horrorU〜二重連鎖〜
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#182 [輪廻]
同時に、あの日あの紙さえ拾わなければこんな事にはなっていなかった…と後悔の念が押し寄せる。
広告に書かれた“高収入”という言葉に一度は疑いを抱いたものの、自分の忘れやすい性格が災いし、気づくと疑った事すらも忘れて電話をしてしまっていた。
更には、どんな会社なのか下調べもせず自分の個人情報を教えてしまった。
それも、少しの疑いを抱く事なくー
:12/04/22 12:11 :iPhone :y/eoSUTE
#183 [輪廻]
何もない地面を呆然と見つめながら、これからデスネットとあの男に怯えながら生きていくくらいなら、いっそこのままどこか遠くへ行きたいと思った。
幸か不幸か実家の住所は知られていない為、実家へ変える手もあるが、家族から無理を言って大金を借りて一人暮らしをした為、今更帰ると言っても親に拒否される事はわかっている。
やはりデスネットやあの男から逃げるには、お金をしっかり貯めて別のアパートへ引っ越すという方法しかないと思った。
まだ先は長いと思うと足取りも一層重くなり、とぼとぼとコンビニへ向かって歩き出す。
:12/04/22 12:11 :iPhone :y/eoSUTE
#184 [輪廻]
アパートの部屋の鍵は閉まっていない為、あの男に侵入されるかもしれないという恐れから、いつもする本の立ち読みをやめ、おにぎりやパンなど夜食を適当に手にし、それらを買うと早々とコンビニを後にした。
アパート前に着くと、辺りを警戒しながら階段の方へゆっくり歩み寄る。
辺りはひっそりとしていて、人の気配はない。
とりあえず一安心すると、大きな足音をたてて階段をかけあがり、部屋に入って鍵をかける。
『ふぅ…』
小さなため息をつき、靴を脱ごうと廊下側へ振り向こうとした瞬間…
『……おかえり』
廊下の奥から聞き覚えのある声がし、同時に狂也の身体がピタッと停止した。
:12/04/22 12:13 :iPhone :y/eoSUTE
#185 [輪廻]
冷や汗が流れるー
狂也の視線は下にあり、恐る恐る顔を声のした方にゆっくりと上げる。
そこには…誰もいなかった。
いつもの、電気が点いた明るい廊下が一直線に見える。
今の声は幻聴だったのだろうか。
いや…もしかしたらと思った狂也は、男が潜んでいた時の為に応戦できるようにと、玄関の脇に立ててある傘を手にし、靴をそっと脱いで中に足を踏み入れた。
:12/04/22 12:14 :iPhone :y/eoSUTE
#186 [輪廻]
まず向かったのは浴室。
電気は点いていないものの、点いていないからこそ隠れている可能性は充分にあると思ったからだ。
まず浴室の透明なガラス製のドア越しに耳を当て、人の気配がないか様子を探る。
…………
…………
…………
…物音は、一つもしない。
:12/04/22 12:15 :iPhone :y/eoSUTE
#187 [輪廻]
念の為、ドアを開けてみる。
…そこはいつものように浴槽とシャワーがあるだけの空間だった。
だがまだ安心するのは早いと思い、次はトイレへ向かった。
トイレは浴室の隣にあるドア。
今度はそちらに聞き耳を立てる。
…………
…………
…………
こちらも物音はしない。
そっとドアを開ける…が、そこにも便器が一つ置いてあるだけで人の姿はなかった。
:12/04/22 12:16 :iPhone :y/eoSUTE
#188 [輪廻]
やはりさっき聞いた声はただの幻聴であり、あの男がいる気がするというのも全て自分の思い込みなのだろうかと思い始めると、なんだかどっと疲れが押し寄せてきた。
途端にお腹も大きく鳴り出す。
さっきの声などは、お腹が空いている事と疲れている事で幻聴となって聞こえてしまったのだろうと思う事にし、傘を元の場所に戻してから居間へ向かった。
いつものように布団の上に胡座をかき、コンビニ袋から夜食であるおにぎりを取り出す。
コンビニでおにぎりを買う際、急いでいた為に温めるのをしなかった事を少し後悔した。
電子レンジは買っていない為、温める方法はなく、諦めて冷えたままおにぎりを頬張った。
:12/04/22 12:17 :iPhone :y/eoSUTE
#189 [輪廻]
おにぎりを食べ終わり、パンの袋に手をかけた時、ポケットに入れてある携帯電話のバイブが鳴った。
嫌な予感がして、パンの袋を開けようとする手が止まったー
あの男からか…デスネットからか…
バイブ音が鳴り止むまで待ち、止まった所でポケットから取り出して画面を見る。
“○○物流”
その表示名を見て、狂也は慌てた。
:12/04/22 12:18 :iPhone :y/eoSUTE
#190 [輪廻]
『やべっ…バイト先…』
独り言のように言うと、すぐにその番号へかけ直した。
バイト先からの電話の内容は、急な仕事が入ったから明日から出勤して欲しい…という事だった。
それを聞いた狂也は、もう正月休みは終わりかという思いと、仕事をすればデスネットの事など少しでも忘れる事ができるかもしれないという二つの思いが交差した。
『……はい、では明日7時っすね…』
向こうが電話を切ったのを確認してから、こちらも切る。
:12/04/22 12:19 :iPhone :y/eoSUTE
#191 [輪廻]
携帯電話を置くと、パンの袋を開け、中身を頬張る。
それから就寝するまでデスネットやあの男から電話がかかってくる事はなかった。
翌朝ー
AM5時を告げる携帯電話のアラーム音がけたたましく鳴り響いた。
ハッと目を開け、枕元で鳴っている携帯電話を手探りで取ると、電源ボタンを押してアラームを止めた。
:12/04/28 19:55 :iPhone :EiiJByvo
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