心霊夜話
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#166 [怪男]
 
 
 
 
 家に着いてリビング行くと、母・渓子がソファーに座り煙草を吸い一服していた。

 次女・夏美は自分の部屋にいるのかリビングは静まり返り、時計の針の音だけが休む事なくコチコチ鳴っている。

 「ただいま」

 背後の勇紀の声に母は煙草を加えたまま振り返る。


 「おかえり。まず着替えてきなさい」

 母は煙草を口から外して灰皿にこすりつけながら言う。


 勇紀は言われた通り、着替える為に無言で階段を上がり自分の部屋へ向かった。
 
 
 
 

⏰:12/01/09 23:49 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#167 [怪男]
 
 
 
 
 いつもの私服に着替え部屋から出てドアを閉めると、同時に後ろからドアの開く音がした。

 振り返ると、そこに次女・夏美が立っていて勇紀を凝視している。


 「…なに?」

 すき焼きの準備の手伝いの件でまだ怒っているのかと思わず身構えたが、夏美は視線を勇紀から外して下の方を見ながら

 「なんかあったの?」

 と尋ねてきた。


 「え…」

 予想外の言葉に拍子抜けする勇紀。
 
 
 
 

⏰:12/01/09 23:51 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#168 [怪男]
 
 
 
 
 「え…なにかって?」

 「ババアが電話で言ってたじゃん。
“まずはアンタから”って」

 鋭い夏美の一言に一瞬ドキっとする。


 夏美は自分の麻薬の事を知らない。

 当然言えるはずもなく、勇紀は瞬時に言い訳を考えた。

 「ああ…テストの点が悪かったから、俺が一番に説教されるって事だよ…」

 この苦し紛れの言い訳が果たして勘が鋭い夏美に通用するだろうかとドキドキしていると、夏美は勇紀に視線を戻し眉をしかめて

 「は?美緒の話してたのに、なんでいきなりテストの話とかになんの?嘘付いてんのバレバレなんだけど」 


 …案の定、通用しなかった。
 
 
 
 

⏰:12/01/10 00:04 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#169 [怪男]
 
 
 
 
 夏美は更に続ける。

 「それにババアのやつ、電話終わったらウチに“部屋に行ってなさい”ってキレたし」

 「え…そうなの?」

 「うん。だからとんでもない事でもやったんじゃないのかって思った。勇紀、なにしたの?」

 「…………」

 勇紀は下を向いたまま黙りする。


 兄が麻薬に手をつけたなんて知ったら夏美にも夏美の学校にも迷惑がかかるかもしれないと思い、言えなかった。


 「チッ!男の癖にウジウジうぜーやつだな。もういいわ」

 ついにキレた夏美は俯く勇紀にそう言い放つと、自分の部屋に戻りドアを大きくバタンと閉めた。


 「(ごめん…夏美…)」

 勇紀はゆっくりと顔を上げ夏美の部屋のドアを見つめながら心の中で謝る。
 
 
 
 

⏰:12/01/10 00:10 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#170 [怪男]
 
 
 
 
 そして重い足取りで階段を下り、母が待つリビングへ向かった。


 「…そこ座って」

 そう言う母の顔はいつもと違い、険しい。

 勇紀は緊張な面持ちで向かい側のソファーに座る。

 座るなり母はポケットから、勇紀があの時落とした覚醒剤の袋を取り出してテーブルの上に置いた。


 勇紀は母の顔を見れず、テーブルの上の覚醒剤をじっと見つめる。


 「これ…いつからなの?」

 「……い、一ヶ月前くらい…から」

 「…………」

 覚醒剤を見つめたまま答える勇紀には、母が今軽蔑しきった目で自分を見ているのだろうと思えた。

⏰:12/01/10 20:37 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#171 [怪男]
 
 
 
 
 少しの沈黙の後、母は小さなため息をついてから言った。

 「手をつけちゃったものはしょうがない。勇紀にも悪い所があるよ。
でもね、アンタにそんなものを売りつけた人はもっと悪い」

 「…………」

 「さっき一緒にいた男の人は誰なの?初めて会ったようには思えなかったけど」

 男性には「言うな」と言われていたが、勇紀はもう全部話して楽になりたかった。


 だが、もし言ってしまったら…と先を考えると、恐ろしい事になるかもしれないという不安な気持ちも少しある。


 「…………」

 勇紀は黙りを続けた。 

⏰:12/01/10 20:39 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#172 [怪男]
 
 
 
 
 すると母は…


 「勇紀!誰なの!答えなさい!!」

 と、突然怒鳴り声をあげて立ち上がった。

 さすがの勇紀もその声に驚いて、立ち上がった母の方に視線を向ける。


 母はものすごい剣幕で勇紀の顔を凝視しながら

 「このまま言わなかったらお母さん…警察に全部言うよ!それでもいいのか!!」

 と怒鳴り声で続ける。


 「ご……ごめんなさい…」

 「ごめんで済むなら警察はいらない!それくらい聞いた事あるだろ!!」

 勇紀には謝る事しかできなかったが、今の母には通用しなかった。

⏰:12/01/10 20:42 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#173 [怪男]
 
 
 
 
 互いに顔を見つめ合ったまま黙っていると、この騒ぎを聞きつけたのか二階にいた次女・夏美が階段をかけ降りてきた。


 「な…なんなの?」

 気の強い夏美もこの時だけは動揺しているのか、焦りの表情をしている。

 母・渓子は背後の夏美に顔を向ける事なく前の勇紀を見つめたまま

 「アンタは部屋行ってなさい!!」

 と大声を張り上げた。


 夏美は一瞬身体をビクつかせたが、すぐに小さく舌打ちをして階段を上がっていった。
 
 
 
 

⏰:12/01/10 20:48 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#174 [怪男]
 
 
 
 
 「さあ!勇紀!誰なの!」

 勇紀の目の前まで迫る母・渓子

 今にもその場から逃げ出したい気分だったが、腰が抜けたようにソファーから立ち上がる事ができない。

 こんな母を見たのは17年間生きてきた中で初めてであった。


 そんな迫力に負けた勇紀は、ついにポツリと白状する。

 「が…学校の知り合いの人の…知り合い…」

 「学校の?それは誰なの!言いなさい!」

 「……ク、クラスはわからないけど…赤木って人…」

 震えた声で勇紀が次々に答える。

 目からは涙がポロポロとこぼれ落ちていた。
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:04 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#175 [怪男]
 
 
 
 
 そんな勇紀を見て母は、怒りの表情から普段の表情に戻り、再びソファーに腰掛ける。


 そして怒鳴る前と同じく優しい声で聞く。

 「その子の連絡先は知ってるの?」

 母の質問に勇紀は涙をこらえるのに必死で喋れず、無言で首を横に振った。


 「じゃあお母さん…明日学校に行って、その赤木くんって子に会って聞いてみるけど…それでいい?」

 「…………うん」

 涙声混じりで勇紀が答えると、母は笑顔で最後に言った。

 「じゃあ…夏美呼んできてくれる?もうすぐでお父さん帰ってくると思うから…すき焼きしようって」

 「……うん」



 ―その後、家の電話に父・幸宏から電話があった。


 「残業する事になったから今日は遅くなる」


 …と。
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:06 📱:W62P 🆔:☆☆☆


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