horrorU〜二重連鎖〜
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#162 [輪廻]
『えっ? あぁ…っと…』
住人の男性は、状況がイマイチ掴めずあたふたする。
『佐藤さん早くッ!!』
再度、大声で叫ぶ狂也。
『…なっ、何がどういう事…なんですか?』
『…いいから早くッ! 警察ッ!!』
『あ…は、はぁ』
そう言って部屋に戻る住人を見た男は小さく舌打ちをすると、狂也の耳元で脅すように言った。
『いいのか? 警察なんて呼んで。昨日の事、忘れてないだろうな?』
『…………』
狂也の全身からサーっと血の気が引いていく。
:12/04/17 17:53 :iPhone :zJABlpLw
#163 [輪廻]
『ま、これだけは忘れるなよ。お前が警察に俺を突き出すって事は、お前もデスネットから消される事になるって事をさ…』
『……デスネットから…消される?』
男から意味不明な事を言われ、思わず聞き返す。
『あれ? 知らねえの? デスネット会員には、守らなきゃならない暗黙のルールってのがあんだよ。ま、そのルールの内容は自分で調べる事だな』
男はそう言い、『ククク』と意味ありげに笑うと、掴んでいる狂也の腕ごと身体をドンと前に押し、その場を去っていったー
:12/04/17 17:55 :iPhone :zJABlpLw
#164 [輪廻]
前に押されて倒れそうになった狂也は、素早く階段の手すりに手をかけ、なんとか体制を整える。
そして男の言った言葉を思い返すと、真意は定かではないが、率直にマズイと思い、警察に電話をしにいった男性の半開きになったドアをバッと開け放って玄関に入る。
『ちょ、ちょっと佐藤さん! 待ってくださいッ!!』
玄関で、血相を変え大声で男性を呼ぶ。
少しして、携帯電話を手にした男性が玄関へやってきた。
『な、なんですか? 警察ならもう呼びましたけど…』
『……そんな……』
『え…? だって、お宅が警察を呼べと仰るから…』
:12/04/17 17:57 :iPhone :zJABlpLw
#165 [輪廻]
狂也はその場に崩れ落ちた。
『ちょ、ちょっと! 大丈夫ですか? 大槻さん!?』
男性がそばにかけより、あたふたしながら声をかけ続ける。
数分ほどその状態が続いた後、遠くからかすかにパトカーのサイレンが聞こえ始めた。
『あ、あの。もう警察が来るみたいですけど…どうするんですか?』
男性の問いかけにさきほどからずっと反応を見せなかった狂也は、ここでやっと男性の方に顔を向け、応える。
『ありがとうございました…』
そう一言だけ言い、力なく微笑むと、立ち上がり男性の部屋を出た。
:12/04/17 17:58 :iPhone :zJABlpLw
#166 [輪廻]
背後で男性の何度か呼び止める声が聞こえたが、狂也は振り返る事はなかった。
やがてアパートの前に一台のパトカーが停車し、警察官二人が中から降りてきた。
警官は辺りを見回し、階段付近に立ち尽くす狂也に気づくと、そばに駆け寄る。
『通報したのはあなたですか?』
中年の警官が尋ねる。
狂也はコクリと頷き、事情を話したが、『男に襲われそうになった。顔は暗くて全く見えなかった』と警官に説明した。
話し終えると、念のためこの付近のパトロールを強化するという事を伝えられ、警官二人は10分としない内にその場を去っていった。
:12/04/20 20:53 :iPhone :vBj0gYWs
#167 [輪廻]
パトカーのサイレンが聞こえなくなるまで見送った後、狂也は一階の大家の部屋のインターホンを押す。
ドアが開き、大家がひょっこりと顔を出した。
『おや、大槻さん。どうかしたのかい?』
『…すいません。部屋の鍵…なくしちゃって…』
正直に頭を下げながらそう話すと
『あれまぁ…そうかい』
大家は怒る事なく、にこやかな笑顔で言った。
:12/04/20 20:54 :iPhone :vBj0gYWs
#168 [輪廻]
『合鍵の代金は俺が責任持って出すんで、大家さんのマスターキーで部屋の鍵開けてくれませんか?』
『いやいや、そんなの気にせんでもいいよ!』
『いえ、なくしたのは俺なので。その変わり…っていうのはなんですけど、一つだけ教えて欲しい事があるんです』
『…ん? なんだい改まって?』
狂也は真顔で大家を見て、予想を確信に変える為に単刀直入に質問をぶつける。
『今日…大家さんに封筒を渡した男って、小太りな感じで黒のスーツを着た人じゃなかったですか?』
『…………』
当たりなのか、さきほどまで笑顔だった大家の表情が一瞬にして曇ったのを狂也は見逃さなかった。
:12/04/20 20:56 :iPhone :vBj0gYWs
#169 [輪廻]
『そうなんですよね?』
狂也は顔を強張らせ、大家に詰め寄る。
『ぬぅ…若い人にはかなわないな、こりゃ…』
やがて観念したように大家は、頭をぽりぽりと掻きながら苦笑いを浮かべて答えた。
『うん大槻さんの言うとおりの人だったわ。大槻さんはその男性に覚えがあるのかい?』
『……はい、ちょっと…』
あの男とは“一緒に人間の死体を埋めた関係”とは口が裂けても言えず、それ以上は何も言わなかった。
:12/04/20 20:57 :iPhone :vBj0gYWs
#170 [輪廻]
『とりあえず…俺の部屋の鍵、開けてもらっていいですか?』
『ああ、ハイハイ。今、鍵持ってくるからちょっと待っててちょうだいな!』
再び笑顔に戻った大家はそそくさと部屋の中に入っていく。
ふと空を見ると、雨はすでにあがりかけていた。
一分もしない内に、中から大家が戻ってくる足音がした。
『お待たせね。さ、じゃあ二階行きましょうか』
大家が先に階段を上がるのを見て、狂也もそれに続く。
:12/04/20 20:57 :iPhone :vBj0gYWs
#171 [輪廻]
部屋の前に着くと、鍵を鍵穴に差し込む前に大家がドアノブを回す。
『うん、しっかり鍵かけられてるね』
そう独り言のように言うと、手にしていたマスターキーを鍵穴に入れ、回す。
『ガチャリ』と鍵が開く音を聞いた狂也は、心の中で安堵のため息をついた。
『はい、これで大丈夫ね。鍵は明日にでも作りに行ってくるから、今日だけ我慢してね』
『…ありがとうございました』
深く頭を下げる狂也に『いいからいいから』と笑顔で言う大家。
:12/04/20 21:31 :iPhone :vBj0gYWs
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