漆黒の夜に君と。V[BL]
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#44 [ちか]
松山が差し出してきた飲み物を奪うようにして受け取り、一口煽った。
そして、松山を睨む。
「馬鹿にするな。」
そんなことがあるわけない。
そう言いたいが、残念ながら図星だ。
分けて考えなくてはと頭で解っていても、冥のことが気になって仕方ない。
気にしなくて良い、こういうのは慣れてるから―……
その言葉と表情が何度も頭の中で流れる。
消し去るようにもう一度グラスを煽った。
僕がそうしている間に松山は、
「失礼しました。」と一礼したあと、
「ですが、」
と話を繋げた。
:11/10/12 00:46
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#45 [ちか]
「冥様は昔の恭弥様に似ておられますね。」
「…?どういう意味だ?」
怪訝な顔でそう聞き返すと、松山は困ったように笑った。
「いえ、なんだか我慢強いところが似てらっしゃる気がしまして。」
「………。」
「こちらの主催者様より、よっぽど我慢強いかと。」
松山は皮肉のようにチラリと目線の先で豪快に酒を煽っている当事者を見ながら言った。
たしかに。
大晦日にわざわざパーティーを開くなんて、よっぽど独り身が寂しくて、尚且つ他人を巻き込む意地の悪い人間のすることだ。
それに比べて冥は…
「…坊っちゃんも昔はよく、お父上がいらっしゃらない年末は、冥様のような顔をしてらっしゃいました。」
:11/10/12 00:59
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#46 [ちか]
昔…
昔から、家が家だから仕方ないとこんな日の独りは割りきっていたつもりだった。
幼いながらに平気なフリをしてみせたつもりだった。
しかし、それは今考えてみると松山の言う通り、『我慢』という仮面でしかなかった。
この主催者のように、
歳をとってもそれは耐え難い孤独だと言うのに、
ましてや『慣れてる』なんて。
そんなこと…――
:11/10/12 01:06
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#47 [ちか]
「松山、戻るぞ。」
YES以外の返事、まして咎める言葉など受け付けないような声色でそう言うと、乱雑にグラスを置いて会場を出た。
外は雪が降っていた。
「坊っちゃん、風邪を引かれますよ。」
そう言って松山はクロークから受け取ったコートを僕の肩にかける。
「……昔の呼び名で呼ぶのはやめろ。」
「すいません、…恭弥様。」
:11/10/12 01:16
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#48 [ちか]
まわされた車に飛び乗るようにして乗り、そのドアを松山が閉める。
その前に、
「…ありがとう。」
礼ぐらいは
言っておいてやろう。
「いえ。」
雪の中に松山の控えめな笑みは良く似合った。
……………―――――
………――――
……―――
:11/10/12 01:21
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#49 [ちか]
― 冥side. ―
再び目を覚ましたのは、今年が残すところ一時間となった頃。
「もうこんな時間か〜…」
なんかもったいないことしちゃったな。
せっかく今年最後だって言うのに…
:11/10/12 15:55
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#50 [ちか]
せっかく?
自分で思っておきながら、思わず笑ってしまった。
「いっつも一人じゃん、俺…」
そりゃ昔は透ん家で年越してたけどさ、
自分が家族の一員になった気分で越した年なんかなかった。
なんて言ったら、透は怒るかな。
:11/10/12 16:00
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#51 [ちか]
今さら独りが寂しいなんて、
俺いつから贅沢になったんだろう。
苦笑を漏らして、
時計に目をやる。
いつの間にか今年はもう十分しか残っていない。
「カウントダウンでもするか。」
そう呟いて、時計を眺めた。
:11/10/12 16:06
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#52 [ちか]
― 恭弥side. ―
「まだ着かない?」
「あと五分と少しでございます。」
チラリと時計に目をやる。
今年も残すところ十分。
心は急ぐばかりだが、車はそれに比例しない。
:11/10/12 16:09
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#53 [ちか]
ふと思い付くように、僕は松山を見た。
「…それにしても、お前は僕にあんなこと言って良かったの?」
「あんなこと?」
「冥が我慢してるって。」
きっと松山は解っていてあの時あんなことを言ったんだ。
僕が気づいてるようで気づけていなかったことを暗示するように。
:11/10/12 16:19
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