心霊夜話
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#156 [怪男]
「姉ちゃん…」
その美緒と思われる人物の方にゆっくり歩いていく勇紀。
やがて信号が青になり人が一斉に渡り始めたので、一瞬姿を見失いそうになったものの、なんとか再び姿を捉える事ができ、その後を追った。
そして美緒がアルバイトをしているコンビニが目の前にきたとき美緒は、なんとそのコンビニの前を素通りしていったのだ。
「(あれ…?姉ちゃんどこ行くの?)」
美緒の後ろを歩く勇紀が、その後ろ姿とコンビニを交互に見ながら首をかしげる。
あの姿は姉に間違いないはないはずだと確信しながらも勇紀は、その姉の美緒がどこへ向かうのか気になり後をつけた。
:12/01/06 02:15
:W62P
:☆☆☆
#157 [怪男]
10分ほど歩いた所で、美緒はなにやら怪しげな路地へと入っていったので勇紀もこっそり後を追う。
路地に入って周りを見てみると「HOTEL」と書かれた建物がいくつかあり、勇紀はそんな何とも言えない雰囲気に思わず息をのむ。
そして美緒はある建物の前で足を止めると、持っていたバッグを開けて何かを探し始める。
勇紀は気づかれないように建物の影から美緒の様子を伺う。
すると、探しているものがなかったのか美緒は
「え…なんで?」
と独り言のように何度も繰り返し言いながらバッグの中を漁り続ける。
だがやはりなかったらしく、美緒はひどく慌てふためいていた。
そんな姉の動揺した表情を、勇紀は初めて見る事になる。
:12/01/06 02:18
:W62P
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#158 [怪男]
それと同時に美緒が何を探しているのかがわかった。
それは「携帯電話」だろうと思い、勇紀はポケットに入れていた美緒の携帯電話を取り出したのはいいものの、なぜか今は近づいて声をかけてはいけない気がして、しばらく遠くから様子を見る。
建物の前でしばらくの間立ち尽くしていた美緒は、やがて諦めたようにその建物の中へと入っていった。
勇紀は遠くから目を細めて、美緒を入ったのを確認すると、その建物の前に駆け寄る。
そして建物の入口のすぐそばに設置されている看板の文字を見て、勇紀の身体が固まった。
そのピンク色の看板には「桃尻倶楽部 50分10000円」と書かれていて、勇紀にはそれが風俗店であるとわかったからだ。
「うそ……え…?」
入口を見つめながら唖然としていると、力が抜けた手から美緒の携帯電話が落ちた。
:12/01/06 02:20
:W62P
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#159 [怪男]
地面に落ちた音で我に戻り、慌てて拾い上げようと手を伸ばした時…
―ピロリロリン♪ピロリロリン♪
突然、美緒の携帯電話の着信音が鳴り響いた。
手に取ってディスプレイを見てみると「店長」なる人物からの電話だった。
勇紀はパニックになり、すぐに電源ボタンを押して電話を切る。
すると少ししてまた…
―ピロリロリン♪ピロリロリン♪
ディスプレイには再び「店長」の文字。
もうどうしていいかわからなくなった勇紀は、また電源ボタンを押して電話を切り、今度は携帯電話自体の電源を切った。
:12/01/06 02:22
:W62P
:☆☆☆
#160 [怪男]
明るく家族思いの姉がまさかこんな所に出入りしているとは夢にも思っていなかった勇紀はショックで、しばらくその場で呆然と立ち尽くしていると…
―プルルルルル!
今度は勇紀の携帯電話の着信音が鳴った。
その着信音に再び我に戻りポケットから携帯電話を取り出しディスプレイを見ると、それは母からの着信だった。
「…もしもし?」
「ああ、勇紀?今どこにいるの?」
「え…えっと……」
さすがに「姉を追って風俗店の前にいる」とは言えない勇紀は
「今は…コンビニ」
と、答えた。
:12/01/06 02:24
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#161 [怪男]
「美緒は?今ね、あの子の働いてるコンビニの店長さんから電話あったの。
もう美緒のシフト始まってる時間なのに出勤してないって」
それを聞いて、ドキッとする勇紀。
母・渓子は更に続ける。
「携帯にかけても、すぐ切られるっていうし…。勇紀何か知らない?」
「えっと……」
当然、言葉が詰まる。
「勇紀?どうしたの?」
と訪ねる母・渓子。
:12/01/06 11:59
:W62P
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#162 [怪男]
勇紀は母が、姉が風俗店で働いているかもしれないという事を知っているのか確かめる為に質問した。
「えっと母さん…姉ちゃんって仕事何か掛け持ちしてる」
すると母は
「…え?掛け持ち?いや、何も聞いてないよ」
と答える。
これで、母は姉の風俗店出入りの事を知らないと確信した。
息子の自分が麻薬に関わっていたという事が母にわかった上、姉まで風俗店で働いているかもしれないなんて言うと母は腰を抜かして倒れてしまうかもしれない、と思った勇紀は姉の風俗店の事は言わず
「実は、姉ちゃんに携帯渡そうとして追いかけてたら途中で見失なっちゃって…」
と笑いながら言った。
:12/01/06 12:31
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#163 [怪男]
だが母・渓子は「笑っている場合じゃない」と言わんばかりに電話の向こうで大きなため息をついた。
「とりあえず帰ってきなさい。
あと、美緒の携帯にまた店長から電話あったら出て事情を話すんだよ」
「うん、わかった」
そう言って電話を切り、勇紀は逃げるようにその場を後にした。
考えてみると、姉の美緒は友達らと遊ぶという時はお洒落な格好をしていたが、アルバイトの時はどちらかというと地味系な服を着ていく事が多かった。
母もその事は知っているはずなのに、あの時玄関で何も聞かずスルーしていた。
:12/01/07 11:45
:W62P
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#164 [怪男]
―母は姉の風俗店の事を本当に知らないのだろうか?
―もしかすると、知っていてあえて触れずに目をつむっている?
帰り道でそんな事を考えながら歩いていると、また勇紀の携帯電話が鳴った。
…母からである。
「もしもし?」
「勇紀?何度もごめんね。
今ね、店長から電話あって…今日美緒のシフト入ってなかったんだって。
明日の間違いだったんだって」
「え…そうなの?」
「うん、だから無断欠勤って訳じゃなかったの。でも…それなら美緒はどこに行ったんだろうねぇ」
困惑しながら母・渓子がつぶやく。
:12/01/07 12:03
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#165 [怪男]
勇紀はさりげなく服の事を持ち出す。
「姉ちゃん派手な格好してたし友達と遊びに行ったんじゃない?」
「でもアルバイト行くの?って聞いたら、うんって言ってたじゃない。あの子は家族に嘘付くような子じゃないしねぇ」
服の事を言っても、やはり母は風俗店の事を何も知らないようだった。
「帰ってきたら聞いてみたら?」
「そうだね。でもその前に勇紀…アンタからだね」
「…………今から帰るね」
電話を切ると、家へと小走りで急いだ。
:12/01/07 12:32
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