先生、あのね。[BL]
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#115 [うさみ。]
「あ」

固まった空気を解すように、
ふいに百瀬は俺を見てぽつりと呟いた。

言ってそのまま近づいてくる。
ぐんと縮まる距離。


「え、なに…」

最後まで問い掛ける間もなく、
俺は口端にかぶりつかれた。


「パン屑、ついてたよ。」


それはほんの一瞬だったのに
一気に全身が熱くなる。

⏰:12/03/12 16:36 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#116 [うさみ。]
「ちょ、調子に乗るなっ、このド変態!!!!」

「酷い言われよう。」

俺はヘラッと笑う百瀬を横目に下唇を噛んだ。


ああ〜、俺今絶対顔赤い。絶対赤いよなぁ。
悔しい。



こんなことで動揺している自分も、

昨日を思い出す自分も。

⏰:12/03/12 16:47 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#117 [うさみ。]
「俺、先生のそういうとこも好き」

「ッッ…〜っだから黙れって!!!!」


あっけらかんと、
しかしいたって真面目な顔でそんなことを言う百瀬を見て、
咄嗟に照れ隠しから目先の相手を殴る姿勢を取った。


が、あっさりその手首を掴まれてしまう。
所詮は照れ隠しだ。
降り下ろされるスピードなどたかが知れている。


「暴力反対。」

笑いかけられる度に俺の心拍数が上がる。
不覚ながらも。

⏰:12/03/12 17:02 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#118 [うさみ。]
「…………帰る。」


苛立ちを必死に押し殺してやっと吐いた言葉だった。

そのまま目を合わさずに踵を返す。


百瀬もそんな俺を追うわけでもなく、
なんなく入り口に差し掛かった。

そのとき、

「俺、明日もちゃんと学校来るから、先生も約束忘れないでね。」

後方からそんな声をかけられる。
返事などせずに俺はそのまま保健室を出た。


それから、“約束”という曖昧な言葉が俺の普通だった日常を縛る一つの呪文となった。

⏰:12/03/12 17:10 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#119 [うさみ。]
【 第五話 午後の授業は眠気との戦い 】


それから百瀬は毎朝遅刻せずに学校に来るようになった。
そして俺も律儀にあの約束を守り続けた。


なぜなら、

「最近例の問題児くんが真面目に学校に来てるそうじゃないか。」

「あぁ、まぁ…」


学年主任にそんな風にして声をかけられたからである。

⏰:12/03/12 17:31 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#120 [うさみ。]
曖昧な返事を打つ俺に、
隣のクラスを担任する佐佐木先生が入ってきたのはそんなタイミングだった。

「間宮先生相当好かれてるみたいですね。特Aの子達から聞きましたよ、約束してるんだって。」

清楚、おしとやか、女性らしい、そんな言葉のよく似合う彼女がそう言って笑う。
俺もつられて愛想笑いをした。

学年主任は「ほおー」と唸って感心したように顎髭を触る。


「教師が生徒に、ましてや問題児に好かれるなんてこのご時世なかなかないことだよ。良いことじゃないか。その調子で頼むよ。出席率は学年の問題でもあるから。」


遠回しに、”自分の出世にも関わるからどうにかするように“と暗示されているのはさすがに分かった。

⏰:12/03/12 17:41 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#121 [うさみ。]
佐佐木先生、めんどくさいことを口添えしてくれたな。

内心そんな風に考えながら頭を掻いた。

当の本人は気づいている様子もない。

つくづく零れそうになるため息をぐっと飲み込み、自分のデスクに腰を落とした。


……―――それから約2週間、
俺は仕方なく毎日約束通り百瀬と飯を食った。

⏰:12/03/12 17:44 📱:Android 🆔:oytJIUx2


#122 [うさみ。]
はじめは、
半径何メートル以内に来るなとか、
こっから先踏み込むなとか、
なんせ過剰なほど警戒しまくった。


しかし、
境界線を引けば百瀬はそれを越えようとしなかったし、あの日以降あんな展開になることもなく、そんな習慣はごく当たり前に俺の日常に溶けていった。


ただ黙々と飯を食って、
時々会話をする。

学校のこととかクラスのこととか、
当たり障りのない会話を。

それがいつもの昼休みになっていたのだ。

⏰:12/03/13 00:44 📱:Android 🆔:RNOp6Shk


#123 [うさみ。]
そんなある日のこと。

「ずっと気になってたんだけどさー、お前学校サボってた頃何してたの?」

何気なく口から出た疑問に、
百瀬はひどく目を泳がせた。

そんなに答えるに疚しいことをしていたのか?
自然と俺は百瀬に探るような視線を送る。


「バ、バイト三昧っていうか、昼夜逆転生活みたいな…。あは」

なんとも歯切れの悪い返事。
ここ何日かこいつと接しながら気づいたことが一つある。
こいつは嘘が下手だ。

⏰:12/03/13 00:51 📱:Android 🆔:RNOp6Shk


#124 [うさみ。]
「へえー?」

あえて深くは聞き込まず、
しかし嘘だと言うことを見抜いている程度は分かるように相づちを打つ。

すると百瀬が珍しく必死な顔で食らいついてきた。

「ほ、ホントだって!!俺バイトかけもちしてて、深夜もシフト入れてるから朝とか時々起きれなくて…、あ、でも約束してからはちゃんと起きてるよ?」

信用されていないと思いよほど焦ったのか、激しく饒舌になった百瀬に俺は思わず吹き出した。

「んな必死になんなよ。わかったわかった、先生は百瀬くんを信じましょう?」

茶化すように返事をすると百瀬はため息にも安堵にも似た息を吐いて、
勢いであげた腰をもう一度椅子に沈ませた。

⏰:12/03/13 00:58 📱:Android 🆔:RNOp6Shk


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