心霊夜話
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#141 [怪男]
「ま、まさかぁ」
こんなチャラチャラした男のいう事だ、どうせ冗談だろうと苦笑いしながら軽くあしらう勇紀。
すると赤木はニコニコ顔から真顔に変え一言…
「マジだよ」
そんな彼の表情を見た勇紀の苦笑いがピタリ止んだ。
「…本当…に?」
「マジ。知り合いに売買屋を紹介してもらってさ」
「…………」
勇紀の顔が次第に青ざめていく。
:12/01/04 12:18
:W62P
:☆☆☆
#142 [怪男]
「よかったらお前も買ってみなよ。売買屋紹介してやるから」
「い、いや俺はそんなの…」
「気持ちよかったんだろ?飲んだら嫌な事も忘れられるんだぜ?」
「嫌な事…?」
「そっ。勉強とかでストレス溜まる時あんじゃん?そういう時に便利なんだよ」
「…………」
勇紀は少し考え込んでから、赤木の顔を見て言った。
「く、詳しく教えて!」
―これがきっかけだった。
覚醒剤が勉強のストレスに効くと赤木に言われ心が揺らぎ結局、麻薬の道へと入り込む事になった勇紀。
:12/01/04 12:20
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:☆☆☆
#143 [怪男]
―その数日後の朝
勇紀は学校へ向かう前に、赤木に紹介された麻薬の売買屋と会うことになった。
もちろん家族には秘密にしたまま…。
その日、勇紀は『コンビニで文房具を買っていく』という口実を作りいつもより早く家を出た。
家から少し離れた人通りの少ない路地裏で売買屋が現れるのを緊張しながら待つ。
しばらくして、背後から突然声をかけられた。
「おい」
低い声がして後ろを振り向くと、そこには年齢が40歳くらいの顔は髭面、小太り体型で帽子を目深に被ったスーツ姿の男性が立っていた。
:12/01/04 12:23
:W62P
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#144 [怪男]
「あ…」
そんな男性を前にして表情が強ばる。
「赤木の?」
少しの沈黙の後、男性がポツリと尋ねると勇紀は小さく首を縦に振って頷いた。
「買うの初めて?」
「え……あ、はい」
「だったらタダでやるよ」
男性は無表情でそう言い終えると、サラリーマン誰もが持つ黒い鞄を開けてゴソゴソと中に手をやる。
「じゃあこれ」
中から取り出して手渡されたのは、白い粉が入った小さな透明の袋だった。
:12/01/04 12:26
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#145 [怪男]
手の中の袋を珍しそうに見つめていると
「さっさと鞄にしまえ」
と威圧的な声で男性に言われ、慌ててすぐ鞄にしまう。
「俺から買ったって事は秘密だからな。覚えとけよ」
「は…はい」
こうして売買は五分足らずで終わり、男性の去っていく姿を最後まで見送った後、勇紀も歩き出した。
:12/01/04 12:29
:W62P
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#146 [怪男]
あの時赤木から貰ったカプセルの中身が覚醒剤だとわかった今、薬は学校内では飲まなくなり、ほとんどは数学の授業がある日の放課後、公園の公衆トイレなどでペットボトルの水に混ぜて飲むようになった。
飲んだ後の、何もかも忘れられるこの時間が勇紀には病みつきになり、やがて中毒になっていく…。
そして約一カ月後の今に至る―
:12/01/04 12:44
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#147 [怪男]
数学の授業が終わり、その日の放課後―
勇紀はそそくさと学校を出てある場所へと向かった。
一カ月前、麻薬の売買屋と初めて会ったあの路地裏である。
薬が無くなったので、再び買う為だ。
「あ、こっちです!」
向こうからやって来る背の高い30代前半くらいの男性に向かって手を振る勇紀。
あの小太りの男性は仕事中との事だったので、彼の知り合いだという別の人が来た。
あれから、この知り合いの人とは何度か会っているので勇紀はもう慣れていた。
:12/01/04 12:59
:W62P
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#148 [怪男]
「四つで5000円でどう?」
「えぇ?もうちょっとまけてくださいよ」
「仕方ねぇな…じゃあ半額の2500円でいいよ」
「ありがとうございます!」
そんな手慣れたやりとりを続け、お互い貰うものを貰い、彼が去るのを見送くってから勇紀も帰ろうと後ろを振り向いた時…
そこには、買い物袋を両手に持った母・渓子が唖然とした表情で立っていた。
「母さん…」
母の顔を見た勇紀の手から、白い粉が入った四つの透明の袋がするりと抜けて…地面に落ちた―
:12/01/04 13:13
:W62P
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#149 [怪男]
母・渓子は勇紀の足元に落ちた袋を見てから、再び顔に視線を戻す。
そして呆然と立ち尽くしている勇紀に近づき眉をしかめて
「勇紀…どういう事なの?」
と、買い物袋を持った両手を小さく震わせながら尋ねた。
「……ご、ごめん…なさい…」
勇紀には、ただ謝る事しかできなかった。
当然言い訳はできず、その場にへたり込んで何度も何度も…。
何十回目くらい『ごめんなさい』と言った所で母・渓子は片手の買い物袋を下ろして勇紀の頭にそっと手をやった。
:12/01/05 12:52
:W62P
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#150 [怪男]
そして一言…
「帰ろう。今日はすき焼きだよ」
そんな母の言葉に、勇紀は俯いていた顔を上げ、その涙目で母を見て
「帰ったら…全部…話すから…」
と鼻水をズズっとすすりながら言い、立ち上がる。
「それ…お母さんが預かっとく」
そう言って母・渓子は地面に落ちている四つの袋をかき集めてポケットにそっとしまうと、勇紀の方を見て笑顔で言った。
「お父さん達には言わないからね。
…それよりこの袋一つ持ってくれる?もう重くて重くて!」
「う、うん…」
二人はそれぞれ買い物袋を一つずつ持ち、その場を後にした。
:12/01/05 12:56
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