漆黒の夜に君と。V[BL]
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#335 [ちか]
只今、深夜4時。
いや、深夜というより明け方と言った方が正しいかも知れない。
しかし、冬の4時はまだまだ夜の漆黒を保っていた。
窓ガラスに映る自分の目下のクマに思わず苦笑が漏れる。
そのクマが今日までのスケジュールの多忙さを物語っていた。
案の定資料作りはギリギリまでかかった。
毎日研究室での寝泊まりが続き、発表の前日である今日もそうだった。
そしてやっと仕上がったのが一時間前のこと。
そのまま寝て翌朝の発表に備えればいいものを、
(俺、なんで来てんだよ…。)
足が勝手に動き、気づけばドアの前に居た。
:11/11/03 14:12
:Android
:luRwubkA
#336 [ちか]
ドアの取っ手に手を掛ける。
暫くしてその手を離す。
そしてまた手を掛ける。
ついてから30分強。
もう何度もこの動作ばかり繰り返している。
:11/11/04 00:17
:Android
:zdlH.a0c
#337 [ちか]
じんわりと手に滲む汗を見つめながら、自分に言い聞かせた。
さすがのアイツでも夜中の4時じゃ、起きていないだろう。
寝ている時にちょっと顔を覗いてすぐ帰るだけだ。
誰にも何にも迷惑はかからないし、
そうこれは俺の自己満足だ。
だから迷わず開けてしまえ。…――
ガラ…ッ
:11/11/04 00:22
:Android
:zdlH.a0c
#338 [ちか]
勢いで開けたドアが小さく音を立てて開く。
ピッ…――ピッ…――ピッ…―
中では無機質な電子機器の音がその部屋の全てのように静まり返っていた。
入ってすぐ目につくベッドには入り口に背を向け横になっている華奢な後ろ姿。
俺は、部屋に入ってきても無反応なその背中に安堵の息をつく。
そして優里が寝てることを確信した俺は、ゆっくりとベッドの傍に歩み寄った。
:11/11/04 07:05
:Android
:zdlH.a0c
#339 [ちか]
もう何ヵ月も見ていなかった背中。
相変わらず華奢な腰や腕。
俺はいつのまにか見とれるように、すぐ傍で立ち尽くしていた。
薄暗い部屋にカーテンの隙間から月の光が射し込む。
人工的な金色の髪がその光に照らされてキラキラと美しく光った。
思わず、撫でたい衝動に駆られ、本能が赴くままにその手をそっと髪に伸ばす。
あと2、3センチと言ったところか。
ふいに静かな声が俺の手を止めた。
「…神崎だろ」
.
:11/11/04 17:20
:Android
:zdlH.a0c
#340 [ちか]
「なっ、お前起きて…っ」
伸ばしていた手を咄嗟に引っ込める。
動揺を隠しきれず、声は震えた。
俺の馬鹿!!
だから、さっさと顔見て帰りゃよかったのに!!
内心でこれでもかと言わんばかりに自分を叱咤に、合ってもいない目を泳がせる俺。
それとは正反対に、
俺が入ってきた時と同様、横を向き俺に背中しか見せない優里。
:11/11/04 17:27
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:zdlH.a0c
#341 [ちか]
「動揺しすぎだから。」
逆にお前はなんでそんなに冷静なんですか。
そうツッコミたくなる気持ちをぐっと抑え、平然を装い問い掛ける。
「なんで俺だって分かったんだ?」
声が揺れないよう心がけるが、顔はひきつるばかり。
表情のも見えないまま、優里はそんな俺に淡々と答えた。
「あんたの足音、独特だから。部屋の前まで来たのになんで入ってこねえんだろって思ってた。」
…………つ、つまり最初っから気づいてた、と。
そんでこいつの耳は野生児並みだ、と。
:11/11/04 17:32
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:zdlH.a0c
#342 [ちか]
気恥ずかしさが沸々と沸き上がり、怒りへと変わる。
今の俺はきっと百面相に違いない。
「き、気づいてんならこっち向いて声の一つくらい…っ!」
そういえば、俺はガキの頃から照れると暴力で誤魔化すタチだった。
咄嗟に伸ばした手を見ながら、ふとそんなことを思い出す。
さすがに患者に暴力はふるわないが、勢いに任せ一度引っ込ませた手を伸ばし、その細い肩をひっ掴んだ。
そしてこちらに向かせようと力を入れる。
すると、なんということでしょう。
華奢な体は見掛け倒し、ではなく、
思った通り、というか思っていた以上にあっさりとその体は体勢を崩した。
そして。
:11/11/04 21:03
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:zdlH.a0c
#343 [ちか]
「お、お前…、」
「…ッ見んな、バカ神崎っ!!」
一瞬のことに目を見開いたままこちらに振り向いた優里の瞳にはくっきりと涙のあとが滲み、赤く腫れていた。
驚いた俺はそのまま手を離す。
優里もそれと同時に、またもや俺に背を向ける先程の姿勢に戻った。
あれー…えーっと、
これは一体…
「泣いてんの…?」
「うっせ。」
俺、空気読めてなかった、ってこと?
:11/11/04 21:15
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:zdlH.a0c
#344 [ちか]
「や、あの…えーっと、…」
慰めの言葉が出てこない。
そりゃそうだ、何に泣いてるか分かんねえんだから。
でもただ一つ言えるのは、
なんかドキドキしてる俺が居るってこと。
異様な脈の上がりように戸惑い話を繋げられないでいると、優里が先に沈黙を破った。
「俺さ、明日手術なんだ。」
その瞬間、
ドクン、と心臓が跳ねた。
:11/11/04 21:26
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