心霊夜話
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#151 [怪男]
帰り道、母・渓子は勇紀の一歩前を歩く。
会話もなく気まずい雰囲気の中、五分もしない内に自宅へと到着。
家のドアを開け玄関で母・渓子が大きな声で『ただいま』と言うと、廊下の奥からお洒落な服装の長女・美緒がやってくる。
「お母さん、勇紀、おかえり」
「あら、これからアルバイト?」
「うん。だから夜ご飯作る手伝いできないの。ごめんね」
「それはいいのよ、夏美がいるし。それより久しぶりのすき焼きを一緒に食べれないのが残念だわ」
「ほんとごめん。じゃあ私行くね」
長女・美緒は明るくそう言うと、靴を履いて勇紀達とすれ違うように外へと出ていった。
:12/01/05 12:58
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#152 [怪男]
リビングへ行くと、制服姿の次女・夏美がソファに座り携帯電話をいじっていた。
母・渓子はそんな夏美を見るなり
「夏美、すき焼きの準備するから野菜切るの手伝って」
と、少し疲れた声で言う。
「…………」
だが夏美は聞こえていないフリをしているのか、携帯電話の画面をじっとにらみつけている。
すると母・渓子は勇紀の方を見て「あとはよろしく」と言わんばかりの表情をした。
:12/01/05 13:01
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#153 [怪男]
勇紀は一瞬困惑しながらも、小さく頷いてから夏美の元へと向かい声をかける。
「えっと、夏美…母さんの手伝いしてやりなよ」
「…………」
だが夏美はまだ聞こえないフリを続ける。
「夏美…!母さんの手伝い……」
勇紀が少し強めにここまで言うと、夏美はソファからいきなり立ち上がり、舌打ちをして携帯電話を閉じて
「るっせーな。やりゃいんだろ」
と勇紀をにらみつけながら言うと、大きく足音をたてながら母・渓子のいるキッチンへと歩いていった。
:12/01/05 13:03
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#154 [怪男]
勇紀は一息ついてから夏美の座っていたソファに座り、テレビの電源をつける為に机の上にあるリモコンに手を伸ばした時、ふとリモコンのそばに置かれた携帯電話が目に入った。
キラキラしたストラップがついた白い携帯電話。
「あれ、これって…」
その携帯電話を持って立ち上がり、キッチンにいる母・渓子の所へいく。
「母さん…これって姉ちゃんの携帯…だよね?」
そう言いながら携帯電話を見せると母・渓子は、それをまじまじと見つめて
「ああ、美緒のだね。忘れていったのかねぇ」
と、微笑みながら言った。
:12/01/05 13:05
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#155 [怪男]
「じゃあ俺ちょっと届けてくるね。まだ近くにいると思うし」
「うん。気をつけなさいよ」
長女・美緒の携帯電話を制服のポケットにそっとしまい、勇紀は家を出た。
美緒のアルバイト先は勇紀も知っているので、通勤中に見つからなかった場合には職場に直接届けようと思い、勇紀は走る。
しばらくして、駅前の交差点に出た。
「(いない…バイト先に届けよう…)」
結構走った為、勇紀は息切れ寸前。
―そんな時だった
信号待ちをしている人達の中に長女・美緒と思われる人物の後ろ姿が目に入った。
:12/01/05 13:08
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#156 [怪男]
「姉ちゃん…」
その美緒と思われる人物の方にゆっくり歩いていく勇紀。
やがて信号が青になり人が一斉に渡り始めたので、一瞬姿を見失いそうになったものの、なんとか再び姿を捉える事ができ、その後を追った。
そして美緒がアルバイトをしているコンビニが目の前にきたとき美緒は、なんとそのコンビニの前を素通りしていったのだ。
「(あれ…?姉ちゃんどこ行くの?)」
美緒の後ろを歩く勇紀が、その後ろ姿とコンビニを交互に見ながら首をかしげる。
あの姿は姉に間違いないはないはずだと確信しながらも勇紀は、その姉の美緒がどこへ向かうのか気になり後をつけた。
:12/01/06 02:15
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#157 [怪男]
10分ほど歩いた所で、美緒はなにやら怪しげな路地へと入っていったので勇紀もこっそり後を追う。
路地に入って周りを見てみると「HOTEL」と書かれた建物がいくつかあり、勇紀はそんな何とも言えない雰囲気に思わず息をのむ。
そして美緒はある建物の前で足を止めると、持っていたバッグを開けて何かを探し始める。
勇紀は気づかれないように建物の影から美緒の様子を伺う。
すると、探しているものがなかったのか美緒は
「え…なんで?」
と独り言のように何度も繰り返し言いながらバッグの中を漁り続ける。
だがやはりなかったらしく、美緒はひどく慌てふためいていた。
そんな姉の動揺した表情を、勇紀は初めて見る事になる。
:12/01/06 02:18
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#158 [怪男]
それと同時に美緒が何を探しているのかがわかった。
それは「携帯電話」だろうと思い、勇紀はポケットに入れていた美緒の携帯電話を取り出したのはいいものの、なぜか今は近づいて声をかけてはいけない気がして、しばらく遠くから様子を見る。
建物の前でしばらくの間立ち尽くしていた美緒は、やがて諦めたようにその建物の中へと入っていった。
勇紀は遠くから目を細めて、美緒を入ったのを確認すると、その建物の前に駆け寄る。
そして建物の入口のすぐそばに設置されている看板の文字を見て、勇紀の身体が固まった。
そのピンク色の看板には「桃尻倶楽部 50分10000円」と書かれていて、勇紀にはそれが風俗店であるとわかったからだ。
「うそ……え…?」
入口を見つめながら唖然としていると、力が抜けた手から美緒の携帯電話が落ちた。
:12/01/06 02:20
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#159 [怪男]
地面に落ちた音で我に戻り、慌てて拾い上げようと手を伸ばした時…
―ピロリロリン♪ピロリロリン♪
突然、美緒の携帯電話の着信音が鳴り響いた。
手に取ってディスプレイを見てみると「店長」なる人物からの電話だった。
勇紀はパニックになり、すぐに電源ボタンを押して電話を切る。
すると少ししてまた…
―ピロリロリン♪ピロリロリン♪
ディスプレイには再び「店長」の文字。
もうどうしていいかわからなくなった勇紀は、また電源ボタンを押して電話を切り、今度は携帯電話自体の電源を切った。
:12/01/06 02:22
:W62P
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#160 [怪男]
明るく家族思いの姉がまさかこんな所に出入りしているとは夢にも思っていなかった勇紀はショックで、しばらくその場で呆然と立ち尽くしていると…
―プルルルルル!
今度は勇紀の携帯電話の着信音が鳴った。
その着信音に再び我に戻りポケットから携帯電話を取り出しディスプレイを見ると、それは母からの着信だった。
「…もしもし?」
「ああ、勇紀?今どこにいるの?」
「え…えっと……」
さすがに「姉を追って風俗店の前にいる」とは言えない勇紀は
「今は…コンビニ」
と、答えた。
:12/01/06 02:24
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