horrorU〜二重連鎖〜
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#192 [輪廻]
 
 
寝ぼけ眼で画面の時刻を確認した後、そのまま再び目を閉じようとしたが、すぐに昨日のアルバイト先からの電話の事を思い出し、布団から身体を起こす。


窓の外を見るとまだ薄暗く、雨がポツポツと滴る音がしている。


しばらく布団の中で携帯電話を見た後、洗面所へ顔を洗いに向かった。


両手の掌に溜めた冷たい水で顔を何度も洗い流し、再び部屋へ戻ると、アルバイト先へ向かう時間までの間いつものように携帯電話のワンセグでテレビ視聴をしながら準備を始めた。

⏰:12/04/28 20:18 📱:iPhone 🆔:EiiJByvo


#193 [輪廻]
 
 
ワンセグテレビで今日の天気や経済に関するニュースをラジオ感覚で視聴しながら準備して1時間ほどが経過した頃、女性キャスターが何やら事件についての記事を読み上げ始めていた。


『はい、では次です。
今日午前4時20分頃、生川山の山中で若い男性が死んでいるのをタケノコ取りに来た男性が発見し、警察に通報しました。
遺体はうつ伏せ状態で倒れており、背中には刃渡り五センチほどの果物ナイフが刺さっていたという事で、警察は殺人事件として捜査を進める方針です』

そんなニュースを耳で聞きながら、朝から嫌な話だなと思いながら準備を進める。


だが、女性キャスターが続けて読み上げた内容を聞いて、狂也の身体と手が一瞬にして止まる。


『えぇ、被害者の男性は田中槇二さん22歳。遺体が発見された場所から数キロ離れた所にある杉村旅館に宿泊していたという事で、警察は旅館の従業員や宿泊している客一人一人に話を聞くと共に被害者の交友関係についても調べるという事です。以上です』


『…………え? 田中?』

被害者の名前にピンと来て、すぐ画面に目をやったが、女性キャスターはすでに別のニュースの報道に移っていた。

⏰:12/04/29 09:43 📱:iPhone 🆔:Y8iAPrXw


#194 [輪廻]
 
 
『…………は?』

画面に向かって首をかしげる。

しばらく唖然とした後、我に戻り、ワンセグを終了して携帯電話の電話帳を開く。


ーーーーーーーーーー
田中

携帯:090-XXXX-XXXX
ーーーーーーーーーー

なぜか嫌な予感と胸騒ぎがし、すぐにその番号に発信した。


呼び出し音が鳴る…だが応答はない。


『田中って……え?』

首をかしげながら再確認するように言い、ひたすら応答を待つ。

⏰:12/04/29 09:43 📱:iPhone 🆔:Y8iAPrXw


#195 [輪廻]
 
 
それから携帯電話を耳に当ててしばらく待ってみたが、田中が電話に出る事はなかった。


嫌な予感は的中しそうだったが、もしかするとただの同姓同名かもしれないと無理に自分を納得させようにも、狂也の知っている田中の年齢は、先ほど女性キャスターが読み上げたように“22歳”と年も一致していた為、ただの偶然だとは決めつけられなくなった。


心に何かひっかかったまま、狂也は次に会社の専務に電話をかけた。


“プルルルル”と呼び出し音が四回鳴った所で向こうは電話に出た。

⏰:12/04/29 09:45 📱:iPhone 🆔:Y8iAPrXw


#196 [輪廻]
 
 
「あい! 和田ですが」

『あの、専務…大槻ですけど』

「ああ大槻か。どうした?』

『あの、ニュースって見ました?』

「…ニュース? なんだいきなり」

『あ、見てないですか…』

「ああ見てないけど。なしたのよ?」


狂也は、先ほどのニュースでやっていた事件と被害者の事を専務に話した。 

⏰:12/05/07 16:38 📱:PC 🆔:FRxzPDtY


#197 [輪廻]
 
 
「…田中が? まさかぁ!」

専務は、真剣な狂也の話を軽く笑い飛ばす。


『いやでも…携帯も繋がらないですし』

「田中の事だからまだ寝てんだろ。あいつは明日からの出勤だしな」

『そうでしょうか…?』

「気にしすぎだ。ところで、正月休みはゆっくりできたか?」

『あ、はい…まあ』

「そうか。じゃあ今日からまた頼むな」


結局、事件の被害者の話は軽く流されてしまい、専務との通話は終了した。

⏰:12/05/07 16:46 📱:PC 🆔:FRxzPDtY


#198 [輪廻]
 
 
数十分後、胸騒ぎを覚えたまま準備を終え自宅アパートを後にした。


通勤途中も、田中の携帯電話にいくらかかけてみたが、繋がる気配は全くと言っていいほどなかった。


こんな調子で仕事ができるのだろうかと思ったが、もしかしたら自分のただの思い込みかもしれないとも思うと、余計に仕事がはかどる訳がないと感じた。


駅に着き、電車を待つホームで狂也は少し考えた後、手にしていた携帯電話で専務に電話をかけた。


“先ほど実家の父から連絡があり、母が倒れた”と、ありがちな口実を作り、実家に看病しに行かなければならなくなったので仕事を休ませて欲しいと専務に伝えた。


それを聞いた専務は「お大事に」と言いつつも、どこか半信半疑な口調であり余所余所しくもあるが、今の狂也にとってはそんな事はどうでもよかった。

⏰:12/05/08 14:20 📱:PC 🆔:Y1YU.uzw


#199 [輪廻]
 
 
休みの許可が下り、通話を終えた狂也は、乗るはずだった電車を見過ごした後、その駅を後にした。


駅を出て、自宅方面とは逆方向へ歩き出し、ある目的地へと向かう。


その間も狂也は、田中の携帯電話に電話をかけ続けた―




前編・狂也篇【完】

⏰:12/05/08 15:07 📱:PC 🆔:Y1YU.uzw


#200 [輪廻]
 
 
 
 
第2話『惨劇の次章』



後編・響歌篇
 
 
 

⏰:12/05/08 15:14 📱:PC 🆔:Y1YU.uzw


#201 [輪廻]
深夜3時を過ぎ、旅館の部屋に戻った響歌達一同。


室内の雰囲気は暗く、しばらくの間誰も言葉を交わす事はなかった。

響歌と七瀬が部屋の隅で体育座りをして黙っている中、蓮が立ち上がって幹事の元に寄ると、声をかけた。



『なぁ、あんたさ…色々と聞きたいことがあんだけど』

『……聞きたいこと?』

幹事が蓮を顔を見上げて尋ねる。


『ここじゃなんだし、ちょっと廊下に出ようぜ』

そう言って幹事に背を向けると、部屋の障子を開けて廊下へと出ていった。

⏰:12/05/10 02:01 📱:PC 🆔:G4zzLrhw


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