漆黒の夜に君と。V[BL]
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#331 [ちか]
この期間、今まで順調に進まなかった研究に追い込みをかけ、なんとか発表には間に合いそうなもののそれも余裕ではない。
徹夜覚悟と言ったところだろう。
会う約束なんかとても出来るスケジュールではなかった。
「すいません、力になれなくて。」
そう言って申し訳なさそうに詫びると、看護婦の目も次第に諦めの色に変わり、長い口論の末、最後には「頑張ってください…」と一言残して研究室を出ていった。
:11/11/03 10:03
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:luRwubkA
#332 [ちか]
誰も居なくなった部屋の中で一人、デスクの上に広げられたスケジュール帳に目を落とす。
どうにか、出来ないだろうか。
そんな現実味のない願望を抱きつつ、ぎっしりと細かい字が刻まれた紙の上を指でなぞる。
:11/11/03 13:51
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:luRwubkA
#333 [ちか]
「…つッ〜…」
暫くそうしていると、紙が無意識のうちに滑らせていた指を切ったようで、傷口から赤いものが滲んだ。
そしてその瞬間、痛みと共に我に変える。
気がつけば頭の中でこの先の予定を詰めて、空きのない予定にいつの間にか空白を作ろうとしていた自分。
やるせない感情に押し潰されそうになり、無造作に頭を掻く。
「流されないって決めたのに何してんだ、俺…。」
そして俺は揺れ動く感情にセーブをかけるように、心臓のある方の胸をぎゅっと握り、小さくため息をついた。
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:11/11/03 13:52
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:luRwubkA
#334 [ちか]
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で、なんでか俺は今、
( …結局、)
優里の病室の前に居たりする。
( 来てしまった…。 )
:11/11/03 14:00
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:luRwubkA
#335 [ちか]
只今、深夜4時。
いや、深夜というより明け方と言った方が正しいかも知れない。
しかし、冬の4時はまだまだ夜の漆黒を保っていた。
窓ガラスに映る自分の目下のクマに思わず苦笑が漏れる。
そのクマが今日までのスケジュールの多忙さを物語っていた。
案の定資料作りはギリギリまでかかった。
毎日研究室での寝泊まりが続き、発表の前日である今日もそうだった。
そしてやっと仕上がったのが一時間前のこと。
そのまま寝て翌朝の発表に備えればいいものを、
(俺、なんで来てんだよ…。)
足が勝手に動き、気づけばドアの前に居た。
:11/11/03 14:12
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:luRwubkA
#336 [ちか]
ドアの取っ手に手を掛ける。
暫くしてその手を離す。
そしてまた手を掛ける。
ついてから30分強。
もう何度もこの動作ばかり繰り返している。
:11/11/04 00:17
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:zdlH.a0c
#337 [ちか]
じんわりと手に滲む汗を見つめながら、自分に言い聞かせた。
さすがのアイツでも夜中の4時じゃ、起きていないだろう。
寝ている時にちょっと顔を覗いてすぐ帰るだけだ。
誰にも何にも迷惑はかからないし、
そうこれは俺の自己満足だ。
だから迷わず開けてしまえ。…――
ガラ…ッ
:11/11/04 00:22
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:zdlH.a0c
#338 [ちか]
勢いで開けたドアが小さく音を立てて開く。
ピッ…――ピッ…――ピッ…―
中では無機質な電子機器の音がその部屋の全てのように静まり返っていた。
入ってすぐ目につくベッドには入り口に背を向け横になっている華奢な後ろ姿。
俺は、部屋に入ってきても無反応なその背中に安堵の息をつく。
そして優里が寝てることを確信した俺は、ゆっくりとベッドの傍に歩み寄った。
:11/11/04 07:05
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:zdlH.a0c
#339 [ちか]
もう何ヵ月も見ていなかった背中。
相変わらず華奢な腰や腕。
俺はいつのまにか見とれるように、すぐ傍で立ち尽くしていた。
薄暗い部屋にカーテンの隙間から月の光が射し込む。
人工的な金色の髪がその光に照らされてキラキラと美しく光った。
思わず、撫でたい衝動に駆られ、本能が赴くままにその手をそっと髪に伸ばす。
あと2、3センチと言ったところか。
ふいに静かな声が俺の手を止めた。
「…神崎だろ」
.
:11/11/04 17:20
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:zdlH.a0c
#340 [ちか]
「なっ、お前起きて…っ」
伸ばしていた手を咄嗟に引っ込める。
動揺を隠しきれず、声は震えた。
俺の馬鹿!!
だから、さっさと顔見て帰りゃよかったのに!!
内心でこれでもかと言わんばかりに自分を叱咤に、合ってもいない目を泳がせる俺。
それとは正反対に、
俺が入ってきた時と同様、横を向き俺に背中しか見せない優里。
:11/11/04 17:27
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