心霊夜話
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#171 [怪男]
 
 
 
 
 少しの沈黙の後、母は小さなため息をついてから言った。

 「手をつけちゃったものはしょうがない。勇紀にも悪い所があるよ。
でもね、アンタにそんなものを売りつけた人はもっと悪い」

 「…………」

 「さっき一緒にいた男の人は誰なの?初めて会ったようには思えなかったけど」

 男性には「言うな」と言われていたが、勇紀はもう全部話して楽になりたかった。


 だが、もし言ってしまったら…と先を考えると、恐ろしい事になるかもしれないという不安な気持ちも少しある。


 「…………」

 勇紀は黙りを続けた。 

⏰:12/01/10 20:39 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#172 [怪男]
 
 
 
 
 すると母は…


 「勇紀!誰なの!答えなさい!!」

 と、突然怒鳴り声をあげて立ち上がった。

 さすがの勇紀もその声に驚いて、立ち上がった母の方に視線を向ける。


 母はものすごい剣幕で勇紀の顔を凝視しながら

 「このまま言わなかったらお母さん…警察に全部言うよ!それでもいいのか!!」

 と怒鳴り声で続ける。


 「ご……ごめんなさい…」

 「ごめんで済むなら警察はいらない!それくらい聞いた事あるだろ!!」

 勇紀には謝る事しかできなかったが、今の母には通用しなかった。

⏰:12/01/10 20:42 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#173 [怪男]
 
 
 
 
 互いに顔を見つめ合ったまま黙っていると、この騒ぎを聞きつけたのか二階にいた次女・夏美が階段をかけ降りてきた。


 「な…なんなの?」

 気の強い夏美もこの時だけは動揺しているのか、焦りの表情をしている。

 母・渓子は背後の夏美に顔を向ける事なく前の勇紀を見つめたまま

 「アンタは部屋行ってなさい!!」

 と大声を張り上げた。


 夏美は一瞬身体をビクつかせたが、すぐに小さく舌打ちをして階段を上がっていった。
 
 
 
 

⏰:12/01/10 20:48 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#174 [怪男]
 
 
 
 
 「さあ!勇紀!誰なの!」

 勇紀の目の前まで迫る母・渓子

 今にもその場から逃げ出したい気分だったが、腰が抜けたようにソファーから立ち上がる事ができない。

 こんな母を見たのは17年間生きてきた中で初めてであった。


 そんな迫力に負けた勇紀は、ついにポツリと白状する。

 「が…学校の知り合いの人の…知り合い…」

 「学校の?それは誰なの!言いなさい!」

 「……ク、クラスはわからないけど…赤木って人…」

 震えた声で勇紀が次々に答える。

 目からは涙がポロポロとこぼれ落ちていた。
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:04 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#175 [怪男]
 
 
 
 
 そんな勇紀を見て母は、怒りの表情から普段の表情に戻り、再びソファーに腰掛ける。


 そして怒鳴る前と同じく優しい声で聞く。

 「その子の連絡先は知ってるの?」

 母の質問に勇紀は涙をこらえるのに必死で喋れず、無言で首を横に振った。


 「じゃあお母さん…明日学校に行って、その赤木くんって子に会って聞いてみるけど…それでいい?」

 「…………うん」

 涙声混じりで勇紀が答えると、母は笑顔で最後に言った。

 「じゃあ…夏美呼んできてくれる?もうすぐでお父さん帰ってくると思うから…すき焼きしようって」

 「……うん」



 ―その後、家の電話に父・幸宏から電話があった。


 「残業する事になったから今日は遅くなる」


 …と。
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:06 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#176 [怪男]
 
 
 
 
 その夜は母、勇紀、夏美の三人だけで気まずい中、すき焼きをしたのだった。



 同日・午後9時30分…


 「美緒ちゃん、今日もお疲れ!明日は来れないんだよね?」

 「ごめんなさぁい。明日はコンビニのバイトがあるんですよぉ」

 「そっか。じゃあまたね」

 「お疲れ様でしたぁ!」

 秘密で働いている風俗店の男社員に最後まで愛想を振りまいた後、店を出る長女・美緒。


 店を出た瞬間、さっきまで愛想笑いをしていた美緒の表情が一変して険しくなった。


 家に忘れてきたと思われる携帯電話を家族に見られていないか、気が気でなはなかったのだ。


 早々と路地を抜けようと歩き出した時、ふと数メートル先にあるホテルの入り口からスーツ姿の男性が二人出てくるのが見えた。


 「(え…男同士…?)」

 今までそういった人を見た事なかった美緒は、突如なんともいえない好奇心に襲われる。
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:08 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#177 [怪男]
 
 
 
 
 好奇心はやがてスリルに変わってますます目を離せなくなり、美緒はその二人の男性の後をこっそりつける事にした。


 10分くらい歩いた所の駅前で男性二人は足を止めた。


 そしてお互い向かい合って何か話をしている時、少し離れた所で見ていた美緒は自分の目を疑う。


 「(え……お父さん?)」

 駅構内から差し込む光で両方の男性の顔がハッキリ見えている。


 一人は背が低く太目体型で顔は髭で覆われている。


 そしてもう一人は、間違いなく美緒の父親である幸宏だった。


 「嘘……」

 美緒はそう小さくつぶやき、手に持っていたバッグをポトリと地面に落とした―
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:11 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#178 [怪男]
 
 
 
 
 長女・美緒編
 
 
 
 

⏰:12/01/11 15:13 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#179 [怪男]
 
 
 
 
 家族や友達に秘密で働いている風俗店を後にしようとした時、男性二人がラブホテルから出てくる所を目撃した長女・美緒。

 好奇心から、美緒はその二人を尾行する。

 しばらく歩いて、駅前で足を止め話し出す男性二人。


 その二人の内の一人の男性の顔が見えた時、美緒は衝撃を受けた。


 それは、自分の父親だったのだ。


 父親がラブホテルから…しかも“男性”と二人で出てきたという事実。

 それは娘の美緒にとっては衝撃的以外の何物でもなく、受けたショックは絶大なるものであった。
 
 
 
 

⏰:12/01/16 16:35 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#180 [怪男]
 
 
 
 
 駅前で男性と恋人同士のように話す父・幸宏を見て、美緒は持っていたバッグを地面に落とす。


 呆然と見つめた後、二人はお互い手を振って別れた。

 男性は駅の中へ入って行き、父はその場を後にして暗い夜道へと消えていく。


 美緒はハッと我に帰ると、地面に落としたバッグを拾い上げて父とは逆方向の道を通り小走りで家に向かった。



 その頃、安坂家のキッチンでは母・渓子と次女・夏美が、すき焼きの余った材料で父と美緒の夜食を作り、長男・勇紀が晩御飯の後片付けをしている。
 
 
 
 

⏰:12/01/16 16:38 📱:W62P 🆔:☆☆☆


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