心霊夜話
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#176 [怪男]
その夜は母、勇紀、夏美の三人だけで気まずい中、すき焼きをしたのだった。
同日・午後9時30分…
「美緒ちゃん、今日もお疲れ!明日は来れないんだよね?」
「ごめんなさぁい。明日はコンビニのバイトがあるんですよぉ」
「そっか。じゃあまたね」
「お疲れ様でしたぁ!」
秘密で働いている風俗店の男社員に最後まで愛想を振りまいた後、店を出る長女・美緒。
店を出た瞬間、さっきまで愛想笑いをしていた美緒の表情が一変して険しくなった。
家に忘れてきたと思われる携帯電話を家族に見られていないか、気が気でなはなかったのだ。
早々と路地を抜けようと歩き出した時、ふと数メートル先にあるホテルの入り口からスーツ姿の男性が二人出てくるのが見えた。
「(え…男同士…?)」
今までそういった人を見た事なかった美緒は、突如なんともいえない好奇心に襲われる。
:12/01/11 15:08
:W62P
:☆☆☆
#177 [怪男]
好奇心はやがてスリルに変わってますます目を離せなくなり、美緒はその二人の男性の後をこっそりつける事にした。
10分くらい歩いた所の駅前で男性二人は足を止めた。
そしてお互い向かい合って何か話をしている時、少し離れた所で見ていた美緒は自分の目を疑う。
「(え……お父さん?)」
駅構内から差し込む光で両方の男性の顔がハッキリ見えている。
一人は背が低く太目体型で顔は髭で覆われている。
そしてもう一人は、間違いなく美緒の父親である幸宏だった。
「嘘……」
美緒はそう小さくつぶやき、手に持っていたバッグをポトリと地面に落とした―
:12/01/11 15:11
:W62P
:☆☆☆
#178 [怪男]
長女・美緒編
:12/01/11 15:13
:W62P
:☆☆☆
#179 [怪男]
家族や友達に秘密で働いている風俗店を後にしようとした時、男性二人がラブホテルから出てくる所を目撃した長女・美緒。
好奇心から、美緒はその二人を尾行する。
しばらく歩いて、駅前で足を止め話し出す男性二人。
その二人の内の一人の男性の顔が見えた時、美緒は衝撃を受けた。
それは、自分の父親だったのだ。
父親がラブホテルから…しかも“男性”と二人で出てきたという事実。
それは娘の美緒にとっては衝撃的以外の何物でもなく、受けたショックは絶大なるものであった。
:12/01/16 16:35
:W62P
:☆☆☆
#180 [怪男]
駅前で男性と恋人同士のように話す父・幸宏を見て、美緒は持っていたバッグを地面に落とす。
呆然と見つめた後、二人はお互い手を振って別れた。
男性は駅の中へ入って行き、父はその場を後にして暗い夜道へと消えていく。
美緒はハッと我に帰ると、地面に落としたバッグを拾い上げて父とは逆方向の道を通り小走りで家に向かった。
その頃、安坂家のキッチンでは母・渓子と次女・夏美が、すき焼きの余った材料で父と美緒の夜食を作り、長男・勇紀が晩御飯の後片付けをしている。
:12/01/16 16:38
:W62P
:☆☆☆
#181 [怪男]
「二人共…遅いねぇ」
キッチン越しからリビングの壁にかかっている時計を見ながら母・渓子がつぶやく。
「父さんの残業ってなんか久しぶりだね」
隣で食器洗いをする長男・勇紀も、母を横目で見ながら言う。
次女・夏美は黙って面倒くさそうな表情をしながら火の点いたフライパンの前に立っている。
「そうだねぇ。ま、残業手当てが出るからいいよね」
包丁片手に笑顔でそう言う母。
:12/01/16 16:40
:W62P
:☆☆☆
#182 [怪男]
だが、夏美がボソッとつぶやいた一言で和やかな場が一瞬にして凍りつく―
「浮気してたりして」
母・渓子の笑顔がピタリと止む。
「ちょっと夏美…父さんはそんな事しないよ…」
母の目が笑っていない表情を見た勇紀は慌ててフォロー発言するが、夏美はフライパンの上の肉を箸でつつきながら更に続ける。
「そう?前テレビで見たけどね。男が浮気する際に使う口実の第一位が“残業で遅くなる”だって」
口元をニヤリとさせながら夏美がそう言うと、母は包丁を持ったまま止めていた手を再び動かし、野菜切りを再開する。
特に何事もなかったかのように会話は終わったが、それからはキッチンでは誰も口を一切開かなくなった。
:12/01/16 16:42
:W62P
:☆☆☆
#183 [怪男]
「ただいま」
数十分後…父・幸宏が帰宅した。
ソファーで二人の帰りを待っていた妻・渓子は玄関からする夫の声を聞くと、重い腰をあげて玄関へと向かう。
「おかえり。残業お疲れ様ー」
「うん」
「一応夜食作っといてあるけど、食べる?」
「いや、いいわ。今日は疲れたし寝るよ」
「…そう」
玄関でそんな会話を交わした後、夫・幸宏はまっすぐ階段へ上がっていった。
妻・渓子も数秒間、夫の背中を見つめてからリビングへと戻る。
:12/01/19 05:11
:W62P
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#184 [怪男]
一方、長女・美緒は重い足取りで夜道を歩いていた。
父親の同性愛者疑惑の事もあるが、それ以上に自分の忘れた携帯電話の事が気になっている。
携帯電話には風俗店や風俗店の社員の電話番号や、何度か来店する内に気が合い、交換した客の電話番号も入っている。
客からは頻繁に「今日店行くよ」などといった電話がかかって来るので、もし電話が来ていて、家族の誰かがその電話に出ていたら…などと考えると足取りも一層重くなる。
「はあ…」
しばらく歩いて家の前に到着し、ドアの前で足を止めた。
:12/01/19 05:13
:W62P
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#185 [怪男]
ドアノブに手をかけるも、開けるのを躊躇う。
―娘が風俗店で働いているなんて知ったら両親は何て思うだろう?
―“なぜそんな所で働いているのか”と質問されたらどう答えればいいのだろう?
“稼げるから”なんていう理由は両親…特に母には通用しそうにはない。
家族皆からは、まるで別のものでも見るような目で見られるかもしれない。
大げさに言ってしまえば“家族崩壊の危機”である。
:12/01/19 05:14
:W62P
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