなくなった時とは全く違う。
俺の行動する範囲の一切から姿を見せなくなった。
そんな状態が長く続き、晩秋だった季節はいつの間にか年も明け冬も大詰めの2月に差し掛かろうとしていた。
:11/10/30 11:42
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:nfDV2Ves
#294 [ちか]
何度かアイツの病室のすぐ近くまで行ったこともあった。
しかし、
意地なのかプライドなのか、
はたまた約束という名の呪縛からか、
あと一歩というところでいつも引き返していた。
そんなある日の午後。
噂好きの同僚が妙に神妙な顔で俺を尋ね、研究室へやってきた。
:11/10/30 14:19
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:nfDV2Ves
#295 [ちか]
「優里くん、すっかり来なくなっちゃいましたねー」
同僚は研究に持ってきた書類ら文献、データを片っ端からデスクに投げ捨てるとつまらなそうな顔でそう言った。
一瞬、体がピクリてと反応を起こしそうになったが平然を装い相槌を打つ。
「そうだな。」
「先生は寂しくないんですか?」
「は?なんで俺が」
窺うような目線を寄越す同僚を冷たくあしらう。
「だってあれだけ毎日騒ぎに来てたのが急にパッタリ来なくなると、はじめはうるさいなーって思ってたのに、なんか物足りなくなりません?」
「まぁ、たしかに。」
寂しくないといえば嘘になる。
:11/10/30 15:06
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#296 [ちか]
とは言え、
俺は寂しいなんて口走っていい分際じゃない。
相手からの提案だったと言えど、
病院(ウチ)に多額の寄付金を注ぐどこぞの大企業の愛息子とあれやこれやをやってしまったわけで。
それはつまり、
クビにならないことの方が不思議なほどの大罪…。
:11/10/30 20:11
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:nfDV2Ves
#297 [ちか]
今までは向こうからの一方的なアプローチだったから問題はなかったものの、今回は違う。
完全に俺に非がある。
その証拠が今日までに至る優里の俺に対する拒絶だ。
人間とは頭が冷えると、急に足元が見えるもの。
自分のした過ちを消し去ることも出来ず、この数ヵ月後悔の念に苛まれ続けている。
こんなことになるなら、
あの時顔面に二、三発鉄拳ぶちこまれる方がいくらかマシなくらいだ。
:11/10/30 20:41
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:nfDV2Ves
#298 [ちか]
「先生、顔色悪いですよ?」
「あ、いや、ちょっとまずいことを思い出してた…」
ダメだダメだ。
もうあいつに振り回されるのは御免だ。
数ヵ月経ってもことが起きないところを見ると、問題になる様子はない。
俺が近づきさえしなければ。
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:11/10/30 20:54
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:nfDV2Ves
#299 [ちか]
気持ちを落ち着けようと昼に買った缶コーヒに手を伸ばす。
プルタブを開け喉奥に流し込むと心地好い感覚が流れた。
もう一度、残った半分を流し込むため缶を煽った時、後ろで文献をペラペラと捲っていた同僚がおもむろに口を開いた。
「そういえば、優里くんの手術来週らしいですねー」
:11/10/30 22:26
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:nfDV2Ves
#300 [ちか]
「うわ、汚な!!先生、書類にかかったらどうするんですか、も〜!」
「わ、悪い…」
思わず同僚の話を聞いた瞬間、口に含んだばかりのコーヒーが吹き出た。
それほど驚きが大きかったのだ。
荒っぽく咳払いをした俺は出きる限り落ち着いた声色で同僚に問い掛ける。
「……それ詳しい日にち分かるか?」
同僚は自分の頭の中からまるで引き出しを探るように目線を上に向け考え始めた。
:11/10/30 22:34
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